車中の時計は午後十時少し前を指していた。二人共、このまま帰る気にもなれずにいた。
「ひと休みするかい?」
「そうね、時間も早いし」 . . . 本文を読む
麗子は、偶然にガソリンスタンドで働く男を見かけた。
知人を訪ねる途中のことで、渋滞を避けようと幹線道路から外れたときだった。
車線変更に手間取り、予定していたよりも一本先を右折した。
初めて通る通りで、二車線になっていた。
すぐに左折するからと左車線に入ったとき、思いもかけず、体を引きずりながらだるそうな表情を見せている男が目に入った。
「まさか」と思いはしたが、一瞬のことであり-後続の車が麗 . . . 本文を読む
「鈴本です。予約していませんけれど、席はありますかしら?」
「これはこれは、鈴本さま。もちろんでございます。どうぞこちらへ。いつものように奥がよろしゅうございますか、それとも海岸線の見えますお席が‥‥」 . . . 本文を読む
名古屋市博物館へ、昨日(土)に行ってきました。
間違えちゃいました。
てっきり、7/16(土)からの展示だと思い込み、午前中に愛車ローンレンジャー号の12ヶ月点検を済ませて、勇躍名古屋市立博物館にGO,GO,GO!
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生け垣に囲まれた店の入り口に通じる小径は砂利道だった。
アスファルトに慣れきった男にとって、歩きにくくはあるがノスタルジーを感じさせるものだった。
よろよろと歩く男に対して、麗子が笑みを浮かべながら「覚えてらっしゃらないのね」と拗ねた表情を見せた。 . . . 本文を読む
薄寒い秋の夕方、ミドリは信じられない光景を見た。
街路樹の葉は刈り取られ、身を縮込ませて立っているように、ミドリには見えた。
足下にまとわりついてくる枯れ葉が、ミドリの心をざわつかせた。
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ミドリには、そんな男の気持ちが痛いほどに伝わった。
「これでいいのよ」と何度繰り返したことか。
男を責める気にはなれなかった。
かつての、愛されたいという気持ちは消えていた。
支えてあげなければ、という思いだけがミドリを頑張らせていた。
母の元に帰ろうかと思わないでもなかった。
夜遅く、疲れた体を引きずって帰るアパートで、ウィスキーの空瓶が散乱している部屋を見ると、情けなくなることもあった。
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