今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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追加で来ましたブラックPEN-S 2.8の巻

2015年10月01日 12時25分47秒 | ブログ

同じオーナーさんからブラックPEN-Sが3台追加で届きました。頑張っていますね。でと、一番手前の個体はリペイントをされた個体。後ろ2台はオリジナルブラックですが、1台は過去に私がO/Hをした個体なので作業はしません。

リペイント機のレリーズボタンが引っかかるとのことで、その部分だけ直して欲しい。とのことですが、リペイントに関して本当は他の方の作業機はあまり関与したくないのですよね。理由はお察しください。で、メッキの上からサーフェサーを吹いて、ウレタン塗装をしたものですね。

トップカバーの裏側。クロームメッキは剥離したがニッケルは剥がせなかったようです。駒数ガラスは平板で作られているので段付きがなく、接着位置が下がっています。バネも伸びています。シャッターもダメですが、カメラには罪はないのですが、正直なところ関わりたくない種類の個体です。

 

リペイント機はさっさと終了で次に行きます。オリジナルブラックの#1020XXとかなり初期の個体です。オーバーホール済みとして入手されたそうですが・・シボ革が例の状態。いやな予感・・

 

古いだけにフィルムレールも腐食で光っていませんね。

 

 

ファインダーのカバーの接着が・・

 

 

この個体はアクセサリーシューが黒塗装されていますね。ブラックモデルの殆どは梨地メッキですが、ではリペイントかと言うとオリジナルです。オリンパスの瑞古洞に所蔵されている個体もこの個体と同じ仕様です。ブラックモデルの初期は塗っていたというとでは?

繰り返しになるので割愛しましたが、シャッターに疑問があります。製造捺印からは16万台付近と推測されるのです。たぶん換装された可能性が高いと思います。で、他の方の作業はなんで不完全なのかと思うのです。貼られていたモルトを剥離すると、オリジナルのモルトが残ったままです。私の作業が工数が掛かるのは、すべて完全に清掃をしてから組んでいくためです。

これは資料として価値があります。初期の個体はスプールのスリップ機構が三光ペンなとと同じ旧設計が使われているということ。(オリジナルとすれば)何故かスブールの嵌合部を外側に曲げられており、この状態で組むとスプールの回転に負荷が掛かって巻上げトルクのムラが発生します。意味分かりませんね。

初期の製品なのでリンケージ部品の腐食が進んでいます。巻き止め爪も摩耗をしておりロックされない状態。

 

巻上げダイヤルを留めるスプロケット軸のネジは正ネジです。以後はすべて逆ネジになります。初期の設計ということですね。

 

で、もう一つ疑問に思っているのは、スプロケットです。この頃の仕様ではアルミアルマイトではないか? 変更後の黒アルマイトになっていますね? アルミ製なので消耗交換の可能性は少ないと思いますが、ちょっと断定できません。フィルムレールも清掃しました。

他の方の分解で残念に思うポイントです。距離リングのイモネジを回すのに、サイズの大きなドライバーで回してしまうため、損傷してアルミ地か出てしまっています。いつもお話するように、どこまで神経を使って作業をするのかということです。

 トップカバーサイドの留めネジが未塗装ですね。これは交換されているのか? 過去に同じ仕様の個体を多数見ていますので、これでオリジナルなのだろうと考えています。

 

アクセサリーシューに化粧プレートを取り付けるとレールの部分のみブラックになりますね。決してレール部分のみを塗装しているわけではないのです。

 

もう一つ特筆する点は、巻き戻しボタンの頭も黒塗装されていることです。最初のリペイント機も同じでしたが、それはボタンを分離せずに塗装をしたためで、この個体は部品の段階で塗装を施してあります。カシメを分解した形跡もありませんのでオリジナルなのでしょう。

このオーナーさんは、後世に良いコンディションで各モデルを残したい。という頭の下がる活動をされている方です。その意味では、シャッターやスプロケットなど疑問もある個体でしたか、資料的価値も充分に備えた個体だと思います。

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