今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

ローライ35の症状はの巻

2024年01月10日 16時36分48秒 | ブログ

その前に、カメラ店様に持ち込まれたローライ35ですが、前玉が抜けてしまったとのことです。ストップリングの爪が折れたか? と思いましたが折れてはいません。では、前回の35Tでも紹介したCHEESE HEAD SCREWが緩んでいるのでは?

 

やはり緩んでいます。それによってストップリングの爪が飛び越したのでしょう。ここのネジは自然にも緩みやすいですが、今回は装着しているフードが原因ではないかと思います。フートの外形が大きいので、フィルターネジに締め込んだ時CHEESE HEAD SCREWに大きなストレスが掛かって、それが緩みに繋がったのではと思います。フードは社外と思いますが、装着される時は過大な力が掛からないようにご注意ください。

で、ローライ35ドイツ#3156XXXです。外観は損傷も無くきれいですが、作業の前に気になる不具合を修理カルテに記入していきます。この程度の不具合はどの個体にもありますね。

 

無事新しいパソコンに交換して復旧しました。ご迷惑をおかけしました。しかし、新しいパソコンは使いにくいですね。慣れとカスタマイズが必要です。作業の方は進めていました。露出計は回路の断線でしたのでやり直してファインダーなど定番の作業をしています。

 

また一つ問題が発生しました。壊れることで有名な樹脂のチャージギヤですが、この個体は下部のカムが折れていました。折れた部分は2回巻き上げ防止のためのストッパーです。巻き上げをしたか忘れて再度巻き上げることはどなたにもありますが、強く巻いてしまうとこの部分にストレスが掛かって折れてしまうのです。

上部の歯車の歯が欠ける故障も多く、このカメラのウィークポイントですね。で、交換用の部品は調達に苦労していますので、今回は修理で対応しました。溶着とピンを植えることで強度を確保しています。

 

ローライ35Sの後期や35Tなどで採用されている金属歯車と樹脂の組み合わせがベストなのでしょうね。そこで、現在試作をしているところですが、時間がなくてフライス加工が出来ていません。既存の破損した樹脂の下部を加工して使用する予定です。問題はコストですね。

 

カメラ店様からPEN-EE3 です。ファインダーの赤マークが出ないとのこと。その他、ファインダーなどの曇りや気になるところも多いのでオーバーホールとさせて頂きました。

 

EEの場合、正面からレンズを見るときれいに見えるのですが、実際はほとんどカビが発生しています。

 

後玉も同様ですので拭き上げ清掃をします。

 

 

問題は、ご自身でモルトを張り替えられたのでしょうか。習字用の下敷きかな? 厄介なのは本体側の上下モルト(毛糸で貼られていました)が、不明な接着剤によりガビガビに接着されていて接着剤が溶けず清掃するのに時間がかかりました。

 

まぁ、無事赤マークも出るようになりました。EE精度は良好です。

 

 

と、ここで突っ込みです。ローライ35ドイツの初期型ですが、撮影したフィルムに傷が入るというもの。確認をするとレールのスプロケット部分がフィルムと接触をしていて地が出ています。 

 

以後の生産機を見てみると、接触する部分を面取りのようにカットされた形状になっています。初期不具合を修正したのでしょうね。これは仕様ですが初期型を実用されている方はお気を付けください。

 

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もっと初期型PEN-Fの巻

2024年01月05日 20時00分00秒 | ブログ

オーナーさんは全く知らずに手に入れたPEN-F #1023XX です。PEN-Fの発売は1963年9月とのことですが、まさしくこの個体は発売月の生産です。FTより古いFの最初期型を入手されて来るとは・・巻き上げても最後の部分で逆転してしまいシャッターのロックが外れずレリーズが下りません。

巻上が完了するとのレバーが上がって(画像では)のレリーズレバーが右に動けるようになってシャッターが切れるのだが、逆転によりこの個体の場合はのレバーが下がってしまう。スプロケット軸の逆転を止める「板止爪」の調整が必要です。

当然過去に分解歴は有ってシャッターダイヤル留めネジのスリ割が壊されていますが、或いは工場の組立の時なのかもしれません。

 

組立は前回と同じなので初期型と以後の個体との違いを見て行くことにします。最初期型の圧板の天地取付はこの位置で正しい。以後は上下逆になります。

 

レンズの合わせマークはのように側面の赤線です。以後は正面側の赤になります。

 

初期の「巻上爪」を押さえるバネはリン青銅の板バネです。以後は普通のコイルバネになります。

 

生産初期で組立に慣れていなかったのかスリ割を工具で壊しています。或いは途中で分解されようとしたか? ここは左ネジなので反時計方向では緩みませんが・・

 

だから余計なモルトはいらないと言ってます。

 

 

「カギ板」(D007)を押さえるバネのガイド(D21)は最初期型にはありません。プレスで加工してあります。しかし、これですとトップカバーを閉じる時にバネが外れやすいのです。恐らく組立の方からの要請でガイドを追加したものでしょう。

本体の洗浄後、モルトと巻上系を組み立てておきます。初期型ですのでスプロケットはアルミアルマイトでスプールはグレーです。

 

シャッターユニットを見ます。スローガバナーは初期の#12 です。この辺りの制御関係は何度も設計変更をされていまして互換性がありません。図番の「-2」など追番があるものは変更履歴があります。このガバナーは貴重です。

正月中、昨日は晴天で気温も上がりましたので恒例の立川の諏訪神社まで初詣に行って来ました。いつも混雑を避けて三が日は避けるのですが、昨日は思ったより参拝者が多く、30分程度並びました。厳しい世相のせいか、どなたもお願い事が長かったように思いましたね。

初期のシャッター幕はピカピカしています。以後はエッジの部分を残してエッチング処理をしています。のバネは初期のみ付いていて以後は省略されます。

 

オーバーホールを終えてテストをしています。快調に作動しています。

 

シャッターダイヤルのネジは工場ではありませんね。途中の分解でスリ割を壊してしまい。接着で前板に着けられていました。

 

前回のFもそうですが、初期型のプリズムは意外に状態が良いですね。中期以降の個体は腐食が持病ですが・・

 

シャッターダイヤルのネジは+になりました。

 

 

これでメカの組立は終了。今回は全反射ミラーとブレーキOリングは交換していません。初期のプリズム押さえはリード線を受ける形状となっていますが、あまり必要性が無いので以後は形状が変わります。


生産の最初期なので60年以上前に作られたカメラになりますね。部品の表面処理の劣化が激しいです。

 

清掃をした付属のレンズは何故かのネジが3本共無くなっているという不思議な状態でした。PEN-FTの初期型でも厳しいのに、PEN-Fの最初期型を本気で使おうとされる方がいるとは恐らく設計者の米谷さんもびっくりでしょうね。歴史的に貴重な個体ですから大切にされてください。

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PEN-Fもやっとくかの巻

2024年01月03日 20時00分00秒 | ブログ

正月早々から難物のPEN-F #1443XX です。まず、巻き上げが異常に重い。また、レンズを装着しなければシャッターは切れるが、レンズを装着するとフリーズしてしまう。トルクが出ていないようです。

 

トップカバーを開けてみると、過去に分解歴は無いように見えます。(ありました)ということは途中での分解が不具合の原因ではないということか・・

 

アクセサリーシューを使用されていた個体で梨地メッキに縦筋が入っています。FとFTでは接眼枠とトップカバーの当り部分の設計が変更されていて、Fはカバーに傷がつき易いのですがFTでは改良されています。それでもつきますけど・・

本体の洗浄後にモルト貼り、スプロケット軸、スプール軸を組み立てています。

 

シャッターユニットを点検して行くと・・あぁこれかな? 巻き上げギヤ列と地板本体との組立ネジが緩んでいます。これは稀にありますね。

 

レリーズ関係を取り除いてネジを締めます。巻き上げてもシャッターが切れなかったのは、この部分のナットを締めすぎていたため、ロックレバーが作動しなかったためでした。

 

 

メンテナンス後にシャッターテストをすると、低速が僅かに不安定なのでスローガバナーを洗浄メンテナンスします。

 

何とか調子を取り戻しました。ブレーキは特に悪さをしていないのでOリングの交換はしないことにします。

 

リターンミラーユニットは過去に分離されていました。なぜ? ユニットの作動は非常に重いです。

 

点検して行くと、のネジのスリ割が過去に絞められた跡があり、ぐらぐらに緩んでいます。ここは稀に緩んでいる場合がありますが、本来は裏側からカシメられているので緩まないのですが・・

 

作動不良の原因でしょう。ドライバーで締め込んだだけではすぐに緩んでしまいますのでカシメておきます。

 

全反射ミラーは交換ご希望ですので新品と交換して組みます。

 

 

この個体もリターンミラーユニットのテンションバネが強く張られていましたので標準に戻して組んであります。短絡的に動かないからバネを張るという考え方はよろしくないです。

 

当方の標準レンズ付けてのテストではフリーズはしませんでした。これでメカの組み立ては終了。無限調整をして行きます。

 


意外に来ないローライ35Tの巻

2024年01月03日 11時00分00秒 | ブログ

しかし、今年はどんな年なのでしょう? 元日から地震雷火事親父が次々に起こる。長く生きて来ましたがこんな経験はありません。これ以上の災難が続きませんように・・

で、ローライ35ファンの方に今年初めのUPを簡単にです。ものの本によれば、ローライ35の生産終了が1971年で、3年後の1974年に復刻版としてローライ35Tが登場したとのことですね。ローライも経営が苦しくなったのかな? レンズ製造などこだわる方もいらっしゃるようですが、仕様についてはオリジナルモデルと全く同じで、整備をする人間からすると生産が新しい分、各部の劣化も少ないので整備は比較的楽な個体が多いと思います。電池の電解液漏れがない限り露出メーターは元気です。シャッターの低速不良やファインダーの曇りは定番ですので分解清掃をして行きます。

不良とまでは行きませんが、沈胴の摺動に少しムラが出ているので分解清掃のうえ調整をしておきます。

 

過去に分解歴はありますが、スプロケット軸部の遮光紙が入っっていませんので追加しておきます。

 

製造が新しいだけあってシャッターとレンズは比較的良好です。

 

 

このCHEESE HEAD SCREWは距離リングのストッパーを兼ねているため、この個体のように緩んでいることがあります。距離リングが無限で止まらないという症状はこれが原因です。ヘリコイドグリスも抜け気味ですので清掃の上、新しいグリスを入れて前玉をセットします。

距離目盛リングは彫刻は時期によって異なりますが ftとm併記は文字が小さくなって見難い。また、リングが艶消し仕様となって少し安っぽい印象です。

 

オリジナルのローライ35よりは相場は安いのかなと思いますが、実用重視であれば、各部の信頼性からしてローライ35Tの選択もあるのではと思いますね。

 

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今年最初はPEN-Sブラックの巻

2024年01月01日 11時00分00秒 | ブログ

謹賀新年 あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。新年最初から悩ましい作業。PEN-S #1605XXのブラックですが、オーナーさんから「オリジナルですか?」との鑑定依頼がありましたよ。一般的にオリジナルの個体は塗装のコンディションがよろしくないのが普通ですが、あまり使用感のないきれいな状態ですのでリペイントだろうと思いましたが、では、私が塗った個体か? というと気になるところが多くあります。

まず、上下カバーの艶とダイカスト本体の艶に差がある。これはオリジナルでも塗装する材質の違いによって艶に差がありますが程度の問題です。また、彫刻文字の色入れが薄く頼りない。ひょっとしたら、上下カバーのみリペイントをしたものではないか?

左のPEN-Wは私がリペイントをした個体ですが、上下カバーと本体の艶の差は右のPEN-Sより少ないのが分かります。

 

塗膜にチリの混入がありますが、これは塗装前に塗料を濾していない可能性があります。メーカーの塗装工程では考えずらい・・

 

塗料のブツも多くあります。これは塗装のガンの調子(塗料の希釈)が適正ではないためです。私の塗装基準では塗り直しとなり世の中に出していません。

 

シンナーで拭いてみると・・自然乾燥塗料であれば塗料は溶け出しますが、そこまでではありません。焼付塗装であっても塗装直後であればこの程度の色落ちはしますが、塗膜が焼付塗装というよりもう少し塗膜が荒く仕上がるウレタン塗装であればこの程度の色落ちはして当然です。

トップカバーを外してみます。あれ? 困ったな。予想に反してファインダーなどに分解痕跡がないのです。う~む・・

 

はっきり分かるのが、駒数ガラスの接着です。エポキシ接着剤の黄ばみの具合から、接着されてからかなりの時間が経過しています。ここだけ見るとオリジナルかと思わされます。

 

じつは少し眠いです。深夜の3時に近くのマンションで火災がありまして、うちの前に消防車が多数止まりましたので寝られませんでした。恐らく紅白を見てタバコを吸いながら寝入って出火が3時前だったのでしょう。新年早々みなさんも火の始末にはご注意くださいね。で、巻き上げダイヤルの留めネジも緩められた形跡がありません。強く締めすぎてダイヤルにクラックが入っています。

スプール軸が固着気味で抜けて来ません。使用された個体であればガタが多く出ている部分ですので、恐らくこの個体はほとんど使用されていないのだと思われます。

 

シャッターは初期型の仕様ですが全く疲労がありません。使われていませんね。コパルでの生産初期の捺印は▢の中に西暦の下二桁と月が捺印されます。(中期以降は和暦)「1961年4月製」で、本体完成は1961年6月です。普通、シャッターの製造月と本体完成月は同じ月か翼月なので、生産に時間がかかっていたと思われます。それにしても、ちゃんと判読できるように捺印して欲しいものです。

組立はいつもと同じです。シャッターは初期型の仕様ですが摩耗はありません。本体に搭載してストロボテストをしてからシボ革を貼ります。

 

使用された個体のシャッターリングは手油や汗で腐食をしていますが、この個体は全く劣化がありません。

 

ファインダーは分解清掃を終えて組み込みました。リンクル塗装にハゲがない完璧な状態も使用されていなかった証拠。

 

駒数ガラスにはクラックがありますが、塗装がオリジナルと判断してそのままにしてあります。初期型ですので巻き戻し軸部は改良前の仕様です。

 

初期型のカニ目ネジはネジ孔が貫通していないのがオリジナルです。

 

 

トップカバー横のネジがメッキのままです。これは途中で交換されたものではなく、このような仕様を多く見ていますのでオリジナルでしょう。ブラックモデルを作るのに、上下カバーは外注で安く塗らせてネジの塗装を忘れていた、あるいはネジはメッキ仕様としていたのかな?

レンズは満点でしょう。忘れ去られて放置されていた個体にはどうしても思えません。

 

初期型ですからスプロケットはアルミアルマイト、スプールはグレーです。

 

裏側の塗装の状態。かなり艶消しが強いです。

 

 

なぜか初期の巻き戻しダイヤルとレバーの梨地の強さが違いますね。

 

 

いろいろ見てきましたが、どこを見ても再分解でリペイントをされたと確認できる部分がありませんでした。塗装の品質には疑問がありますが、これは正式な製品の品質管理を受けない試作的な製品と考え、オリジナルの個体と判断します。PEN-Sブラックは一般には市販されずに報道関係に配られたものと聞いていますので、手に入ったものの実際には使用することはなく仕舞い込まれていた個体ではないかと思います。本当はこの個体を使用して欲しくはありません。これだけ新品の状態を維持している個体は稀だからです。本来はオリンパスの瑞古洞に入っていても良い個体でしょう。

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