セイコーのロードマーベルは永く生産されたモデルですが、この個体は1967年から製造された10震動モデル36000で、Cal.5740Cを搭載しています。最終生産は1978年とのことですから、クォーツ時代となっても最後まで生き残ったモデルです。個体は5740-8000の人気のアラビア数字文字盤で、普通に普段使いされてケースの小キズ、風防の劣化と大幅な歩度の遅れがありますが、致命的な欠点は無いようです。
ケースはキズが多いですが、深いキズは無いのがラッキーです。ラグのカットが3面は研磨でエッジを残すのが難しいのですが、軽く、まんじゅうの薄皮をはがす程度に研磨するつまりです。研磨作業は、すべて引き算の作業ですから、削ってしまったものは元には戻らないので、出来るだけオリジナルを残した方が良いと考えているからです。
裏フタ側。大きな摩滅も無くきれいですね。書き忘れましたが、この個体の製造はシリアル№から1970-3月のようです。
機械も水入りの無くきれいですね。マーベル、クラウンから繋がる伝統的な景色です。部品の仕上げは上質ですけどね。過去に分解は受けています。
劣化した風防は工場で組まれたままで、一度も交換をされていません。よって、ベゼルが非常に固く固着していて分離に手間が掛かりました。
純正新品の風防の寸法を計測しています。古い風防より5/100大きいです。クラッシュ分ですかね。
ケースとベゼルの薄皮をむいた状態。取り切れないキズは残っていますが、この程度にしておいた方が古い時計ですから自然です。
洗浄をした地板に組立てて行きます。オシドリその他にグリスを塗布してツヅミ車、巻真を取り付けます。
負荷の大きな二番車にもグリスを塗布しておきます。
輪列を組んで最後はガンギ車を置きます。足が多いですね。
O/H前は、80秒遅れで振り角も小さかったのですが、O/H後は、僅かな微調整で良いところになりました。やはり油切れだったのですね。
文字盤と針を付けます。針は分解キズが殆ど無くきれいですので、キズを付けないように注意をします。
新しい風防を取りつけたケースに、完成した機械をケーシングします。
ベルトはオーナーさんからの支給品。セイコー製のベルトに、貴重なセイコー純正の尾錠に予め交換されています。良い感じですね。バネ棒が痛んでいますので新品と交換をして取り付けます。
きれいに出来上がりましたね。個人的には、折角の高級機ですから、もう少しベルトは気張っても良かった気がしますが消耗品ですからね。この文字盤は56系のロードマチックにも存在して、そちらも人気があります。あの時代に10震動の高性能モデルが存在したことがすごいと思います。秒針の動きが電気時計のように滑らかです。これでハック機能があればもっと良いと思いますね。http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/