明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

地震続報( 14 )燃料プールで起こっていることと先々の見通し

2011年03月16日 04時15分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110316 04:15)

昨日(15日)は友人といろいろと物資を買いに行っていました。
(代金のあまりに多くを友人に負担させてしまいました・・・反省)
そうしたら、電気店には客が押し寄せていて、懐中電灯や、
単一、単二電池は皆無でした。

みなさん、いざというときを恐れて買いだめに走ったの
だろうか?いろいろと友人と話し合いましたが、恐らく、
東日本の計画停電も影響しているのだろうと考えました。
被災地だけでなく、広範な地域の友人家族に物資が
送られているのかも知れません。実体は確かめようが
ありませんが。

一方、友人は、現地に送るビニールの雨合羽をたくさん買ったの
ですが、こっちは品物がたくさんありました。これが
放射能を避けるのに有効だということが理解されてないのだなあ
と残念な気がしました。

みなさん、まずはいくつか雨合羽を買って下さいね。
その上に、黒いビニールを被るとさらにいいです。
そして外出から帰ってきたら、黒いビニールは捨てるのです。
合羽を捨てるかどうかは、汚染がそれぐらいのレベルかに
よりますね。

そうして夕方に帰ってきたら、たくさんのメールが来ていました。
全部、丹念に読んで、いろいろな思いが交差しましたが、
レスは明日に回したいと思います。


さてみなさま。残念ながら、今日も事態はより深刻な展開を
見せました。さきほど、僕が尊敬する方達が作っている、原子力
資料情報室からのメッセージをお届けしましたが、それを
踏まえて、僕の分析をお伝えします。あくまでも僕の解釈ですので、
原子力資料情報室の分析ではないことは含みおいてください。


今日、より深刻な事態になったのは、何よりも使用済み核燃料が
熱を発し、4号機で水素による火災がおこったこと、火災そのもの
よりも、使用済み核燃料の加熱が起こっているということです。
先にも述べましたが、これが深刻なのは、これが原子炉格納容器の
外で起こっていることだからです。

実はこれまで原発に反対してきた多くの人が、ある意味では、原子炉
の核暴走以上に起こりうる危機として指摘してきたのが、このことで
した。何故なら使用済み核燃料貯蔵プールは、原子炉と比べると、
段違いに脆弱な設計条件のもとにおかれてきたからです。

そのためたとえ原子炉が大丈夫でも、ここが壊れたら終わりなのでは
ないか、原発の大きな弱点の一つなのではないかという指摘が
繰り返しなされてきました。原子力格納容器という厚さ15センチの
鋼鉄などに守られておらず、ただのプールに燃料棒が沈められて
いるからです。

そもそも多くの人々が、原子力格納容器もまた安全とは言えない
ことを指摘してきたわけですが、外にある使用済み核燃料プールは、
もっと危ない。地震でプールに裂け目ができて冷却水が漏れだし、
これを埋め合わせる供給ができなければ、それでもう「終わり」
だからです。

3号機が水素爆発したときも、僕はこのことが一番、気にかかりました。
1号機と違って、何か構造物が吹き飛ばされたように見えたので、
ひょっとして、使用済み燃料棒の破損ではないかと、息をのみました。
しかし未確認情報なので、その憶測をここに流すことはしませんでした。

その後、3号機のプールは屋根が飛んで、むき出しになっていることが
分かりました。このとき僕は、プールがむき出しになっている事態
の深刻さよりも、まだそこに燃料棒があったことが確認されたことの方に
胸をなで下ろす思いがしました。しかしここも水がなくなってしまうので
はないのかと不安になりました。


このことがなぜ深刻なのか。次にそれを書きたいと思います。
運転中の核燃料の中ではウランの核分裂が起こっています。
そのときに熱が生じ、冷却水によって、熱が蒸気に転換され
タービンを回すのが、原発の基本構造です。

この運転を止めるためには、制御棒を燃料の間に差し込みます。
このことで、分裂を促す中性子線が吸収され、分裂が次第に
やんでいくわけです。

こうした核分裂の連鎖反応が止まった状態の燃料が、使用済み
核燃料ですが、実はそこでは、その中にある物質の、「崩壊」という
現象が続いています。崩壊とは電子などを出していくことです。

例えば、使用済み核燃料の中には、分裂しなかったウラン、また
もともと分裂しないウランがたくさん残っています。その中の放射性
ウランは、アルファー線を出します。出して違う物質に変わっていく
のです。このアルファー線を出して違う物質になることを、
アルファー崩壊といいます。そしてこのときに熱が出るので、
それを崩壊熱といいます。

では崩壊した物質は、もう熱も放射線も出さないのかと言うと、
次に生成した違う物質でも、アルファー線、ベータ線、ガンマー
線などを出して崩壊していく場合が多いです。このときも
崩壊熱が出て、違う物質に変わります。そしてその物質が・・・
という円環が進んでいきます。

このため使用済み核燃料は、何十年にもわたって、水の中に
つけておかねばならないのです。その点だけでも原発は
もの凄くコストのかかる発電装置です。その間中、水を循環させて
熱を奪い続けなければならないからです。

熱を奪わない、つまり冷却できなくなるとどうなるか。次第に
燃料棒は高熱をおびてきます。そして被覆管から溶け出して
きます。その先は、これまで原子炉内部で起こってきている
こととまったく同じです。燃料ペレットが溶け出していくのです。

それがどんどん進行していくと、燃料ペレットはぐちゃぐちゃになって
プールの底の方に集まっていくことになる。いや、プールの底など
すぐに破られてしまうのですが、重要なのは、このとき臨界が
生じてしまう可能性があることです。

なぜならば核分裂性物質は、ある形状の固まりになると、自然に
臨界に達するからです。臨界とは、核分裂反応が恒常的に
生じている状態のことです。

これが如実にあらわれたのが、東海村のJCO事故でした。
このとき、作業員たちは、バケツで撹拌した濃縮ウランを、ある
形状の容器に注ぎ込んだのですが、その瞬間に臨界が生じた。
そして多量の放射線が発生し、被曝が起こった。

実は問題だったのは、容器の形状でした。臨界に達しやすい
形だったのです。バケツで撹拌したことよりもこの形状の方が
問題だった。なぜならあの形状のもとで、放射性物質が集まったら、
臨界に達することが理解されていなかったことがそこに現れて
いたからでした。

つまり日本の原子力技術が、一体、どのような形状で、どれぐらい
放射性物質が集まったら臨界に達するのかが、しっかりとは
把握してないことがあのときに明らかになった。


実は今回もそうなのです。燃料棒がどれぐらい溶けて、どれぐらい
集まったら核分裂が始まってしまうのか。実は誰もよく分かって
いない。そのためか、メルトダウンがおこっても、運転を停止した
原発では、核爆発はおきないと言っている「研究者」まで
いるようです。

しかしJCO事故は、核分裂反応などそれまでまったくなかった
ところでも、ある一定の濃度の核分裂性物質が、ある形状の
もとに集まったら、臨界を開始しうることを物語っています。

少々、迂回がすぎたでしょうか。要するにいいたいのは、使用済み
核燃料貯蔵プールの燃料棒もまた、冷却できなければ極めて
危険であり、メルトダウンから核暴走にいたる恐れがあることです。
しかも繰り返しますが、これが原子力格納容器の外で起こるので、
はじめから高濃度の放射能をまき散らしながら、このシナリオが
進んでしまいます。こうした燃料プールの危機は、これまで視野に
入ってなかった5号機、6号機でも静かに進行中です。


さてこの先はどうなるのか、大胆な予想を述べましょう。
予想される最善の状態にすべてが落ち着くのだとすると、つまり
今、生じている深刻なトラブルがすべて克服され、6基の原発、
いや福島第二や東海原発などを含めて、すべての原発が安定し、
安全性が保障されるまでいくには、相当な時間がかかるだろうと
いうことです。少なくとも数日などということはないし、数週間でも
難しいのではないかと思います。

だからまずこの最善の結果を心から欲してる私たちは、長期に
わたる緊張感に耐え、長きにわたって固唾を飲む息苦しさに
耐えねばならないことを覚悟しなければならないと思います。
しかもその間、さまざまな形で高濃度の放射能が発生するで
しょう。そのことに私たちは次々と対処し、危機を乗り越えていく
必要があります。

それに対して、私たちが最も恐れているシナリオは、ほとんど
突然始まってしまうと思います。そのとき幾つもの炉の複合的な
事故になる可能性も高いです。そうなるとどうなるかは、もう
そのときに考えると、僕は割り切ることにしました。


その上で、私たちは、現実的に今、どんどん発生しだしている
原発災害難民をそれぞれの地域で受け入れていく体制を
整えていかなければなりません。
とくに被曝した可能性のある避難民を守りましょう。そうした
人と接したら、多少の被曝は覚悟してでも、すぐにシャワーや
衣服などを提供してあげましょう。被曝した人を、恐れたり、排除したり
しようとするあらゆる動向、流言と立ち向かい、逃げてくる人々は
誰でも受け入れ、心の傷にも寄り添うようにしましょう。
そしてまた、それも長期にわたりうると考えましょう。

とくに体内被曝の場合、年齢が若いほど、深刻な被害を受けます。
そのためあらため放射性ヨウ素による被曝を防止するための
ヨード剤の服用は、40歳以上は必要ないと言われています。

それなら僕ぐらいの年齢(50歳代)が、積極的に被曝の
リスクを背負って人を助けましょう。避難民を守って、受け入れ
なければいけませんが、子どもをそこに立たせてはいけません。
若者にも一歩下がってもらいましょう。
(ただし、誰にも「怖い、自分も一歩下がりたい、あるいは守らねば
ならない人がいるので、自分も下がる等々と言う、明確な権利が、
あることもしっかりと踏まえておきましょう」)

さらに可能な限り、原発に近い人々に避難を検討・開始し、放射能
汚染対策をとるべきことを伝えていきましょう。
近いとはどれぐらいの範囲をさすか。すでに福島原発で発生した
放射能が、東京にも達していることは一つの目安になるのでは
ないかと思います。

そして避難を訴えるとき、私たちはこの努力の全てが空振りになる
ことを恐れないようにしましょう。
いや私たちの一番、願うことは、全ての避難が、「ムダ」になる
ことです。「あんたに言われて逃げたけど、逃げる必要は
なかったやん」といつしか言われて、頭でもかく日が来ることこそ、
私たちの心からの願いです。

そのことを頭に入れて、今、進行している原発の危機を、
冷静・沈着に伝え、そうして自己防衛と可能ならばの脱出を
訴えましょう。同時にどうしても脱出できない立場の人、また
脱出することに踏み切れない人々の立場も考え、その場合の
次善の策を伝えるようにしましょう。
いざとなったときの脱出方法、集合場所をせめて家族で
決めておいてと伝えるなど、いろいろ考えることはあると思います。
最悪の場合ばかりを考えず、少しでもましな選択はないかと
考え、その可能性、方法をみつけ、伝えるようにしましょう。


以上を、提案し、さらにウォッチを継続します。


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地震情報( 13 )原子力資料情報室からのメッセージ[1]

2011年03月16日 01時20分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110316 01:20)

昨日18:21にだされた原子力資料情報室からのメッセージを
転送します。


*****************

福島原発の危機について私たちは考えます
― 原子力資料情報室からのメッセージ ―


2011年3月15日

1 福島第一原発及び同第二原発の今回の事故は、
原発の設計条件においては考えられていない想定外の過酷事故であり、
極めて深刻な事態が続いています。

2 この影響を避けるためには、原発から距離を置くのが最も有効な手段です。
可能であれば、福島原発から、できるだけ遠くへ離れることがベストです。
移動できない方は、建物の中に入って、外気に極力触れないでください。
雨には絶対に当たらないように気をつけてください。

3 「何キロまで離れれば安全か」について判断することは容易ではありません。
この判断のためには、放射能レベルと気象条件についての正確な情報が必要であり、
さらに、今後何が起こりうるかについての的確な予測が必要だからです。
これまでの政府・東京電力の情報提供は極めて不十分であり、
この判断のために必要な情報を、正確かつ迅速に提供するべきです。

4 現時点で、私たちが把握している事実は以下のとおりです。

(1) 福島第一原発2号機は、核燃料の冷却能力が十分でなく、
核燃料が長時間にわたって露出している状態です。
格納容器からは、数日前から、圧力を低下させるため、
放射性物質を含む蒸気を放出しており、
加えて、放射性物質を閉じ込める最後の砦である格納容器の一部
である圧力抑制室(サプレッションプール)が一部損傷を受けたため、
これによって、さらに放射性物質が放出されています。
今後も、炉水位の低下及び格納容器の損傷によって、
さらに多量の放射性物質が放出される可能性があります。

(2) 福島第一原発1号機及び3号機でも、核燃料の冷却能力が十分でなく、
格納容器からは、数日前から、
圧力を低下させるため、放射性物質を含む蒸気が放出されております。
現在、海水注入がされていますが、2号機と同様の事態に至る可能性があります。

(3) 福島第一原発4号機~6号機は、
地震時には定期点検中で運転されていなかったにもかかわらず、
同4号機では使用済み核燃料プールが水位低下したことによって
水素爆発が発生したとされています。
この事実は、4号機~6号機の安全も、絶対のものではないことを示しています。

(4) 福島第二原発1号機~4号機も、冷却能力の不足が懸念されていました。
東京電力の発表では、
4基とも冷温停止(100℃以下)で外部電源も確保されているとのことでありますが、
一部温度が上昇したとの発表もあります。
今後も長期間継続して冷却しなければならず、注意深く監視していく必要があります。

(5) 福島第一原発は6基の、同第二原発は4基の原発が隣接しており、
1基の原発に発生した事故が、他の原発に影響を及ぼす可能性が高く、
今後、事態がさらにより深刻なものになる可能性もあります。


原子力資料情報室
〒162-0065 東京都新宿区住吉町8-5曙橋コーポ2階B
TEL.03-3357-3800 FAX.03-3357-3801
cnic@nifty.com

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