今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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ハードケースの三光PENの巻

2015年10月15日 20時58分11秒 | ブログ

「遅れて来たPENマニア」さんから三光PENが3台来ています。頑張ってますね。カメラブームの頃は、探すのも大変なカメラだったのですけどね。後ろの2台は中古屋さんでの購入とのことで、外観は悪くはありませんが、片方はシャッターが止まります。で、取りあえず、ケース入りで一番コンディションが悪い個体をやっつけることにします。

#1057XXと製造時期も古いので、コンディションが悪いですから、状態の説明で殆ど終わってしまいそうです。ハードケースですが、意外にしっかりとしていますね。右は我が家で発売当時に新品で購入したEEDのケースですが、ベロの部分が切れてしまいました。確か、購入して2年ぐらいでした。茶の方か古いと思われるのですが、しっかりとしています。裏側に布の裏打ちがあるせいでしょうかね。(EEDはヌメ革のまま)

そこで、古い革ですから繊維に潤いを与えておきましょう。着けるのはハンドクリーム。尿素入りですぞ。下手に保革油などは良くないです。

 

ふぅ、今日の画像は多いなぁ。トップカバーの角にへこみ。

 

 

片耳側にもへこみ。巻上げダイヤルカバーが欠落。複製が在庫切れだぞう・・

 

 

シャッターは開いたまま。フィルムレールは腐食気味。

 

 

巻き戻しダイヤルが油でベトベトです。

 

 

取り合えず分解をして行きます。巻上げダイヤルカバーは熱カシメタイプなので、折れて残った軸を押し出しておきます。

 

なんでだろう? シューの裏面に大量の油が付着しています。ファインダーブロック内も浸み込んでいます。なんでだろう??

 

ファインダーを分離すると・・油が流れ込んでいますね。ファインダーの樹脂も劣化して白化していますので研磨をします。

 

フィルム室もかなり汚れています。

 

 

すべて分解洗浄のうえ組立をして行きます。スプールは旧型なので、観察するとクラックが入りかけています。

 

問題のシャッターです。羽根が油で張り付いています。なにか油をさされた個体のようですね。

 

ハウジング内の油と腐食汚れが激しいので研磨をしてあります。

 

 

このシャッターは分解をするとターミナル接点のタイミングがずれますので調整をしておきます。

 

ダイカスト本体のシャッターを搭載しました。今日はここまで。

 

 

今日は外出していましたので作業は進んでいないのですね。んで、三光などの初期型PENに使われている巻上げダイヤルカバーは、以後のネジ留め式ではなく、二本の足をダイカスト穴に挿入して熱カシメで留める方式なんですね。そこで樹脂の劣化や応力が掛かって足が折れて欠落している個体があるのですが、この個体もそうですね。複製部品は作ってあったのですが、丁度切れてしまってないのです。仕方がないので、足の折れたヨレヨレのカバーに足を付けて取り付けておくことにします。

水油が大量に付着していましたよ。洗浄をした駒数ダイヤルなどを組み立てて行きます。巻上げダイヤルを留めるネジは、この頃はまだ正ネジです。(以後逆ネジになります)設計当初は巻き上げによるネジの緩みは考慮されていなかったということです。ネジの緩み止めも塗布されていない時代。

トップカバーの両肩にへこみがありますが、プレスで絞られた部分を叩くとクラックになる危険が高いので、そのままとします。対物レンズは樹脂製。カバーはスチール製のシンプルな形状。これ以後、複雑な形状やアルミ製に変化をして行きます。

本体とカバーとの嵌合は、お世辞にも良いとは言えません。各部の調整には調整ワッシャーが多用されています。この頃のブレス金型は特に精度が悪く、あまり金型にコストを掛けられなかったようです。巻き戻し部のネジ穴はたぶん組立現場でリーマ加工をされています。

調整といえば聞こえは良いですが、ごまかしとも言います。ピンセット先のネジ部に調整ワッシャーを追加しないとカバーと巻上げダイヤルが干渉してしまいます。過去の分解で、殆どの調整ワッシャーが無くなっているので、組んで嵌合具合を見ながら調整の繰り返しになります。駒数カニ目部にも調整ワッシャーが4枚入っています。

ここも同じですね。片耳の吊環部も、そのまま占めると吊部が垂直になりません。ねじ山の痩せもありますが、たぶん調整ワッシャーが追加されていたはずです。ネジの力は強大なため、正式な調整ワッシャーは鋼製のものを厚みを選択して使用されていました。今回は、手持ちのワッシャーをオイルストーンで0.15mmに削って、吊環の垂直にしました。接着固定は全く意味がありません。

巻き戻し部の垂直ガタはPEN-S初期までは、複数の厚みの異なる調整ワッシャーを組み合わせて(ブロックゲージのように)ガタが無いように組まれていますが、この個体は、ガタを1枚のワッシャーの端を故意に曲げてガタを無くそうとしています。純正のワッシャーを追加して組みます。

シャッタースピードリングは研磨洗浄をしてあります。

 

 

PENのレンズは後玉の曇りが多く、三光のような初期のものは特に曇っていて普通です。この個体は比較的良好と思いますが、後期のPENから移植されているものもあります。

 

腐食気味で状態の悪かった圧板は研磨してピカピカ。

 

 

これでやって完成しました。三光PENは製造が古く、何度かの分解を受けている個体が普通ですので、オリジナルコンディションへの修復は非常に時間の掛かる作業になります。単に作動すれば良い修理ではなく、各部の作動フィーリングまで確保しながらの作業をしています。

 

 

他の2台は中古屋さんでの購入とのことでしたので、信用をして1台目だけで終わらせるつもりでしたが、そうも行かなくなりました。シャッター羽根が猫目ですね。

 

ではしょうがない。手を付けます。トップカバーを分離して見ると・・上側のモルトがほぼ無くなっていますね。これだと光線漏れをしますね。

 

#1285XXですが、三光PENの定義っていうのはどなたがお決めになられたのかしりませんが、巻上げダイヤルのカバーは早くもネジ式に変更されています。これでは三光PENと言わない? 熱カシメは工程を簡便なおもちゃ製造のイメージで設計されたような感じがしますが、どっこい、ネジの方が確実で個体による微調整も利くので、組立現場からクレームが出たのではないでしょうかね。知らないけど。

長い「一巻」になっちゃいましたね。猫目は油でも付着しているのだろうと軽く考えていたのですが、素性の良くないユニットでした。中古屋さんで整備済みなのでしょうから当然分解修理を受けているわけですが、各部のセッティングはずれてしまって組み直したら調子良く動くという状態ではないようです。シャッター羽根の端部が折り曲げられていますが、これはメーカーなのかなぁ??

取りあえず普通に組んで様子を見ましたが、どこかに接触があるようで、スムーズに作動しません。原因を探って行くと・・のチャージレバーがありますが、これがシャッターを切ると右側に動くわけです。するとの本体部分に接触をしていました。どうもレバーが変形しているようです。このレバーですべてのタイミングを決定していますので、変形するとそれはまぁ、ちゃんと動かないのですね。

このシャッターには、小さなバネが多く使われていますが、みんなヘナヘナに曲げの癖がついています。先端のコの部分が水平ではないため、引っ掛かりで正常に作動しません。

 

それでも何とかバランスを取り直して正常作動となりました。ターミナル線を取付けて完成。(後の不幸を知る由も無い)

 

で、本体に搭載してシャッターリングを取り付けようとしたところ・・あ~、これはダメです。ストッパーピンがグラグラに緩んでいます。これは、シャッターリングを力任せに回した個体に発生します。あ~、全バラシだぁ。

ポンス台で再カシメをしてみますが、本来の強度は出ません。うちのシャッターと交換した方が早いし楽なんですけど、三光PENですから、なるべくオリジナルで仕上げたいですね。