4日(火)。昨日の日経朝刊オピニオン面に、滝田編集委員が「近隣摩擦の経済的帰結」と題する論考を寄せています 難しい話は抜きにして,書き出しは次のとおりです。
「暑い夏、今年は理不尽な出来事が続いた。乗り継ぎでフランクフルト空港を利用した世界的なバイオリニスト、堀米ゆず子さんも突然の理不尽に見舞われた一人だろう。持参していたバイオリンに関税の支払いを求められ、名器を押収されてしまった・・・・・・この問題が報道されたのを機に、音楽を愛好する人たちの間でも抗議の声が上がり始めた 在欧日本大使館も、円満な解決に向けドイツ側と接触しだしているようだ。理不尽に対する理のある対処だ」
これを読んで「えっ、この問題、まだ片付いていなかったの」とびっくりしました。というのは、コンサートに行くと必ずもらうチラシに堀米ゆず子さんの出演する公演が含まれているからです 練習は代わりのヴァイオリンでも出来るでしょうが、さすがに本番はストラディヴァリウスを弾くことになるでしょう。果たして間に合うのか・・・・人ごとながら心配です
閑話休題
2日(日)に飯田橋のギンレイホールで韓国映画を2本,「ポエトリー アグネスの詩」と「素晴らしい一日」を観てきました 本当は身体を休めなければいけないのですが,休日になると家でじっとしていられないタチなのです
「ポエトリー アグネスの詩」はイ・チャンドン監督による2010年製作の第63回カンヌ国際映画祭・脚本賞受賞作品です
66歳のミジャは中学生の孫息子と二人で暮らしていますが,ポスターを見て詩作教室に通い始めます.「見たまま,感じたままを詩にするように」と先生から言われますが,思うように詩が書けません そんな時,孫を含めた6人組がクラスメイトの女生徒アグネスを自殺に追いやります.親たちと学校側は事件が外に漏れないように密かに遺族との示談に持ち込もうとします.ミジャは自殺したアグネスの家を訪ね,川に飛び込んだ橋を訪ね,彼女の足跡をたどって彼女がどういう想いで死んでいったかを心に感じ,それを詩に書きます アルツハイマーを宣告されながらも,一つの心の詩を紡ぎ出すまでのひとりの女性の物語です
「詩」という言葉は韓国でも「し」と発音することを初めて知りました この映画で使われたいた唯一のクラシック音楽は,詩作の仲間の飲み会で中年の男性が詩の先生に敬意を表して歌ったシューベルトの「菩提樹」です
このシーンを観て,山田洋次監督の「男はつらいよ」の中で,やはり宴会の場面で男性が「菩提樹」を歌って,場がシラケるシーンを思い出しました
原題は「POETRY」ですが,日本でのタイトルに「アグネスの詩(うた)」を付けたのは,ミジャが,死んだアグネスに成り代わって詩を詠ったからではないかと思いました
もう1本の「素晴らしい一日」はイ・ユンギ監督による2008年製作の映画です
仕事も失い,恋人もお金もないヒスは,借金取り立てのため,1年前に別れた男ビョンウンを探すために競馬場に行きます そこでビョンウンを捕まえますが,彼は無一文です.仕方なく,彼の知人の女性たちを訪ね歩くビョンウンに同行して,ヒスに借金を返すために新たに借金をする行動に付き合います 実は1年前に別れた後,お互いに同じような経緯で,出会った相手と別れざるを得なかったことが最後に判ります
あっちでもこっちでも借金を重ねるけれど,どこか憎めないビョンウンをハ・ジョンウが好演していますまた,必死でビョンウンから借金を取り立てようとする終始不機嫌なヒス役のチョン・ドヨンの鋭い目が忘れられません.そして最後に見せる笑顔がとても素敵でした
原題は「MY DEAR ENEMY」です.こちらのタイトルの方がこの映画の内容をより分かりやすく表していると思います 原作は日本の作家,平安寿子の短編小説とのことです
この2本の映画はギンレイホールで9月14日まで上映中です