20日(木)。わが家に来てから今日で3110日目を迎え、議会襲撃事件などを通じて2020年米大統領選の結果を覆そうとした疑惑をめぐり、トランプ前大統領は18日、自身が捜査対象になっていることを通知する書面を連邦検察から受け取ったと明らかにし、「この魔女狩りは、選挙妨害であり、法執行機関を完全に政治的な武器にしている」と捜査を批判した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
トランプの辞書にない言葉 = 羞恥心、自制心、謙虚さ、法の尊重、危機管理能力
昨日、夕食に「蒸しジャガ・タラコバター」「生野菜とアボカドのサラダ」「冷奴(シラス・紫蘇・オクラ)」「舞茸の味噌汁」を作りました 「蒸しジャガ~」は小ぶりの新ジャガを使いますが、娘の大好物です
昨日、新宿ピカデリーで「METライブビューイング2022/2023シーズン」最後の公演、モーツアルト「魔笛」を観ました これは今年6月3日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です
出演は、パミーナ=エリン・モーリー、タミーノ=ローレンス・ブラウンリー、パパゲーノ=トーマス・オーリマンス、パパゲーナ=アシュリー・エマーソン、夜の女王=キャスリン・ルイック、ザラストロ=スティーヴン・ミリング、モノスタトス=ブレントン・ライアン、弁者=ハロルド・ウィルソン。合唱=メトロポリタン歌劇場合唱団、指揮=ナタリー・シュトゥッツマン、演出=サイモン・マクバーニーです
ナタリー・シュトゥッツマンは前日までMETライブ「ドン・ジョバン二」を指揮していましたが、続いて「魔笛」を振ることになりました 同じモーツアルトの歌劇ですが、曲想はまったく違います
彼女がどう振り分けるか、聴きものです
「魔笛 K.620」はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)がヨハン・エマーヌエル・シカネーダーの台本を基に最晩年の1791年に作曲、同年9月末にウィーン郊外のアウフ・デア・ヴィーデン劇場で初演された全2幕から成るドイツ語によるジングシュピール(歌芝居)です
王子タミーノが大蛇に追われていると、夜の女王に仕える3人の侍女が登場し大蛇を退治する そこに夜の女王に生きた鳥を献上する鳥刺しパパゲーノがやってきて、大蛇は自分が殺したと嘘をつくが、侍女たちに叱られる
侍女たちはタミーノに、夜の女王の娘パミーナを悪人ザラストロの元から救い出してほしいと言う
タミーノはパミーナの絵姿に一目ぼれする
そこに夜の女王が現れ、タミーノにパミーナを救出するよう依頼する
侍女たちはタミーノに魔法の笛を、パパゲーナに魔法の鈴を手渡す
2人はザラストロの神殿に向かう。神殿前で離ればなれになった2人だが、タミーノの魔法の笛を聴いたパパゲーノは、出会ったパミーナを彼のもとに連れて行こうとする。見張りのモノスタトスと奴隷たちに行く手を阻まれるが、魔法の鈴で一味を退ける
ザラストロが現れ、邪悪な母親から娘のパミーナを守っているのだと語る
話を聞くと、ザラストロは悪人ではなく本当は偉大な高僧であることが分かる
ザラストロはタミーノとパミーナに対し、お互いに結ばれるための試練を命じる
(以上、第1幕)
タミーノに課せられた最初の試練は「沈黙」。パミーナの前に夜の女王が再び現れ、パミーナに対しザラストロに復讐せよと激しく歌う ザラストロはパミーナに愛を説く
一方、パパゲーノのもとに老婆(実は若いパパゲーナ)が現れるが、すぐに消えてしまう
パミーナはタミーノと再会するが、彼は沈黙したままパミーナと話をしようとしない
自分を嫌いになったと思い込んだパミーナは悲しみのあまり自殺しようと考えるが、3人の童子に止められる
沈黙の試練を乗り越えたタミーノは、続く「火」と「水」の試練にパミーナとともに挑み、克服する
パパゲーノも若い娘の姿に変わったパパゲーナと出逢う
ザラストロは王子タミーノとパミーナを祝福する
(以上、第2幕)
1957年 英国ケンブリッジ生まれのサイモン・マクバーニーの演出が素晴らしい 音響と映像の両面で、ハイテク(映像表現、舞台装置など)とローテク(効果音など)を組み合わせた立体的な演出により、観客をメルヘンチックな世界に引き込みます
オーケストラピットの床が高く設定されており、観客からもオーケストラの楽員が見えるようになっています
また、張り出し舞台になっていて、ザラストロは指揮者の後方の通路から登場します
これらの舞台造りは、演奏する側と観衆側との垣根を低くし、オペラをより身近に感じさせることを狙ったものと思われますが、見事に成功していました
第1幕冒頭で、3人の侍女が、大蛇に襲われて気を失っているタミーノの上着やズボンや靴を脱がせて持ち去ってしまうシーンには会場大爆笑でした また、そのすぐ後、目が覚めたタミーノがパパゲーノに「ここはどこ?」と訊くと、パパゲーノは「向こうに山があるでしょう。こっち(反対側)にも山があるでしょう。山と山の間が”ここ”」と答え、これにも大爆笑です
このセリフはシカネーダーの台本にはありません
アドリブ的なセリフはこのシーンに限らず何カ所かで登場しますが、1791年の初演時にパパゲーノを演じたシカネーダーは、きっとアドリブをかまして観衆に受けていたに違いありません
「魔笛」初演の様子はミロス・フォアマン監督、ピーター・シェーファー脚本による映画「アマデウス」(1984年)で観ることができますが、まるでドタバタ喜劇です
マクバーニーは、最晩年のモーツアルトが、それまで貴族を対象にイタリア語で書いてきたオペラから離れ、一般大衆を対象にドイツ語でジングシュピール(歌芝居)の形で書いたことを強く意識して今回の演出に当たっていると思いました
また、タミーノの吹く魔法の笛は、MET管・首席フルート奏者モリスをステージに上げて吹かせたり、パパゲーノの弾くグロッケンシュピールはMET専属ピアニストのワゴーンに舞台上手の角で演奏させたりと、工夫を凝らしています また、タミーノがパミーナの絵姿を見るのはペンダントではなくスマホでした
登場人物は基本的には現代の衣装を身に着けていますが、他のプロダクションとまったく異なるのは、夜の女王と3人の童子です 夜の女王は脚が悪い老女という設定で 車椅子に乗っており、かなりダーク・サイドの面を前面に出しています
また、3人の童子は子役ですが、頭髪は真っ白で身体は肋骨がむき出しで老人のようなメイクが施されています
これは童子ながら老人のような智恵を持っていることを象徴していると思われます
また、パパゲーノは服や顔にペンキが塗られ、いつも肩に脚立をかついで動き回っています
鳥刺しというよりはペンキ屋さんです
また、演出で驚いたのはラストシーンです 何と、ザラストロは床に倒れ込んでいる夜の女王を助け起こし、彼女を許すのです
こういう解釈の演出は初めて観ました
モーツアルトのオペラは主人公と騎士長が死ぬ「ドン・ジョバンニ」以外は、登場人物が死なずハッピーエンドで終わりますが、「最後にはすべての人を許してしまう」モーツアルトのオペラの精神を拡大解釈した演出なのだろうか・・・・と、ここまで考えて、はたと気が付きました
モーツアルトは「自由、平等、博愛」の3つを理念とする「フリーメイスン」のメンバーでしたが、この「魔笛」は「♭記号3つの変ホ長調」を基調とし、3つの和音、3人の侍女、3人の童子など「3」にまつわる要素が見え隠れしています
マクバーニーは最後にダークサイドの夜の女王を救うことによって、フリーメイスンの理念のうち「博愛」を表したかったのではないだろうか
パミーナを歌ったエリン・モーリーは1980年、米ソルトレイクシティ生まれのソプラノですが、ヒロインになり切った歌唱力と演技力で聴衆を魅了しました
タミーノを歌ったローレンス・ブラウンリーは1972年、米オハイオ州生まれのテノールですが、ベルカントの歌唱が魅力です
パパゲーノを歌ったトーマス・オーリマンスは1977年、オランダ生まれのバリトンですが、コミカルな演技力で聴衆の圧倒的な支持を得ました
夜の女王を歌ったキャスリン・ルイックは1983年、米コネチカット州生まれのソプラノですが、METで「夜の女王」を歌うのは今回が50回目とのことです 圧倒的なコロラトゥーラで夜の女王の怒りを歌い上げました
ザラストロを歌ったスティーヴン・ミリングは1965年、コペンハーゲン生まれのバスですが、背丈もありザラストロに相応しい威厳のある低音の魅力を発揮しました
特筆すべきは、ナタリー・シュトゥッツマン指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団による演奏です。歌手に寄り添いながらメリハリのある演奏で「魔笛」の魅力を存分に引き出していました
今シーズンのMETライブビューイングもこれでお終いです 寂しいですが、次シーズンに期待したいと思います