5日(水)。わが家に来てから今日で3095日目を迎え、ロシアの独立系メディア「ドシチ」の元編集長ミハイル・ズイガリ氏が3日までに米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、プーチン大統領に近い複数の関係者の話だとして、民間軍事会社ワグネルの武装反乱が起きた6月24日、プーチン氏が出身地の北西部サンクトペテルブルクで同氏の「金庫番」と呼ばれる富豪のヨットに乗り、地元の祭りを楽しんでいたと指摘した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
プーチンの危機管理能力ゼロを露呈した出来事だ 反乱が成功してたら 後の祭りだ
昨日の夕食は、いただきものの「冷凍寿司」と「手羽煮」にしました 冷凍庫がいっぱいなので、早めに食べないと新しい冷凍食品が入らないのです ハッキリ言って手抜きです
昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、モーツアルト「ドン・ジョバンニ」を観ました これは今年5月20日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 出演は、ドン・ジョバンニ=ペーター・マッティ、ドンナ・アンナ=フェデリカ・ロンバルディ、ドンナ・エルヴィーラ=アナ・マリア・マルティネス、ドン・オッターヴォ=ベン・ブリス、ツェルリーナ=イン・ファン、レポレッロ=アダム・プラへトカ、マゼット=アルフレッド・ウォーカー、騎士長=アレクサンダー・ツィムバリュク。管弦楽=メトロポリタン歌劇場管弦楽団、指揮=ナタリー・シュトゥッツマン、演出=イヴォ・ヴァン・ホーヴェです
指揮をとるナタリー・シュトウッツマンは1965年、フランス・シュレンヌ生まれ コントラルト歌手として有名ですが、フィンランドの伝説的な指導者、ヨルマ・パヌラに師事し指揮法を学び、2011年から指揮者としても活躍し、2022/23シーズンからアトランタ交響楽団音楽監督を務めています 本作がMETデビューです
オペラ「ドン・ジョバンニ」はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)がダ・ポンテの台本に基づき1787年に作曲、同年10月29日にプラハ国立劇場で初演されました
物語の舞台はスペインのある町。大貴族のドン・ジョバンニは、2000人以上の女性をものにした天下の放蕩者 今宵も従者レポレッロを見張りに立たせ、騎士長の娘ドンナ・アンナに夜這いをかける。しかし、アンナに騒がれ、駆けつけた騎士長に決闘を挑まれ、彼を殺してしまう アンナは婚約者のドン・オーターヴォとともに復讐を誓う 次にドン・ジョバンニは農民マゼットとの結婚を控えた村娘ツェルリーナに目を付ける 口説き落とせたと思った瞬間、以前棄てたドンナ・エルヴィーラに邪魔される 懲りないドン・ジョバンニは館で大宴会を開き、ツェルリーナを部屋に連れ込もうとするが、彼女に大声を上げられて失敗する レポレッロに罪を被せようとするが、宴会に忍び込んだアンナやエルヴィーラら一同に激しくなじられる。大騒動のうちに幕が下りる(以上、第1幕)
エルヴィーラの侍女に目を付けたジョバンニは、レポレッロと服を取り替えてエルヴィーラを追い払うと、その姿のまま、ジョバンニに喧嘩を売りにきたマゼットを叩きのめす エルヴィーラはジョバンニに変装したレポレッロが彼女を口説くので喜ぶが、やがてレポレッロが正体を現し愕然とする 夜の墓場でドン・ジョバンニは殺した騎士長の石像と出会い、やり取りの末に石像を晩餐に招待する 石像は本当にやって来る。石像は改心を迫るがジョバンニは頑として拒む ついに石像はジョバンニを地獄へ連れ去り、残された一同は悪人の滅亡を喜ぶ(以上、第2幕)
この歌劇は「オペラ・ブッファ」(喜歌劇)ですが、正式なタイトルは「罰せられた放蕩者またはドン・ジョバンニ」です イヴォ・ヴァン・ホーヴェの演出は「オペラ・ブッファ」ではなく「罰せられた放蕩者」としてのドン・ジョバン二に焦点を当てています ひと言で言えば、ドン・ジョバンニを性犯罪者として扱っています。これが本公演の大きな特徴です
登場人物の衣装は21世紀そのもので、ドン・ジョバンニやレポレッロはスーツだし、ドンナ・アンナは冒頭、高級ネグリジェで登場し、その後はエレガントなドレス姿です これは、演出家の「若い人もオペラに引き込みたい」という意図の現れだと思いますが、登場人物の過剰とも思われる演技とともに、妙にリアリティがあります ビックリしたのは、第1幕のドン・ジョバンニと騎士長との決闘で、いきなりドン・ジョバンニが拳銃で騎士長を撃ち殺したことです これでは決闘になりませんが、犯罪者ならやるでしょう。こういう演出は初めて見ました
舞台はエッシャーの絵に出てくるような階段があったり通路があったりする建物が数軒並び、その手前に広場があるシンプルな構成です さらに、舞台転換はほとんどなく、第2幕の最後の「ドン・ジョバンニの地獄落ち」の場面だけが壁に囲まれる形になり、ドン・ジョバンニが地獄に落ちた後は、再び元の建物の姿に戻り、そのままフィナーレを迎えます
今回の公演を観てアメリカのMETらしいな、と思ったのはマゼットとツェルリーナの配役です マゼットには黒人歌手を、ツェルリーナには中国人歌手を起用しています これは米国の「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)の一環としての配役ではないかと思いますが、こういうチャレンジはMETが先鞭をつけるケースが多いように思います
ドン・ジョバンニを歌ったペーター・マッティは1965年スウェーデン生まれのバリトンです 過去のライブビューイングで忘れられないのはロッシーニ「セヴィリアの理髪師」でフィガロを歌い演じた時のパフォーマンスです 個人的には、あれを超えるフィガロはいないと思います 今回のドン・ジョバンニでは、”貴族”をひけらかして甘い言葉で次々と女性を口説き落とそうとする”女たらし”を艶のある歌声で魅力的に歌い演じました
ドンナ・アンナを歌ったフェデリカ・ロンバルディは1989年イタリア生まれのソプラノです リリカルな美しい声で、役柄に成り切った演技力も魅力でした
ドンナ・エルヴィーラを歌ったアナ・マリア・マルティネスは1971年プエルトリコ生まれのソプラノです 第1幕での”巻き舌”の歌唱が観客に大受けしていました 幕間のインタビューでドンナ・エルヴィーラとドン・ジョバンニとの関係について訊かれ、「ドン・ジョバンニは『カタログの歌』によると、計算上一夜に一人の女性をモノにしていますが、エルヴィーラは『私を妻と呼んで虜にして、3日間一緒に過ごしたのに、私を捨てて逃げて行った』と語っています つまり、彼女は他の女性よりも自分の方がジョバンニの愛を多く受けていると思っているのです」と語っていました。「なるほど、そういう計算もあるのか」と、感心しました
ドン・オッターヴォを歌ったベン・ブリスはアメリカ・カンザス州出身のテノールです 柔軟で軽やかな歌声で、高音が良く伸びます。リアルな演技力も光りました
ツェルリーナを歌ったイン・ファンは中国出身のソプラノです しっかりしたヴォイス・コントロールのもと、可憐でも したたかでもある若い娘を見事に歌い演じました
レポレッロを歌ったアダム・プラへトカは1985年チェコ・プラハ出身のバスバリトンです 豊かで深みのある歌声で、コミカルな演技も光りました
MET初登場のナタリー・シュトゥッツマンの指揮も立派でした 「序曲」は集中力に満ち、劇中では歌手に寄り添って指揮をとりました 自らが歌手であることから、歌手との呼吸をはかるのはお手の物なのでしょう
今シーズンのMETライブビューイングも、次のモーツアルト「魔笛」を残すのみとなりました この公演もナタリー・シュトゥッツマンが指揮をとります 日本での上映は7月14日から20日までです。今から楽しみです