人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「ベートーヴェン、交響曲前夜。」を聴く ~ 川口成彦 ✕ オルケストル・アヴァン=ギャルドによるベートーヴェン「七重奏曲変ホ長調」「チェロ・ソナタ第1番」「ピアノ・ソナタ第20番」他:北とぴあ

2020年11月15日 07時18分34秒 | 日記

15日(日)。昨日の朝日朝刊第1面のコラム「天声人語」で12日に死去されたノーベル物理学賞受賞者・小柴昌俊さんが取り上げられていました それによると、小柴さんは父親のような軍人か、チャイコフスキーのような音楽家にあこがれたが、小児麻痺に夢を絶たれたとのこと 一時期、中学校で教えたことがあり、その時 次のような試験問題を出したそうです

「この世に摩擦というものがなくなったらどうなるか。記せ」

用意した正解は「白紙答案」。摩擦がなければ鉛筆の先が滑って紙に字が書けないからと説明し、生徒を驚かせたといいます   2002年のノーベル賞受賞後は、子供向けの公演を数多くこなし、「教科書を疑い、究明の卵をいつも心に持って」「達成したいと思う卵をどう孵化させるか考えて」と訴えかけたそうです

小柴さんの最大の功績は「素粒子ニュートリノ」の観測ですが、高校の時、物理と化学に相当苦しめられた私にはチンプンカンプンでさっぱり理解できません それでも、ノーベル物理学賞受賞と聞いた時は、日本人として誇らしく思いました あらためて小柴さんのご冥福をお祈りいたします

ということで、わが家に来てから今日で2236日目を迎え、複数の米主要メディアは13日、米大統領選挙でバイデン前副大統領が過半数の270人を大きく上回る306人の選挙人を、トランプ大統領が232人を獲得することが確実になり最終的な勝敗が決まったと報道したが、トランプ氏は選挙に不正があったとの立場を崩しておらず、「この先、何が起きるのか、どちらの政権になるかは、時間がたてば分かると思う」と語った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     時間が経たなくてもトランプの敗北は明白!  最後の悪あがきは世界中の笑いもの

 

         

 

昨日、王子の北とぴあ  つつじホールで「ベートーヴェン、交響曲前夜。」公演を聴きました プログラムはベートーヴェン①七重奏曲 変ホ長調 作品20、②歌曲「アデライーデ 作品46」、③同「優しき歌 WoO 123」、④チェロ・ソナタ 第1番 ヘ長調 作品5-1、⑤ピアノ・ソナタ 第20番 ト長調 作品49-2 です

演奏は⑤のフォルテピアノ独奏=川口成彦、管弦楽=オルケストル・アヴァン=ギャルドです この楽団はベートーヴェンの交響曲全曲演奏を目指す、若い世代の実力派奏者によるオリジナル楽器オーケストラで、バッハ・コレギウム・ジャパンの合唱メンバーでお馴染みの渡辺祐介が音楽監督を務めています この日の公演は、有志によるソロや室内楽で、ベートーヴェンの交響曲の「前夜」を追体験するというコンセプトです 出演者は以下の通りです

音楽監督・バス=渡辺祐介、ヴァイオリン=原田陽、ヴィオラ=廣海史帆、チェロ=山本徹、コントラバス=布施砂丘彦、クラリネット=満江菜穂子、ファゴット=岡本正之(都響)、ホルン=藤田麻理絵(新日本フィル)。このうち、渡辺、原田、廣海、山本、満江、藤田の6人はバッハ・コレギウム・ジャパンのレギュラー又は準レギュラーとしてお馴染みの顔ぶれです

自席はF列21番、センターブロック右通路側。座席はコロナ対応の市松模様配置をとります

 

     

 

プログラムを開いて驚いたのは演奏曲目のプログラミング(順序)です 次のような曲順になっていました

①七重奏曲 変ホ長調 作品20から「第1楽章」「第2楽章」

②チェロ・ソナタ 第1番 ヘ長調 作品5-1「第1楽章」「第2楽章」

③歌曲「優しき歌/君を愛す」WoO 123

    《 休 憩 》

④七重奏曲 変ホ長調 作品20から「第3楽章」「第4楽章」「第5楽章」

⑤ピアノ・ソナタ 第20番 ト長調 作品49-2「第1楽章」「第2楽章」

⑥歌曲「アデライーデ 作品46」

⑦七重奏曲 変ホ長調 作品20から「第6楽章」

以上の異常な順番について、コントラバス奏者の布施砂丘彦氏はプログラム・ノートに「ベートーヴェンという物語をアップデートする」と題して解説を加えています 彼はモーツアルトの手紙に登場する自作自演演奏会のプログラム(下記)を紹介します

①ハフナー交響曲「第1~第3楽章」

②歌劇「イドメネオ」からアリア

③ピアノ協奏曲

④独唱のためのシェーナ

⑤協奏交響曲

⑥ピアノ協奏曲とそれによる変奏

⑦歌劇「ル―チョ・シッラ」からシェーナ

⑧フーガの即興と、パイジェッロの歌劇の旋律による即興演奏、それにグルックの歌劇の旋律による自由な変奏

⑨声楽のためのロンド

⑩ハフナー交響曲の最終楽章(第4楽章)

布施氏は、このプログラミングについて「現代の『近代』的な演奏会とはまるで異なる 現代ではメインに君臨するはずの交響曲が分割され、その間にオペラ・アリアや協奏曲などが並ぶ豪華で雑多なプログラムだ コンサートと言うよりも『Tunes』のプレイリストや、フェスのセットリストという趣ではないか」とし、「この日のプログラムを、モーツアルトの演奏会の例に則って決定した」と書いています そのコンセプトで組まれたプログラムを古楽器で演奏しようというのがこの日の演奏会の趣旨のようです

趣旨は理解するとして、これほど感想を書きにくいコンサートもありません 何しろメインになるべき曲を分割のうえ分散してしまうのですから これまで同様、作品ごとに感想を書くしかなさそうです

「七重奏曲 変ホ長調 作品20」はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1798年から1799年にかけて作曲、1799年12月20日に私的に初演された後、1800年4月2日に初めての自主企画演奏会で「交響曲第1番」とともに公開初演されました 第1楽章「アダージョ ~ アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アダージョ・カンタービレ」、第3楽章「テンポ・ディ・メヌエット ~ トリオ」、第4楽章「アンダンテ・コン・ヴァリアツィオー二」、第5楽章「スケルツォ:アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ」、第6楽章「アンダンテ・コン・モート・アラ・マルチャ ~ プレスト」の6楽章からなります

編成は左から原田(Vn)、廣海(Va)、山本(Vc)、布施(Kb)、藤田(Hr)、岡本(Fg)、満江(Cl)という並びです    チェロ以外は立奏です。演奏は、第一にリード役の原田のヴァイオリンが素晴らしい  そして、対面する満江のクラリネットが良く歌います    2人ともバッハ・コレギウム・ジャパンで活躍中です    そして、大健闘だったのはナチュラルホルンを吹いた新日本フィルの藤田麻理絵です    難しい管楽器の中でも一段と難しいホルン、しかも近代ホルンと違いバルブのない単純なナチュラルホルンを あれほど安定した演奏で吹けるのは大したものだと思います チェロの山本はバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏時よりずっとリラックスして生き生きと弾いているのが印象的でした ヴィオラの廣海も良い音を奏でていました

「チェロ・ソナタ 第1番 ヘ長調 作品5-1」は1796年に作曲され、同年ベルリンで初演されました 第1楽章「アレグロ・ソステヌート ~ アレグロ」、第2楽章「ロンド:アレグロ・ヴィヴァーチェ」の2楽章から成ります 1989年生まれで 第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位の川口成彦のフォルテピアノに乗せて、チェロの山本徹が生命力に満ちた演奏を展開します

「ピアノ・ソナタ 第20番 ト長調 作品49-2」は1796年に作曲した作品で、第2楽章「テンポ・ディ・メヌエット」のテーマは「七重奏曲  作品20」の第3楽章に引用されています 古楽器特有の柔らかい響きを聴きながら、ベートーヴェンはこういう音を聴きながら作曲したのだろうか、と思ったりしました それにしても、磨き上げられた木目調のフォルテピアノの何と美しいことか まるで芸術作品です

歌曲「優しき歌 WoO 123」は、賛美歌作家のカール・フリードリヒ・ヴィルヘルム・ヘロゼーの詩をもとに、1795年に作曲した作品です 歌い出しの歌詞「君を愛す」の名前でも知られています

歌曲「アデライーデ 作品46」は、フリードリヒ・フォン・マッティソンの詩をもとに、1794年から翌95年にかけて作曲した作品です

この2曲は、川口のピアノフォルテの伴奏によりバスの渡辺祐介が歌いましたが、驚くべき声量と魅力のあるバスで会場を圧倒しました こういう実力者が集まったのがバッハ・コレギウム・ジャパンの合唱団です 世界に通用する合唱団は、こういうプロ中のプロ  一人一人に支えられているのだと あらためて思いました

この日のコンサートは、ベートーヴェンが「交響曲第1番」を作曲する前の時代の作品を演奏したわけですが、古楽器独特の柔らかい音色による演奏は、18世紀末の雰囲気を醸し出していて 十分堪能することができました

     

     

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