25日(火)。昨日、東銀座の東劇でMETライブビューイング、ロッシーニ「セビリアの理髪師」を観ました.この公演は2007年2月24日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画です 上映時間は歌手へのインタビュー等を含めて3時間24分です
キャストはロジ―ナにジョイス・ディドナート、アルマヴィーヴァ伯爵にファン・ディエゴ・フローレス、フィガロにピーター・マッティ、バルトロにジョン・デル・カルロ、ドン・バジリオにジョン・レイリ―ほか。演奏はマウリツィオ・べニー二指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はバートレット・シャ―です
この映画を観るのは2回目なのですが,何度観ても飽きません 今回はR1に座りましたが,会場ではシニアを中心に約100人の人が鑑賞していました
「序曲はオペラを語る」といいますが,この序曲を聴くと,わくわくドキドキ,これから始まるドラマが待ち遠しくなります 舞台のほかに,指揮者の後ろ側にも張出舞台が設けられ,時に歌手はオーケストラ・ピットの周りをぐるっと回って歌うことになります.これがシャーによる今回の演出の特徴です
まず,フローレスのテノールをどのように表現すればいいのでしょうか いま,彼以上のテノールはいないのではないか,と思います
昨年9月に彼は東京文化会館でボローニャ歌劇場の一員としてヴェルディ「清教徒」のアルトゥーロ役を歌うはずでした.しかし,残念ながら「声帯を支える軟骨付近に充血と肥大により,3週間の声帯の休養が必要」との医師の診断により来日中止
となり,代わりにアントニーノ・シラクーザがアルトゥーロを歌いました.もちろんシラクーザも超一流のテノールで文句の付けようがないのですが,この公演のチケットを買ったのは,ほかでもないフローレスを聴くためだったのです
この「セビリアの理髪師」で歌うアルマヴィーヴァ伯爵役のフローレスの最高のテノールを聴くと,返す返すも残念でなりません
そして,ロジーナを歌ったディドナートの素晴らしさ 守られる女性というより,より強い意志を持った女性を演じ,美しいコロラチューラ・ソプラノを聴かせてくれました
そして,主役を食っていたのがフィガロ役のマッティです
単なる”何でも屋”ではなく,セクシーで頭の良いスーパーマン的な役割を演じ,歌いまくりました
そして,今回のシャーの演出で特徴的だったのが,ロジーナの後見人バルトロを演じたジョン・デル・カルロの役割です 主役級の扱いで,前面に出て喜劇的な役割を演じ,歌います.この人にぴったりの役だと思わせる体格と声帯を持っています
アリアでも,デュオでも,必ずと言っていいほど登場する”ロッシーニ・クレッシェンド”は,聴いていると興奮してきて,もう堪りません ロッシーニって何と素晴らしい音楽を書いたのでしょうか
こういうオペラが書けるのはモーツアルトとロッシーニだけでしょう.理屈なしに楽しめるオペラです.とくに今回の歌手陣と演出による「セビリアの理髪師」は何回でも繰り返し観たい公演です
東劇で上映のMETライブビューイング・アンコールも今月28日で終了です.まだまだアンコールで観たいオペラもあったのですが,次の機会に期待したいと思います
METライブビューイング2012-2013は11月3日から東劇,新宿ピカデリーほかで上映されます ヴェルディの「オテロ」「仮面舞踏会」「アイーダ」「リゴレット」,ドニゼッティ「愛の妙薬」「マリア・ストゥアルダ」,モーツアルト「皇帝ティートの慈愛」など魅力的なプログラムが用意されています.私は出来るだけ多く観たいと思っています.1作品3,500円ですが,3枚セット9,000円の特別鑑賞券が東劇,新宿ピカデリー,ローソンチケットで発売中とのことです
閑話休題
今日はヨハン・シュトラウスⅠ世の命日です.1804年に生まれ1849年9月25日に死去しました.彼は”ワルツ王”ヨハン・シュトラウスⅡ世の父です ウィーンフィルのニューイヤー・コンサートでアンコールのラストを飾る曲として有名な「ラデツキー行進曲」を作曲したのが父シュトラウスです
21歳の時に自分の楽団を結成し,翌年には自作を演奏してウィーンの聴衆に絶賛されます
1834年に第1市民連隊の楽長になり,翌35年には宮廷舞踏会指揮者に就任しました
シュトラウスと言えばカルロス・クライバーです ニューイヤー・コンサートのCDが出ています.1枚は1989年1月1日,もう1枚は1992年1月1日(ウィーンフィル創立150周年記念)のライブ録音です
今は亡きカリスマ指揮者・クライバー,カムバック