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みなさま。
今、私たちは、放射線被ばく危機にさらされています。放射性物質がたびたび、
福島原発から漏れだし、各地で放射能汚染を拡大させています。
漏れ出した総量は、すでにチェルノブイリ事故時の1割から5割とも推定されて
います。(その多くは太平洋上に流れ、一部がアメリカやヨーロッパで観測
されています)
放射線被ばくから身を守るためにはどうしたらいいのでしょうか。
まず大切なのは、放射線をどれぐらい浴びると、どれぐらいの危険性が
あるかを正しく知ることです。今回はこの点についてまとめます。
放射線量をめぐる混乱
放射線量をめぐる考察を進めるにあたって、まずおさえておくべきことは、現在、
情報が非常に錯綜していることです。とくにマスコミでは、意図的に間違いやすい
情報や、数値を出した解説が行われている場合もあります。
例えば、読売新聞では、「健康への影響、100ミリ・シーベルトが目安」という
タイトルの記事を掲載しています(記事は最後に貼り付けます)
一方、私たちの国は、法律で、一般人が年間に浴びる放射線の許容量を
1ミリシーベルトと定めています。ここには100倍の開きがあります。
そしてまた、こうした許容量を超える被ばくが発生するたびに、それは「ただちに
健康には害のない値」という説明が繰り返されています。
社会的には、このことで、大きな混乱や、パニック状態も起きてきていると
思われます。規制値が決められているのは、何らかの根拠があるはずなのに、
それが守られなくなると「大丈夫」が繰り返されるばかりで、「ただちにでなければ、
いつから健康に害があるのか」という情報が出されません。
このことに、そもそも「絶対におきない」と言われていた大規模な原発からの
放射能漏れが起こり、今も継続し続けている事実や、こうした重大事故を
政府やマスコミが、あたかもすぐに終息できる事態で、大規模なものには
発展しないとだけ断言したにもかかわらず、すでにチェルノブイリの何割か
という膨大な放射能が放出されてしまったこともあいまって、ますます
疑心暗鬼と不安が広がっているように思えます。
これとともに言わゆる「風評被害」も広がり、何が安全で何が安全でないのか
多くの人がとまどっている状態にあります。聞きなれない値や数値も次々と
出て来て、ますます分かりにくい。このままでは不安が募るばかりで、放射線
から身を守るすべになかなか辿り着けません。
こうした社会的不安や風評被害をとどめるのに必要なのは、正しい情報を
流すこと、とくに政府や関係機関が、情報をきちんと公開することが肝心で
あると言われています。肝心なのはリスクがあるならあるで、それをきちんと
説明することです。
そこでここでは、放射線はどれぐらいの量を浴びると危険なのか、
あるいは危険とみなされているのか、またなぜ1ミリシーンベルトが、一般人が
1年間に浴びる放射線の許容量とされているのかを、まとめたいと思います。
放射線被ばくから身を守る第一歩が、安全と危険の境をきちんと知ること
だからです。
どれぐらいの放射線で、どれぐらいの害があるのか
ここでは「緊急被ばく医療研修のホームページ」を活用します。
http://www.remnet.jp/index.html
このホームページを運用している団体は、原子力安全研究協会であり、
僕は原子力行政を推進してきたこの団体に、批判的であることを
あらかじめ記しておきます。しかしそれでも、僕なりに読んでみて、このホーム
ページは有用であり、今、実際に被ばく医療が求められるつつある現状の中で
あらかじめ、こうしたまとめをしておいてくださったことには、感謝の気持ちが
あります。以上に踏まえて、「放射線影響を考えるときのポイント」と
されている内容を引用して、解説を行います。(HPでは4つが示されていますが
もっとも大事な1にしぼって解説します)
「線量の大きさ:急性の皮膚障害,造血臓器の傷害など身体的影響の早期
影響には「しきい値」(あるいは,「しきい線量」)があり,それ以下の被ばくでは
影響は発生しません。身体的影響の晩発影響のがん,および遺伝的影響に
ついては「しきい値」はないと考えられていますが,線量が少なければ発生の
確率も小さくなります。さらに,がんについては50mSv以下,遺伝的影響に
ついてはいかなる被ばくでも,疫学上は人での影響の増加が確認されて
いません。」
まず書かれているのは、すぐに皮膚や内臓に障害がでるにはある境になる値
(しきい値)があるということです。これらはおおむね100ミリシーベルト以上の
大きな値ですが、同じ症状は、ある境になる量を下回れば影響はでないと
いうことです。
次に書いてあるのは、ゆっくりと長い年月をかけて発生するガンについては
危険性と安全性の境になる数値がないということです。そのため放射線は
どれほど微量であろうとも、浴びた分だけ、長い年月が経った後にガンに
なるリスクを発生させます。この可能性は、線量が少ないほど、低くなります。
さらに、ここが少し分かりにくいのですが、「がん」について、つまり長い年月
をかけて発症するのではなく、もっと早く発症するがんのことだと思いますが、
これは50ミリシーベルトを境としているということです。これ以下の被ばくで
あれば、すぐにがんになったり、遺伝的影響が出ることは、確認されていない
ということです。(絶対にないとは言っていません。これは科学的に正しい
態度だと思います)。
これらをまとめるならば、少しでも放射線を浴びると、長い年月を経てガンに
なる確率が生じますが、50ミリシーベルトまでは、すぐにガンになったり、遺伝的
影響が生じることはないと今のところ考えられているということです。
また少しでも浴びると、長い目ではガンになる可能性が出てしまうため、どの
値までを許容するか、つまり非常に低い確率として、切り捨てようと考えるか、
国際的な基準や、専門家の検討の中で決まったのが、1ミリシーベルトという
値だということです。そしてこれらが1ミリシーベルトを超えても「ただちに健康に
害をあたえるものではない」と言われることの根拠であることも分かります。
1ミリシーベルトという許容値の中身
そうなると気になるのは、では1ミリシーベルトでは、どれぐらいの可能性が
生じるかです。
ここではフランスのクラリッド研究所のホームページを活用します。
クリラッド研究所はフランスの独立非営利団体で、放射能と原子力について
知る権利、放射性物質の危険から身を守る権利を擁護することを目的として
いる研究所です。チェルノブイリにときに、ヨーロッパの人がなかなか正確な
情報をつかめることができずに苦しんだことを背景にうまれたそうです。
日本語情報もあります。
http://www.criirad.org/
ここには次のような記述があります。
「なぜ1ミリシーベルトなのか
国際放射線防護委員会(ICRP)は いかなる量の被爆も、たとえ自然界にある
放射線量に比べられるほど少量だとしても ガンのリスクを増やすものだいう
見解を示しています。特に広島、長崎の原爆被害者の経過を見ても ICRPは
死至るガンにかかるリスクと被爆量には明らかに比例関係があり、 少量で
あってもリスクあるとしています。年間許容量1ミリシーベルトという単位は
専門家によると死亡リスクとしては「まだ容認可能な範囲で、10万人に5人の
割合」とされています。ですので、人々の健康を保護するためには、なんとして
でも被爆量を低くおさえなければならないのです。」
つまり1ミリシーベルトの被ばくで、長い年月を経てからガンになる確率は
10万人に5人だということです。
これを大きいと思うでしょうか。小さいと思うでしょうか。
まとめます。
放射線を1ミリシーベルト浴びた時、私たちが何年もしてからガンになる
確率は10万分の5、したがって2万分の1です。それより浴びる量が増えると
次第に確率はあがっていきます。
また長い年月をかけずともガンになったり、遺伝的影響が出る確率が
生じるのは、今のところ50ミリシーベルトからとされています。
これが科学的な数値です。これを一つの目安に安全と危険を判断していく
必要があります。
どこからが安全でどこからが危険がはっきりしないと不安かもしれませんが、
私たちは日常生活でも、実はリスクを考えつつ、行動しています。例えば
航空機に乗るときに、事故がおこる可能性があることは誰でも知っています。
しかし非常に低いものとして、ないものとみなしたり、あるいは、飛行機が
落ちる心配をすることの方が心臓に悪いと判断して、考えないことにする
場合もあります。
同じように、放射線被曝についても、リスクは確率的であり、その上で、
他のリスクと掛け合わせたうえでの判断を下すことが大事です。
とくに乳児に基準値を超えた水道水を飲ませるかどうかについては、
ほんの少しでも飲むとその分だけ、ガンになる確率は増すけれども、それが
1ミリシーベルトの時の、2万分の1よりも、非常に少ないところから始まって
いることも分かります。
どれぐらい飲むと、1ミリに達するか、計算をすれば出てきます。ただし水が
汚染されている場合は、他の多くのものも汚染されていて、被ばくが複合的に
おきることも考えて、リスクを見積もった方が良いですし、子どもの場合は
大人より厳しい基準を設ける必要があります。(厚労省は3倍の基準を課して
規制値をあげたので、それに従えば、1ミリの3分の1で計算できます)
これに関して、産婦人科の医師たち、小児科の医師たちが、繰り返しアドバイス
しているのは、不安になって水分を採らないことの方が、リスクが大きいと
いうことです。こうした点で、放射線被ばくを避けようとするあまりに、もっと
大きいリスクを背負ってしまうことには十分注意したいものです。
ガンになるリスクが、確率的に非常に少ないことを考えるならば、ミネラル
ウォーターが手に入らない状況であれば、水道水を飲んだほうがよい。
少なくとも、水分が足りなくなっていまう大きなリスクをおかしてはならないと
いうことが、医師たちから訴えられていることを踏まえておきましょう。
ストレスもまた、ガンの大きな因子であることもおさえておく必要があります。
以上を踏まえて、年間1ミリシーベルト以上の被曝を避けることを一つの
目安としていきましょう。ただしそれを超えてしまっても、その分、確率が高まる
けれども、まだまだいろいろな対処や挽回が可能であることも踏まえて
おきましょう。総じて私たちの免疫力、自然治癒力をあげていくことを大事に
することが大切だと思います。
こうした知恵を組み合わせ、不安を排除したうえで、出来る限り、被曝を避ける
こと、しかし避けられないときは、あわてることなく、リスクの大きさを判断して、
自分にとってもっとも有利な事は何かを考えていくこと。こうしたことの積み重ねで
放射線被ばくに対して、立ち向かっていきましょう。
みんなで知恵を合わせて、放射線被ばくから私たち自身を互いに守り合って
いきましょう!
【ここまで読まれた方ならば、以下の読売新聞の記事の誤りを、読み取る
ことができると思います。いわば応用問題として考えてみてください。ただし
ここでは、読売新聞よりも、原子力安全研究協会やクラリッド研究所が
語っていることの方が正しいという仮定に立っています】
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放射線対策 健康への影響、100ミリ・シーベルトが目安
放射線の身体への影響は、どうなのか?
過去の放射線事故のデータなどから、3000ミリ・シーベルトの強い放射線を浴び、
何も治療を受けられないと、60日以内に約半数が死亡することがわかっている。
長期的な影響で、唯一はっきりしているのは、
広島・長崎の被爆者の健康状態を追跡したデータだ。
1000ミリ・シーベルトの強い放射線を浴びた人は、がんを発症する確率が1・5倍高まる。
被曝量が減るにつれて、がんの発症率は減る。
100ミリ・シーベルト以下の被曝を受けた約2万8000人のうち、
40年間にがんを発症した人は約4400人で、被曝をしていない人に比べ、
約2%(81人)多かった。
ただし、この差はわずかであり、
100ミリ・シーベルト以下の低い線量の被曝でがんが増えるかは定かでなく、
専門家の間でも議論が続く。
健康に明らかな影響が出る恐れが出る目安が100ミリ・シーベルトとされているのは、
こうした結果などからだ。
人は日常でも、自然界に存在する放射線(年間平均約2・4ミリ・シーベルト)を浴びている。
またCT(コンピューター断層撮影法)などの医療における被曝は、
病気を見つけて治す利点の方が上回るとの観点から、被曝量の上限は設けられていない。
とは言え、低い線量の被曝の影響が不明な以上、不必要な放射線は浴びない方が無難だ。
原子力発電所については、敷地外にいる一般の人に、
年間1ミリ・シーベルトを超える被曝が起きないような環境を保つよう、決められている。
現在、各地点で1時間あたりの放射線量を測定している。
21日午後4時~5時の東京・新宿では、毎時0・125マイクロ・シーベルト。
すぐに健康に影響が出る値ではない。
(2011年3月22日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38404