人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

上原彩子ピアノ・リサイタルを聴く~浜離宮ランチタイムコンサート/渡辺玲子レクチャーコンサートを聴く~白寿ホール

2016年10月21日 08時24分49秒 | 日記

21日(金).わが家に来てから今日で753日目を迎え,米大統領選挙で最終回となる候補者テレビ討論会で,共和党のトランプが劣勢を挽回できなかったというニュースを見て 感想を述べるモコタロです

 

          

             トランプは切り札が無くて ぼくのように1歩前に出ることが 出来なかったんだね

 

  閑話休題  

 

昨日午前11半から浜離宮朝日ホールでランチタイムコンサート「上原彩子ピアノ・リサイタル」を聴きました プログラムは①モーツアルト「ピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330」,②シューマン「謝肉祭」,③ムソルグスキー「展覧会の絵」です

 

          

 

自席は2階左側バルコニー席で,10~12月は同じ席です 浜離宮朝日ホールの2階バルコニー席は1列しかなく ステージが見やすく作られているので,試しに選んでみました 座ってみると隣人とのトラブルが起こらないように椅子が配置されているので正解でした

上原彩子が淡いピンクのステージ衣装で颯爽と登場し,ピアノに向かいます 1曲目はモーツアルト「ピアノ・ソナタ第10番ハ長調K.330」です.この曲は1783年(モーツアルト29歳)に作曲されました 第1楽章「アレグロ・モデラート」,第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」,第3楽章「アレグレット」から成ります

第1楽章「アレグロ・モデラート」が軽快なテンポで始まります モーツアルトで重要なのはテンポです.この日の青空のような明るく弾むような音楽が展開します 第2楽章ではメロディーを美しく歌わせます 第3楽章では再び軽快なテンポで進めフィナーレを迎えます

ここで,上原はマイクを持って挨拶します

「今日はお天気が良い中,ようこそお出でくださいました.ランチタイムコンサートといういことで,今日のプログラムを料理に例えますと,今演奏したモーツアルトが前菜とすれば,次のシューマンと後半のムソルグスキーは重めのメインディッシュになります 2曲目と3曲目の共通点は,組曲となっているところ,相違点はシューマンが比較的明るいのに対してムソルグスキーは暗い感じの曲であることです

と,挨拶している真っ最中の11時50分ごろ会場が少し揺れました.地震です 客席がざわつきますが,上原は気が付いているのかいないのか分かりませんが,何事もないかのように淡々と話を続けました 三児の母親である肝っ玉母さんの上原のことです.大した地震ではないと思って続けたのだと思います

1曲目のシューマン「謝肉祭」は,シューマンがクララの父親ヴィークのもとでピアノを学んでいたとき,エルネスティーネという男爵令嬢が入門してきたら,ヴィークの娘クララそっちのけで夢中になり,彼女の出身地ボヘミアのアッシュの綴り文字を音符に織り込んでピアノ曲を書くことを思い着き,この作品を書いたのでした 第1曲「前口上」から第20曲「ペリシテ人と闘うダヴィット同盟員」まで20の小品から構成されています 上原は少し速めのテンポで,曲に応じてメリハリを付けて演奏を展開しました とくに最後の第20曲は鮮やかな演奏でした 2002年の第12回チャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門で女性で初,日本人として初の第1位に輝いた上原彩子の本領発揮の演奏でした

 

          

 

ここで15分間の休憩に入ります.女子トイレが長蛇の列です そこでハタと思ったのですが,このランチタイムコンサートは圧倒的に女性客が多いのではないか,ということです 大雑把に数えて7対3位の割合で女性が多いように思います

プログラム後半はムソルグスキー「展覧会の絵」です.上原彩子が真っ赤なドレスに”お色直し”して登場します この曲は,友人の画家の遺作展で観た10点の絵画の印象をもとに,曲をつなぐプロムナードとともに組曲として作曲したものです 作曲者が生前の時には演奏されることはありませんでしたが,ラヴェルが管弦楽用に編曲して世界的に通用する曲に”昇格”しました

上原は曲に応じてテンポや強弱を自在に変えて,メリハリのある演奏を展開します 例えば,第5曲「卵の殻を付けた雛鳥の踊り」では,まるで卵から孵ったばかりのヒヨコが忙しなくピヨピヨと歩き回る様子が目に浮かぶようです また次の第6曲「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」では,金持ちのサミュエルが『 おい,年貢を納める日はとっくに過ぎているんだぜ.今すぐ納めてもらおうか 』と脅すと,シュミュイレが『 お代官様,今はご勘弁くだせえ.3日後にはきっとお納めいたしますで 』と甲高い声の早口で卑屈に訴えているような様子がありありと浮かんできます 最後の第10曲「キエフの大門」はパワフルな上原の実力発揮といったところで 圧巻でした こういう演奏を聴くと,ラヴェルの管弦楽版も良いけれど,また,先日フォーレ四重奏団による演奏で聴いたピアノと弦楽による演奏も味があるけれど,ピアノ独奏のオリジナル版の演奏も捨てたものではないと思います

会場一杯の拍手に上原はクライスラー(ラフマニノフ編)「愛の悲しみ」を超絶技巧で演奏,再び大きな拍手を浴びました  充実したコンサートでした

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

いったん家に帰って一休みしてから,代々木公園の白寿ホールに向かいました.午後7時から「渡辺玲子プロデュース レクチャーコンサート」を聴きました 演奏曲目は①ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」,②シューマン「F.A.Eソナタ」より「間奏曲」,③ブラームス「F.A.Eソナタ」より「スケルツォ」,④フランク「ヴァイオリン・ソナタ」です

 

          

 

自席はI列3番,9列目の左から3つ入った席です.会場は9割方埋まっている感じです

このレクチャーコンサートは今回で2回目を迎えるとのことです.最初にヴァイオリニスト・渡辺玲子とピアニスト・江口玲がステージに登場し,渡辺がマイクを持って今回のレクチャーコンサートの進め方を説明しました それによると,最初にベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ第5番”春”」についてレクチャーし,次いで本番の演奏を行う,その後シューマンとブラームスの曲をレクチャーして本番を演奏,休憩後にフランクの「ヴァイオリン・ソナタ」について解説し,本番を演奏する,ということでした

最初に渡辺がベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ”春”」について,演奏を交えながら解説しました かなり専門的な知識を要するレベルの高い解説なのでついて行くのが大変です 初めて渡辺玲子の声で解説を聴きましたが,現在ニューヨーク在住ということもあってか,アメリカ人が日本語を話しているようなしゃべり方です しかも早口なので注意深く耳を傾けていないと言っていることが把握できません しかし,演奏を交えながらの解説なので何となく言わんとするところは分かります

「スプリング・ソナタというと皆さん,優しくて美しい曲というイメージがあるかも知れませんが,この曲はスケールの大きな曲なんです 今まではソナタと言えば3楽章形式が普通でしたが,この曲は4楽章から成ります ベートーヴェンは同じメロディーを循環させるように何度か使っています 循環形式は何もフランクに始まったことではなく,ベートーヴェンの曲にすでに表れているのです.名曲の特徴は一貫性,多様性,コントラストといった条件を備えているかどうかですが,ベートーヴェンのスプリング・ソナタはその条件を備えています

彼女は時々自分が手に負えない時は江口氏に振るので,江口氏は油断できません 江口氏の解説によると,

「ベートーヴェンはメロディーを作るのが下手だったのではないか.随分苦労して曲を作り上げている

ということです

二人はいったん引っ込んで,再度ステージに登場し,本番の演奏に入ります 江口は電子ブックを楽譜代わりに使用します.しかし,彼の傍らには譜めくりの男性が控えています 彼は江口が演奏中まったく動きません.指一本を除いては つまり,リモコン操作で江口の電子ブックの画面上の譜面をめくっているのです

レクチャーを聴いてから演奏を聴くと,新たに知った知識が生かされて,曲に対する理解が深まります

次いでシューマンの「F.A.Eソナタ」より「間奏曲」とブラームス「F.A.Eソナタ」より「スケルツォ」のレクチャーを行い,ベートーヴェンとシューマンとブラームスの3曲は,主題が循環する例として取り上げたと解説し,演奏に入りました ブラームスの「スケルツォ」はベートーヴェンの第5交響曲の”運命のテーマ”の変形であるという解説を受けて演奏を聴くので,その通りだと理解できます

休憩後はフランク「ヴァイオリン・ソナタ」です この曲については,主題が曲全体を通して現れる”循環形式”について演奏を交えて解説しました 面白いと思ったのは,4つの楽章の連関性です 解説によると,第1楽章の終わりと第2楽章の始まり,第2楽章の終わりと第3楽章の始まり,第3楽章の終わりと第4楽章の始まりは,調性の違いがあっても,実際に聴く立場からは,前の楽章と結びついているという印象を受けるように曲が書かれている したがって,楽章間を大きく空けて演奏するのは間違いだ,という説明です

その後,本番の演奏に入りました.循環形式の解説を聞いた上で生の演奏を聴いたので,具体的にどこの部分が循環形式になっているのかが理解できます さらに楽章間を空けない演奏を聴くことにより,実際に耳で聴いて解説の意味が理解できます 渡辺玲子は最良の相棒・江口玲(二人はジュリアード音楽院時代からの付き合い)のしっかりしたサポートのもと,名器グァルネリ・デル・ジェス『ムンツ』を駆使し,説得力のある演奏を展開しました

私にとっては極めてハードルの高いレクチャーコンサートでしたが,本番の演奏を含めて 演奏する側が曲をどう捉え何を考えて演奏しているのかが良く分かり 本当に参考になりました 来年も開催するとのことなので 是非また聴きたいと思います

 

          

 

本日toraブログの登録読者数が1,000人を突破しました いつもご覧いただいている読者の皆さまのお陰です.ありがとうございました この記録は2011年2月15日に開設して以来5年8か月6日目での達成で,この間に書いた日記は2159本となりました これからも1日も休まずアップしていきますので,今後ともよろしくご愛読をお願いいたします

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カンブルラン+五嶋みどり+読売日響でコルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲」他を聴く

2016年10月20日 08時41分41秒 | 日記

20日(木).わが家に来てから今日で752日目を迎え,中国の7~9月の国内総生産(GDP)が6.7%増だったというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

              中国の発表する経済数値はどこまで信用できるんだろうか?

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「鶏のほったらかし焼き」,「生野菜とワカメのサラダ」,「小松菜のお浸し」を作りました 「鶏の~」はもも肉を弱火でひたすら焼きます.人によっては ちょっと焦げているように見えるかも知れません.ご安心ください.あなたの目は正常です

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで読売日響定期演奏会を聴きました プログラムは①シューベルト(ウェーベルン編)「6つのドイツ舞曲」,②コルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」,③J.M.シュタウト「ヴァイオリン協奏曲『オスカー』」(日本初演),④デュティユー「交響曲第2番”ル・ドゥーブル”」です ②と③のヴァイオリン独唱は五嶋みどり,指揮はシルヴァン・カンブルランです

 

          

 

コンミスは日下紗矢子,その隣にはもう一人のコンマス長原幸太がスタンバイします

1曲目のシューベルト(ウェーベルン編)「6つのドイツ舞曲」は,シューベルトが1824年10月に書いた鍵盤楽器のための曲を,ウェーベルンが1931年にウィーンの出版社から依頼されて編曲した作品です

カンブルランの指揮で第1曲が開始されます.私はシェーンベルクとかウェーベルンとかいう名前が出てくると身構えてしまうのですが,率直言ってこの曲はオシャレな編曲だと思いました ウィーン情緒豊かなワルツのような雰囲気の曲と言ったら良いでしょうか ウェーベルンに対する評価ポイントが上がりました もっともシューベルトあってのウェーベルンですが

2曲目はコルンゴルト「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」です 黒と白を基調とするシンプルでシックな衣装の五嶋みどりが颯爽と登場します

エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトのミドルネーム「ヴォルフガング」はウォルフガング・アマデウス・モーツアルトから採られています モーツアルトと同様 幼い頃から音楽の才能を現わし,ウィーンで活躍しましたが,ナチスの台頭に伴って1934年にアメリカに渡り,ハリウッドで映画音楽を数多く作曲しました マーラーは彼を「神童」と呼びましたが,このヴァイオリン協奏曲はマーラー夫人・アルマに献呈されています

第1楽章「モデラート・ノビレ」,第2楽章「ロマンス:アンダンテ」,第3楽章「フィナーレ:アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ」から成ります カンブルランのタクトで第1楽章に入ります.独奏ヴァイオリンが第1主題を奏でます 印象としては随分おとなしい演奏です しかしカデンツァに入ると彼女の本領発揮です.カデンツァに至るまで”抑えていた”のではないか,とさえ思ったほどです 第2楽章ではグァルネリ・デル・ジェス『エクス・フーベルマン』(1734年製)が弱音の美しさを発揮します 先日,ノット+東響とベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏したイザベル・ファウストもそうでしたが,本当の実力者は弱音で勝負するようです 第3楽章では一転,技巧的なパッセージを苦も無く演奏するとともに,抒情的なメロディーを朗々と奏でます 

彼女の演奏スタイルを見ていると,ヴァイオリンの弓が剣に見え,剣豪が剣を構えて「寄らば切るぞ」と言っているように見えます.そして身体全体を使って激しく動きながら演奏します.その動きはスキのないサムライといった感じです

コルンゴルトの「ヴァイオリン協奏曲」との出会いは,衝撃的でした 今からン十年前のこと.神保町にあるヤマハ音楽教室のフルート教室に通っていた時,同じグループになった仲間にO君という 当時早稲田の大学院生がいました  彼の方がいくつか年下でしたが何故か気が合い,ある日横浜の家に招かれました.その時 彼のレコード・コレクションを見てビックリしました  当時私は数百枚クラシック・レコードを所有しており,彼も同じくらい所持していたのですが,その内容が全く違うのです.私の方はオーソドックスというか古典派,ロマン派を中心に収集していたのに対し,彼はほとんどイギリスやオーストリアを中心とする近現代のクラシック音楽のレコードだったのです.当時彼が一番夢中になっていたのはアーノルド・バックス(1883-1953)というイギリスの作曲家の交響曲で,譜面を見ながら聴いていました.これはある意味ショックでした その時に彼が聴かせてくれたのがバックスの「交響曲第5番」とコルンゴルトの「ヴァイオリン協奏曲」です 後者はウルフ・ヘルシャーのヴァイオリン独奏,ウィリー・マッテス指揮南ドイツ放送交響楽団による演奏です

 

          

 

初めてこの曲を聴いた時に感じたのは,世の中にはこういうロマンティックで宇宙的な音楽があるんだ,ということです その時は音楽そのものに強く惹かれると同時に,ジャケットの写真にも引き付けられました 灯台のサーチライトでしょうか.強いインパクトがあります.早速,彼に教わった神保町の「バイロイト」というクラシックレコード専門店(今はない)に行き 買い求めました CDと違ってLPレコードにはジャケットを見る楽しみがあります.今でもこの1枚は私の宝物です

さて,コンサートの話に戻りましょう ここで15分間の休憩に入りますが,体調が万全ではないので帰ろうかと思ったのですが,後半も五嶋みどりがヴァイオリンを弾くというので残ることにしました

後半1曲目はオーストリア生まれ(1974年)のヨハネス・マリア・シュタウト作曲「ヴァイオリン協奏曲『オスカー』」です この曲は「独奏ヴァイオリン,弦楽器と打楽器のための曲」で,2014年8月27日に五嶋みどりのヴァイオリン独奏により初演され独奏者に献呈されました 全体は連続して演奏される5つの部分から構成されています

五嶋みどりのために書かれた曲とあって,相当な技巧を要する複雑かつ演奏困難な作品のような気がします おそらく楽譜は真っ黒なのでしょう ただ,コルンゴルトのコンチェルトの演奏と共通していたのは弱音の美しさです

コンチェルトを2曲弾いたのですから,当然,アンコールはありません

ここで次の曲の演奏のためにステージ上の模様替えが かなり時間を取って行われます.最後の曲はフランスの作曲家デュティユーの「交響曲第2番『ル・ドゥーブル』」です

デュティユーは2曲の交響曲を作曲していますが,この第2番はクーセヴィツキ-財団の委嘱で,ボストン交響楽団創立75周年のために作曲されました この曲は2つの管弦楽群で構成されます.小管弦楽は12人の独奏者が指揮者の前に半円を描くように配置されます.その周りを大管弦楽(フル・オーケストラ)が囲みます この2つの管弦楽群が対話と対立を繰り返します.「ル・ドゥーブル」というのは「分身」という意味です

小管弦楽群は,左から日下紗矢子(Vn),瀧村依里(同),鈴木康浩(Va) ,女性(Vc),吉田将(Fg),藤井洋子(Cl),蠣崎耕三(Ob)が並び,その後方に,右からティンパニ,トランペット,トロンボーン,チェレスタ,チェンバロがスタンバイします チェンバロはバッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木優人です.彼は6月7日の読響アンサンブルに指揮者として出演したので その縁で声を掛けられたのかも知れません

この曲を聴いた印象を一言で言い表すのは非常に困難です プログラム冊子に音楽評論家の芝辻純子さんがこの曲の解説を書かれていますが,その言葉を借りると「保守でも前衛でもない,独特の透明感のある,洗練された響きの音楽」というのが,的確にこの曲の性格を表していると思います

カンブルラン+読響の演奏の労を多とするものですが,この日のプログラムは,コルンゴルトを除くすべての曲が初めて聴く作品だったので,緊張がハンパなく続き きつかったというのが正直な感想です

話は180度変わりますが,近くの席のおじさんが,出演者が登場する時や退場する時に拍手をする際,皆が拍手を終えているのに一人で続けていたのには閉口しました たまにいますね.こういう人が

例えば,コンサートの模様が録音・録画されるとします(昨日は,後日 日本テレビで放映すると告知されていました).ライブ録音・録画ですから当然 演奏後の拍手も収録されることになります 近くの席のおじさんのような人は,後で放映されるコンサートの模様をテレビで観ながら こう言います

「今の聴いた? 実を言うと 最後まで聴こえてた拍手は,この俺のだよ

そんなに目立ちたいのでしょうか? 根性が卑しいですね こういう人とは絶対お友達になりたくないと思います

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東京フィル「響きの森クラシック・シリーズ」会員継続へ~チョン・ミョンフン登場!/萩原浩著「家族写真」を読む

2016年10月19日 07時33分55秒 | 日記

19日(水).昨日は東京藝大シンフォニーオーケストラの「プロムナード コンサート」を聴く予定でしたが,体調が思わしくないので家で身体を休めることにしました 

ということで,わが家に来てから今日で751日目を迎え,2020年東京オリンピック・パラリンピックのボート・カヌー会場に関して迷走する事態の打開策を述べるモコタロです

 

          

            IOCのバッハ会長を説得できるのはベートーヴェンしかいないよ

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚バラこんにゃく」と「生野菜サラダ」を作りました 「豚バラ~」は初挑戦ですが,子供たちにも好評でした

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日の日経夕刊第1面のコラム「あすへの話題」に,元警察庁長官・漆間巌氏が「予期せぬ出来事」という題でエッセイを寄せています 超訳すると

「1980年代,ソ連内政担当の大使館員として赴任していたが,1982年11月18日にモスクワ音楽院大ホールで開かれたコンサートが忘れられない 当時79歳のムラヴィンスキーがレニングラード・フィル(現サンクト・ペテルブルク・フィル)を指揮してショスタコーヴィチの交響曲第5番を演奏した 演奏が始まって暫くすると,ステージ上で火花が飛び散ると同時に照明が全部消えてしまった 5分以上続いたと思うが,彼は,何事もなかったかのように指揮を続け,楽団員も平然と演奏を行った.演奏後は大拍手であったが,彼はニコリともしなかった.単なる事故か,それとも嫌がらせか,未だに判然としない

いかにもムラヴィンスキーらしいエピソードだと思いました エフゲニー・ムラヴィンスキーは1903年6月4日レニングラードで生まれました(1988年1月19日に死去).1938年に35歳の若さでレニングラード・フィルの常任指揮者に就任して以来,音楽に対する厳しく真摯な姿勢により同オーケストラを世界屈指のオーケストラに育て上げました

ショスタコービチ「交響曲第5番」はムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー・アカデミー管弦楽団によって1937年に初演されました

下の写真は1978年6月12日にウィーンのムジークフェライン・ザールで演奏されたムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルによるショスタコーヴィチ「交響曲第5番」のライブ録音CDです 漆間氏がレニングラードで聴いた公演の4年前の演奏です.厳しい音楽が聴こえます

 

          

 

  またまた,閑話休題  

 

文京シビックホール事務局から「響きの森クラシック・シリーズ」2017-2018シーズン・セット券の継続案内が届きました このシリーズは年4回,東京フィルが演奏しています.次シーズンはシリーズ15周年ということで,内容が一段と充実しています

 

          

 

このシリーズは4回とも毎回土曜日午後3時開演で,会場は文京シビックホール(地下鉄「後楽園駅」「春日駅」)です

①5月20日:チャイコフスキー「イタリア奇想曲」,同「ピアノ協奏曲第1番」,同「交響曲第5番」 指揮=アンドレア・バッティストーニ,ピアノ=外山啓介

②9月16日:ベートーヴェン「交響曲第3番”英雄”」ほか.指揮:チョン・ミョンフン

③1月13日:J.シュトラウス「美しく青きドナウ」,プッチーニ「ラ・ボエーム」より二重唱,サン=サーンス「序曲とロンド・カプリチオーソ」,④ラヴェル「ボレロ」 指揮=小林研一郎,ヴァイオリン=木嶋真優,ソプラノ=森麻季,テノール=宮里直樹

④2月3日:スメタナ「わが祖国」全曲 指揮=小林研一郎

今回の最大の呼びものは東響フィルの名誉音楽監督チョン・ミョンフンの登場です ベートーヴェンの英雄交響曲の他,誰かの協奏曲を取り上げるようです この公演を1回券で買うとS席が9,500円です.やっぱりセット券でしょう

4回セット券はS席:21,000円,A席:18,000円,B席:16,000円とかなり格安になっています.これは継続以外考えられません.さっそく同一席を継続する旨のハガキを出しておきました

なお,前売りは現在会員の継続手続きが10月25日締め切り,その後,文京区民先行予約が11月27日(1日だけ)となっているので,一般向けのセット券発売はその後になるようです

 

  最後の,閑話休題  

 

萩原浩著「家族写真」(講談社文庫)を読み終りました 萩原浩は1956年 埼玉県生まれ.成城大学卒業後 コピーライターを経て,1997年『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞を受賞,その後数々の文学賞を受賞しましたが,今年『海の見える理髪店』で第155回直木賞を受賞しました

 

          

 

この本は,「結婚しようよ」「磯野波平を探して」「肉村さん一家176Kg」「住宅見学会」「プラスチック・ファミリー」「しりとりの,り」「家族写真」という7つの短編が収められています

男手一つで育てた娘を嫁がせることになった男の悲哀を描いた「結婚しようよ」,さざえさんのお父さん・磯野波平と同年代の54歳と知って愕然とする男の話「磯野波平を探して」,肥満解消のために家族そろってダイエットに励む「肉村さん176Kg」,すでに住んでいるモデル住宅を見学に行き,理想的な家族像を見たと思ったら実情を知って,本当の幸せは何かを考える「住宅見学会」,マネキン人形を拾ってきて一緒に住む男の話「プラスチック・ファミリー」,家族でしりとりをやっているうちに,ついそれぞれの本音が出てくる「しりとりの,り」,写真館を継がせたい父親に対してプロのカメラマンを目指す息子の意識の違いを描いた「家族写真」です

萩原浩はさすがは短編の名手です 思わず笑ってしまうのですが,次の瞬間にはほろりと泣けてくる話ばかりです 私が一番印象に残っているのは「住宅見学会」です.すでに住んでいる住宅を見学するのですが,薔薇の花に囲まれた新築住宅は素晴らしく,そこに居る家族は理想的に見えたものの,普段は見せないもの(人)が隠されていたのです 傍から見れば幸せそうに見える家族も,外からは見えない問題を抱えているのだということをあらためて考えさせられます

直木賞受賞作「海の見える理髪店」は文庫化したら是非読みたいと思います

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「ル・ポン国際音楽祭」東京特別公演を聴く~モーツアルト「ディヴェルティメント第5番」,ブラームス「セレナーデ第1番」他

2016年10月18日 08時09分33秒 | 日記

18日(火).体調不良が続いています 今日は昼間のコンサートを取り止め,家で身体を休めて明日以降のコンサートに備えようと思います

ということで,わが家に来てから今日で750日目を迎え,イラクが過激派組織「イスラム国(IS)」の国内最大拠点 モスル を開放する軍事作戦を始めたというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

            ISを一掃したら 喜びモスル 隣の国はシリアせん とは言わない 

 

  閑話休題  

 

昨日は,夕食に「クリームシチュー」と「生野菜とサーモンのサラダ」を作りました 寒い夜はシチューがいいですね

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで「ル・ポン国際音楽祭 赤穂・姫路2016 10周年記念東京特別公演」を聴きました プログラムは①モーツアルト「オーボエ,クラリネット,バスーンのためのディヴェルティメント第5番K.439b」,②ドヴォルザーク「夜想曲ロ長調」,③シェーンベルク(ウェーベルン編)「室内交響曲第1番」,④マルティヌー「マドリガル・ソナタ」,⑤ブラームス「セレナーデ第1番」です

「ル・ポン国際音楽祭」は2007年に,ベルリン・フィルのコンマス・樫本大進が母親の出身地の赤穂と姫路で始めた音楽祭で,今回は東京に打って出てきました

 

          

 

自席は1階14列4番,センターグロック左通路側です.会場はほぼ満席です

1曲目のモーツアルト「オーボエ,クラリネット,バスーンのためのディヴェルティメント第5番K.439b」は,もともと3つのバセット・ホルンのために作曲した作品ですが,この日の編成は,その後 楽譜出版社が出版した編曲版の一つです オーボエ=古部賢一(新日本フィル首席),クラリネット=アンドレアス・オッテンザマー,バス―ン=ジルベール・オダンによる演奏です 

この曲はクラリネット=アルフレート・プリンツ,ペーター・シュミードル,バス―ン=ディトマール・ツェーマンによるCDで予習しておきました

 

          

 

予習で聴いたクラリネット2本とバス―ンによる演奏よりも,オーボエが加わることによって 特に高音部の色彩感が出て,いかにもディヴェルティメント(喜遊曲)という感じが出たように思います

2曲目のドヴォルザーク「夜想曲ロ長調」は,もともと「弦楽四重奏曲第4番」や「弦楽五重奏曲第2番」の緩徐楽章のために作曲されたものですが,一つの作品の一楽章にしておくのはもったいない,という判断から独立した曲として成立しました

演奏は,ヴァイオリン=紅一点のナタリア・ロメイコ,樫本大進,ヴィオラ=アントワン・タメスティ,チェロ=クラウディオ・ボルケス,ピアノーエリック・ル・サージュです ひたすら穏やかで静かな曲です.ドヴォルザークの緩徐楽章の良さが現れた佳品です

3曲目のシェーンベルク(ウェーベルン編)「室内交響曲第1番作品9」は,ピアノ=エリック・ル・サージュ,ヴァイオリン=樫本大進,チェロ=クラウディオ・ボルケス,フルート=エマニュエル・パユ,クラリネット=ポール・メイエによる演奏です この曲は当初,管楽器10本,弦楽器5挺という編成の曲でしたが,その後,弟子のウェーベルンが5つの楽器の編成に編曲しました

冒頭の混沌とした音楽を聴いていると,5人がそれぞれ勝手に演奏しているようにしか聴こえません どうしてシェーンベルクという人はこういう訳の分からない曲を書くのか 理解に苦しみます.そのうちメロディーらしきフレーズが出てきて一息つくのですが,またしてもカオスが再現するともうお手上げです 「革新的な和声」とか「無調」とか言われていますが,頭が混乱する音楽は耳が拒否反応を起こします.私は古い人間なんでしょうね

どうでもいいことですが,この時のピアノの譜めくりの女性が凄かった ル・サージュの椅子の斜め後方にかなり離れて座っているのですが,譜面をめくるタイミングになると,サッと立ってサッと譜面に手をかけてサッとめくってサッと元の位置に戻るのです この曲はテンポが速いので 譜面をめくるタイミングが短いのですが,彼女の条件反射的な素早い反応には舌を巻きました

余談ですが,演奏が始まる前から,自席の左サイドの壁際から空調のような「ゴー」という音が聴こえてきてすごく気になりました 周りの人も気にしていたようです(休憩後は消えました).サントリーホールで空調の音というのはあり得ないのですが,何だったんでしょうか

 

          

 

休憩後,席に着こうとすると,2階RB席辺りで拍手が起こっています 何だろうと思って見上げて見たら,美智子妃殿下がRB席に着くところでした RB席=ロイヤル・ボックス(皇室席)ですね

休憩後最初の曲はマルティヌー「マドリガル・ソナタ」です マドリガルというのは14世紀にイタリアで発祥した歌曲の形式です.フルート=エマニュエル・パユ,ヴァイオリン=ナタリア・ロメイコ,ピアノ=エリック・ル・サージュによる演奏です.これは楽しい曲でした

最後の曲,ブラームス「セレナーデ第1番作品11」は,最初,弦楽器と管楽器のための室内楽作品として1857年に作曲されましたが,1860年に管弦楽用に編曲され,室内楽用は廃棄されています 今回は,アルゼンチンの作曲家ホルヘ・ロッターが1987年に復元した九重奏版によって演奏されます ヴァイオリン=樫本大進.ヴィオラ=アントワン・タメスティ,チェロ=堤剛,フルート=エマニュエル・パユ,クラリネット=アンドレアス・オッテンザマー,ポール・メイエ,バス―ン=ジルベール・オダン,ホルン=ラデク・バボラークによる演奏です

この曲はフランチェスコ・ダヴォロス指揮フィルハーモニア管弦楽団によるCDで予習しておきました

 

          

 

予習で聴いた管弦楽版による演奏が頭のあるので,どうしても目の前の演奏と比較して聴いてしまうのですが,管弦楽版の方が楽器が多いということもあって音楽に厚みがあるという感じがします それに比べ,九重奏版は厚みがない(楽器編成に対して会場が大きすぎる)代わりに,個々の楽器の音がクリアで,どの楽器がどういうメロディーを奏でているのかが明確です

演奏は,ワールドクラスのアーティスト揃いなので,誰がどうと言うことが出来ないのですが,強いて言えば,ホルンのバボラークとフルートのパユの演奏が冴えわたっていたと思います

風邪気味で体調が最悪の状態でしたが,聴きに行って良かったと思います

ところで,東京公演のプログラム(上の写真)には,演奏曲目の解説や出演者のプロフィールが載っていません それが知りたければ有料の総合プログラム(下の写真)を別に買わなければなりません プログラムを参考にしながらブログを書く立場からは買わざるを得ないのです.しかたないので500円を投資して買い求めましたが,はっきり言ってせいぜい300円が良いところです 国内公演では在京オケの定期演奏会以外のコンサートで時々こういう売り方を経験しますが,クラシック音楽の大衆化を目指すのであれば,オペラを除いても良いと思いますが,プログラムにすべての情報を掲載すべきでしょう

 

          

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モーツアルト「ピアノ五重奏曲K.452」他を聴く~藝大ピアノ・シリーズ「ハイドンとモーツアルト第2回」

2016年10月17日 07時54分08秒 | 日記

17日(月).ちょっと疲れが出ていて 風邪気味のようです 今日を含めて今週は7回のコンサートを控えているので,慎重にいきたいと思います ということで,わが家に来てから今日で749日目を迎え,空中に浮く白ウサちゃんを羨ましがっているモコタロです

 

          

            浮き浮きしてると思ったら キミは空中浮遊できるのか!?
 

 

  閑話休題  

 

昨日,上野の東京藝大奏楽堂で「東京藝大ピアノ・シリーズ ハイドンとモーツアルト第2回」公演を聴きました プログラムは①ハイドン「ピアノ・ソナタ第52番」,②モーツアルト「2台のピアノのためのソナタK.448」,③ハイドン「6つのカンツォネッタ」から第25番「人魚の歌」,第112番「グリーン・スリーヴズ(緑の袖)」,第218番「遠い日々(蛍の光),④モーツアルト「ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴットのための五重奏曲K.452」です

 

          

 

早めに会場に着いたので,1階15列13番,センターブロック左通路側を押さえることが出来ました 午後3時の開演に先立って2時25分から藝大大学院生・井上果歩さんによるプレトークがありました ハイドンとモーツアルトの関係を手短かに解説しましたが,台本をゆっくり読んでいるようなスローペースで,ある意味 非常に分かり易かったです この日に演奏されるハイドンの「遠い日々に(蛍の光)」の解説で,「四七抜き音階(主音のドから数えて4つ目のファと7つ目のシの音を抜いた音階)の例として「蛍の光」の他に「ぞうさん」などのお馴染みの歌も数多くあるが,著作権の関係でここで演奏することが出来ない,という説明があり「ああそうなのか」と聴衆一同が納得していたのが印象的でした

さて本番です 1曲目のハイドン「ピアノ・ソナタ第52番」は,ハイドンが2回目のロンドン滞在中の1794年~95年にかけて作曲された第50番~第52番のピアノ・ソナタの中の1曲です モーツアルトの死が1791年なので,彼の死後に書かれたことになります 演奏は藝大教授の植田克己です.私の偏見かもしれませんが,音符の多い割にはモーツアルトのピアノ・ソナタほどの閃きが少ないように思います

2曲目はモーツアルト「2台のピアノのためのソナタK.448」です この曲は彼のピアノの生徒ヨゼ―ファ・バルバラ・アウエルンハンマー嬢と自分自身が弾くために作曲されました モーツアルトが父レオポルトにあてた手紙によると,ヨゼーファ嬢は相当のブスだったようですが,演奏技術は優れていたようです

向かい合わせに並べられた2台のグランドピアノに 向かって左側に准教授の青柳晋が,右側に教授の伊藤恵がスタンバイします 第1楽章「アレグロ」が軽快なテンポで開始されます.この曲は,「頭の良くなるモーツアルト」の代表曲として本やらCDやらで一時期騒がれた曲です この曲を聴いているだけで頭が良くなるのなら日本中の受験生が朝から晩までこの曲を聴いたことになりますが,実際にはそんなことはありませんでした いつの世も,モーツアルトを商売のタネにして荒稼ぎをしようとする不届き者がいるようです もちろん,「日本酒の醸造時にモーツアルトを聴かせるとまろやかな味になる」というような ある程度「モーツアルト効果」があることは否定しませんが, 行き過ぎは困ったものだと思います

ただ,率直に言って,この曲を聴いていると本当に幸せな気持ちになることは確かです 特に第2楽章「アンダンテ」は気持ちが穏やかになり,この曲が聴けて生きていて良かったと思います 二人の演奏は軽快そのもので,テンポ感が抜群でした

 

          

 

休憩後の最初の曲,ハイドン「6つのカンツォネッタ」~第25番『人魚の歌』は,ソプラノ=藝大教授・野々下由香里,ピアノ=准教授・江口玲によって演奏されます 続いて「スコットランド民謡集」から第112番『グリーンスリーヴズ(緑の袖の君)』と第218番『遠い日々に(蛍の光)』が,ヴァイオリン=藝大准教授・玉井菜採が加わって演奏されます 野々下由香里さんはかつてバッハ・コレギウム・ジャパンのソリストとして大活躍していたソプラノですが,ノン・ビブラートの声が美しく,透明感があります 最近はその歌う姿が一層美しく,貫禄も出て来たように思います それにしても,ハイドンは交響曲や弦楽四重奏曲だけでなく,歌曲も数多く作曲したのだな とあらためて感心しました

最後の曲はモーツアルト「ピアノ五重奏曲K.452」です この曲はモーツアルトがウィーンに移住して間もなくの1784年の演奏会(当時28歳)のために作曲されました この年の3月に作曲された「ピアノ協奏曲第15番K.450」と「同・第16番K.451」とともに,4月1日にブルク劇場でモーツアルト自身のピアノで初演されました

ピアノ=東誠三が奥にスタンバイし,前に左からオーボエ=小畑善昭,ホルン=日高剛,ファゴット=岡本正之,クラリネット=山本正治という編成をとります このうち小畑善昭,山本正治はかつて新日本フィルで首席を務めたことがあり,日高剛は日本フィル,読響,N響で活躍した人です.岡本正之は現在 都響の首席奏者です いわば精鋭のメンバーと言えるでしょう

第1楽章「ラルゴ~アレグロ・モデラート」,第2楽章「ラルゲット」,第3楽章「アレグレット」の3つの楽章から成ります オーボエの小畑善昭のリードで軽快な音楽が奏でられます 個々人の演奏技術が優れているので安心して音楽を楽しむことが出来ます.これは大事なことです 私はモーツアルトであればジャンルを問わずどんな曲でも好きですが,とりわけ秋に聴くには室内楽はピッタリだと思います その意味ではブラームスもそうですね

最後の音が鳴り終わると,ほぼ満席の会場から大きな拍手が湧き起こりました 十分楽しむことが出来ました.これだけのコンサートが3,000円というのは良心的だと思います

 

          

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ジョナサン・ノット+イザベル・ファウスト+東響でベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」,ショスタコービチ「第10交響曲」を聴く

2016年10月16日 09時55分22秒 | 日記

16日(日).わが家に来てから今日で748日目を迎え,主人に成り代わってお薦めコンサートをピーアールするモコタロです

 

          

            アンサンブル・オペラの頂点 モーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ」だよ,いかがっすか!

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで東京交響楽団の第645回定期演奏会を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」,②ショスタコーヴィチ「交響曲第10番ホ短調」です ①のヴァイオリン独奏はイザベル・ファウスト,指揮は東響音楽監督 ジョナサン・ノットです.これは,東響創立70周年記念ヨーロッパ公演と同一プログラムによるプレコンサートです

 

          

 

1曲目のベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」は,ベートーヴェンが作曲した唯一のヴァイオリン協奏曲です ピアノ協奏曲は5曲も作曲しているのとは対照的です この作品は1806年11月下旬から2月下旬にかけて作曲(作曲者36歳)され,同年12月23日にウィーンで,フランツ・クレメントのヴァイオリン独奏により初演されました その後ベートーヴェンは初演の時の反省を踏まえ,パート譜を改良し1808年に完成させています この作品が再評価されるきっかけになったのは,その約40年後の1844年にメンデルスゾーンの指揮,巨匠ヨーゼフ・ヨアヒムのヴァイオリン独奏によって取り上げられた演奏会だと言われています モーツアルト以来の天才と呼ばれたメンデルスゾーンは,有名な「ヴァイオリン協奏曲」「弦楽八重奏曲」をはじめ数々の名曲を作曲したばかりでなく,J.S.バッハの「マタイ受難曲」の蘇演など音楽史に大きな役割を果たしました 私はメンデルスゾーンの音楽が大好きです

さて,この曲は第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」,第2楽章「ラルゲット」,第3楽章「ロンド・アレグロ」の3つの楽章から成ります

オケの面々が入場し 配置に着きます.どこか変です ノット・システムでは左奥にコントラバスが配置され,ヴァイオリン・セクションが左右に分かれる対向配置をとりますが,今回はコントラバスがステージ中央・後方の壁側に横一列に並んでいます これは東響の態勢としては極めて異例です.来週からのヨーロッパ演奏旅行に備え,欧州諸国のコンサートホールをイメージして,低音部の配置を考慮したのかもしれません さらに,トランペットは古楽器で演奏するようです また,ティンパ二も現代のキンピカの大きなものではなく,黒塗りの小ぶりの楽器を使用するようです コンマスはグレブ・二キティン,その隣にはもう一人のコンマス水谷晃がスタンバイします

「サウンド・オブ・ミュージック」のヒロインを演じたジュリー・アンドリュースにちょっと似ているイザベル・ファウストが,黒と臙脂を基調とするエレガントなステージ衣装で登場します 彼女は1987年レオポルト・モーツアルト・コンクール,1993年パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝している実力者で,ベルリン・フィルをはじめ世界の有名なオーケストラと数多く共演しています

第1楽章が,今月20日に定年を迎える奥田昌史氏のティンパ二の4つの音で開始されます いつものティンパ二と違い,どちらかと言うと乾いた軽い音がします ノットはオケに古楽器奏法特有のアクセントを付けたメリハリのある演奏を求めます イザベル・ファウストはどうやら弱音の美しさが特徴のヴァイオリニストのようです フォルテは強く感じません.弱音は最弱音と言っても良いほどですが,しっかりと耳に届きます あらためて彼女の使用楽器を調べてみるとストラディヴァリウス『スリーピング・ビューティー』(1704年製)とありました.なるほど,強音で驚かせてはいけません

ビックリしたのは第1楽章のカデンツァです.今まで一度も聴いたことがないメロディーです しかも,時にティンパ二が入ってきてヴァイオリンと対話します すごく印象的なカデンツァなので,いったい誰が作曲したのだろう?と疑問に思いました 後で休憩時間にロビーの掲示で確かめたら,ベートーヴェン自身がこの曲をピアノ協奏曲として編曲した作品のカデンツァであることが分かりました

第2楽章「ラルゲット」はまさにイザベル・ファウストの本領発揮といったところです 弱音から最弱音にかけた「スリーピング・ビューティー」は比類のない美しさです 第3楽章「ロンド」の冒頭,ヴァイオリン独奏による嵐のような音楽はいったい何だったのでしょう 多分 楽譜にはない即興(あるいは前述のピアノ版のフレーズか?)だ思いますが,衝撃的な演奏でした

演奏直後は拍手とブラボーの嵐でしたが,個人的には独特のカデンツァの印象が強く,ノット+東響の見事なサポートと相まって,まるで初めて聴く曲のように感じました

イザベルは繰り返されるカーテンコールに,ギュマン「無伴奏ヴァイオリンのためのアミューズ作品18」から1曲を演奏し 再び大きな拍手に包まれました

 

          

 

休憩後のショスタコーヴィチ「交響曲第10番ホ短調」は1953年のスターリンの死去を契機として,その年の夏から秋にかけて集中的に作曲されましたが,最近の研究では作曲の着手はもっと早い時期(1946年頃)だったのではないかとする説が有力になっているようです この曲は東京交響楽団が1954年に日本初演を行っている歴史的なプログラムです

この曲の特徴として言えるのは,第2楽章「アレグロ」は,ヴォルコフ著「ショスタコーヴィチの証言」によれば「スターリンを音楽的に描写したもの」だということ,第3楽章に作曲者自身の名前のドイツ語綴りD.SCHostakovichによる音名象徴「レ・ミ♭・ド・シ」を潜り込ませていること,さらに,その当時想いを寄せていたモスクワ音楽院の教え子エルミーラ(EL'MIRA)の名前を「ミ・ラ・ミ・レ・ラ」と音名に読み替えたフレーズを音楽に潜り込ませていることです

ショスタコーヴィチは1954年3月の作曲家同名の公開討論会における いわゆる「第10論争」で,「この作品の中で,私は人間的な感情と情熱を描きたかった」と述べています つまり,この曲はスターリンがらみの政治的な意図で作曲されたとする説よりも,エルミーラに対する想いを込めて極めて個人的な動機から作曲されたとする説の方が有力であること示しています

オケは拡大しフルオーケストラの態勢です.ティンパ二とトランペットは現代の楽器に代わっています

ノットのタクトで第1楽章「モデラート」が開始されます 序奏のあと,第1主題がクラリネット首席のエマニュエル・ヌヴ―により演奏され,次いで第2主題がフルート首席の甲藤さちにより演奏されますが,この二人の演奏はニュアンスに満ちた素晴らしいものでした 次いでファゴット首席の福士マリ子が主題を繰り返しますが,この演奏も素晴らしかったです

第2楽章「アレグロ」は小太鼓の刻みに乗って管弦楽が嵐のように荒れ狂います ヴォルコフの「ショスタコーヴィチの証言」に即して言えば「スターリンに率いられたファシズムの怒涛の行進」でしょうか この楽章は「アレグロ」というよりも「プレスト」で駆け抜けます.東響はノットの超高速ペースに良くついて行きます

第3楽章「アレグレット」は,ホルンによって前述のエルミーラのテーマが12回繰り返されます ホルン首席ジョナサン・ハミルの演奏は出だしが若干引っかかりましたが,後は無難にまとめました  

第4楽章「アンダンテ~アレグロ」では,序奏部のオーボエ首席・荒木奏美,ファゴット首席・福士マリ子,フルート首席・甲藤さち,クラリネット首席・エマニュエル・ヌヴ―,ピッコロの高野成之の演奏が光っていました 弦の低音が腹の底に響いてきます コントラバスを壁際に並べることにより音の反射で低音部を強調する意図は見事に成功したと言えるでしょう フィナーレはジョナサン・ノットの情熱的な指揮のもと”ショスタコービチ音型”が執拗に繰り返されクライマックスを迎えます

会場いっぱいのブラボーと拍手の嵐です ノットは何度もカーテンコールで呼び戻され 聴衆の歓声に応えていました 楽員たちからも大きな拍手を受け 嬉しそうな表情を見せるノットを見て,彼と東響との信頼関係が一層深くなっていると感じました この勢いでヨーロッパ演奏旅行に出発してほしいと思います

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平山秀幸監督「エヴェレスト 神々の山嶺」「魔界転生」を観る~新文芸坐

2016年10月15日 08時13分22秒 | 日記

15日(土).わが家に来てから今日で747日目を迎え,大手広告会社・電通の「長時間労働常態化の疑い」のニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

           電通は本社のビルは立派だけど 若者たちをこき使って 当たり前と思ってない?

 

  閑話休題  

 

昨日,池袋の新文芸坐で「魔界転生」と「エヴェレスト 神々の山嶺」の2本立てを観ました 「エヴェレスト 神々の山嶺」は夢枕獏原作,平山秀幸監督による2016年公開 122分の作品です

 

          

 

ヒマラヤ山脈を望むネパールの首都カトマンズで,山岳カメラマンの深町誠(岡田准一)は1台の古いカメラを発見する そのカメラは,イギリスの登山家ジョージ・マロリーが1942年6月8日にエベレスト初登頂に成功したかどうかの登山史上最大の謎を解くカギとなるものだった 老人に持ち去られたカメラの行方を調べる深町は,その過程で,かつて天才クライマーと呼ばれながらも,無謀で利己的なやり方で孤立した伝説のアルピニスト・羽生丈二(阿部寛)と出会う 深町は羽生の過去を調べていくうちに,羽生の生き方にいつしか魅かれ,彼の登山姿をカメラに収めることを決心し,登山に同行し後を追う

この映画は,エヴェレストの標高5,200メートル級の地点を中心に撮影を敢行したとのことで,スケールの大きな画像が迫ってきます 猛吹雪の中を,急こう配の岩山を登る羽生の姿を見るにつけ,自分には絶対あんなことはムリだ,と思います 「あなたは なぜエヴェレストに登りたかったのか?」と問われて「そこにエヴェレストがあるからだ」と答えたのはジョージ・マロリーですが,この映画の主人公・羽生は「ここに俺がいるからエヴェレストに登るのだ」と答えます 羽生の生きざまを一言で言い表しています.こういう大きなスケールの映画はDVDなんかで観ても面白くも何ともないでしょう.絶対映画館で観るべきです

この映画はネパール大地震のすぐ前に撮られたとのことですが,カトマンズの混然とした街並みが映されています 息子も震災後のあの街並みを歩いたのだろうか,と思いながら観ていました

ところで,映画の最後に流れる音楽を聴いて あれっ?と思いました.エンドロールでは「喜びのシンフォニー」というタイトルになっていましたが,要するのベートーヴェン「第九交響曲」の第4楽章の”喜びの歌”のアレンジなのです 世界最高峰のエベレストを賛辞するのにはクラシック界の頂点に立つベートーヴェンの「第九」が一番ふさわしいという判断でしょうか 

2本目の「魔界転生」は山田風太郎原作,平山秀幸監督による2003年公開 100分の作品です 「魔界転生」はかつて深作欣二監督・沢田研二主演で撮られた映画を観たことがあり,面白かったので今回はどんな風かなと思って観ました

 

          

 

時代は寛永15年.天草四郎時貞(窪塚洋介)は島原の乱で討死した その10年後,魔界から蘇った四郎は 将軍家により紀州に封じられている家康の子息・徳川頼宣をそそのかし,彼に天下を取るよう駆り立てる.しかし,真の目的は自分たちを皆殺しにした徳川家を滅ぼすため,徳川同士を戦わせて一族の血を絶やすことだった 四郎はクララお品(麻生久美子)とともに妖術を使い,荒木又右エ門,宮本武蔵らの剣豪たち,さらには家康までも魔界から転生させて世に送り出す.そんな四郎の野望を阻止すべく立ち上がったのは柳生十兵衛(佐藤浩市)だった 行く先々で現れる魔界からの剣豪を打ち破り,ついに江戸城で四郎と対決し打ち倒す

一言で言えば,この映画はオカルト時代劇です.死者が蘇って次々と仲間を増やしていき強いものを倒し,憎き徳川家を滅ぼそうとするという話です 天草四郎時貞はこの映画の22年前に演じた沢田研二の方が妖艶だったように思います 今回の映画ではクララお品を演じた麻生久美子が妖艶でした さすがに特撮技術は22年前よりも格段とアップしていました

時にはこうした奇想天外で娯楽に徹した映画を観るのも良いものだと思います

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サイモン・ラトル「音楽は人生を変えられる」/和田竜著「村上海賊の娘(三)(四)」を読む

2016年10月14日 08時00分02秒 | 日記

14日(金).ノーベル文学賞の発表にはビックリしました 「風の歌を聴け」の村上春樹ではなく「風に吹かれて」のボブ・デュランに決まったのですね 文学賞だけは「風の吹くまま」のような気がしますが,そう思うのは私だけでしょうか? ということで,わが家に来てから今日で746日目を迎え,なぜか雪だるまが小屋に侵入してきたので実力行使で排除しようとするモコタロです

 

          

             急に寒くなったからって キミの出番は早過ぎっしょ  帰ってちょ!

 

          

             足がないから歩けないって? それじゃ 第4機動隊の出動だ!

 

          

                              なんで反対側に落ちてるんだい ボクに対するイヤミかい?

 

  閑話休題  

 

昨日の朝日朝刊「文化・文芸欄」に「音楽は人生を変えられる ベルリン・フィル芸術監督 サイモン・ラトル」というインタビュー記事が載っていました 超訳すると

「15年にわたりベルリン・フィルを率いてきたサイモン・ラトル(61)の芸術監督としての任期は残り2年.一方,2017年からは生まれ故郷の英国でロンドン交響楽団の音楽監督に就任する ベルリンでは演奏曲目のレパートリーを広げたほか,音楽教育への取り組みや,深夜のコンサートなどの新しい試みをいくつも導入した 中でも特徴的なのはコンサート映像を配信する『デジタル・コンサートホール』だ.09年から始め,今では代表的な事業だ.これは団員からの提案だったのでうまくいった 結果として,ベルリンの演奏は世界中に広まっている.『ベルリンは常に過去や伝統を意識しているが,ロンドンは将来について考えている楽団.どんな新しいことが出来るか話し合いたい』と語る.特に意識するのは音楽教育の分野だ.『ロンドン交響楽団は子供向けのオペラも企画しているが,若い世代に近づくためには,より積極的な姿勢を取りたい』と語る.その理由は『音楽は人生を変えられる』という信念に基づいている.『英国がEUからの離脱を決めたことは狂気にしか映らない.でも,困難な状況の中で人々を癒やし,結びつけるのは音楽の役割だ.英国ではそれがますます必要とされるだろう』と語った」

私が最初で最後にラトルの演奏を生で聴いたのは,彼がバーミンガム市交響楽団を率いて来日公演をやった時なので1980年代初頭~90年代初頭だったと思います 会場に入って心底ビックリしたのは,オーケストラが当時 見たことのない態勢を取っていたからです その当時のオーケストラは,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスといった並びが普通だったのですが,ラトルが取ったのは左奥にコントラバス,前に第1ヴァイオリン,右にチェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置だったのです とくに左奥にコントラバスが林立していたのに度肝を抜かれました 今でこそ,このような編成は珍しくありませんが,当時は超レアな態勢でした.当時のチケットや記録の類がどこかにあるはずなのですが 探しても見つからないので,プログラムの内容が思い出せないのが残念です 若さあふれる精力的な指揮ぶりだったように記憶しています

ところで,ラトルの言う「音楽は人生を変えられる」というのは本当です.私は学生時代にクラシック音楽に目覚めてから40年以上経ちますが,クラシックに限定して言えば,一番最初に出会ったのはモーツアルトの「フルート協奏曲第2番」とドビュッシーの「小組曲」でした ラジカセに録音したテープを何度も繰り返し聴いて好きになったのはモーツアルトの方でした それからずっとクラシックを聴き続けているので,この曲こそ「私の人生を変えた曲」と言えるでしょう

当初はお金がないのでそう頻繁にはコンサートに行けず,夏休みのアルバイトで買ったステレオ装置で,買い集めたLPレコードを聴くことに明け暮れていました レコードが500枚くらい集まったころ,「もうクラシックは聴き尽くしたな」と不遜にも思い込んで,一時ジャズにのめり込んだ時期がありました マイルス・ディビス,ジョン・コルトレーン,ビル・エヴァンス,バド・パウエル,MJQ・・・・とLPレコードを買いあさり,ジャズの本を20冊くらい買って集中的に読みました

しかし,半年以上前にチケットを買っておいたマルタ・アルゲリッチ+小澤征爾+新日本フィルのよる特別演奏会を聴いて,大きな衝撃を受け,クラシックに引き戻されました その時のチケットが下の写真です 1981年4月6日,今から35年も前のことでした.汚い字で「ショパン ピアノ協奏曲第2番」「ラヴェル クープランの墓」「同 ピアノ協奏曲ト長調」「アンコール ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調 第3楽章」と演目が書かれています あの時 ラヴェルのピアノ協奏曲の第3楽章が終わった瞬間,会場の空気がフワッと浮き上がり,聴衆の熱気で温度が急上昇したのを覚えています 実を言うとアンコール演奏の後,聴衆の熱狂的な反応に感激したアルゲリッチが人差し指を立てて「アンコールをもう一度やろう」と小澤征爾に掛け合ったのですが,会場の使用時間とかオケのユニオンとの契約とかいろいろあったのでしょう.2度目のアンコールは実現しなかったのです.盛り上がっていただけに,非常に残念でした この演奏を聴かなければ,今頃はジャズにどっぷり浸かっていたことでしょう そういう意味で,この時のアルゲリッチの演奏したラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」は,私にとって まさに2度目の「私の人生を変えた音楽」でした

 

           

 

  も一度,閑話休題  

 

和田竜著「村上海賊の娘(三)(四)」(新潮文庫)を読み終りました 和田竜は1969年12月大阪府生まれ.早稲田大学政経学部卒.2003年映画脚本「忍ぶの城」で城戸賞を受賞 07年,同作を小説家した「のぼうの城」でデビューし,直木賞候補となる.14年,本作「村上海賊の娘」で吉川英治文学新人賞及び本屋大賞をダブル受賞している

時代は織田信長が室町幕府最後の将軍・足利義昭を奉じて京に旗を立て,西に勢力を伸ばそうとしていた頃の天正4年(1576年),比叡山焼き討ちから5年,武田軍を打ち破った長合戦の翌年にあたる.信長と大阪本願寺の戦いは7年目を迎えていた

その頃,瀬戸内海の島々に根を張り,強勢を誇る海賊衆がいた.彼らは瀬戸内海を航行する船から通行料を取って生計を立てていた その中でも能島に拠点を置く村上海賊の当主・村上武吉は乱世にその名を轟かせていた 彼の豪傑と荒々しい気性を受け継いだのは息子の元吉ではなく,娘の景(きょう)だった 海賊働きに明け暮れ,地元では嫁の貰い手のない当年20歳の女だった.彼女こそ「村上海賊の娘」である

 

          

 

物語は,大阪本願寺に立て籠もる僧侶たちに兵糧を届ける任務を毛利家から請け負った村上海賊が,難波海(大阪湾)に面した木津砦で待ち構えていた小田軍と闘いながら本願寺にたどり着くまでの死闘を描いています

本願寺から依頼されたのは兵糧は90万石,米俵にして25万俵で,これを海から運ぶというとんでもない仕事だったが,それには700艘の兵糧船が必要だった 毛利軍(村上海賊側)は1,000艘の船団で木津砦に向かったが,1,000艘のうち戦力になる(兵士が乗っている)のは300艘しかなかったという 「海での戦いは船の数で決まる」と言われているが,戦う者同士お互いが,いったい相手は何艘の船を持って戦おうとしているのかが分からずヤキモキしているのが面白いところ 言わば,ハッタリがどこまで通用するかの戦いのようなもの

最後に,景は織田方の真鍋七五三兵衛(しめのひょうえ)と船上で死闘を繰り広げることになります 「そこまでいったら,出血多量でとっくに死んでいるだろう」とツッコミを入れたくなるような記述も少なからずありますが,そこは小説ということでスルーすることにします それ以外は,作者はかなり史料類を読み込んで史実に忠実に書いているので,その筆力は大したものだと思います

ところで,和田竜氏は9月15日に文字・活字文化推進機構と日経新聞の共催による「歴史を語る言葉 シンポジウム」のトークショーに出席して,歴史小説について語っています 10月8日付日経朝刊にその概要が載っています.トークショーで彼が語った話のポイントは以下の通りです

「司馬遼太郎からたくさん影響を受けた.一つはすごく調べること 司馬遼太郎らが挙げている史料を読むことによって,こういう書物があるのだといろいろと手に取ってみて,なるほど実際に書いてあるのだということが実感できた.したがって引用元は邪魔にならない限りは入れようと思った 『村上海賊の娘』の場合,本に載せているだけで80冊以上あったと思うが,全く役に立たないものもあるので,読んだ冊数はその2~3倍のイメージだ.インターネットはほぼ使わない

この発言通り,この作品には「〇〇記によると~」といった歴史的な文書の引用が多く出てきます それだけ史実を尊重しているということでしょう

 

          

 

ところで,冒頭の著者のプロフィールで「1969年大阪府生まれ」と書きましたが,これは新潮文庫のプロフィールに書かれていたものです 一方,上記シンポジウムの記事での著者の紹介には「1969年広島市出身」と書かれていました いったいどっちが本当なのだろうかと不思議に思って調べてみたら,1969年に大阪府で生まれ,生後3か月で広島市に引っ越して育ったということでした

 

  最後の,閑話休題  

 

ここだけの話ですが,昨日は現役を引退してから初めて迎えた誕生日でした 月日の流れは速いものでもう1年経ちました FRENCH POUND HOUSE でホールケーキを買い,スーパーでワインを買ってきました 3本セットで4,000円弱(税別)のお得なボルドー・ワインです.私がいつも買うのはこのクラスの赤ワインです それは良いのですが,なぜ誕生日を祝ってもらう私がスポンサーにならなければならないのでしょうか? 毎年のことながら不思議です

 

          

 

夕食に娘が作ってくれたハッシュド・ビーフとサラダをいただき,さあケーキを切ろうかというタイミングで息子が帰ってきました いつもは深夜1時半過ぎなのに 昨夜は珍しく9時40分頃帰宅しました.そこで,息子が夕食を食べ終わるのを待ってからケーキ・セレモニーをしました 

今後の抱負ですか? 取りあえず今年のコンサート鑑賞の目標を180回から200回に,映画鑑賞の目標を100本から160本に変更しておきます

 

          

                                  ロウソクと年齢に相関関係はありません 悪しからず 

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平山秀幸監督「しゃべれどもしゃべれども」「対岸の彼女」を観る~新文芸坐

2016年10月13日 08時09分17秒 | 日記

13日(木).わが家に来てから今日で745日目を迎え,プロ野球セリーグでBクラス常連チーム同士(広島カープ  DeNA)の決戦のニュースを見て独り言をつぶやいているモコタロです

 

          

          ご主人様は「今年のプロ野球は夏に終わった.どーでもいい」ってさ

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚肉のスペアリブ」と「生野菜とワカメのサラダ」を作りました 「スペアリブ」は見た目がボリュームたっぷりですが,骨が付いているのでそれほどでもありません

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

現在,池袋の新文芸坐では「人間っておもしれぇなぁ~平山秀幸映画屋街道40年記念祭り」を開催中です

 

          

 

昨日,「しゃべれどもしゃべれども」と「対岸の彼女」の2本立てを観ました 「しゃべれどもしゃべれども」は,佐藤多佳子原作,平山秀幸監督による2007年公開の109分の作品です

 

          

 

古典落語一筋に生きようとする志は高いが うだつの上がらない二つ目の落語家・今昔亭三つ葉(国分太一)は,ひょんなことから話し方教室を開くことになる 彼のもとに集まったのは無口な美人・十河五月(香里奈),関西弁の勝気な少年・森永悠希(村林優),毒舌の元プロ野球選手・湯河原太一(松重豊)という変わり者の三人だった 三つ葉自身は今昔亭の一門会で「火炎太鼓」を演じることになり,関西少年と無口美人は発表会を開くことになる さて彼らの実力のほどはどんなものなのか・・・・

三つ葉の師匠を伊東四朗が演じていますが,さすがに話が上手いです さらに,TOKIOの国分太一は古典落語の「火炎太鼓」を演じますが,これがまたプロ並みの上手さです 驚くのは関西から東京に転向してきた小学生・悠希を演じた村林優君です.野球の勝負で負けた相手のいじめっこ小学生を笑わせるために「まんじゅうこわい」を演じるのですが,これがまた上手いのです

平山監督は落語好きだということですが,スクリーンを通してその思いが伝わってきます

2本目の「対岸の彼女」は角田光代の直木賞受賞作を原作とし,平山秀幸が監督した2006年公開の104分の作品です

 

          

 

35歳の主婦・小夜子(夏川結衣)は幼い時から人付き合いが苦手で,言いたいことも思うように口に出せない性格である そんな彼女が再就職のために訪問した小さな旅行会社で独身社長・葵(財前直見)に出会う.葵も同じ35歳だった 細かいことにこだわらない大雑把な性格の葵との交流を通して,小夜子は次第に心を開いていくが,葵には自殺未遂の過去があった まったく性格も環境も違う二人の女性同士の友情は上手く成り立っていくのか・・・

この作品はもともと角田光代の小説をWOWOWでドラマ化したものです 同じ30代半ばの二人の女性(独身の女社長と 子持ち主婦のアルバイト)の生き方の違いが鮮明に描かれています

面白いのは,「倍返し」でブレイクし「真田丸」で人気を定着させた堺雅人が,10年前のこの作品では 奧さんにあまり理解のない普通のサラリーマンを演じているところです

新文芸坐の平山秀幸監督特集は17日まで続きます

 

          

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アルゲリッチ+パールマンのシューマン「ヴァイオリン・ソナタ」,「アンナ・ネトレプコ ヴェリズモ」,ベートーヴェン「ピアノ四重奏曲」のCDを買う

2016年10月12日 08時36分41秒 | 日記

12日(水).昨日,バッハ・コレギウム・ジャパンの来シーズン会費(B席:チケット5枚分・25,500円)を銀行振込しました 次に来る請求書は東響か,それとも読響か? どっちにしても ああ怖 

ということで,わが家に来てから今日で744日目を迎え,小池百合子東京都知事誕生に伴って実施される衆議院議員東京10区・補欠選挙のニュースを見て,何やらつぶやいているモコタロです

 

          

           東京10区ってご主人さまが住んでいる豊島区の選曲,違った 選挙区だったな 

 

  閑話休題  

 

昨日午後,久しぶりに新宿タワーレコードに行ってCDを3枚買いました 1枚目はマルタ・アルゲリッチ(P)とイツァーク・パールマン(Vn)による「シューマン,バッハ&ブラームス」アルバム(1,825円・税込)です 収録曲は①シューマン「ヴァイオリン・ソナタ第1番」,②同「幻想小曲集」,③ブラームス「F-A-Eソナタ」から”スケルツォ ハ短調”,④J.S.バッハ「ヴァイオリン・ソナタ第4番 ハ短調BWV1017」です

上記のうち①シューマン「ヴァイオリン・ソナタ第1番」だけが,1998年7月30日にニューヨークのサラトガで演奏した時のライブレコーディングで,②以降が2016年3月29~31日にパリで演奏したスタジオ録音です  一度だけ通して聴いた感じでは,とくにシューマンの2曲が白熱の演奏でした

 

          

          

 

2枚目は「アンナ・ネトレプコ ヴェリズモ」アルバム(1,944円・同)です  アンナ・ネトレプコはワレリー・ゲルギエフに見い出され,今や米メトロポリタン歌劇場のディーバと呼ばれるソプラノです このCDではチレア,ジョルダーノ,カタラーニ,レオン・カヴァレッロ,プッチーニなどのヴェリズモ・オペラの名アリアを収録しています バックを務めるのはアントニオ・パッパーノ指揮サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団です

一度聴いた範囲では,ジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」から「亡くなった母を」,プッチーニ「蝶々夫人」から「ある晴れた日に」,同じく「トスカ」から「歌に生き,愛に生き」,カタラーニ「ワリー」から「さよなら ふるさとの家よ」等がドラマティックな歌唱で感動ものでした これらのアリアは 20世紀最高のディーバ,マリア・カラスが得意とする曲ですが,マリア・カラスよりも声自体は美しいと思います 誤解を恐れずに言えば,カラスの声はどちらかというと”美しい”という性質ではありません.しかし,一度聴いたら絶対に忘れられない強い個性(ドラマと言ってもよい)を持っています その点,アンナ・ネトレプコも,何を歌っても彼女自身の強い個性を醸し出しており,その点で二人は共通しています

 

          

          

 

ネトレプコと言えば,2011年のメトロポリタン歌劇場の来日公演のプッチーニ「ラ・ボエーム」でミミを歌う予定だったのですが,あの東日本大震災に伴う東京電力の原発事故の発生に伴って,来日しなかったのが残念無念です バルバラ・フリットリが代演したのですが,私はやっぱりネトレプコのミミが聴きたかったです

 

          

 

3枚目はニュージ―ランドピアノ四重奏団によるベートーヴェン「ピアノ四重奏曲第1番~第3番」(1,393円・同)です 実はこのうち「ピアノ四重奏曲第1番変ホ長調」は,10月1日に横浜みなとみらいホールでフォーレ・クァルテットが第3楽章をアンコールで演奏し,モーツアルトのような良い曲だと思ってCDを探していたのです この曲はベートーヴェンが15歳の時に作曲した作品で,ハイドンやモーツアルトの影響を受けていると思うのも無理のないことだと思いました

 

          

          

 

買ってからいつも,また "CD" 買って いったいどこに置くんだよ と自分にツッコミを入れています アルファベット分類では "AB" の次でしょうか

コメント (2)
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