明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

東北地方太平洋沖地震について( 7 )

2011年03月13日 23時35分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。

続報です。福島第一原発3号機、極めて深刻な状況です。
・・・こうした情報を出し続けること、受け続けること自身、なんとも
苦痛ですが、今はひたすら被害が最小限にとどまること、また
そうでない場合に、この情報がどこかで誰かの役に立つことを
ひたすら祈って、発信を続けます。

さきほど、午後8時ごろでしょうか。首相と、枝野官房長官の
会見が行われ、枝野長官より、福島第一原発3号機のその後の
情報が出されました。

それによると、さきほども書いたように、原子炉に海水の注入を
行って、水位の上昇に努めているのですが、しかしやってもやっても
水位が上がらない状態が続いているそうです。

真水の注入を止めたのは、ポンプなどにトラブルが生じたためで、
それに海水がとって代えられたのですが、そもそも海水を注入する
のは想定外で用意がなされていません。

そのため消防系統を使って注水しているようですが、しかしそもそも
原子炉内や非常に高圧になっています。(60気圧以上)これは
循環する水がより熱を奪えるように、沸騰点をあげるためなどです。

このため水温は300度ぐらいに達するのですが、消防ポンプは
こうした圧力に抗して水を入れることは当然にも想定していません
このため、水が十分に入っていってないことが考えられます。

だた実体はよく分からない。僕が分からないだけではなく、現場でも
よく分からないようです。そもそもこうした事故のとき、想定外の
ことが続くので、計器なども故障しがちだそうです。

そのため作業をしている方々は、内部で起こっていることを推論
しながら、作業を続ける以外ない状態にあるようです。極めて困難
な状態です。

もう一つ枝野長官によって明らかにされたのは、蒸気を逃がす
ベントにもまた故障が生じているという事実です。もちろん原因は
よく分からない。炉内圧力は再びあがり危険が増しています。


こうした状態に対して、夕方に原子力資料情報室の2回目の
記者会見がありました。ここでも後藤政志さんが詳しい説明を
して下さいましたが、そこで強調されたのは水素爆発の恐れでした。

これが政府が可能性を指摘している建屋上部での爆発の可能性
ではありません。そもそも水素は、高温によって燃料被覆管の
ジルコニウムが溶け出し、これと水が反応して出てくるものです。

これと酸素が出会い、火花があると爆発に至りますが、実は
スリーマイル島事故での経験の中で、炉内には窒素が封入され、
水素が発生しても爆発にいたらない工夫がなされているといいます。

ところが、炉内の圧力を逃がすために、ベントを開けていますから、
このとき発生した水素ガスとともに窒素もまた炉外に出てしまって
います。どれぐらいの割合かはもちろん分かりません。

その後に、再度、水位が下がり、燃料の一部が溶けた可能性が
あり、再び炉内に水素が発生している可能性があるのですが、
今度はその爆発を抑える窒素が抜けている可能性があります。

そうなると炉内で水素爆発が起こる恐れが生じていることになる。
もちろん、どれだけの水素が発生しているのか、どれだけの窒素が
抜けてしまったのかは測りようのないことです。

このため現在、3号機は建屋上部だけでなく、炉内での水素爆発の
リスクも抱えていることになります。本当に恐ろしい。そんなことに
ならないことを祈るばかりです。


さらにさきほど入った情報では、福島第一原発1号機でも水位が
下がっているそうです。これもどうしてだか分からない。どこからか
漏れているのかもしれない。その場合は放射能も漏れています。

さらにさらに、なんとか冷却装置が働いていた2号機までもが
水位が下がりだし、炉内の圧力が上がりだしたそうです。とうとう
冷却装置がダウンしたのです。このため2号機もベントを開けるという。

これらのために今、福島第一原発は1号機、2号機、3号機の
3つの炉が危機に瀕しています。本当に余談を許さない状態です。
・・・ともあれウォッチを続けます。


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東方地方太平洋沖地震について( 6 )

2011年03月13日 16時52分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。

続報を送りますが、どうもクラクラするような事態が続いています。
原発に関しては、まだ危機をまったく脱していません。
最悪の事態へのシナリオはいまだ続いています。
危機に陥っているのは、福島第一原発1号機、2号機、3号機、
第二原発の1号機、3号機、4号機です。

しかしマスコミを見ていると、だんだん原発災害に対して、感覚が
麻痺しだしているようにも見えます。どれもこれも、これまでだったら、
それだけで何年間も騒ぎになるようなことが続いているのに、
ひとたび、原子炉崩壊か・・・というところまでいったためか、反応が
非常に弱くなっているように思えます。
それらから、一部では危機は去ったかのような報道もなされていますが
そんなことは全くないです。


まず福島第一原発1号機ですが、海水の注入が完了したと伝えられて
います。しかし周辺で放射線量が再び高まりだしているという報道が
あり、さきほどまた下がったという報告がなされました。原因は明らかに
なっていません。海水注入でも、熱の除去が十分になされていない様子です。

さらに第3号機でも昨日の1号機と同じ状態を辿っていて、ここでも
非常用のベントが開けられ、水蒸気が出されましたが、かなりの危機的な
状況を経過してきています。

さきほどなされた、枝野官房長官の説明によれば、現在、3号機の原子炉
建屋の屋根付近に、水素がたまっている可能性があり、昨日の1号機で
起こったのと同様の、水素爆発の可能性があるとのことです。大変なことです。

枝野長官は、昨日の1号機と同じように、たとえ爆発が起こっても、原子炉には
影響がないので心配いらない、避難地域も拡大しないといいましたが、しかし
そんなことは設計上の想定に入っているわけがありません。そもそも1号機も
爆発によって内向きに圧縮するエネルギー(爆縮)の影響を受けていて、その後の
安全点検がなされたわけでもない。放射線量が多くてあまり近づけないのです。


今日一日たどった経緯もまるで綱渡りのようです。3号機は1号機などと同じように
冷却水の供給ができなくなったのですが、炉心がどんどん露出し、4メートルの
燃料棒うち実に3メートルまで露出してしまったそうです。これにともない炉内の
圧力が上昇、1号機と同じように、緊急措置としてベントが開けられ、放射性物質を
含む水蒸気がだされました。これが9時5分のことです。

その後、ただちに冷却をおこなうために9時8分より真水の注水を開始しまいた。
ところが途中で、真水を供給するポンプ系統が再びトラブルに見舞われ、供給が
できなくなって、再び水位が低下。危険な状態になりました。このときだか、
9時までだかは分かりませんが、とうとう燃料棒が溶け出すメルトダウンが
ここでも始まってしまいました。

ここにいたって、真水の供給が断念され、原子炉内に海水が投入されました。
海水を投入することは、錆の問題などで今後の使用をあきらめることを意味
しますが、そんなことにかまっていられない緊急措置です。このことでようやく
水位が回復したといいます。

しかし燃料棒が溶けてしまったために、水素が発生した。これは被覆に使われ
ているジルコニウムという合金が、1400度ぐらいになると融解しはじめ、この
ときに水と接触することで水素を生成するのですが、それがかなりの量、発生
した模様です。

また真水の注入の失敗により、再び圧力があがったため、再度、原子炉の
ベントが開けられ、水蒸気を逃がす動作が行われましたが、このとき原子炉内
に発生した水素が、3号機建屋の中に逃げ出し、屋上付近にたまっている
可能性があるというわけです。

これは非常事態の中で起こっていることですから、その際、どれだけの水素が
発生したのか分かりません。昨日の1号機のときと同じレベルなのか、低いのか
あるいは圧倒的に多いのか。誰もモニタリングなどできない。そのため、水素
爆発が起こった場合、そのエネルギーが昨日並みという保証はまったくありません。


さらにさらに恐ろしいのは、この3号機には、ウランとプルトニウムを混ぜた
MOX燃料が使用されていて、プルサーマル(プルトニウムを通常の軽水炉で
燃やすこと)が行われていたことです。つまり一部メルトダウンを開始したと
思われるのは、ウラン燃料だけではなくプルトニウム燃料であり、核分裂性も
熱も、エネルギーも圧倒的に多いものだということです。

そもそもプルトニウムは、高速増殖炉で使うために、通常の原発の使用済み
燃料を再処理して取り出されたものです。ウランよりもエネルギーが高いという
ことは、同時に制御も難しいことを意味します。そのことが高速増殖炉の開発
の難航の要因となってきたわけですが、そのために日本は膨大な余剰プルト
二ウムをかかえることになってしまった。

プルトニウムはウランよりもはるかに原爆の材料に向いていることもあって、
その備蓄をIATEなどが規制していることなどもあり、日本政府も原子力当局も
とても困ってしまった。そのため考え出されたのが、通常のウランに混ぜて
通常原発の中で燃やしてしまえという暴論です。

これはそもそもの設計思想を無視したものです。通常炉はこんなのものを
燃やすことを想定して作られていないからです。それだけにさまざまな事故の
発生が懸念されるため、多くの人々の批判を受け、なかなか実現しなかった
のですが、最近になって東電が反対の声を押し切り、プルサーマルを始めて
しまったのがこの3号機なのでした。このため危機リスクは1号機よりもさらに
高い。まさに今、その原子炉建屋の屋上に、水素ガスがたまっており、
しかも政府が、爆発の起こる可能性を示唆している現状にあります。


このほか、第2号機はなんとか冷却装置が保っていますが、バッテリー切れを
起こす可能性があり、いつなんどき、冷却不能になるか分からない状態で
あると先ほど伝えられました。
そしてこのほかに、福島第二原発1号機、2号機、4号機でも圧力が上昇しており、
第一原発1号機、3号機で行ったように、ベントを開いて水蒸気を逃がすことが
検討されているそうです。しかしここも同じ道をたどる可能性はないのだろうか。
同じように水素がたまり、爆発する可能性はないのか。十分ありうることです。


こうした状況に対して、昨日、原子力資料情報室の記者会見が行われました。
僕も足立さんが教えてくれたおかげで、ネットで観ることができましたが、この
中で、元東芝の技術者で、原子炉設計の専門家だった後藤正志さんが実に
示唆的なことをお話していました。

あくまでも僕が聞き取った内容と断っておきますが(原子力資料情報室は、個人の
意見・見解と情報室の見解の混同を起こさないことを求めています)、この
ベントは、非常用の最後の手段として設けられているものであり、設計条件を
逸脱したものであって、技術者たちに「原子炉格納容器の自殺」と呼ばれている
ものなのだそうです。

なぜなら原子炉格納容器は、内部で何が起こっても、放射能を外に逃がさないこと
を絶対的な使命にしているにもかかわらず、自らそれを覆すのが、このベント
だからだそうです。つまりこれを使うのはなりふり構わぬ非常措置であり、設計上の
安全装置がすべてダメになった場合の最後の手段だということです。

ではなぜこれを使わなければならないくなったのか。そのままでは圧力上昇で、
原子炉が破裂するからです。ではなぜ圧力上昇が起こったのか。実はこれ自身も
十分に明らかになってはいませんが、少なくとも第一原発1号機では、冷却装置
の電源がとまってしまったからであり、そのためのバックアップ電源の供給源で
ある、ディーゼルエンジン2台が緊急作動しなかったからです。

後藤さんは、この段階で既に設計上の破たんなのだといいます。非常時のための
装置が働かなかったわけですから。そしてそこからは想定外のあってはならない
ことが進行しているわけです。そのために放射能が外に出ることも承知で
ベントを開ける。すでにその段階で、綱渡りに入っているわけですが、その作業が
これから少なくとも3機の原子炉で行われようとしています。

これは設計上、想定していないことなので、どのようなことがおこるか誰も
正確につかめない。だからこそ、昨日も水素爆発が起こってしまったわけです。
すでにコントロールが失われているわけです。
政府は何よりもこのことを明らかにすべきです。枝野長官は何がおこっても
「想定内のことであり、健康上の被害の心配はない」と繰り返していますが、
そうではなくて、すでにすべての原子炉が想定外の状態になっていること、
つまり何が起こるか分からない状況になっていることを素直に明らかにすべきです。


この点で、後藤さんは、政府とトーンを合わせているマスコミの姿勢も批判して
いました。とくに「念のためとか言う言葉が多すぎる。そうではなくてもっとはっきりと
危機を伝えるべきだ」というのです。パニックを起こさせないとばかり考えている
のがみえみえだけれども、それは人々の危機管理意識を非常に低くみている
ことではないのか。人々を見下しているのではないのか・・・。僕も全く同感です。

この点で見過ごせないのは、昨日午後3時36分に爆発が起こってから、政府が
4時間近くも見解を明らかにしなかったことです。推論されるのは、実際に何が
起こったのか、現場サイドでもなかなか把握できなかったことです。反対に言えば
原子炉が崩壊してないことが確認されるまでの間、大量の放射能が拡散しつつ
ある可能性も考えられていたということです。にもかかわらず政府はそれを
明らかにしなかった。これは重大な過失です。

いやそもそもその前から多くの原発は想定外の状況に陥っていたのですから、
政府はそれを明らかにし、放射能から身を守るすべを国民に訴えるべきだった。
そしてそれをしなかったからこそ、あの爆発時に150人から190人にも上る人々が
被曝してしまったのでした。避難のためにグラウンドで待っていたときですが、なにせ
「念のための避難」などと繰り返されており、危険への対処があまりに不十分
だったと思われます。

このときに最低でも、全員が身体をすっぽり包み込める雨合羽を着て、水で
濡らしたマスクを何重にもしていたら、また集まるのなら、グラウンドではなく
庇のあるところなどにしていたら、かなりの程度、被曝は防げたのではないかと
思われます。なんとも残念というか無残な気がします。

13人の方は、身体に付着した放射性物質を除去する措置をとらねばならなかった
とも言われています。それだけ死の灰をかぶってしまったのです。にもかかわらず
枝野官房長官は、ただちに健康上の被害はないといいきる。何の検査もしていない
し、そもそも胎内被ばくはこれから始って、長い時間をかけて身体をむしばんで
いくというのに・・・。

 
さらにもう一点。福島原発から100キロ以上北東にある女川原発のモニターが
放射性物質を感知したことが公表されました。分析の結果、女川原発から
でたものではない可能性が非常に高く、そうなると、福島第一原発1号機の
爆発で飛散した放射性物質である可能性が極めて高い。
つまり1日たたずして100キロ以上北東、ないし北北東に流れたのですが、そうだと
すれば北方100キロぐらいにある仙台市にも放射性物質が飛んでいるのでは
ないか。放射線量は微量ですが、見過ごせない事態です。


これらの点から言えるのは、私たちはまだまだ本当に深刻な原発大事故の
前にたたされているということです。まだまだもの凄く危険な状態です。
そうしてそうである限り、放射能汚染から身を守るための措置を講じていく
ことが必要です。これまでいくつかマニュアルを紹介しましたが、これを
国民全体で共有する必要があります。


・・・以上、現段階での原発情報を書きましたが、今日は続けて、この状況の
中で私たちに何ができるかの考察を書きたいと思います。

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