明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

地震続報 ( 41 )進行する危機の実態を見据えよう!

2011年03月25日 11時56分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110325 11:55)

昨日、僕は、ロイター通信の記事に踏まえて、現在進行する事態は、
ゆっくりと進むチェルノブイリ級事故なのではないかという洞察を書きました。
これに対して、朝日新聞からも同様の内容を伝える記事が出ましたので
紹介します。


福島原発から放出された放射性ヨウ素は、3万から12万テラベクレル

それによると事故発生後、24日までに発生した放射性ヨウ素は、3万から
12万テラベクレル(テラは1兆倍)にもなるとのことで、事故レベルは、
スリーマイル島事故を超え、数千テラベクレルから数万テラベクレルの放射性
ヨウ素の放出にあたるレベル6になるとのことです。

これに対してチェルノブイリ原発事故での放出量は180万テラベクトル。
まだそこにはおよんでいませんが、福島原発はまだまだ放射性物質と放射線を
出し続けています。

ただしこの記事の後段には注意が必要です。ここでは次のようなことが載って
います。

汚染地での被害について、
「長瀧重信・長崎大名誉教授(被曝医療)は「チェルノブイリ原発事故後でも
小児甲状腺がん以外の健康障害は認められず、すぐに健康を害するとは
考えにくい。高い汚染が見つかった地域では、データをもとに住民と十分に
話し合って対応を考えてほしい」と話している。」

という記事です。
・・・とうとう、チェルノブイリ級事故であっても、「すぐに健康を害するとは考え
にくい」という言説が飛び出してきました!
ちなみに昨夜のNHKクローズアップ現代でも、「チェルノブイリの経験から
大人は被曝しても問題はない」という唖然とする断言が行われていました。
放射線量と被曝の関係についての整理を急ぐ必要があります。


現場の専門家が、福島原発の危機的状況を指摘

次に、原発の現状に関して、冷静な観点で、危機をも踏まえていると思われる
記事が産経新聞に載りましたので、紹介します。
妙な言い方ですが、こういうトーンの記事が出た方が、僕は少しだけ安心できる
ように思えました。現場が危機と正面から向かい合っている感じが伝わって
くるからです。

記事の中では
「今後の対策、展望は  電源が回復しても、1~3号機は炉心が一時的に
露出し、専門家は「予断を許さない状況に変わりはない」と口をそろえる。
注水できないという最悪シナリオを想定すれば、核燃料が溶け出し、
原子炉圧力容器を溶かして破壊するケースも否定し切れないという。」
と最悪のケースにもきちんと触れられています。

こうした認識があってこそ、最悪の事態を防止する最大限の力が発揮されうる
のではないでしょうか。しかも専門家が口をそろえているとのことで、私たちも
こうした現場の緊張感とタイアップしながら、それぞれの場で、自分たちを、
人々を、放射能から守る工夫を重ねたいものです。現場の命を削った奮闘と
手を取り合って、さらに努力を重ねましょう。

情報発信を続けます。


****************************

福島第一原発事故、スリーマイル超えレベル6相当に

 東京電力福島第一原発の事故は、放出された放射能の推定量からみて、
国際評価尺度で大事故にあたる「レベル6」に相当することがわかった。
すでに米スリーマイル島原発事故(レベル5)を上回る規模になった。
局地的には、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に匹敵する土壌汚染も見つかっている。
放出は今も 続き、周辺の土地が長期間使えなくなる恐れがある。

 原子力安全委員会は、SPEEDI(スピーディ)(緊急時迅速放射能影響予測)システムで
放射能の広がりを計算するため、各地での放射線測定値をもとに、
同原発からの1時間あたりの放射性ヨウ素の放出率を推定した。
事故発生直後の12日午前6時から24日午前0時までの放出量を単純計算すると、
3万~11万 テラベクレル(テラは1兆倍)になる。

 国際原子力事象評価尺度(INES)は、
1986年のチェルノブイリ原発事故のような最悪の「レベル7=深刻な事故」を
数万テラベクレル以上の放出と定義する。
実際の放出量は約180万テラベクレルだったとされる。
今回は少なくともそれに次ぐ「レベル6」(数千~数万テラベクレル)に相当する。

 経済産業省原子力安全・保安院は18日、
福島第一原発の1~3号機の暫定評価を「レベル5」と発表したが、
今後放出量の見積もりが進めば、再検討される可能性が高い。

 土壌の汚染は、局地的には、チェルノブイリ事故と同レベルの場所がある。

 原発から北西に約40キロ離れた福島県飯舘村では20日、
土壌1キログラムあたり16万3千ベクレルのセシウム137が出た。
県内で最も高いレベルだ。京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子力工学)によると、
1平方メートルあたりに換算して326万ベクレルになるという。

 チェルノブイリ事故では、
1平方メートルあたり55万ベクレル以上のセシウムが検出された地域は強制移住の対象となった。
チェルノブイリで強制移住の対象となった地域の約6倍の汚染度になる計算だ。
今中さんは「飯舘村は避難が必要な汚染レベル。
チェルノブイリの放射能放出は事故から10日ほどでおさまったが 、
福島第一原発では放射能が出続けており、
汚染度の高い地域はチェルノブイリ級と言っていいだろう」と指摘した。

 金沢大の山本政儀教授(環境放射能学)によると、
1メートル四方深さ5センチで、土壌の密度を1.5程度と仮定すると、
飯舘村の1平方メートルあたりのセシウム濃度は約1200万ベクレルに上る。
チェルノブイリの約20倍。「直ちに避難するレベルではないが、
セシウムは半減期が30年と長い。
その場に長年住 み続けることを考えると、土壌の入れ替えも必要ではないか」と話した。

 健康への影響はどうか。チェルノブイリ原発事故では、
強制移住の地域では平均50ミリシーベルト程度の放射線を浴びたとされる。
しかし汚染地での長期の住民健康調査では、成人では白血病などの発症率は増えていない。

 甲状腺がんは増えたが、事故当時小児だった住民が
放射性ヨウ素で汚染された牛乳などを飲んで内部被曝(ひばく)したためとみられている。
飯舘村の24日午後までの放射線の総量は、3.7ミリシーベルトだ。

 長瀧重信・長崎大名誉教授(被曝医療)は
「チェルノブイリ原発事故後でも小児甲状腺がん以外の健康障害は認められず、
すぐに健康を害するとは考えにくい。高い汚染が見つかった地域では、
データをもとに住民と十分に話し合って対応を考えてほしい」と話している。

2011年3月25日3時0分 朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0324/TKY201103240465.html


電源回復「これから本当の勝負」どうなる福島第1原発

 東日本大震災で深刻な被害を受けた東京電力福島第1原発の1~4号機で
通電が可能な状態になり、復旧に向け光明が差しつつあるが、
専門家は「電源回復だけで事態が好転するわけではない」と、楽観を警戒する。
第1原発は今後どうなるのか。
核燃料が残されたままの1~3号機の原子炉圧力容器内では一部炉心 が溶融した可能性もあり、
専門家は「予断を許さない状況に変わりなく、これからが本当の勝負」とみる。

 ■当面の状況は原発を運転・監視する“頭脳”である中央制御室の電源が回復すれば、
原子炉の状況が正確に把握できるようになると期待される。
京都大原子炉実験所の宇根崎博信教授(原子力基礎工学)は
「電源回復で計測機器のデータが正確なのか把握でき、
故障箇所が分かれば修理すべきところもはっきりする」と強調 する。

 大阪大の宮崎慶次名誉教授(原子力工学)も
「放射性物質(放射能)を除去できる空調を動かして放射能レベルを下げられ、
中央制御室での長時間作業が可能になる。照明で夜間も作業できる」と期待を示す。

 ただ、専門家は「電源回復=設備復旧」という単純な見方には否定的だ。
宇根崎教授は「電源回復でも、本格的復旧にはまだ時間がかかる」とし、
九州大学の工藤和彦特任教授(原子力工学)も「電源回復と機能復旧は違う。
ただちに原子炉の状況が好転するとは限らない」と指摘する。

 課題は何か。
電源が回復しても冷却水を循環する冷却システム自体が損傷などで機能しない可能性があるが、
「機器がどれだけ壊れているのかも分からない」(工藤特任教授)。
機器の健全性確認が急務となる。

 ■懸念材料は  懸念材料は機器損傷だけではない。
「現場で対応している作業員の体力、精神力は限界に達している。
ヒューマンエラーの発生が懸念される」と指摘するのは、宇根崎教授だ。

 実際、14日には職員がパトロールで目を離したすきに、
2号機へ海水を注入していたポンプが燃料切れで停止。原子炉内の水位が低下し、
“空だき”状態になる事態が発生した。

 宇根崎教授は「電源回復で新しい作業が増えると、今まで以上に慎重さが求められる」
と警鐘を鳴らす。

 一方、原子炉や使用済み核燃料貯蔵プールに注入された海水が故障原因となったり、
海水の蒸発で結晶化した塩が燃料棒に付着、冷却を妨げる恐れもあり、
工藤特任教授は「海水は緊急避難措置。早く真水に変えるべきだ」と強調する。

 ■今後の対策、展望は  電源が回復しても、1~3号機は炉心が一時的に露出し、
専門家は「予断を許さない状況に変わりはない」と口をそろえる。
注水できないという最悪シナリオを想定すれば、核燃料が溶け出し、
原子炉圧力容器を溶かして破壊するケースも否定し切れないという。

 ただ、冷却水を供給する本来のシステムが復旧しなかった場合でも、
熱交換器と呼ばれる装置を緊急的に取り付けて冷却させることが可能だといい、
工藤特任教授は「核燃料が完全に溶けて大きな核分裂反応につながることはない。
冷やすことが大事だ」と話す。

 一方、原子炉建屋が壊れ、放射性物質を含んだ水蒸気を
大気中に放出したとみられる使用済み核燃料貯蔵プールも厳しい状況だ。
工藤特任教授は「放射能の放出を抑えるには、
今後、コンクリートか鋼鉄製のふたで密封することが必要」と指摘している。

産経新聞 3月24日(木)20時27分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110324-00000638-san-soci

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地震続報( 40 )【重要】武田邦彦さんの言説の信ぴょう性について

2011年03月25日 10時33分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110325 10:30)

放射線量と被曝の影響の問題について、僕は表題で触れた武田邦彦さんの
ブログを紹介しました。これに対して、信頼する友人たちや、科学ジャーナリスト
の方たちより、武田さんは、それこそ科学的な観点を欠いた断言を他のところで
繰り返している人物であり、信用できないという意見をいただきました。

問題の放射線量と被曝の影響に関する記述そのものについての
踏み込んだ指摘も一部いただいており、その点についてもあとで
まとめたいと思っていますが、ともあれこの方が、多くの方から、
信頼できない方と評価されていること、この点について早急にお知らせ
せねばと思いました。

僕としては、武田氏の他のところでの言説を吟味することよりも、問題を
放射線量と被曝の影響の問題に絞り込み、より確かで信ぴょう性の高い
情報のリサーチと発信を続けたいと思います。

みなさま。信頼性の低い方を紹介してしまい、どうも申し訳ありません。
今後の努力で挽回します。
貴重なご指摘をいただいたみなさま。助けていただいてありがとうございました。
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地震続報( 39 )ゆっくりとしたチェルノブイリの中を生きる

2011年03月25日 00時05分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110324 23:55)

ロイター通信をチェックしていて重要な記事を発見しました。
表題は「福島原発の放射性物質、チェルノブイリを下回る」となっていますが、
うまく内容を伝えていません。そうではなくて、すでに福島原発から
放出された放射能が、チェルノブイリの2割から5割になっているという記事です。

これは事故後、3日間から4日間を調査した、オーストリア気象地球力学
中央研究所の見解です。一方で、フランスの放射線防御原子力安全
研究所は、1割だとの試算を出しています。
これらを総合すると、すでに福島原発からは、チェルノブイリの1割から5割の
放射能が出ていることになります。しかも事故後4日間でです。

ゆっくりとしたチェルノブイリ級事故が進行しています・・・・・。

幸いにというべきか、放射能の多くは、太平洋上をただよっているようです。
それが太平洋上の島々の汚染につながらないこと、他の大陸まで動いて
いかないことを祈るばかりです。海洋汚染が、できるだけ軽微にすむことも
祈りたいですが、ともあれ、海洋上に放射能が流れたために、国内では、
まだチェルノブイリのような被害の実感はほとんどありません。

しかしある意味で私たちの実感がない中で、地球の汚染というレベルでは
確かにこの事故は、チェルノブイリ級にどんどん近付いていっているのだと
思います。この事態の重みを受け止めることが必要です。すでに私たちは、
チェルノブイリ級事故をゆっくりと経験している可能性が高いです。

もちろん、炉心が破断してしまい、より大規模に汚染が広がってしまう危機も
まったく去っていませんが、このままこうした状態、つまり断続的に放射能が
出続ける状態が、長期にわたって続く可能性もあり、今と同じような、ないしは
もう少し危機感が深まるぐらいのレベルで、いつしかチェルノブイリをも
越えてしまう必要があります。

にもかかわらず、テレビ番組はほとんど通常の状態に戻りました。春の選抜
高校野球も開催され、バラエティ番組も復活しています。それが悪いといい
たいのではなくて、いつか歴史上、人々は今、私たちが過ごしているこの
時間帯を、奇妙な数十日、ないし数週間とでも呼ぶようになるのではないで
しょうか。

ゆっくりと大規模な放射能汚染が広がる最中にありながら、その中でたんたんと、
日常生活が営まれている。しかも旧ソ連とは違い、建前であろうとなんであろうと
民主主義がうたわれ、情報機器が発達し、人々がいつでもお望みの情報を
集められる状況の中にあってです。


・・・いやいや、そのように慨嘆してはいけませんね。
そうではなくて、私たちは覚醒する必要があるのだと思います。危機はゆっくりと
進行している、ゆっくりとチェルノブイリ級事故が進んでいる。それは止められる
かどうか分からないけれど、いずれにせよ私たちには、チェルノブイリのときより
時間がある。対処できるゆとりがあるのです。その間にいろいろな英知を集める
必要がある。

重要なのは、放射能汚染とどう立ち向かうのかです。汚染がどんどん深刻化
している事態を見据えて、可能な限りの避難を進めることです。そのための
目安となるものをお伝えしてきましたが、次の見解も非常に参考になります。
「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」のものですのでご覧
下さい。
「福島原発震災」をどう見るか―――私たちの見解
http://kk-heisa.com/data/2011-03-23_kkkenkai.pdf


さらに太平洋上に広範囲に広がった放射能が、いつしか南風によって運ばれて
くることももはや可能性としては否定できません。そのとき汚染地域がどうなるか、
誰にも予想はつかないと思います。

チェルノブイリの経験でいっても、汚染はスポット型になるでしょう。つまり原発
から均一に汚染が進んでいくのではなく、たまたま放射能を多く含んだ雲が、
雨を降らした地域が集中的に汚染されます。

高濃度の地域では居住ができなくなるかもしれませんが、ボーダーラインの地域
では、私たちはある意味で放射能との共存を考えざるを得ない面も出てくると
思います。
だからこそ、安全値や、どのぐらいの値でどのような被害が出るかの正しい
認識が必要です。そしてさまざまなメリット・デメリットを換算する中で、健康に
害が出ることも選択せざるを得ない面もあると思います。だとしたら、追い詰め
られて選択するよりも、能動的に選択したいものです。

そのときに私たちはどうするのか。健康生活に徹し、食生活において
化学物質などを極力排除して、免疫力を高めていくことが真っ先に浮かぶ
ことです。また野菜が汚染されるのだとしたら、綺麗に洗えば、その分だけ
放射性物質が落ちるとか、果物なら皮をむけば、落ちるとか、そうした
知識も身につけていく必要があります。

さらに放射能汚染はガンのリスクを高めるわけですから、ガンに対する
正しい知識を積み上げて行くことも重要です。幸い、昨今の医学の目覚ましい
進歩の中で、さまざまな抗がん治療法や治療薬が開発されています。
また私たちには、ガン患者の方たちのさまざまな闘病の経験もあります。

それらを総動員して、たとえ被曝したとしても、それと立ち向かっていくことは
できます。こうしたことに腹をくくり、その上で、少しでも被曝を軽減したい
ものです。被曝したらもうおしまいなのではなく、そこから先もたくさんの
ストーリーがあることを頭に入れながら、放射能を「正しく怖がる」知恵を
身につけて行きたいものです。

その際、専門家の方たちにお願いしたいのは、「ただちに健康に被害を
およばさない」という言い方は、もはや不安をあおるものでしかないので、
やめていただきたいということです。ただちにではなければ、いつから、
どれぐらいの被曝で、どのようなことが起こるのかを明確にすることが
大切です。

つまり「安全だ」ではなく、「これぐらいの危険がある」と事実が明確になった
方が、「それぐらいなら我慢をしよう」「いやそれでもいやだ」という自己判断、
自己選択が可能になるのです。

この点について、僕自身、これまでこの数値を編み出そうとずいぶん悩み、
もがいてきましたが、これは僕が個人で出すべき回答ではないという結論に
達しました。これは専門家集団を中心に、社会的に決するべきことだからです。

そしてそれまでは、一般人の許容範囲である年間1ミリベールとの被曝許容
量を順守すべきです。またそれが明らかに避けられない状態に立ち入ったにも
関わらず、自分がその場を立ち去れない場合は、一つの目安として、放射線
に関わる仕事をしている人の許容量が50ミリシーベルトであることを念頭に
おくとよいのではないでしょうか。つまりそこまでのリスクを自ら選択すると
いうことです。

にもかかわらず、年間1ミリシーベルトを超えてもただちに健康に影響は
ないとか、規制値を越えたものを食べても大丈夫だとかを繰り返していると、
そもそもの数値に対する信頼が崩壊してしまいます。むしろ規制値の根拠、
これこれこうだからつまりどれぐらいの危険性があるから、この規制がある
のだという点を打ちだし、その上で、リスクを承知でお使い下さいと言うべきです。
その場合、リスクが非常に低いなら、その数値こそをだすべきです。その方が
人々は安心し、風評被害も出にくくなるのではないでしょうか。


ともあれこの国の全体を見回すならば、もはやすべての人が、今回発生した
放射能の被曝をうけずに暮らすことは不可能です。だから私たちは、そうした
人々、とくに今、福島の方々をはじめ、原発周辺に残って、逃げられない人々を
置きざりにしないためにも、今ここで、みんなで放射能について勉強し、
知識を蓄え、それでもって社会的に、放射能の害と立ち向かっていく
必要があります。

その際に、放射線はときに私たちの味方にもなってきたことを忘れない
ようにしましょう。放射線の害は、私たちにガンのリスクをもたらしますが、
そのガンをたたくのにも、私たちは放射線を利用しています。また
レントゲンは、私たちにそのつど、リスクをもたらすのですが、今すぐに
治療しなければならない深刻な病巣の発見など、それを上回る
大きなメリットももたらしています。


まとめましょう。
現在、私たちは、ゆっくりすすむチェルノブイリ級事故のただ中にあります。
今後の行く末は今の段階では誰にも分かりませんが、少なくとも、事態は
すぐには収まらず、まだまだ放射能漏れが続く可能性が極めて高いです。
またより大規模な事故が起こる可能性も依然、あり続けます。

こうした中で可能ならば、原発からできるだけ離れることが賢明ですが、ここに
距離を設けるのは難しい。フランスなどは自国民を本州から撤退させています。
これに対して米軍は、80キロ圏内立ち入り禁止にしています。ただしここには
日本の中にたくさんの米軍基地を有しているアメリカと、そうではないフランスの
違いがあることも忘れてはなりません。

私たちの多くにとって、本州撤退は、現実性を帯びた選択肢ではありません。
また政府や行政が組織的に動いていない今の状態では、私たちはそれぞれの
経済状態や、避難場所の確保などによって、可能な選択肢が決まってきます。
ですから、ここでは可能ならば、避難した方が良いと言う結論しかでませんが、
いずれにせよ、自らの結論を能動的に選択したいものです。


次に重要なのは、放射能に関する知恵を深めることです。それが何よりも、
放射能から身を守ることにつながります。僕自身、専門家に学びながら、
目安となる数値を出していきますが、しかしただそれを教えてほしいと受動的に
なるのは危険です。すでに多くの錯綜した見解が出ているからです。しかも
科学的に言えば、答えを一つに絞りきれない側面もあります。論争や調査の
過程にあるものも多いからです。だから自分で、この数値を信頼しようと、
決断していく必要があります。そのために知恵を獲得していきましょう。

この際、友人で尊敬する科学者の方からいただいたアドバイスを紹介したいと
思います。科学の世界では何事もあり得ないとはいいきれないということです。
例えば、原発が大事故に発展する可能性もそうですし、今から最も理想的に
瞬く間に終息していく可能性もそうです。だから科学的に正しいことを言おうと
すればするだけ、ものは言いにくくなる面もあります。

こうした中で、信用しない方がよい一つの基準は、断言された言説だと言うこと
です。絶対に大事故は起こらない、絶対に大事故に発展する、こうした断言は
科学的ではないということです。だからこそ、科学は、最終的な判断を、私たち
自身がすることを問うてもいるとも思います。

これらに踏まえて、迫りくる放射能汚染の拡大に対して、能動的な構えを
作りだしていきましょう。また大事故に発展した場合の、精神的構えをも
作りだしていきましょう。どんなところからでも、何かをできる可能性があります。
そのことを見据え、私たちのポテンシャルをあげて、この未曾有の難問に
みんなで立ち向かい続けましょう!


以上に踏まえて、情報発信を続けます。


*********************

福島原発の放射性物質、チェルノブイリを下回る=オーストリアの研究所

オーストリア気象地球力学中央研究所は23日、
福島第1原発の事故後3─4日間に放出されたヨウ素131とセシウム137の量が、
旧ソ連チェルノブイリ原発の事故後
10日間の放出量の約20─50%に相当するとの試算を明らかにした。

 日米の測定結果を基に算出した。
 同研究所によると、事故後3─4日間のヨウ素131の放出量は、
チェルノブイリ原発の事故後10日間の放出量の約20%。

 セシウム137の放出量は、同約50%に達する可能性があるという。

 フランスの放射線防御原子力安全研究所(IRSN)は22日、
福島原発の事故で漏えいした放射性物質の量は
チェルノブイリ事故の約10%との見解を示している。
 
 チェルノブイリの事故では原子炉が爆発したが、
福島原発の事故では放射性物質が比較的ゆっくりと漏えいしている。

 一方で、放射性物質が陸上に拡散したチェルノブイリとは異なり、
福島原発の事故では放射性物質の多くが太平洋上に飛散しており、両事故の比較は難しい。

2011年 03月 24日 11:21 JST
[ウィーン/オスロ 23日 ロイター]
http://jp.reuters.com/article/domesticJPNews/idJPJAPAN-20221320110324?rpc=122

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