人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

エドワード・ベルガー監督「西部戦線異状なし」(2022年 Netflix)を観る ~ 究極の反戦映画「わずか数百メートルの陣地を得るために300万人以上の兵士が死んだ」

2023年01月23日 07時01分36秒 | 日記

23日(月)。わが家に来てから今日で2933日目を迎え、米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は20日の記者会見で、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」を「国際犯罪組織」に指定し追加制裁を科すと発表し、北朝鮮がワグネルに兵器を提供した証拠だとする衛星写真を公開し北朝鮮を非難した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ヒトラーに利用されたり 軍事会社に名前を借用されたり ワーグナーもいい迷惑だ

 

         

 

Netflix配信でエドワード・ベルガー監督による2022年製作ドイツ映画「西部戦線異状なし」(148分)を観ました

この映画はアカデミー賞を受賞した1930年のルイス・マイルストン監督による映画版で広く知られている、ドイツの作家エリッヒ・マリア・レマルクの長編小説「西部戦線異状なし」を原作の母国ドイツであらためて映画化した戦争ドラマです

物語の舞台は第一次世界大戦開戦から3年目の1917年のヨーロッパ。17歳のドイツ兵パウル・ボイメル(フェリックス・カメラー)は学友のアルベルト・クロップ、フランツ・ミュラー、ルートヴィヒ・ベームとともにドイツ帝国陸軍に入隊し、祖国のために戦おうと意気揚々と西部戦線へ赴く しかし、その高揚感と使命感は凄惨な現実を前に打ち砕かれる ともに志願した仲間たちは最前線で命をかけて戦ううち次々と命を落とし、パウルは次第に絶望と恐怖に呑み込まれていく 11月11日午前5時、ドイツ側の代表団は、これ以上死者を増やせないとして連合国側に停戦協定の締結を持ちかける ドイツに不利な条件で協定が結ばれ同日11時に発効することになるが、フリードリヒ将軍は政府の弱腰を批判し、ドイツの勝利で戦争を終わらせたいとして、10時45分に攻撃を開始するように命令を下す 落胆し、戦意を喪失したパウルは何人かのフランス兵を殺害した末に剣で胸を刺され、その直後に11時を迎えて戦争は終結する

 

     

 

この映画は、究極の反戦映画です 戦争は決して美しいものではなく、最前線で戦う兵士たちにとっては、泥にまみれながら、相手を殺さなければ自分が殺されるという極限状態の中で、”国家のために”戦わなければならないという現実を突きつけます 陸軍では、若い志願兵を前に職員が愛国心に満ちたスピーチをして彼らを熱狂させますが、「大事なのは個人ではなく全体だ」とアジるシーンが印象的です

フランス兵と共に無人地帯のクレーターに閉じ込められたパウルは彼をナイフで何度も刺し、自分を見つめながらゆっくりと死んでいくフランス兵を見て後悔し、死体に向かって許しを請うシーンは強烈です 胸ポケットから出て来た写真を見て、彼には妻と子供がいることを知ったパウルは罪悪感に囚われ、戦争が終わったら彼の妻の元に遺品の写真を届けることを誓います。しかし、その約束は果たされません

休戦協定が締結されたことを聞いた兵士たちは、「これで戦争が終わる。故郷に帰れる」と喜んでいたのに、将軍から「まもなく戦争は終わる。英雄として迎え入れられたいか、それとも臆病者として帰りたいか。諸君、11時まで戦って、勝って戦争を終わらせようではないか」と言われ、ある者は「もう戦争なんてごめんだ」と吐き捨てて逃亡を図ろうとして銃殺されます 終わるはずの戦争がまだ続くことを知らされたパウルの、絶望感に満ちた顔が忘れられません 11時までの15分間戦わなければ、彼は生き延びることが出来たのです

映画は最後に次のようなテロップが流れて幕を閉じます

「西部戦線は1914年10月の戦闘開始から程なくして塹壕戦で膠着、1918年11月の終戦まで前線はほぼ動かなかった わずか数百メートルの陣地を得るため、300万人以上の兵士が死亡、第一次世界大戦では約1700万人が命を落とした

 

     

 

さて、目を105年後の現在に転じると、ロシアが独立国家ウクライナに侵攻してから間もなく1年を迎えようとしています ロシアはウクライナの東部地方を中心に”我が領土”として拡大しようと目論み、多くの受刑者から成る民営軍事会社「ワグネル」の力を借りながら「力」でウクライナを制圧しようとしています これに対しウクライナは、欧米諸国の武器供与を受けながらロシアに対し徹底抗戦の構えをみせています この戦闘によりロシア、ウクライナの双方に多くの死傷者が出ていますが、戦争が長引けば長引くほどその数は増える一方です

この映画を観ると、ウクライナの東部地方では、毎日、きれいごとでない殺し合いが続いていることを想像してしまいます 第一線の兵士たちは好き好んで戦っているわけではないでしょう ひとくくりに「兵士」と呼ばれても、それぞれに名前があり家族がある一人の人間なのです 終わらせることが出来る戦争を終わらせられないのは、「自国が勝利したと思う戦果を得られるまでは戦争は止めない」というフリードリヒ将軍のようなトップがいるからです

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