人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

モーツアルトが愛用したヴァイオリンで自作を聴く~国際モーツアルテウム財団コレクション展・コンサート / 今日ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン開演~3日間で17公演を聴く

2017年05月04日 07時50分02秒 | 日記

4日(木・休).わが家に来てから今日で946日目を迎え,北朝鮮の核・ミサイルをめぐり,対立する米朝が対話の機会を探り始めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

                  対立と対話は一字違い 両方から「対」を外して「立ち話」で決着つかない? ムリだな

 

                     

 

昨日,夕食に「鶏のトマト煮」と「生野菜とアボガドのサラダ」をつくりました 「鶏の~」は2度目ですが,上手に出来ました

 

       

 

 

                      

 

昨日から,第一生命保険日比谷本社1階ロビーで「第一生命グループ  プレゼンツ  国際モーツアルテウム財団コレクション展・コンサート」が始まりました 今年で3回目とのことですが,今回の”売り”はモーツアルトが実際に弾いていたヴァイオリンによるコンサートが開かれることです コンサートは午前11時から,午後3時から,午後6時からの3回ですが,このうち3時からの部は「チャイルド・ヴァイオリン・プログラム」で,モーツアルトが幼少期に弾いていたヴァイオリンによる演奏です

 

       

 

ロビーの開場が午前9時半,1回目のコンサートの開演が11時なので,10時10分頃に現地に着いたのですが,すでにコンサートの席番号入り座席券が配られており,私は108番でした 椅子席は前方のブロックと後方のブロックに分かれており,自席は後方ブロック最前列の右通路側席でした.こういうの結構ツイテます 普段の心掛けがいいからでしょうねきっとそうだ

 

       

 

開演30分前までは席に座れないというので,先にロビー奧のギャラリーで開かれている「国際モーツアルテウム財団コレクション展」を見学することにしました 入口では展示品のカタログ(4ページ)が配られていました.配慮が行き届いていて嬉しいですね こういう細かい配慮を含めて本当の「メセナ」と言うのでしょう

 

       

 

展示品では,「キラキラ星変奏曲」として知られるK.265の自筆譜をはじめ,モーツアルトや姉ナンネルの肖像画などが飾られています モーツアルトの自筆譜を見て驚くのはとても綺麗だということです.修正の痕跡がありません 天才の証明と言われる所以でしょう

これらの資料は以前,同財団のコレクション展で見たことがあるのですが,今回初めて見て感慨深かったのは,モーツアルトの未亡人コンスタンツェの再婚相手であるゲオルク・ニコラウス・ニッセンが書いた「モーツアルト伝」の初版本です これは1828年に出版されたモーツアルトの本格的な伝記です 古めかしい本なので,保存が大変だろうと想像します

 

       

 

開演時間になり,コンサートが始まります.モーツアルテウム管弦楽団ソロ・コンサートマスター,フランク・シュタートラーが,モーツアルトが弾いていたヴァイオリンを持って登場します このヴァイオリンはモーツアルトがザルツブルクの宮廷楽団でコンサートマスターを務めていた頃に弾いていたヴァイオリンで,1780年11月(24歳)まで使用していた楽器です モーツアルトは故郷にヴァイオリンを残して旅立ったので,姉のナンネルが1820年まで所有することになりました.その後多くの人の手を経て,1896年2月にモーツアルテウム財団に渡り現在に至っています ピアノ演奏はパリ国立高等音楽院を一等賞を得て卒業しパリを拠点に活躍する菅野潤です.演奏する楽器はモーツアルトの時代のワルター製フォルテピアノのレプリカです

 

       

 

最初に,モーツアルトが1778年にマンハイムで作曲した「ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調K.302」が演奏されました 2つの楽章から成る曲ですが,この曲の特徴は,初期の頃のヴァイオリン・ソナタが「ヴァイオリン・オブリガード付きピアノ・ソナタ」,つまり ヴァイオリンはあくまでピアノの伴奏の位置づけにあったのに対し,ヴァイオリンとピアノが対等に扱われていることです ガット弦特有の優しい音色がロビーを満たします 「モーツアルトはこういう音色で自分の作品を演奏していたんだな」と 感慨深いものがありました

2曲目は,フォルテピアノの独奏で「クラヴィーア・ソナタ  イ長調K.331”トルコ行進曲付き”」が演奏されました これも当時の楽器を再生したものなので,柔らかい響きが心地よく響きました ただし,この楽器は速いパッセージがあまり得意ではないようです

3曲目は,再びヴァイオリンが加わって,1778年にマンハイムで作曲された「ヴァイオリン・ソナタ  ハ長調K.296」が演奏されました 3つの楽章から成る曲ですが,この日演奏するヴァイオリンで作曲されたと考えられているそうです

この曲も,ガット弦特有の優しく美しい音色が心地よく,モーツアルトの生きていた約250年前に思いを馳せながら聴きました

演奏後,来日中のモーツアルト財団の方が,モーツアルトのヴァイオリンを近くで見せてくれました

 

       

 

会場に着く前は,ほんの30分程度のロビーコンサートだろうと簡単に考えていたのですが,途中で財団側の説明や演奏者へのインタビュー等もあったので,1時間半近くかかりました お客さんも200数十名は来場し,後から来た人は立って聴いていました これからこのロビー・コンサートを聴こうと思う方は,相当の混雑が予想されますので,開演の1時間前くらいには現地に赴いて,まず座席券を入手することをお勧めします

 

       

 

                     

 

いよいよ,今年もその季節がやってきました 今日から3日間 東京国際フォーラムを中心に「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017」が開催されます 私は第2回目の2006年から11年連続で5月の3連休はこの音楽祭に通ってきましたが,今年は17公演聴きます 4日=5公演,5日=5公演,6日=7公演です

 

       

 

各コンサートの模様はブログにアップしていきますが,何しろ1日5ないし7公演なので,1本のブログにすべてを盛り込んでアップするのは窮屈だと思っています したがって,1日2回に分けてアップすることになるかと思いますのでご留意ください

 

       

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ヤルヴィ+N響のモーツアルト「ドン・ジョバンニ」のチケットを取る~NHK音楽祭 / 「リオ・ブラボー」「ワイルドバンチ」を観る~新文芸坐

2017年05月03日 07時52分43秒 | 日記

3日(水・祝).昨日,「NHK音楽祭2017」のパーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団によるモーツアルト「ドン・ジョバンニ」の先行抽選販売に当選した というメールが届きました 9月9日(土)3時からNHKホールです.早速A席の料金をコンビニを通じて払い込みました

 

       

       

 

ということで,わが家に来てから今日で945日目を迎え,トランプ米大統領が1日,米ブルームバーグ通信のインタビューに対し,北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長について,「私にとって適切なものであれば,当然,会談をすることを光栄に思う」と語った というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

         トランプは最後の切り札を切ったつもりでも  相手はジョーカーだから どう出るかな?

 

                     

 

昨夕は,久しぶりにカレーが食べたくなったので作りました いつものようにジャガイモは煮崩れしないように皮付きのままです あとは「生野菜とサーモンのサラダ」です

 

       

 

                     

 

昨日,池袋の新文芸坐で「リオ・ブラボー」と「ワイルドバンチ」の2本立てを観ました

「リオ・ブラボー」はハワード・ホークス監督による1959年製作のアメリカ映画(カラー,141分)です

 

       

 

保安官チャンス(ジョン・ウェイン)は酒場のゴタゴタから人を殺したジョーを逮捕した ジョーの兄ネイサンは弟を取り戻すべく手下を集め,チャンスを脅迫する チャンスの味方はかつて拳銃の使い手ながら酒で身持ちを崩したデュード(ディーン・マーティン),足が不自由な老人スタンピー(ウォルター・ブレナン),そして途中から仲間に加わった拳銃の名手コロラド(リッキー・ネルソン)だけ ネイサン一味にデュードが捉えられジョーと人質交換することになるが,その場で撃ち合いが始まる.果たしてチャンス一派に生き残るチャンスはあるのか

この映画を観ると,やっぱり西部劇はジョン・ウェインだよな,と思います この映画ではデュードを演じたディーン・マーティンとコロラドを演じたリッキー・ネルソンの歌が聴けます ディーン・マーティンは文句なしに上手い リッキー・ネルソンは上手いまではいかないけれど若さ溢れて魅力的です それと,老人スタンピーを演じたウォルター・ブレナンのとぼけた演技が素晴らしい

 

                     

 

2本目の「ワイルドバンチ」はサム・ペキンバー監督による1969年製作のアメリカ映画(カラー,145分)です

 

       

 

舞台は1913年の動乱のメキシコ.パイク(ウィリアム・ホールデン)をリーダーとする5人のアウトローたちが,革命派の将軍マパッチから,米政府の輸送列車の襲撃を依頼される パイクたち一行は見事に列車から武器弾薬の強奪に成功するが,マパッチは約束の金を渡す代わりにパイクたちに襲い掛かる 100人以上の軍隊を相手に5人は死闘を繰り広げる

この映画では,蒸気機関車で武器弾薬を運ぶシーンが映し出されますが,1913年当時アメリカではすでに蒸気機関車が走っていたのだな,とあらためて思いました 同じ西部劇でも登場する乗り物が駅馬車だったり蒸気機関車だったりするのは面白いですね  もっとも,よく考えてみれば,ドヴォルザークがアメリカの音楽院に赴任していたのは1892~95年で,その時 鉄道オタクのドヴォルザークは現地で蒸気機関車を見ていますから,この映画の20年前にはすでに汽車はあったのですね

ところで,パイクがマパッチにプレゼントした機関銃の操作方法を知らないマパッチと部下たちが,引きがねを引きっぱなしで連射して,辺り一面を混乱に貶めるシーンには思わず笑ってしまいました この当時,機関銃も発明されていたのですね

 

       

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コンサートの平日昼公演増える~朝日の記事から / 6月度読響定期公演を7月名曲シリーズに振り替える / 芥川也寸志著「音楽の基礎」を読む

2017年05月02日 07時59分06秒 | 日記

2日(火).昨日は午前中真夏のように暑いと思っていたら,急に空が暗くなって雷が鳴り始めたりして,まるでトランプ大統領みたいな一日でしたね 

ところで昨日,銀行のキャッシュ・ディスペンサーでお金を降ろそうとキャッシュカードを入れたら,「お取り扱い出来ません」という表示とともにカードが戻ってきてしまいました 「マジっすか?」と思って,別の場所のディスペンサーに入れてみたのですが,やっぱり同じように戻ってきてしまいました カードは相当使い込んでいて 角が擦り減っているので 「もう限界かも」と思い,内幸町にあるM銀行元本店に持っていきました.その結果,ICチップがダメになっているとのことで,再作製することになりました 新たなカードが郵送されてくるまで1週間から10日間かかるとのことなので,取りあえず連休明けまでの必要分を通帳で降ろしておきました

昨日は5月1日=メーデーでした 航空機が飛行中に異常事態が発生すると,機長が管制塔に「メーデー,メーデー」と叫びますが,私にとっては 5月のしょっぱなから とんだ「メーデー」でした

ということで,わが家に来てから今日で944日目を迎え,海上自衛隊の護衛艦「いずも」が1日,横須賀基地を出港し,房総半島沖周辺で米海軍の補給艦と合流し,四国沖までこの補給艦を守りながら一緒に航行する予定である というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

                      くれぐれも房総沖で暴走しないでね! あとで後悔しないように航海してくだされ

 

                     

 

昨日,夕食に「塩だれ豚丼」「生野菜とタコのサラダ」「居酒屋風たたききゅうり」を作りました サラダ以外は初挑戦ですが,「居酒屋風たたききゅうり」は,先日ご紹介した「世界一美味しい煮卵の作り方」に載っていた簡単メニューです きゅうりと食べるラー油とだし汁で作りますが,きゅうりは切るのでなくつぶすのがキモです

 

       

 

                       

 

昨日の朝日朝刊「文化・文芸」欄に「オケ公演  平日昼にシフト~背景に高齢化・働き方の多様化」という記事が載っていました 超訳すると

「平日夜が定番だったオーケストラ公演の『平日昼シフト』が進む.有名曲を並べた従来の初心者向けとは違う『本格感』が特徴だ 耳の肥えたシニアが主な狙いだが,仕事を休んで訪れる現役世代もおり,ライフスタイルの変化に合わせた受け皿作りの側面もある.新日本フィルの『ルビー』シリーズは同じ演目で金曜と土曜の昼に開いている.4月14日金曜日の公演で1801席の約6割を埋めた聴衆はほとんどがシニア世代だった.東京フィルは『平日の午後のコンサート』を開いている 指揮者が音作りの秘話も語るのが売り.客層はシニア中心だが,『平均年齢が60歳を超える定期よりは若く,女性も目立つ』とのこと 東京都交響楽団は昼公演の定期演奏会Cを新設,8回中3回は平日に開く ぴあ総研が実施した調査をまとめた『2016  ライブ・エンタテインメント白書』によれば,クラシック音楽公演の市場規模は13年の254億円から15年は320億円に拡大.来日公演を除いても167億円から224億円に増えた 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの太下氏は,平日昼シフトは今後も進むと予測しつつ,『演劇など他の舞台芸術に比べ若い世代を呼び込めていない分,高齢化が定期会員減少につながりやすい.その象徴的なサインと受け止めて対処しないと,楽団の大合併が起こる可能性もある』と話す

記事が指摘しているのは,オーケストラの定期演奏会の「夜から昼へのシフト」傾向が進んでいるということですが,これとは別に,平日の「モーニングコンサート」や「ブランチコンサート」の新設・増加の流れがあります 私が聴いているだけでも「東京藝大モーニングコンサート」,「東京藝術劇場ブランチコンサート」があります また,東京文化会館が開いている「上野 de クラシック」(旧モーニングコンサート),東京オペラシティが開いている「アフタヌーン・コンサート・シリーズ」などがあります 

このうち「東京藝大モーニングコンサート」は藝大の4年生の演奏発表会的な意味合いが強い(したがって,演奏曲目は本格的なクラシック.学生だからと言って侮れない)と思いますが,それを除く昼公演に共通しているのは,クラシックの奔流をいく長い曲を1曲か2曲演奏するよりも,比較的ポピュラーな短い曲をいくつか盛り込む形をとり,低料金で休憩なしの約1時間のコンサートであることです

いま,「モノからコト」の消費へという流れが喧伝されていますが,コンサートを聴くという行為は絶好のコト消費なのでしょう

 

       

 

                      

 

6月24日の読響定期が東響定期とダブっているので7月7日の公演に振り替えました 6月定期=シモーネ・ヤング指揮でプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」(P:アブドゥライモフ),R.シュトラウス「アルプス交響曲」から,7月名曲シリーズ=飯守泰次郎指揮でブラームス「ピアノ協奏曲第2番」(P:フレイレ),ワーグナー「管弦楽集」への変更です さっそく6月のチケットを読響あてに送付しました.あとは代わりのチケットが届くのを待つだけです

なお,同じ読響の5月19日の定期公演を6月17日のマチネーシリーズに振り替える手続きは済んでいますが,まだ代わりのチケットが届いていません.まだ先のことなので別にいいんですが

 

       

 

                     

 

芥川也寸志著「音楽の基礎」(岩波新書)を読み終わりました 芥川也寸志(1925-1989)はご存知の通り作家・芥川龍之介の三男として東京で生まれ,1949年に東京音楽学校研究科を卒業しています この本は1971年8月に初版を刊行以来 版を重ね今年3月に第66刷の刊行に至っています

 

       

 

この本の構成は次のようになっています

1.音楽の素材 

 ①静寂

 ②音

2.音楽の原則

 ①記譜法

 ②音名

 ③音階

 ④調性

3.音楽の形成

 ①リズム

 ②旋律

 ③速度と表情

4.音楽の構成

 ①音程

 ②和声

 ③対位法

 ④形式

素人の私が最も注目したのは,一番最初に取り上げられているのが「音楽には,まず最初に静寂ありき」ということです 芥川は次のように述べます

「音楽は静寂の美に対立し,それへの対決から生まれるのであって,音楽の創造とは,静寂の美に対して,音を素材とする新たな美を目指すことのなかにある すべての音は,発せられた瞬間から,音の種類によってさまざまな経過をたどりはしても,静寂へと向かう性質をもっている.川のせせらぎや,潮騒のような連続性の音であっても,その響きはただちに減衰する音の集団である.音は,終局的に静寂には克つことができない

そして,続いて次のように結論づけます

「一つの交響曲を聞くとき,その演奏が完結したときに,はじめて聞き手はこの交響曲の全体像を画くことができる.音楽の鑑賞にとって決定的に重要な時間は,演奏が終わった瞬間,つまり最初の静寂が訪れたときである したがって音楽作品の価値もまた,静寂の手のなかにゆだねられることになる.現代の演奏会が多分にショー化されたからとはいえ,鑑賞者にとって決定的に重要なこの瞬間が,演奏の終了をまたない拍手や歓声などでさえぎられることが多いのは,まことに不幸な習慣と言わざるを得ない 静寂は,これらの意味において音楽の基礎である

46年前に指摘された「不都合な真実」が,現代のコンサート会場においても相変わらず繰り返されていることに愕然とします 演奏が終わるや否や大きな拍手をしたりブラボーを叫ぶ常識外れの輩にこそ この本を読んで欲しいと思います コンサート会場における聴衆は,この原点に立ち返り,マナーを守るべきではないか,とつくづく思います

ところで,「3.音楽の形成」の「③速度と表情」の中で,芥川は次のように述べています

「古典派のシンフォニーにおけるカラヤンのアレグロは,ほかの指揮者とくらべて非常に速いが,これは彼がレーシング・カーのライセンスばかりか,ジェット機を操縦するライセンスまでももち,ヨーロッパ中飛び回っていることと,まったく無縁だとはいえない この前までは速いと感じた速度が,今日ではもはや速くは感じないというような事態は・・・・大いにありうるのだ

カラヤン亡き後の現在でも,ジェット旅客機で世界を股に活躍するスター指揮者たちの演奏を聴くと,芥川の指摘は当たっていると思います

同じ章の中で,演奏者によって曲の解釈が異なることについて彼は次のように解説しています

「異なった演奏者が同一の曲を演奏したときに,それぞれ異なった表情が生まれるのは,①テンポ,②アゴーギク,③ディナーミク(ダイナミックス),④音色の差異に基づいている テンポは演奏者の思想が端的に現れるものである.かつて同時代に生きた二人の巨匠,メンゲルベルクとトスカニーニの同じ曲の演奏を比較すると,これが同一作品かと疑いたくなるほど,テンポに差異がある たとえば,メンゲルベルクはベートーヴェンの「第5交響曲」の冒頭,5小節のモチーフを,トスカニーニの何倍もの時間をかけて演奏するのである

「テンポが,演奏者の思想の表明であるとすれば,アゴーギクやディナーミクは,演奏者の個性,性格の告白であるといえよう メンゲルベルクの使用したスコアは,書き込みの多いことで知られ,何色かの色鉛筆による記号や註が,つねにスコアをうずめていたが,彼の演奏もまた,それにふさわしい強調や誇張の多い,いわば書き込みの多い演奏であった それに比べて,トスカニーニは極度の近眼のせいもあるが,つねに暗譜で指揮をし,その演奏は虚飾のない原作に忠実なものであった

「音色は演奏者の好みをよく現わす オーケストラにあっては,フルートとトランペットの音色が,しばしば不思議なほど,そのオーケストラ全体の色彩を決めるものである あるオーケストラのフエとラッパが明るく輝いた音色をもっている奏者がいれば,そのオーケストラ全体はいつも明るく響き,逆に重く渋い音色の場合は,概してそのオーケストラは地味な響きを持ち味にしているものだ

これは分かるような気がしますが,私は,これら2つの楽器に加えてオーボエの音色も重要ではないかと思います

この本を読んでいると,今まで知らなかった演奏史を垣間見ることが出来ます 例を挙げれば「ヴァイオリンの弓を短く上下させるトレモロと指で弦をはじくピチカートを初めて採用したのはモンテヴェルディであった」とか,「クレッシェンドやデクレッシェンドはラモーが初めて取り入れた」とかいったトリビアです

この本では,上の文章の中に出てきた「アゴーギク」や「ディナーミク」の意味も基礎知識として解説しています 音楽大学を出たわけでもなく,ブラスバンドをやっていた訳でもない私のような音楽素人にもわかり易く書かれたクラシック音楽入門書です 音楽好きの方々に広くお薦めします

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飯森範親+東響でモーツアルト「交響曲第43番ヘ長調」,「交響曲第6番」,「レ・プティ・リアン」を聴く~東響モーツアルト・マチネ

2017年05月01日 07時49分17秒 | 日記

5月1日(月).驚くべきことに今日から5月です.今年も残すところあと244日になりました ということで,わが家に来てから今日で944日目を迎え,北朝鮮が29日早朝 弾道ミサイルを発射したが失敗した模様だ というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

       

                     失敗したから良かったものの 成功してたら国の存亡の危機を迎えていたのでは?

 

                     

 

昨日,ミューザ川崎で東京交響楽団の「モーツアルト・マチネ 第29回『モーツアルト✖疑惑』」を聴きました  プログラムはモーツアルト①交響曲第43番ヘ長調K.76/42a,②バレエ音楽「レ・プティ・リアン」K.Anh.10(299b),③交響曲第6番ヘ長調K.43です  指揮は山形交響楽団音楽監督,日本センチュリー交響楽団首席指揮者,東京交響楽団正指揮者の飯森範親です

 

       

 

モーツアルト・マチネを聴くのは今回が初めてです 自席は1階センターブロック右側ですが,1階席と2階中央を中心にお客さんが入っています オケのメンバーが入場し配置に着きます.第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置をとります.コンマスは水谷晃.曲により管楽器奏者の入れ替えがありますが,この日の出演は総勢42人です

女声陣の服装を見て気が付いたのは,全員がパンツルックだったことです 定期公演の時はロングドレスあり,パンツルックありとバラバラなのですが,この日は統一していました これはとても良いと思います このブログで何度か書きましたが,女性奏者はパンツルックで統一した方が機能的だし断然カッコいいと思います このことを気づかせてくれたのは,数年前のチョン・ミョンフン指揮アジア・フィルとソウル・フィルのコンサートの時です 両オケとも楽員の平均年齢が若いということもありましたが,女性陣が全員パンツルックで登場した時,スマートでカッコいいと思いました

さて,この日のテーマは「オール・モーツアルト?・プログラム」です.「?」が付いているのは,プログラムの中に「偽作らしい曲」が含まれているからです 1曲目はその一つ「交響曲第43番ヘ長調K.76/42a」です

この曲はモーツアルトが11歳の時,1767年の秋にウィーンかザルツブルクで作曲されたと言われていますが,自筆譜がなく,研究者たちの間では音楽の内容から父レオポルトの作品ではないかと考えられているようです 4つの楽章から成りますが,例えば第3楽章「メヌエット」を聴くと,モーツアルトはこれほどしつこく繰り返しをするだろうか,という疑問が生じてきます 考えようによっては11歳のモーツアルトの作品にレオポルトが手を入れたのではないか,とも思います

そもそも飯森がこの企画を立てたのは,モーツアルト研究家のケッヘルが,作品を作曲順に(ケッヘル)番号を振って整理して以降,研究によってモーツアルト作らしいとされた作品も含めてモーツアルト交響曲全集をCDとしてリリースすることになった(演奏は山形交響楽団)ことがキッカケのようです

2曲目は,パリ在住の知人でバレエの改革者として知られるノヴェールのために作曲したバレエ音楽「レ・プティ・リアン」です この題名は「ささいなこと」を意味しますが,キューピッドと牛飼い娘たちによる田園風のバレエです 序曲と20曲からなる全21曲の作品です.モーツアルトが序曲と12曲を作曲し,残り8曲を他の作曲家が作ったということですが,どの作品がモーツアルトの手によるものかを確定する資料が残されていないことから,曲の内容で判断するしかないとのことです

この日のプログラムの解説には序曲〇,第1曲✖,第4曲△というように印が付されています つまり,「新モーツアルト全集」がモーツアルトが作曲したとするものに〇印,そうでない作品に✖,おそらくモーツアルト作ではないとする作品に△を付しているのです

私は△の「おそらくモーツアルト作ではない」作品を中心に注意深く聴くことにしました 該当するのは第4曲,第5曲,第7曲,第8曲,第13曲,第14曲,第17曲の7曲です 聴いた感じでは,いずれもモーツアルト自身が作曲したのではないかと思うほどモーツアルト的でした 1曲1曲が短すぎるということもありますが,はっきり言って判別できません

なお,序曲はファンファーレ風の曲想で開始されますが,2本のトランペットはバルブのないバロック・トランペットを使用しています

 

       

 

3曲目は「交響曲第6番ヘ長調K.43」です この作品は正真正銘のモーツアルトの作品です 1曲目の第43番の作曲時期と同じく,11歳の時の1767年にウィーンで作曲されました.4つの楽章から成ります

全体を聴いて思うのは,11歳でこれだけの曲を作曲出来るのは天才モーツアルトしかあり得ない ということです.管楽器と弦楽器との対話も流麗で,モーツアルトらしい明るく爽やかな音楽です

水谷晃以下東響の面々は軽快なフットワークで少年モーツアルトの傑作と偽作?を演奏し,十分楽しませてくれました

 

       

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