だだっ広い部屋で一人床に就いた彼だったが、その夜は深々と冷え込んだ。
障子を隔てた縁側から、隙間風が入ってくる。
月明かりが漏れてくる所を見ると、雨戸の立て付けが悪いのだろう。
築百年とまでは行かずとも、相当の古い家屋であることは間違いがない。
父親は「男同士で一つ部屋に」と言ったのだが、母親が頑として譲らなかった。
「先生が眠れませんよ、それでは。気疲れされますわ、きっと。それに‥‥」
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