今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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SEIKOスポーツマチック・カレンダー820を仕上げるの巻

2014年05月22日 15時31分55秒 | インポート

Img_433464初期の非防水ケース仕様のセイコー自動巻きが来ていますよ。4個来ていて、良いとこ取りで組むようにとのご指示です。しかし、問題もありますね。オーナーさんとしてはAを基本とお考えのようですが、ケースの研磨とのことですが、20ミクロンのめっきは、実用品として使われた個体ですから、すでに角部は母材の真鍮が露出しているのです。ぱっと見ると、くすんでいるだけのようにも見えますね。




Img_433551そのAですが、振っても全く作動しませんね。













Img_433799 Seoko Sportsmatic calrnder 820でキャリバーは820です。裏蓋を開けて機械を点検します。回転錘を分離して見ると、自動巻き機構を地板に留める3本のビスのうち1本が欠落しています。どこへ行ったか・・










Img_433924 見ますかね? テンプと受けの間に落ちて、天輪を止めています。ハック機能みたいになっているわけです。取り除いても元気には動き出しませんでした。しかし、油切れの状態にあるだけと思います。









Img_434057 Bも同じ820ですが、アシストをするとヨタヨタと動き出して止まります。しかし、自動巻きの回転錘(ローター)のベアリングがガタガタに摩耗しています。相当長い間酷使されたものと判断します。機械もきれいではないのでまずは除外かな?








Img_434167 Cですが、機械をよく見てくださいよ。これもスポーツマチックではありますがキャリバー2451で基礎キャリバーは6619Aという66系の別の機械です。よって,混用はできませんので除外です。









Img_434224 Dですが、ABと同じ機械ですがキャリバー№は7625Aです。基礎キャリバーは7606Aで、76系の機械です。ゼンマイを巻くと良好に作動を始めました。










Img_434367 ということで、ベースはAかDということになりますが、回転錘と受けとの接触具合が(本来は接触しない)Dの方が軽度なので、機械的な疲労は少ないと判断しましたので、Dを使うことにします。この76系の機械は、私が現在使っているチャンピオン860と基本的には同じ機械で、この機械に自動巻き機構を載せたものです。5振動としては非常に優秀な機械だと思います。Aも油切れ状態で、O/Hで復活すると思います。




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ケースはオーナーさんが新品の風防に交換してありましたが、観察すると一か所に大きな打痕があり、ベゼル自体が歪んでいます。この状態ですと衝撃を受けると風防が脱落する危険性があります。修正をしておきます。







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使用するケースを軽く磨いてあります。機械や文字板などを選んで洗浄したところ。これから組み立てていきます。







Img_435448 機械は手慣れた76系ですので、特に問題はなく組んでいきます。












Img_435552 ひっくり返した表側。カレンダー送りの爪をセットして、バネをセットと思ったところで撮影が気になってバネを飛ばしてしまいました。捜索は週末にするとして、手持ちの純正バネで組みます。しかし、バネの蓄力にはいつも驚いてしまいます。あっという間に霧の彼方へ飛んで行ってしまいます。ピンセットの手入れを怠ったつけです。





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オーナさん指定の文字板を付けましたが、過去の分解で変形があって劣化も進んでいます。表面の汚れも多くありますが拭くことはできません。









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針にも汚れ(腐食)がありますのでアルコールで拭き上げておきます。











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ケースにセットして歩度の調整をしていますが、この頃の製品は、片振り調整機構がありません。ヒゲゼンマイの状態もあって、ビート位置がずれてしまいます。ヒゲと緩急針を微妙に調整しながら追い込んでいきます。







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自動巻き機構のマジックレバーやベアリングに注油をしてセットして見ましたが・・。ダメですね。ローター軸を回転させても伝エ車が回転しません。マジックレバーの爪も摩耗をしているのでしょう。これでは巻き上げができませんので、他の個体から調達することにします。






Img_436355マジックレバーと伝エ車は交換をして快調に巻き上げが出来ています。歩度調整の追い込みはもう少し続けますが、組み立てとしてはこれで完成とします。まだ非防水ケースではありますが、オートマチックとして1963-6月から生産されたモデルですが、この個体は1963-12月の初期に属する個体でしょう。文字板12時にコママークがオートマチックの印で初期にのみあります。当時はまだ金めっき(EGP)ケースが一般的でしたので、国産の大衆向け製品としては酷使された個体が多く、現存機のケースの状態は良くありません。しかし、それが実用品としての国産腕時計の正しい姿でしょう。画像のリュウズは針回しをしていたので引いた状態ですが、本来は、オートマチックで巻き上げがいらないということで、敢えてリュズは4時の位置でケース内に収まります。この頃のラグ幅は現在では主流ではない19mmが多く使われています。立派で安定感はありますね。金時計には定番のカーフのチョコ色ベルトをセットしてみました。なんでもオートマチックが流行りだした頃の記憶が残る良い雰囲気の腕時計。オートマチック、カレンダー付と、現在でも充分実用が可能です。http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/

20140523122419_2余談ですが、別の仕事でいつも通る八王子の道を通りかかると、警察官と報道関係のカメラが並んでいるところに出会いました。どうも、大阪の不明女性が貸コンテナに遺棄されていたようです。知らずに通っていましたが、どこに事件があるか分からない世の中です。