守田です。(20110321 13:10)
このところ、消防士のみなさんのもの凄い放水活動が行われ、
自衛隊のヘリではぜんぜん給水できなかった3号機の核燃料貯蔵プールに
水が入るなどの成果がありました。
消防士さんたちの活躍には、本当に胸が熱くなります。原発事故にはなんの
責任もないのに、もっとも凄い仕事をしている。このことにより、確かに今すぐに破局が到来することは、避けられているのかもしれません。時間の余裕を
この方々は作りだしている。私たちに時間が届けられている。
もちろん自衛隊の放水車もこれに寄与しています。とにかく冷やすことは
危機を避ける絶対条件ですし、プールにある燃料棒からの放射線の飛来をふせぐためにも必要だと思います。
しかし、それでテレビに出てくる「専門家」たちが、あたかも危機は去りつつ
あるかのようにコメントしていることには、怒りを感じます。消防士たちが、
自衛官たちがせっかく命を削って猶予を作りだそうとしているのに、それを
危機感の除去にむけてしまっている。そんなことでいいのでしょうか。
僕はまったくいけないと思います。
その点で観点の整理をしてくれたのが、A君のメールだと僕は思います。
一番、重要なのは、状況はよくなったも何も、それだけの情報が出てないでは
ないかという点です。それでどうして安全論議ができるのか。僕もそう思います。
どうして情報が出ないのか。僕は出さないだけではなくて、出せない面も
非常に多いと思います。多くの計測器もまた壊れてしまったのです。
それに原発の空撮映像からも明らかなように、3号機などは爆発でかなり
ぐちゃぐちゃになっています。
みなさん。自分のパソコンの一部が爆発していたら、それで正常に動くと思う
でしょうか。いやパソコンほど精密でなくてもいい。目覚まし時計でもなんでもいいです。爆発していたら、内部で何が起こっているか分からないと思うのが常識だと思うのです。
結局、それは点検して、分解してみなければ分からない。ところが原発は
放射線が強すぎて容易に近づけないわけです。それでなぜ危機が去りつつあると言えるのでしょうか。なぜ他に「不足の」ないし「想定外」の事態が起こらないと言えるのでしょうか。
他にも僕は相当の計測器が電力ダウンで働かなくて、運転室からは内部の
状況が十分に把握できなくなっているのではないかとも思えます。これまでの
原発事故でもよくあったことだからです。だとしたら、まずはこの点だけでも、記者がつっこみ、あるいはコメンテーターが突っ込み、情報開示を要求すべきではないか。
原発運転室内の生きているすべてのメーターの内容を明らかにし、同時に
動いてないメーターの数や種類もだすべきです。そうすれば、国の内外に
その意味を読み取れる人はたくさんいるのではないか。
(・・・と考えたら、すでにこうした申し入れを、原子力資料情報室が、政府にしていました)
さらに何とも言えないのは、消防隊の必死の放水にあたかも呼応するかのように、もう原発は安全だ、やたらに危険というな、最悪の事態という脅しに惑わ
されるな・・・などの発言が非常に多くなってきているように思えることです。
しかし確実に分かることは、自衛隊へりが入れられなかった水が、消防車に
よっていれられるようになったということだけです。しかもその量もモニターされていないのです。遠くから水面を確認しているという状態なのです。
なんだか僕は頭がクラクラするのです。
これは、そもそもかつての原子力発電賛否論議と同じなのではないか。
どんなに原発の危険性を心ある人々が指摘しても、政府や政府に近い多くの
科学者、また他の分野のほとんどの科学者たちは、聞く耳を持たなかった。
僕から見ると、大ウソがまかりとおり続けていた。そのときも頭がクラクラ
しました。
今も、それと同じなのではないか。原発があれほど壊れていて、しかも
今なお、煙を上げていて、確実に放射能も出ていて、最後の砦だと言われてきた格納容器も一部壊れてしまった。起きている事態はそういうことなのに、
危機が回避される可能性だけが強調されている。
しかしどこにそのようなデータがあるのでしょうか。ないのです。多くを失ってしまったのです。危険で近づけないのです。遠くから望遠鏡でみたり、赤外線で温度を測っているのです。ただそれだけでも、もの凄く危険な状態にあります。
安全神話が何をもたらしたのか。今、テレビに出ているコメンテーターのほとんどはどんな地震があろうと、津波があろうと、絶対に日本の原発は大丈夫だと豪語してきた人たちなのです。そしてその人たちが、今回も、もう危機は去りつつあると語っている。どうして私たちの国の人々はそれを信じてしまうのでしょうか。
みなさん。したり顔で語っているコメンテーターたち、ニュースの解説者たちの1人でも、国民に対してお詫びをしたでしょうか。絶対にこんな事故などないとこれらの人たちと言ってきたのです。その責任すら明らかにしないで、地震が「想定外だった」と平気で語り、再び、大丈夫を繰り返す人々を信用してはならないと僕は思います。
もちろん、絶対に信用しないというのではないのです。それなら根拠を明らかにして欲しいのです。原発が安定的に維持できる根拠です。
よくこれらの人々の説明内容を聞いてみてください。今、出されているのは
すべて願望でしかありません。
起きている事態は、私たちを危機の瀬戸際に追い込んでいる巨大なプラントが
激しく壊れ、しかもそれがどのように壊れているのかも、私たちも、そして
おそらくは現場の方たちも、よく分かっていないという事実です。
まだ何が起きているのかすらよく分かっていない。格納容器のどこがどのように壊れているかすら把握できてない。どうしてそれがすぐにも破断しないと
言えるのでしょうか。
言えるのなら言ってほしい。いや安全であることを教えて欲しい。
心から安全であって欲しいのです。だからこそ、根拠もなしに安全だとは
言わないで欲しいのです。これは当然の洞察ではないでしょうか。
にもかかわらず、安全を繰り返すことで、実は私たちの国は、この危機を
乗り越えられる非常体制すら作れていないのではないか。絶対的危機を
表明してこそ、すべての技術者の総結集を作り出せるのではないか。
みなさん、そうは思わないでしょうか。今の安全な感じだったら、総力をあげる必要を感じるでしょうか?
消防隊が時を稼いでいる間に、すべての可能性を集めてほしい。政府に都合のいい人間だけに頼ってはダメです。原発を批判してきた科学者、技術者の知見こそが必要です。何がどう危険かを、科学的に指摘し続けてきた人たちだからです。
これに対して、絶対安全を強調してきた技術者や学者には、こうした事態への
心構えがなかったはずです。むしろ備えてきたのは、原発に批判的だった科学者です。心の底から事故を防ごうとしてきた人々です。その人たちこそ、政府の対策本部の周りに集める必要があります。
そのためにも、今ある情報の全面開示が必要です。同時に何が分かっていないかの情報も、より明らかにする必要があります。
またこういう方たちの知見を集めて、原発災害避難対策本部も作るべきです。
マスコミの方たち、こういう記事を書いてください!
今後の見通しを書いてみましょう。1号機、2号機に通電がされたそうです。
そこまで頑張った方たちの努力に惜しみない拍手を送ります。もの凄く危険で、恐ろしく、困難だったでしょう。
しかしそれだけで希望の光なのでしょうか。
水に濡れた機械を考えてください。精密なものほど、乾かしてから再度、電源を入れるのが常識です。どこでショートするか分からないからです。
しかし今、原発はとにかく冷やさなくてはいけない。海水をかけているのです。かけているといっても、そのリアリティが私たちにすべてわかっているわけではない。
しかし通電には乾かさなければならない。つまり乾かすことと、冷やすことの
ジレンマがそこにある。
しかも機器をすべて点検などできないでしょう。中に入れないからです。
爆破があったにも関わらず。そこに電気を通さなくてはならない。
しかもたっぷり塩が入っているから、どこまでいっても、どこかでショートの
リスクをおかしてやらなければならなくなるのではないでしょうか。
そのときにどんなことが起こるかまったくわからないというのが、この場合に
出しうる、最も科学的な判断なのではないでしょうか。
にもかかわらず、一部マスコミは、すでに電力が回復したかのように書いている。
まだコンセントにつなげたけれど、スイッチを入れた段階ではないのに。
電力回復までには、まだまだ困難があるのに。
(この報道の中で、初めて中央制御室もまた電力ダウンしていて、計器が
補助バッテリーで細々と動いてきたことも明らかになっています。バッテリー
では計器の信用性が低いとも書かれています。ただしあたかもそれがただちに
回復するかのようにですが)
私たちの前には巨大なブラックボックスがある。それをどう見積もるか。
僕はやはり危険の最大値を見積もるべきだと思うのです。
何せ分からないことが多すぎるのだから。原発はぐちゃぐちゃになっているの
だから。そしてそこに核分裂物質と、放射性物質が大量に入っているのですから。
違うでしょうか。これは感情的なものの見方でしょうか。今の段階で安全性が高まっていると見ることこそ、実はそうあって欲しいという感情に縛られた、ものの見方なのではないでしょうか。
放射能は正しく怖がらなければいけないという言葉が飛び交っています。
そして僕は正しく怖がったから、原発に反対してきました。このような事故が怖かったのです。どうしても止めて欲しかったのです。「ありえない」「感情的だ」「過敏だ」と繰り返し言われながらも。
せめて、これまで一度も原発に反対しなかった人にだけは、「放射能は正しく怖がらないといけない」とは言われたくない。「まったくそうです。どうしてあなたはこれまで正しく怖がってくれなかったのですか」と僕は問いたいのです。
追記
どなたかフレーズではなく、「放射能の正しい怖がり方」を科学的に説明していただけると嬉しいです。
数値が複雑で、多くの人が大混乱しています。今、解明中ですが、科学者の
協力が必要です。とくに僕が知りたいのは、そもそも放射能はきちんと計測
されているのかです。できていないのではないかと僕には思えるのです。
だから怖い。
とくにプルトニウムの飛散を即時に把握できるのか。3号機からのベント
排出の危機が迫っています。この点、Mさん、ぜひ情報を整理して
ください。
またすぐにも健康に影響ないということの中身、すぐでなければどうなのかも
分かりやすく解き明かしていく必要があると思います。すぐにではない
健康被害もまた非常に怖い。ようするにガンの可能性が高まるということに
なると思いますが、この点の詳しい数値を持っている方、お願いします。
守田です。(20110321 12:15)
再び原子力資料情報室のメッセージを転送します。
プルトニウムを装荷した3号機から放射能が大量に放出されることの
危険性をアピールです。
昨日、3号機内の圧力が高まり、放射能を含んだ水蒸気放出が検討されました。
内部の燃料棒の破損状態は不明ですが、水蒸気が高まるのは、露出による
高温化が原因であり、破損は確実だと思います。そうするとヨウ素、セシウム、
ストロンチウムの他、プルトニウムまでもが飛散する可能性があります。
プルトニウムは、放射能の中でも、エネルギー量が格段に高いアルファー線
を出すため、毒性も格段に高い物質で、非常に危険です。避難を拡大する
必要があります。原発周辺にお知り合いのいる方にぜひご報告下さい。
また今回の放出は、1号機や2号機からの放出よりも、格段に危険性が
高いことを踏まえて、ベント排出時には、風向きなどに十分気をつけ、
放射能の流れに警戒してください。
*******************
福島原発の危機に際して日本政府に要求します
― 原子力資料情報室からのメッセージ [3]
2011.3.20
多大な努力にもかかわらず、福島第一原発で、
プルトニウムをふくむ燃料を装荷している3号機から
放射能が大量に放出される危険性が増大しています。
特に心配されるのは、20から30キロ圏内で屋内待避を強いられている方々であり、
可能な限りすみやかに遠方へ避難するべきと考えます。
妊婦、小児、児童から優先的に避難できる手立てを取ることを私たちは政府に求めてきました。
改めて強く政府の決断を求めます。
30キロ以遠でも相当量の放射能が届く恐れのある地域からは、
やはり避難の必要があります。
条件を整えて迅速に避難できるような体制をとることを求めます。
(なお、短時間この地域に立ち入って救援活動を行うことによる大きなリスクはないと考えます)
認定特定非営利活動法人原子力資料情報室
〒162-0065 東京都新宿区住吉町8-5曙橋コーポ2階B
TEL.03-3357-3800 FAX.03-3357-3801
再び原子力資料情報室のメッセージを転送します。
プルトニウムを装荷した3号機から放射能が大量に放出されることの
危険性をアピールです。
昨日、3号機内の圧力が高まり、放射能を含んだ水蒸気放出が検討されました。
内部の燃料棒の破損状態は不明ですが、水蒸気が高まるのは、露出による
高温化が原因であり、破損は確実だと思います。そうするとヨウ素、セシウム、
ストロンチウムの他、プルトニウムまでもが飛散する可能性があります。
プルトニウムは、放射能の中でも、エネルギー量が格段に高いアルファー線
を出すため、毒性も格段に高い物質で、非常に危険です。避難を拡大する
必要があります。原発周辺にお知り合いのいる方にぜひご報告下さい。
また今回の放出は、1号機や2号機からの放出よりも、格段に危険性が
高いことを踏まえて、ベント排出時には、風向きなどに十分気をつけ、
放射能の流れに警戒してください。
*******************
福島原発の危機に際して日本政府に要求します
― 原子力資料情報室からのメッセージ [3]
2011.3.20
多大な努力にもかかわらず、福島第一原発で、
プルトニウムをふくむ燃料を装荷している3号機から
放射能が大量に放出される危険性が増大しています。
特に心配されるのは、20から30キロ圏内で屋内待避を強いられている方々であり、
可能な限りすみやかに遠方へ避難するべきと考えます。
妊婦、小児、児童から優先的に避難できる手立てを取ることを私たちは政府に求めてきました。
改めて強く政府の決断を求めます。
30キロ以遠でも相当量の放射能が届く恐れのある地域からは、
やはり避難の必要があります。
条件を整えて迅速に避難できるような体制をとることを求めます。
(なお、短時間この地域に立ち入って救援活動を行うことによる大きなリスクはないと考えます)
認定特定非営利活動法人原子力資料情報室
〒162-0065 東京都新宿区住吉町8-5曙橋コーポ2階B
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