守田です。(20110322 02:40)
みなさま。
今回の文章はこみだしをつけて出します。
IAEAが危機の継続を宣言
前回のメールで、僕は、現状はまだまだ極めて危険だと見るべきだという
観点を打ちだしました。そして、どこかで僕と似たような見解を持っている
方はいないかと探していたら、見つかりました。国際原子力機関(IAEA)
です!記事は同機関の緊急理事会で、「天野(ゆきや)之弥事務局長は冒頭、
「危機はまだ去っていない。状況は依然、非常に深刻だ」と述べた。」ことを
紹介しています。
ただし記事の中で分からない点があります。
「(1986年に発生した旧ソ連)チェルノブイリ原発事故を踏まえた現行の
国際緊急対応体制は、現状に即していない」とし、見直しの必要性を強調した。
という点です。
まず国際緊急対応体制が、「チェルノブイリ原発事故を踏まえた」ものとして
組まれてきていること、つまり少なくともこれまで、国際的には、チェルノブイリ
原発事故を想定した体制が組まれてきたことが、ここから読み取れます。
その上で、それが現状に即していないとなっているわけですが、どう即して
いないのかが分かりません。この記事はつい先ほど出てきたものなので、
おそらく続いて、もっと詳しい内容が出るのではないかと思います。
この点は、そのときに再度紹介したいと思います。
放射性ヨウ素の基準値、乳児には厳格化
・・・福島市などで100ベクレル以上が
次に、避難を急いだ方がいいという提言を補強する記事を見つけました。
政府が屋内退避を勧告した原発から半径30キロよりも外側の広範な地域で、
水道水から、100ベクレル以上の放射性ヨウ素が検出されたことです。
またこれに対して、厚生省は、規制値は300ベクレル以上でありながら、
より影響を受けやすい乳児に関しては、規制を100ベクレル以上とし、
これらの地域では水道水を乳児に飲ませないようにという指示を出しています。
具体的な地域は、福島県飯舘村、川俣町、福島市の3か所ですが、それぞれの
役場から原発までの距離は、約35キロ、45キロ、58キロです。
つまり58キロの地点で、乳児が水道水を飲むと危険性があるという認識が
厚労省から出されたわけです。300ベクレルという規制値から乳児の
規制値を下げたのは賢明だと思います。ただし100ベクレルでいいのかどうか
僕には分かりません。
ただしこの記事もまた、せっかく厚労省が乳児の危険性を考慮して、
規制を厳しくする判断をしたことが明らかになっていながら、
それで、避難すべき地域は現行のままでいいのかといった大事な点に
触れられていません。この点、残念ですが、「ただちに健康に害が
あるわけではない」などとは、付け加えられない内容が出てきたことは
注目に値します。
しかもこうした地域は急速に拡大してきています。これらの点からも、
だんだんに同地域は、水を飲むのも危険になってきていることが見えて
きます。すでに60キロ近く離れた福島市で、こうした危険性が生まれている
ことがここに表れています。
また厚生省の踏み切った判断により、ヨウ素に関して出されている水道水の
情報について、乳児については、100が基準にならなければならないことが
分かったので、牛乳や野菜なども、当然、乳児のための厳しい規制値を出す
必要があることもここから分かります。それぞれに対して、乳児の場合の
規制値が出される必要がありますが、少なくともそれまで、水道水については、
300から100に厳格化されたことを参考に、情報を読み解いていく必要が
あります。
いずれにせよこれらから、福島市もまた、乳児、妊婦、子どもをどんどん
疎開させた方がよさそうです。水道水すら飲めないのでは、生活的にも
たちまちピンチになってしまいます。
福島市が県外からのボランティアの安全を優先
ここまで書いていたら、胸が痛くなる記事も入ってきました。福島市が
放射能汚染の広がりを考慮し、独自に、県外から申し入れのあった
ボランティアの受け入れを断念したというのです。
これにはいろいろな意味があります。第一に、福島市は自らの
苦しみよりも、県外から入ってこようとする人々の安全を優先している
ということです。政府やマスコミが行わない、原発から30キロ以上でも
危険で立ち入らない方がいいという判断をみずからくだし、実行しています。
自分たちを犠牲にしてです。
こういう人たちを助けなければならない。そのためには政府が動かなくては
いけない。避難所にいる8万余をはじめ、この地域の人々を、政府が自衛隊や
警察などを使って無事に避難できるようにするべきです。
福島市の人々は、もはやそこが放射能で危険なことを察知している。
だから外から入ってくる人を守らねばならないと考えています。
その福島市の人たちが飲む水の、ヨウ素濃度が濃くなってきています。
自力では逃げられない人たちを、政府は救出する責務があります。
このことをマスコミが書いて欲しい。少なくとも、これでもまだ半径30キロ
の外は安全だと言うのかと、追及して欲しいです。
福島市・川俣町・飯館村などの人々の避難、いやもっと非常に広い範囲の
人々の避難が、早急に進むことを祈るばかりです。
住民の被曝予測を国が隠している
さらに国が、住民の被曝予測を公開していないという批判が研究者たち
から出ました。こうした批判が出てくるのもいい流れだと思います。どんどん
政府に情報開示を迫り、今いるところにどれだけの危険性が迫ってきて
いるのかがもっと見えるようにすることが大事です。研究者たちが、少なくとも
重要なデータを国が握ったままにしていることを明らかにしてくれたこと
だけでもありがたい気がしました。
以下、それぞれの記事を貼り付けます。
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福島原発は非常に深刻、独自に調査…IAEA
【ウィーン=佐藤昌宏】
国際原子力機関(IAEA)は21日、ウィーンの本部で、
福島第一原発の事故に関する緊急理事会を開いた。
天野之弥(ゆきや)事務局長は冒頭、「危機はまだ去っていない。
状況は依然、非常に深刻だ」と述べた。
その上で、「(1986年に発生した旧ソ連)チェルノブイリ原発事故を踏まえた
現行の国際緊急対応体制は、現状に即していない」とし、見直しの必要性を強調した。
また、日本政府からIAEAへの情報提供不足が指摘された点を踏まえ、
菅首相がすべての情報の迅速な提供を確約したことや、
IAEAも独自に日本国内で放射性物質の測定調査を開始したことなどを説明した。
(2011年3月21日23時57分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110321-OYT1T00832.htm?from=main3
放射性ヨウ素の水道水基準、乳児には厳格化
厚生労働省は21日、乳児について、100ベクレルを超える
放射性ヨウ素が検出された水道水の飲用を控えるように都道府県に通知を出した。
水道水の食品衛生法の暫定規制値は、1キロ・グラム当たり300ベクレルで、
厚労省では、この値を超えた水道水について飲用しないように求めているが、
乳児については、放射線の影響を受けやすいことなどを考慮し基準を厳格にした。
通知では、粉ミルクを水道水で溶かして乳児に与える場合などに、
ヨウ素が100ベクレルを超える水道水を使わないように求めている。
厚労省によると、地震発生後、
水道水から100ベクレル以上の放射性ヨウ素が検出されたのは、
福島県飯舘村、川俣町、福島市の3か所。
(2011年3月21日23時40分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110321-OYT1T00564.htm
安全確保ムリ…福島県外のボランティア募集断念
東日本巨大地震の発生から10日が経過し、各地でボランティアが活躍する中、
福島県災害ボランティアセンターでは、「原発の事故が起き、安全が確保できない」として、
県外からのボランティア受け入れを見送らざるを得ない事態となっている。
福島県は、地震が発生した翌日の12日に県災害ボランティアセンターを設置し、
避難所や高齢者宅などで活動するボランティア募集を開始した。20日までに、
県内外からの応募は262人に上り、
このうち、県外からは在日ブラジル人留学生なども含め162人が応募した。
だが、同センター設置日の12日昼に福島第一原発1号機が爆発。
続いて、3号機、2号機、4号機と次々と事故が置き、放射性物質が漏出した。
同センターには初日から県外からの応募が相次いだが、
ボランティアの安全を考えて募集を断念した。
県内の避難所で生活する被災者は21日現在、8万2786人。
高齢者も多く、介護経験のあるボランティアの確保は喫緊の課題だ。
避難生活が長期化する中、今後は津波で身内をなくした被災者らの
精神的なケアも必要となってくる。
同センター職員の関靖男さん(50)は「原発が安全にならないと、
県外からボランティアを受け入れるわけにはいかない。
猫の手も借りたいくらい人手が欲しいが、しばらく県民だけで頑張るしかない」と話し、
「ガソリン不足や放射能漏れが収まれば県外からの受け入れを始めたいが、めどが立たない」
とため息をついた 。
(2011年3月21日23時26分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110321-OYT1T00650.htm
国、住民の被曝予測公表せず 研究者らが批判
住民の被曝(ひばく)量や放射性物質が降る範囲の予測を国が公表していないため、
研究者らから批判が出ている。
文部科学省が委託した機関が1時間ごとに計算し原子力安全委員会に報告しているが、
国は「データが粗く、十分な予測でないため」と説明している。
予測システムはSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)と呼ばれる。
原子力安全技術センター(東京)が、原発の位置、放射性物質の種類や量、
放出される高さ、地形などを元に、最新の風向きや風速のデータを加えて計算。
日本全域を250メートル四方に区切り、
それぞれの場所にすむ人が吸入などで被曝する量を予測する。
同センターによると、11日の地震発生約2時間後から、
東京電力・福島第一原発について計算を始めた。
放射性のヨウ素や希ガスについて、放出量の見積もりを何段階かに変化させて計算。
1時間ごとに2時間後までの被曝予測データを、原子力安全委員会に報告しているという。
原子力安全委員会事務局は「放射性物質の種類や量、放出時間などの推定が粗いので、
避難などの判断材料としては使っていない。その状況なので軽々しく公表できない」
と説明している。
一方、長瀧重信・長崎大名誉教授(被曝医療)は
「条件がそろわないと予測できないというのはおかしい。
国は持っているデータをすべて公開することが大事だ。根拠をもとに住民と相談して、
対応を決めるのが原則ではないか」と話している。
福島第一原発から出た放射性物質の拡散予測について、
米原子力規制委員会(NRC)は「あくまで推定で、実際とは異なるかもしれない」
と注釈つきで公表。
米国はこれらを参考に原発から半径80キロメートル以内にいる米国人に避難を勧告した。
また、フランスやオーストリアの研究所なども拡散する様子の動画を
ホ ームページなどで公開している。(木村俊介)
(2011年3月21日23時45分 朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/0321/OSK201103210061.html