全米のコロナ死者が1万人突破、NY州では安定化の兆候も

2020年04月07日 15時07分33秒 | 事件・事故

4/7(火) ロイター

米ニューヨーク州のクオモ知事は6日、新型コロナウイルス危機が安定期に差し掛かりつつある可能性を示す初期の兆候が見られると述べた。しかし、全米での新型コロナ感染症による死者は1万人を突破し、予断を許さない状況が続いている。

 クオモ知事は6日、州内で新たに約600人が死亡したと発表。同州の死者数合計はこれで約4800人に達した。

 依然としてその数は全米で突出しているものの、過去数日でほぼ横ばいになってきたようだと述べた。

 クオモ知事
「良いニュースはないが、グラフの線は横ばいになりつつあり、これまで見たような増加傾向よりは良くなっている」

 同州では新規の入院患者数も減少した。

 米政府の専門家が、残酷な1週間になるだろうと予測した週の幕開けとなった6日。ニューヨークでは医療従事者が、人員や医療用品の不足を街頭で訴えた。

 その1人、ジリアン・プリミアノさんが看護師として働く病院では、臨時の遺体安置所が設けられ、そこに多数の遺体が積み上げられている。

 看護師 ジリアン・プリミアノさん
 「悲惨で破滅的だ。毎日人が死んでいくところを見ている。必要な清掃用品も、場所も、人員も足りない。病院の外には(遺体を乗せる)保冷トラックが止まっている。貧しい人が記録的な数字で死んでいる。貧富の差はないというが、そんなことはない」

 一方、米ドラッグストアチェーンのCVSは6日、ジョージア州とロードアイランド州の2カ所に、ドライブスルー型の検査施設を開設すると発表した。1日1000件の検査を目指すという。

 すでに全米で30万人以上から新型コロナの陽性反応が確認されているが、当局は検査キットの不足から、実際の患者数はこれよりも多いとみている。

 ロイターのまとめでは、全米ですでに1万人以上が死亡した。

 




ここにきて「新型コロナ」の日本人感染者が爆発的に増えているワケ

2020年04月07日 15時05分45秒 | 医科・歯科・介護
ウイルスの毒性が強くなっている

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が止まらない。

 中国国内で広がっている間は、インフルエンザよりも感染率が低いとか、感染してもほとんどが軽症ですむなどと、どちらかといえば楽観的に受け止められていたのに、ヨーロッパに飛び火したウイルスは爆発的に広がり、さらに日本でも3月24日ごろから状況が変わってきた。

【写真】コロナ不況なのに「意外と売れているもの」一覧

 明らかに感染者の増加曲線が変化していて、このままでは感染者数が万単位になるだろうといわれている。

 それにしても、なぜ24日ごろから感染者数が増え始めたのか。
 
2009年にメキシコで豚インフルエンザが大流行してパンデミックになったことがあったが、当時、私はこの感染地帯のど真ん中にいた。もちろん取材だが、そのときの状況は措くとして、今も覚えているのは、現場の医師から「ウイルスの毒性が強くなっている」と聞いたことだ。

 当時は感染が広がってまだ2ヵ月しか経っていないのにウイルスが変異していることに驚いたが、新型コロナウイルスはもう4ヵ月を過ぎている。当然、変異を起こして毒性が強くなっていても不思議ではない。

 かつてインフルエンザウイルスを研究していた前田浩熊本大学名誉教授にうかがうと、ウイルスはミューテーション(突然変異)を起こしやすく、毒性が変わるのは当然なのだという。

 「コロナウイルスというのは1本鎖RNAなんです。ヒトのようにDNAが二重螺旋だと、片方のDNAが傷ついたり突然変異を起こしても、修復酵素が働くし、片方がマッチングして修正します。でも1本鎖RNAにはそれがないから、ミューテーションが非常に起きやすいのです」

 ちなみに、インフルエンザウイルスに感染すると、宿主である人間はなぜ死ぬのか。実はウイルスそのものではなく、感染によって体内に発生する膨大な活性酸素が原因であることを、30年ほど前に発見したのが前田名誉教授だった。

 インフルエンザウイルスに感染して死んだマウスを調べると、大量にいるはずのウイルスがいない、なぜ死んだのかを調べるうちに、ウイルスをやっつけようと体内のマクロファージや白血球などが大量の活性酸素を放出し、さらに各種サイトカインやプロテアーゼの過剰発生などが細胞毒性となってマウスが死んだとわかる。

 それを証明するために、SODという活性酸素を消去する酵素を、高分子に繋いで注射するとマウスは死ななくなったそうだ。新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスも同じ1本鎖RNAである。とはいえ、新型コロナウイルスに効果があるかどうかは別だが……。

 それはさておき、3月24日以降の感染者数の増加を見れば、なんとなくウイルスが変異したのではないかと疑わせるが、それを確かめるには、少なくともゲノムを調べることだろう。

 COVID-19のゲノムなんて塩基数にして3万ほどだから、すぐに解析できるはず、と思っていたのだが、いつまでたっても報道がない。

突然変異で強毒化した可能性

 ところが、海外ではランセット(The Lancet)など、さまざまな学術誌にウイルスのゲノムを解析した論文が掲載され始めた。なかでもCOVID-19のゲノムの系統図をわかりやすく掲載しているサイトが「Nextstrain」である。

 そこに掲載された系統図(1)(2)を見ると、武漢で発見された新型コロナウイルスは、さかんにミューテーションを繰り返しながら、世界中に拡散していく様子がうかがえる。

 系統図(1): 新型コロナウイルス拡散の遺伝的解析と現状報告(2020.03.27)

奥野 修司

 

最終更新:4/7(火) 13:01
現代ビジネス


NYでは非常事態宣言から1カ月 「医療崩壊」は現実に 新型コロナ

2020年04月07日 15時02分58秒 | 医科・歯科・介護

 7日にも新型コロナウイルスの感染拡大に備えて東京や大阪などで緊急事態宣言が発令される日本では、その効力に期待が集まるが、感染が米国で最も深刻ですでに1カ月前に非常事態宣言が出されたニューヨーク州では、「医療崩壊」が現実のものとなりつつある。(ニューヨーク 上塚真由)

【グラフ】「見えない敵」に各国はどう動いている?

 ニューヨーク州で初めて感染が確認されたのは3月1日。非常事態宣言が出された同7日時点では感染者が89人で、死者はゼロだった。それが約1カ月がたった4月5日時点で、同州の感染者は12万人を超え、死者は約4100人に達している。

 感染拡大のスピードに「医療体制は限界を超えている状態」(クオモ知事)。同州の病院には計約5万3000床あったが、ピーク時に必要となる病床は14万床と予測。また、重篤患者の生死を左右する人工呼吸器は約4000台を保有していたが、最大で3万~4万台が必要と確保を急ぐ。

 臨時病院の設置などで病床不足は解消の見通しが立つが、問題なのは人工呼吸器だ。同州はすでに1万2000台以上を確保し、1万7000台を中国に発注。だが世界的な需要急増で生産が追い付かず、2週間以内で同州が入手できるのは約2500台にとどまるという。

 医療物資の生産、製造は中国に依存してきたのが現状で、これを各州と連邦政府が競って入手を図り、価格競争も招いている。クオモ氏によると、人工呼吸器は通常2万ドル(約218万円)だったが、5万ドルまで価格が高騰。58セントだった医療用マスクは約13倍の7・5ドルとなっているという。

 経済協力開発機構(OECD)によると、米国は人口千人当たりの病床数が2・77と、加盟国平均(4・7)と比べて少なさが際立つ。また、医療スタッフも不足し、全体の17%を移民に頼っているという実態がある。ニューヨーク州では退職者らを対象に医療ボランティアを募っているほか、今春卒業予定の医学生を即座に現場に投入する措置にまで踏み切った。

 欧州ではイタリアに次いでスペインで感染が爆発。両国ではすでに死者が1万人を超え、人工呼吸器が不足し、集中治療室では「患者の選別」が行われるという医療崩壊が起きた。両国とも医療体制の脆弱さは共通しており、OECDによると、千人当たりの病床数はイタリアが3・18床、スペインは2・97床と、他の先進国と比べて少なさが目立っている。

 

 


インドネシア、コロナ感染ペース加速 死者は中国除くアジアで最悪

2020年04月07日 14時58分37秒 | 医科・歯科・介護

[ジャカルタ 6日 ロイター] - インドネシアで6日、新型コロナウイルス感染者数が218人増加し、合計で2491人になった。1日としての増加数はこれまでで最大。感染による死者数は209人と、アジア地域では中国を除き最悪となった。

死者のうち24人は医師で、医療用防護服などの不足に対する批判が高まっている。

インドネシア当局は先週、新型ウイルスの感染は向こう3カ月でピークに達し、7月までに感染者数は10万人を超えるとの見方を示している。

 




イタリアの死者数、一転して大幅増に 新型コロナ

2020年04月07日 14時52分33秒 | 医科・歯科・介護

【AFP=時事】イタリアで6日、新型コロナウイルスによる1日の死者数が、前日から大幅に増加した。前日の死者数はここ2週間余りで最低となっていた。当局は、同国で続く封鎖措置緩和の可能性について慎重な姿勢を強めている。

【写真】ローマ市街で、マスクをして会話する人々

 イタリア国家市民保護局(DPC)によると、新型コロナウイルス感染症COVID-19)による1日の死者数は6日、636人に増加。5日の死者数は525人で、4日の681人から23%減り、3月19日以降で最低となっていた。

 イタリアの主要保健当局者らは、5日の死者数減少を重要なデータと指摘し、同国で1か月続いている厳しい封鎖措置の緩和につながる可能性があると述べていた。しかしDPCのアンジェロ・ボレッリ(Angelo Borrelli)局長は6日、データは今も慎重な評価が続いており、最終的な判断は時期尚早だとの考えを示した。【翻訳編集】 AFPBB News

 




新型コロナ感染者が語る】発熱そして陽性、ほかの患者と“相乗り”で入院先へ

2020年04月07日 14時49分18秒 | 医科・歯科・介護

 猛威をふるい続ける新型コロナウイルス。増え続ける感染者と死者だが、どのような検査や治療をどんな思いで受けているのかーー。新型コロナに感染し、現在、入院中の生の声を、勇気ある男性が週刊女性に伝えてくれた。

【写真】陽性判定後、保健所から受け取った書類と入院食

 終わりが見えてないけど、コロナと僕との根比べだと思うから、絶対負けない!

 そんな気持ちから、僕と新型コロナウイルスの闘いをみなさんに知ってもらいたいと思い、この連載を引き受けることになりました。

 みなさん初めまして。会社役員、30代のNです。

風邪という診断で帰宅

 新型コロナに感染して入院することになりました。“コロナをぶっ壊す!”という意気込みですが、まずは、これまでの経緯をお話しします。

 発熱があったのは3連休明けの3月23日の夜です。38・8度まで上がりました。

 翌日、近所の病院で診察を受けたときは、のども腫れておらず肺の音もきれいだったので、風邪という診断で解熱剤をもらいました。

 25日から26日も解熱剤で一時的に熱は下がっても、また38度台まで上昇する状態が続きました。このころから、話題になっている味覚や嗅覚の不調が始まりました。肺のチクチクした痛みもです。

 27日に同じ病院に行くと、やはりのども肺も正常でしたが、次の週まで熱が下がらなければ、肺のX線検査をすると告げられました。

 解熱剤をまたもらいましたが、28日も29日も熱は一時的には下がっても再び上昇する状態が続きました。

 そして、30日にX線検査を受けると、肺に白っぽい霧が。先生がすぐに紹介状を用意して、別の病院でPCR検査を受けました。

 のどに綿棒を挿入して検体を取る検査でした。小池百合子都知事が夜間の外出自粛要請を出した日です。

ナイトクラブに行きました

 そして、翌31日の19時ごろに新型コロナウイルスの陽性反応の連絡が電話で来ました……症状がひどかったので、やはり! と感じましたね。

 4月1日から入院の予定でしたが、病床が足りず重症患者を優先させたいということで、僕は2日からの入院になりました。

 このころから、咳がひどくなり、頭頂部が痛くなりました。でも何よりマスクで擦れた耳がいちばんの痛みでしたね。

 入院先へは、自宅近くに車が迎えに来て、ほかの患者と“相席”の状態で移動しました。

 入院初日は“検査地獄”。特に鼠径部からの採血は鬼のように痛く、身体の中にこんなに血が入っとんのか! と驚くほど採血されました。鼻に綿棒を突っ込む検査もメッチャ痛いのでもういやです!

 でも、病院のスタッフはすごく優しいです。感染者は病院内も歩くことができないので、テレビ視聴用のカードを買ってきてくれました。院内にあるコンビニの買い物もツケ払いで毎日してくれます。

 検査のときの聞き取り調査はかなり細かい内容でした。風呂のお湯は毎日替えているか、住んでいる家は木造か鉄骨かまで聞かれて、そんなことまでわからないよ(笑)。

 感染経路をたどるためですけど、実は夜間外出自粛で名指しされた“ナイトクラブ”にも行きました。

 僕は仕事でも遊びでもあちこち行く人間なので、どこで感染したかは正直わかりません。でも、連休中の3月20日に行った麻布十番のクラブで感染したのかな。当時はそれほど自粛ムードもなかったので……、もし僕から誰かに感染させてたら申し訳ないです。

 今後、容体が急変して連載が終わらないように頑張ります。では、また来週!

*新型コロナ感染者・Nさんへの質問事項は下記のアンケートフォームよりお答えください(外部配信先では正しく表示されないことがあります)!

 




新型コロナ入院患者が地獄の闘病激白「喉に金串が刺さったような耐え難い痛み」

2020年04月07日 14時41分00秒 | 医科・歯科・介護

 国内の感染者が3日連続で1日当たり300人を超え、衰え知らずの新型コロナウイルスの猛威。感染しても重症化するのは約2割。8割は無症状か、症状が軽いとされるが、その分かれ目は患ってみなければ分からない。コロナに感染し、現在も都内の病院に入院中の飲食店経営の男性(52)が、病床から電話で地獄のような闘病3週間の生活を語ってくれた。

  ◇  ◇  ◇

■当初は国からインフル検査を禁じられ放置

 体に異変を感じたのは、3月17日ごろです。それから微熱が続き、喉が腫れ、サバの骨の10倍ぐらいの太さの金串をのみ込み、喉に突き刺さっているほどの強烈な痛みを感じました。痛さで飲み物どころか唾さえ飲めません。次第に首の外側が腫れ、食欲が減退し、倦怠感に襲われ、睡眠導入剤を飲んでも痛さで眠れない日々が続きました。

 寝ようにも背中をバットでボッコボコにブン殴られるぐらいの激痛に見舞われ、2日間、自宅のベッドの上でのたうち回りました。さすがに「もうダメだ」と思い、近所のクリニックを受診すると、「インフルエンザの疑いがあるが、検査は国から禁止されているので薬だけ出します。2日経って熱が下がらなければまた来てください」と言われ、インフルの薬と解熱剤を処方されました。しかし、苦しみに耐えられず、翌日、再受診しました。

■突然鼻血が止まらなくなり…

 平熱35.8度の体温が38.6度まで跳ね上がり、血液検査とレントゲンの結果、白血球の数値が高く、肺に影が見つかりました。報告を受けた保健所から「すぐに病院に行ってください」と指示され、都内の病院に入院し、集中治療室(ICU)に入れられ、抗生剤入りの点滴治療が始まりました。

 何か食べなければと思っても、口に入れられるのはせいぜいおにぎり1個。喉もカラカラに渇きます。突然、鼻血が出て止まらなくなり、ティッシュを詰め、苦しくなって外すと、またドバッと鼻血が流れ出す。その繰り返しです。鼻血が止まって鼻をかむと、血の塊が出てきます。そのうち鼻の中にかさぶたができました。約1週間、ICUで治療に専念し、今月2日、一般病棟に移りました。

ようやく自覚症状も治まったので、退院できると期待したのですが、PCR検査の結果は陽性でした。今後の検査で2回陰性にならなければ、退院はできません。実は母親も現在入院中です。仕事を手伝ってもらっていた時に、うつしてしまったようです。母親もICUで治療を行っていましたが、幸い酸素吸入器が外れ、久しぶりに電話で話をすることができました。どこで感染したか、全く心当たりはありません。友人やお客さんとも接触していますし、飲みにも出かけました。そう思うと、怖くて仕方ありません。

 今回、自分が想像を絶する苦しみを経験し、感染者だからこそ言えることがあります。誰一人として、同じようなつらい思いをして欲しくはありません。自分が外に出れば誰かにうつしてしまうかもしれない。それだけは絶対してはいけない。自分はうつらないとか、うつっても大したことないと思っている若い人たち、またその家族も、命の危険にさらされる可能性があることを知って欲しいと思います。

 




失敗を恐れて挑戦しないこと

2020年04月07日 14時18分16秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▽社会を恨み、学校を恨み、親を恨み、自分を恨んで、それで自分が満足できるのか。
そうではないでしょう。
かけがえのない自分です。
自分で自分を、くさらせてはいけない。
▽青春に、取り返しのつかないことなど絶対にない。
むしろ、青春の失敗とは、失敗を恐れて挑戦しないことです。
また、自分を自分であきらめてしまうことです。
▽いわゆる「エリート」でなく、「リーダー」を育てたい。
悩める人、苦しんでいる人、不幸の人の味方になれる人が偉い人です。
それが「新世紀の指導者」です。
▽つねに「さあ、今日から!」「これから!」「今から!」「この瞬間から!」と未来を見つめ進む。


新型コロナが引き出した大衆の深層心理の闇

2020年04月07日 14時00分51秒 | 社会・文化・政治・経済

河合 薫  

健康社会学者(Ph.D.) 日経ビジネス
 

「社会生活や人間関係を汚染するものこそが、新型コロナウイルスがもたらす最大の脅威だ」──。

 これはSNSでも話題になった、イタリアの高校のドメニコ・スキラーチェ校長が生徒たちに送ったメッセージの一部だ。

 校長先生は、「外国人に対する恐怖やデマ、ばかげた治療法。ペストがイタリアで大流行した17世紀の混乱の様子は、まるで今日の新聞から出てきたようだ」と、1630年にミラノを襲ったペストの流行について書かれた『許嫁(いいなずけ)』を紹介。「感染拡大のスピードは、昔は少しゆっくりだったかもしれないが同じで、それを止める壁は存在しない。目に見えない敵からの脅威を感じているときは、仲間なのに潜在的な侵略者だと見なしてしまう危険がある」と説いた。

 ふむ。まるで今の日本だ……。

 車内で咳(せき)をしただけで怒号が飛び、ドラッグストアの前ではマスク購入を巡る取っ組み合いのけんかが起きている。私の友人は電車の中で咳をしたら「周りからどんどん人がいなくなり、殺されそうな目で見られた」と嘆いていた(彼女は難病があり乾燥した空間に行くと咳が出るので、常にマスクを着用している)。

 中華街には外国人を罵倒するビラが送りつけられ、コンビニのトイレではトイレットペーパーに鎖が付けられていたところも。なるほど、盗難防止ということか。

生かされない過去の経験

 未知なるものに不安を感じるのは、人として当然の反応である。人類の歴史は感染症との戦いであり、感染症流行に伴う混乱は、地震などの自然災害と同様、社会心理学の分野で研究が蓄積されてきた。しかし、悲しいかな、研究者たちの思いとは裏腹に未知なるものへの“常軌を逸した言動”は繰り返されている。

 緊急事態が起こる度に総括され、法律や制度を整備しても、人の心をコントロールするのは至難の業。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、09年の新型インフルエンザと、人々の不安感や言動なども研究者たちが検証し、リスクコミュニケーションの重要性が指摘されてきたのに、今の政府の対応には「り」の字のかけらもない(後ほど詳細は説明する)。

 そこで今回はいつもとちょっとばかりテーマを変えて、「人の愚かさ」について、過去を振り返ってあれこれ考える。

 正直に打ち明けると、私は今のギスギスした空気と、トンチンカンな政治決断やら根拠なき噂話やらにへきえきし、「コロナ関連死」なるものが出るのではないかと危惧している。既存の薬が効いた、検査時間を半分にできるウイルス検査用の試薬開発に着手したなど、企業に勤める研究者たちの努力で前向きになれるニュースも出てきたけど、やはり過去に学び、今を考え、明日からでもできることを模索したいし、少々落ち着きを取り戻したい。

 というわけで、感染症流行時の心理反応や効果的なコミュニケーションに関するいくつもの論文を参考にしながら書き進めるので、みなさまもお付き合いください。

まずは、世界をパニックに落とし入れた感染症の代表格、「ペスト=黒死病」流行時の惨事を簡単に振り返っておく。

 ご存じの通りペストの流行は繰り返され、14世紀にヨーロッパで猛威をふるった際には少なくともヨーロッパ人口の約3分の1が犠牲になったと記録されている。ペスト流行の原因については、広く知られるネズミ原因説のほかにも「占星術的な病因説」や「キリスト教の敵説」があった。

 前者は、「火星と木星が水瓶座に集合したため」という、現代なら「???」というものだが、後者は「ユダヤ人が井戸に毒を放った」「ユダヤ人が毒入りのぶどう酒を作った」という、“人間関係を汚染源”とするものだった。

 当時、ユダヤ人には裕福な人が多くペストを予防できたため、犠牲者が少なかった。それがかねての宗教的対立を激化させ、ペストは「ユダヤ人のせいだ!」という根拠なき噂や臆測をもたらし、ユダヤ人迫害という民衆の行動を招いた。

 1382年、暴徒たちはパリのユダヤ人街で略奪と破壊を行い、1391年には、セビリアの助祭長が「ユダヤ人に対する聖戦」を扇動。暴徒はユダヤ人街に押し寄せ、およそ4万1000人のユダヤ人が殺害され、ストラスブールでは、 2000人のユダヤ人が火刑に処せられたという記録もある。

 まさに「目に見えない敵からの脅威を感じているときは、仲間なのに潜在的な侵略者と見なす心理」(by校長先生)が、いくつもの根拠なき噂を生み、常軌を逸した行動につながったのだ。

日本でも感染病によるパニックがたびたび起きた

 似たようなことは日本でも、江戸から明治時代にかけて数年間隔で猛威をふるったコレラの流行で起こっている。

 1879年(明治12年)の大流行では、患者は感染病専門病院に収容され、自宅療養患者の家族は外出禁止など、感染を防ぐための配慮から隔離する措置が執られていた。

 また、感染予防のために魚介類や生鮮食品の販売が禁止され、関係者は大打撃を受ける。そんな折も折、新潟町(過去の文献の記載のまま)では大火や洪水が発生し、米価が急騰。人々のコレラへの恐怖心や不安感はピークに達することになった。

 恐怖の矛先はコレラ患者と警察に向けられ、ついに沼垂町では竹やりなどを手にした人々が警察や病院などを破壊。駆けつけた警察によって鎮圧されるも死者を出す事態に発展したという。

 そういった異常事態は全国にも伝わり、「沼垂ではコレラに感染すると殺すらしい」「警察は人の生き肝を米国に売っているらしい」「コレラの原因は毒まきが毒をまくためだ」といった噂話が広がり、「毒まき」と疑われた人が市民の手によって警察に連行される騒ぎも起こる。

 「死刑にしろ!」と騒ぎ立てる市民と、それを鎮圧しようとする警察との間で衝突が起こり、暴動に発展するなど、異常事態の連鎖が続いたそうだ(鏡淵九六郎編『新潟古老雑話』より)。

 ……とまぁ、今とは時代が違うので「昔話」のように思えるかもしれないが、今回の新型コロナウイルスでも「動物からの感染じゃないらしい!」「ウイルス兵器の実験中だったものじゃないか?」などとSNSで発信しているメディアもある。首尾一貫性を好む人間は、兎(と)にも角にも原因を突き止めないと気がすまない。

 「隣人や自分と同じ土地に暮らす人々を、敵と見なすか?同胞と見なすか?で人々の行動が変わる」というのは自然災害時の通説だが、ウイルスのように目に見えない恐怖では、見えている「誰か」を危険な存在だと見なし、排除することで、恐怖から逃れようとする心理が強く働くのだ。

先週、ドラッグストアの店員さんが「コロナより人間が怖い」とtwitterで悲鳴を上げ、多くの共感が集まったが、その根っこにある心の動きは過去の感染症流行時と全く同じだ。

 ドラッグストア勤務歴12年のベテラン店員さんのツイートは、デマ情報にだまされドラッグストアに殺到するお客さんへの対応について書いたものだった。

 「今まで優しかった人々が、殺気立って、とにかくイライラをぶつけてくる。『次の入荷はいつ?』『いつもないじゃない』『1個くらい取っておいてよ』と電話でも、対面でも何度も何度も聞かれ、その度に『すみません』『申し訳ありません』と頭を下げている。人が鬼に見える。正直ノイローゼ気味だ」などと書かれ、リツイートは33.5万件、いいねは59.8万件を超えた(5日19時現在)。

 店員さんが「今まで優しかった人々」としていることから分かる通り、幼稚で暴力的な言動に走るのは、決して「特別な人」だけではない。

 恐怖にあおられればあおられるほど、人の生存欲求はかき立てられ、利己的な言動が引き出される。自分でも驚くような大きな声を出してしまったり、後から考えると反省しきりの行動をしてしまったりする愚かさを、私たちは持ち合わせている。実に恐ろしいことだ。

 3月3日には、「『トイレットペーパーが品薄になる』という虚偽情報を流したのは、うちの職員だった」と、鳥取県米子市の「米子医療生活協同組合」が謝罪したが、その数分後には、SNS上で職員の実名が拡散され、にわかに信じがたいおぞましい言葉が職員に浴びせられていた。“二次被害”が出ないこと願うばかりだ。

冷静さを取り戻す鍵はリスクコミュニケーション

 いずれにせよ目に見えない敵に恐怖を感じたときの人間は実に愚かで、暴力的かつ刹那的な言動に走りやすい。それを防ぎ、「正しく恐れる」(←知識人が好む言葉ですね)には、リスクコミュニケーションを徹底するしかない。

 「リスクコミュニケーション」は個人、集団、組織などに属する関係者たちが情報や意見を交換し、その問題について理解を深め、互いにより良い決定を下すためのコミュニケーションだ。それは一方通行ではなく双方向で、批判的ではなく建設的に、1回限りではなく継続的にやりとりされる「相互作用の過程」である。

 すなわちリスクコミュニケーションとは一般の人たちの「知る権利」であり、リスクに対する彼らの不安や被害をできる限り減らすための唯一の手段なのだ。

 リスクコミュニケーションの重要性は、原発の事故発生時やその後の再稼働のときにも散々指摘されてきたが、特に予測が難しい感染症時のリスクコミュニケーションでは、専門家の役割が極めて重要になる。

 専門家には一般の人たちの目線と、難しいことを平易な言葉で分かるように伝えるスキルと、「こんなこと言っても分からない」とあきらめない姿勢が求められる。

リスクコミュニケーションでは、専門家が意思決定の裁量を持ち、情報の一元化を徹底することが極めて重要となる。例えば、リスクコミュニケーション先進国である米国では、新型インフルエンザが大流行した際、米疾病管理予防センター(CDC) がリーダーシップを執り、情報提供窓口を一元化した。政府や自治体、企業や学校などもCDCを一次情報源とした。

 CDCは、感染者数、感染源、治療法などどんどん更新される情報を、逐一国民に発信し、その際も国民の生活目線を忘れず、迅速かつ分かりやすさを徹底したと報告されている。

 例えば、小学校や保育施設など施設別の行動指針やハイリスク者に関する情報、乳児の保護者向けの情報や、夏休み前にはキャンプ時の感染予防策など、豊富な切り口で情報提供した。CDCのホームページを見るだけで、幅広い情報ニーズを満たすことができるようになっていたそうだ(「新型インフルエンザのリスク認知とリスクコミュニケーションのあり方に関する調査研究」より)。

 さらに、CDCは暫定的な行動指針やガイドラインなどもリアルタイムで公表、都度更新し修正を加えるなど、まめな情報発信に努めた。

 徹底的に正確な情報提供を続けるからこそ、国民の情報への信頼は高まる。生活者目線の情報だからこそ、誰もが「自分の身に何が起こるか? 何に備えておけばいいか? 必要なものは何か? 困ることは何か?」と考え、具体的な行動につなげることができる。

 そのような過程の先に、オバマ大統領の「国家非常事態宣言」があり、その後もきちんとそれまでのプロセスと決定を振り返り、検証も行うなど、最後まで双方向の基本原則を貫いたという。

メディアは一次情報と連携すべし

 リスクコミュニケーションでは、二次発信となるメディアの役割も極めて大きい。にわか専門家や、コメンテーターなどが、国民の不安をかき立てるようなことがないように、一次情報発信者(専門家チーム)と密接に連携する。メディアの記者たちには、専門家や政府などが行う記者会見で、適切かつ意義ある質問ができるだけの最低限の知識と生活者目線を持つことが求められる。そのためには専門家たちがリーフレットを配ったり、ミニ講習会を開くなど、マメに「汗をかく」必要もある。

 当然ながら政府の役割と責任は極めて大きく、国民に発信するときには、「何を根拠に、そういった決定がなされたのか?」を、一次情報に基づき、きちんと説明し、記者からの質問にもきちんと対応し、双方向の原則を守らなくてはならない。

 日本では、リスクコミュニケーションの重要性は「厚生労働省健康危機管理基本指針」にまとめられているし、新型インフルエンザが流行したときの経験を踏まえたリスクコミュニケーションの課題は、研究者がいくつもの調査報告書にまとめている。

 一次情報の窓口となった厚労省からのリアルタイム発信が乏しかった、WHOの情報と政府の対応の関係の食い違いが不安と不信感を高めた、マスコミの過熱した報道姿勢など、いくつもの問題が指摘されているのだ。

……にもかかわらず、それが全く生かされていない現実がある。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大防止策は、当初から「誰がリーダーシップを取っているのか?」が不明だったし、専門家会議を立ち上げるのも遅かった。

 安倍晋三首相自身が全国の小中高校などへの休校要請について、「直接、専門家の意見を伺ったものではない」と、専門家会議の提言に基づく決定ではないと明かしたり、記者会見でも記者の質問に答えずその場を去ったり、5日に発表された「中韓からの入国規制」については、政府対策本部の専門家会議メンバーの押谷仁・東北大教授が、困惑した様子で受け止め「まずは国内の対策に力を入れるべきではないか」と疑問視したと一部メディアで報じられている。

 本来、鍵を握るべき専門家の立場は? 生活者目線は? どこに行ってしまったのか。

 安倍首相の政治決断を「英断!」と評価する人もいるけど、納得いく説明もないままにトップダウンの発信だけが進んでいることが、余計な不安感や恐怖心、疑念、差別、偏見、間違った知識などにつながっている。

 確かに厚労省は、twitterやFacebookで発信を行っている。しかし、防止策の意思決定はどのように行われているのか? どこに双方向のプロセスがあるのか? 分からないことだらけだ。

一貫しない言動が続く政府とメディア

 当初、テレビに出演する専門家たちは「マスクは予防にならない」と口をそろえ、手洗いが最大の防止策と言っていたにもかかわらず、マスクを国が買い取り北海道の人々に配布した。

 その後、介護職員らでつくる労働組合が全国の介護事業所4043カ所への緊急調査を行い、マスクがすでにない事業所が約2割、訪問介護に限ると3割、在庫が2週間分以内の事業者は3分の2に達していると、政府にマスクの確保を訴えた。

 これにより政府は、「1人に1枚行きわたるようにする」と発表した。

 ところが突然、マイナンバーで買えるようにするだの、何だのと、「え? 今、それ??」という発信もあり、政府もメディアも右往左往する状態がまだまだ続いている。

 今からでも遅くない。せめて、新型インフルエンザのときの経験を生かした情報発信と対応をしてほしい。

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新型コロナウイルスとパニック

2020年04月07日 13時57分44秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

(2020/03/16)コーチビジネス研究所

新型コロナウイルスは、3月11日にWHOのテドロス・アダムス事務局長により「パンデミックである」との宣言がなされました。あらゆるメディアからシャワーのように情報が提供される中、私も、自分自身はどう対応していけばよいのかを考え、そして可能な範囲でのアクションを起こしている日々です。
今回は、この新型コロナウイルスを通じて、私自身が感じている「心理学」との関係について、取り上げてみようと思います。

ドラッグストアの前で、マスクの購入をめぐって取っ組み合いの喧嘩が起こったことが報道されています。そしてインターネットで「新型コロナウイルス パニック」という文字を入力すると、夥しい情報がヒットします。テレビ、新聞などのマスコミ、そしてソーシャルメディアからもパニックの様相が伝わってきます。では実際にパニックなのか(起こり始めているのか?)、ということなのですが、心理学的知見を含めて、このパニック・集団心理について、考えてみましょう。

パニックの定義とは?

「パニック」の定義にはさまざまありますが、インターネットで検索すると、内的ストレスによる発作であるパニック障害が上位に登場します。おそらく過去10年以前は、「パニック」→恐慌、が上位であったと想像しますが、今日では、社会現象からの起因ではない「個々人のストレス」が注目されるようになった、ということでしょう。このことも社会現象といえなくもないのですが、社会心理学の「生命や財産の脅威を認知した多数の人々による集合的な逃走行動とそれに伴う社会的混乱」という定義にフォーカスすることにします。

オーソン・ウェルズの『火星からの侵入』で注目されたパニックとは?

この『火星からの侵入』は、まだTVが登場していない1938年のラジオドラマです。この番組によってパニックが引き起こされた、として全米中の話題となりました。この現象は、プリンストン大学のキャントリルの研究によって、1940年に『火星からの侵入―パニックの心理学に関する研究』として出版されています。

ドラマの内容は、天気予報や音楽番組という体裁をとりながら、合間に臨時ニュースを挟み「火星人が地球に来襲し米国の中心部を攻めている」という実況中継的なナレーションを何度も入れて、リスナーの不安を高めていく、という凝ったストーリー展開でした。
放送されると、ドラマにも関わらず、多くの人々が現実のニュースであると誤解し、混乱が生じています。もちろんフィクションであり、そのことを番組の中で頻繁に流した、と言われていますが、当時はTVという、同時に映像として事実を確認できる手段がなかったことが、不安が高まった主たる要因とされています。
キャントリルの分析結果に対して、その内容に疑問を呈する研究が発表され、論争を招いたことでもこの『火星からの侵入』は話題を集めています。
キャントリルは、番組を事実と誤認したリスナーの特徴を分析しています。私も確かだなぁ、と理解したのは、番組を途中から聴いたリスナーが中心であった、ということです。番組の途中でフィクションであることのナレーションを頻繁に入れたとされていますが、当時「ザッピング」というスタイルがあったかどうかは別として、そのナレーションを耳にしていない人にとっては、「まさか火星人が…」と思いつつも、「ひょっとして…」と信じてしまうことが想像されます。当時は戦時であり、音楽番組の途中で「臨時ニュース」をシリアスに伝えることが一般的であったことも、その「信じる」を補強したと分析されています。

災害放送でアナウンサーが繰り返し同じ言葉を伝える理由は?

昨年は台風19号に代表される大災害に見舞われました。その際、特にNHKはその使命もあって、長時間の帯で被害の推移を報道し続けます。その中でアナウンサーは、時間をそれほど置くことなく「同じコメント」を繰り返します。ずっと番組を視聴し続けていると、「くどいなぁ~ さっきから同じことばかり繰り返して…」と感じるのですが、それは、チャンネルを頻繁に変える視聴者を前提として放映しているからです。
キャントリルは、与えられた(取得した)情報が真実なのかどうかついての判断という観点で、リスナーを4つに分類しています。

  1. 番組を聴くなかで自らが「事実ではないドラマ」だと判断した人。
  2. 番組以外の外部情報を得て「事実ではないドラマ」だと判断した人。
  3. 外部情報の取得を試みたが、それがうまく機能せず「事実である」と信じてしまった人。
  4. そもそも外部情報の取得を思いつかず、一貫して「事実である」と信じた人。

自分がどのタイプに属するのか、思わず考えてしまいますが、キャントリルは、それぞれのタイプの人がどのように属性であるのか…について発表しています。それについては今日「?」がつくものもありそうなので、コメントは控えることにします。

パニックを生み出すのはマスコミの報道姿勢?

未知なるもの、それが新型コロナウイルスのように、生命の脅威だと“される”ものが身近に迫っていると“感じる”と、人は不安にさいなまれます。
私があえて、“される”と“感じる”にカッコを付したのは理由があります。つまり、見聞(聴)きする情報を得て、その情報が確かである、と受けとめることによって「脅威に感じ」たり、あるいは「それほど恐れることでもない」、と理解するという思考の流れに着目したいからです。
つまり「確かである」と判断してしまうその情報がフェイクであった場合、それによって導き出される態度の「脅威」あるいは「恐れる必要なし」の選択が、結果的に失敗となってしまうからです。

実は『火星からの侵入』が「パニックであった」、として全米に広がったのは、事件直後にマスコミがセンセーショナルに報道したことが最大の要因だとされています。
キャントリルも定義づけられたパニックであったとしていますが、定義に含まれる「集合的な逃走行動」が実際に起こったのか、という点については不確かであるとの指摘がされています。つまり「パニックの定義通りのことが実際に起こった」と全米中が認識したのは、マスコミがキャッチーなテーマであるといきり立ち、「特ダネ」を意識して大大的に報道したその姿勢にあった、というわけです。
ニュース報道は、客観的な正しさが求められます。日本における5大全国紙(3とも4とも表現されることがありますが)は、そのことを心がけています(とされています)が、「特ダネ」を狙う、というのは共有した価値観であり「裏を取ったはずが誤りであった」ということは、かなりの頻度で発生し「訂正文」が後日発表されることはたびたびです。

「情報リテラシー」を高めるよいチャンスだと受けとめよう!

新型コロナウイルスは前提として「未知なる部分」が多々存在しており、このことで我々は不安になり、すぐにでも「本当のこと」を知りたくて情報に敏感になっています。マスコミ側としても「正しい」ことを伝えようと必死になり、権威とされる人物に見解を求め、また日本だけでなく世界中で起こっている現象を「正しく」伝えようと日々格闘しています。だからこそ、真実だと“想定される情報”をいち早く提供しようとし、後日それが誤っていたことが判明する、というケースが多頻度に検証されることでしょう。
現在はこのような未曾有な状況であり、私たちは冷静を心がけ、氾濫する情報に落ち着いて対処することが求められるのです。
ネット上にあふれかえるパニックは、実は本来の意味の「パニック」ではなく、不安を抱いている状況だからこそ、センセーショナルな表現を使いたがる「空気」の存在によって拡散している、と私は解釈しています。
よって、「新型コロナウイルスは私たちの情報リテラシーを高めるチャンスとして登場したミッション」と受けとめましょう。このスタンスをもつことで、新型コロナウイルスも別の色彩を帯びてくるような気がしています。

(日向 薫)


新型コロナ、ことごとくパニックに陥る理由と対策

2020年04月07日 13時46分26秒 | 社会・文化・政治・経済

平常心を保つために知っておきたいこと、「不安」が大きな鍵に

2020.03.20

米バージニア州のスーパーマーケット「ターゲット」の商品棚。いつもならウェットティッシュや消毒液、トイレットペーパーが隙間なく並べられているが、新型コロナウイルスの影響で人々が買い占めに走ったため、今は空になっている。「パニック買い」を引き起こすものとは何か。心理学者たちは、強いストレスのある状況下で、自分で事態をコントロールしたいという欲求が根底にあるという。(PHOTOGRAPH BY WIN MCNAMEE, GETTY IMAGES)
[画像のクリックで拡大表示]

 新型コロナウイルスが世界に広がり始めると、トイレットペーパー、消毒液、マスクを求め、各地で客が店に殺到した。感染者の数が増え、各国の政府や自治体は大規模な集会を自粛させ、店を閉めさせて、他人と一定の「社会的距離」を保つよう促している。それが人々の不安をあおっていわゆる「パニック買い」を助長し、店の棚はあっという間に空になってしまった。

 昔から人間は、予測できない感染症が流行するたびに、日用品のパニック買いに走ってきた。1918年にスペインかぜが流行したとき、米メリーランド州ボルチモアの薬局に人々が押し寄せ、インフルエンザに効きそうなものを手当たり次第に奪っていった。同じような現象は、2003年のSARSまで、ことあるごとに繰り返されてきた。(参考記事:「スペインかぜのパンデミック、中国起源説とその教訓」

「人が極端な行動に走るのは、自分の生存が脅かされていると感じるためです。何かをして、自分は大丈夫だと思えるようになりたいのです」と説明するのは、米ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院の精神科疫学教授カレスタン・ケーネン氏だ。

 だが、そもそも何が人にパニックを起こさせるのだろうか。パンデミックのように、誰もが激しいストレスを感じているときに、どうすれば平常心を保てるだろうか。それは、脳の異なる領域が互いにどう作用するかによる。

不安が恐怖を駆り立てる

 人間の生存は、恐怖と不安の両方に依存している。そのように進化したおかげで、危機に遭遇したとき(すぐそこの角を曲がった先にライオンがいる)直ちに反応するし、将来予測される脅威(ライオンは今夜どこにいるのだろうか)についてもじっくり考えられる。

 ところが、頭のなかでそのバランスが決裂すると、人はパニックを起こす。

 

新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために~

2020年04月07日 13時40分58秒 | 医科・歯科・介護
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2020年3月26日

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新型コロナウイルスによる感染症は、世界中で感染の拡大が続いている状況です。

この感染症は、“3つの顔”を持っており、これらが“負のスパイラル”としてつながることで、更なる感染の拡大につながっています。

この度、日本赤十字社ではこの“負のスパイラル”を知り、断ち切るためのガイドとして  「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために~」を   下記のとおり作成いたしました(※本ページ下段にて一括ダウンロードできます)。

本ガイドを感染拡大を防ぐための一助として是非お役立てください!

 

「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために~」

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※一括版(PDF形式)は以下よりダウンロードできます。

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いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか

2020年04月07日 13時09分50秒 | 社会・文化・政治・経済
 
 
 
内容紹介

逃げ出すことのできない恐怖と絶望と悪意の世界=いじめはなぜ蔓延するのか? 画期的理論をうちたて注目される〈いじめ研究〉の第一人者が、学校でのいじめ問題の本質を平易に語る。

内容(「BOOK」データベースより)

学校や社会からこの苦しみが消えない理由とは?

抜粋

逃げることができない出口なしの世界は、恐怖である。そこでは、誰かが誰かの運命を容易に左右し、暗転させることができる。立場の弱い者は、「何をされるか」と過剰に警戒し、硬直し、つねに相手の顔色をうかがっていなければならない。
そして、自分が悪意のターゲットにされたときの絶望。
いじめは、学校の生徒たちだけの問題ではない。昔から今まで、ありとあらゆる社会で、人類は、このはらわたがねじれるような現象に苦しんできた。本書では、人間が人間にとっての怪物になる心理−社会的メカニズムである、普遍的な現象としてのいじめに取り組む。
本書は、学校のいじめについて、分析を行い、「なぜいじめが起こるのか」について、いじめの構造とシステムを見出そうとする試みの書である。(「はじめに」より抜粋)

著者について

1962年、東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程を経て、現在、明治大学文学部准教授。専門は社会学。
初めての著作『いじめの社会理論』(柏書房)でいじめ発生のメカニズムを解明して注目を集め、『<いじめ学>の時代』(柏書房)では、自身の体験、<いじめ学>誕生までの軌跡を含めていじめ問題を論じ、読者の大きな共感を呼んだ。
他の著作に『いじめと現代社会』(双風舎)、『学校が自由になる日』(宮台真司・藤井誠二氏との共著、雲母書房)、『「ニート」って言うな!』(本田由紀・後藤和智氏との共著、光文社新書)などがある。

 

学校におけるいじめ問題はもう数十年近く言われ続けているにもかかわらず、一向になくならないわけですが、それはいったいなぜか?という問題に迫った良書
いじめで自殺者などが出るたびにワイドショーなどでコメンテーターが近頃の子供の道徳心の低下などをしたり顔で嘆いたりするわけですが、実際は道徳の問題ではなく、学校というシステムそのものの問題であることが本書で分かる
著者は学校でいじめが発生する根本的な要因は、クラス内において過度に人間関係の親密さを強要するシステムそのものにあるという
たいていの学校ではクラスのみんなが仲良くすることを目標とした標語が掲げられているが、そもそもこのような仲良くすることを前提とした人間関係を構築しようとするから、いじめが発生するのだという
現状の学校のクラス分けシステムはランダムで決定されており、相性でクラスメイトが決定されているわけではない
このため、相性の悪い相手と長時間同じ空間で過ごさなくてはならないというストレスのたまりやすい現象が生じやすく、これがいじめの温床となっている
このような相性の悪い相手と親密な関係を強要されることは大人でも辛いものだが、人生経験の足りない子供にとってはさらに辛いものであることは容易に想像がつく
このようなシステムでは親密な人間関係を築けないもの=悪とみなされるので、それを恐れて例えまったく合わない相手であっても仲良くするフリを演じることにつながり、仲間はずれにされた側は落ち度がなくてもあたかも本人の責任であるかのように責められ、理不尽な暴力・暴言に耐えることを強要されることにつながる
著者はこの解決策として、学年やクラスで生徒を囲い込む現行の制度を廃止することを提案している
そうなれば、人間関係がクラス内で固定化されず、人間関係を自由に構築できるので、合わない相手と無理につきあう必要性もなくなり、それによって生じるいじめも解消されるという
つまり、いじめがなくならない根本的な要因はクラス制度にあり、これをなくすだけでもかなりいじめの問題は減ると思われる
また、暴力行為に対しては警察の介入を要請し取り締まることも提案している
一般社会で行われたらたちまち逮捕されるような暴行が学校内では放置されているのは明らかにおかしく、このような暴行を放置していることがいじめのエスカレート化につながるという
元いじめの当事者として言うなら、著者の提案はいちいちもっともであり、いい加減、いじめ問題を道徳問題にすり替えるのはやめてもらいたいし、道徳の問題にすり替えてもっともらしいことを言うだけで学校の制度になにも切り込まない識者には軽蔑しか感じない

 

この本を読んで初めて、学校でなにが起きているのかがよくわかった。同時に、自分が過ごした小学生時代、中学生時代でなぜいじめが起きてきたのかも理解できた。

ただ、前半の的を得た構造分析に比べて後半の解決策が、正直、弱く感じる。短期施策は誰もが思いつくものだし、長期施策は何を言っているのか、申し訳無いがよくわからない。

大事なのは難しいことを難しく言うのではなく、難しいことを簡単に言うことではないか。この本を読んで、政府関連や省庁が動けるとは思えない。

ぜひ、噛み砕いていただきたく。

 

(深謝。畏れながら微細でも参考になれば)1、今の学校が残虐悲惨な著者のいう独特な「群生秩序」に支配され、「市民社会の秩序」は死んでしまっているというのです。つまり「無法地帯」です。まるで暴力団かヤクザかマフィアの世界の様です。学校はなぜ、こんな怪物になってしまったのでしょう。厚かましいですが、そこも御教授していただきたかったです。 2、ブームの「君たちはどう生きるか」の北見君のように怪物的にならず、逆に 怪物に対抗して、被害者の味方になろうという人もいます。その様な人の事に触れられていないのが残念です。今はそんな人がいないのでイジメがはびこってしまうのでしょうか。どうして、いなくなってしまったのでしょう。 3、著者は「学級制度を廃止せよ。」など、学校制度や教育制度の悪さを指摘されています。確かにそこにも問題はあるでしょう。ですが、校風として、玉川学園創立者、小原國芳先生の「全人教育」や 無類の教育者、河合榮治郎先生の「人格最高価値」などの様な、より人間的な 校風を醸成していくことが重要なのではないのでしょうか。難しいでしょうか。 4、難解な学術用語が多く、凡庸な私には読解が難しく苦しみました。

 

最近、教師のいじめ問題があり、自分もいじめられていた経験もあり、いじめのメカニズムについて詳しく知りたいと思い、この本を買いました。いじめの起こるメカニズムは以下の通りだと私は理解しています。
1.漠然とした不全感を抱いた子供(大人)がその不全感を消去するために、相手を思い通りに操作する(いじめる)
2.周りの人と仲良くするという規律のもと、閉鎖的な空間(例えば、学校)の中で、上手く生き残るために、いじめに加担する(悪ノリする)ようになる
3.だんだんいじめがエスカレートしていく
詳しくは読んでいただければと思いますが、このメカニズムは正しいと思います。特に閉鎖的な空間では、依拠する情報源が一つになってしまい、簡単に影響を受けてしまうことが多いにあります。また、これと同じようなメカニズムが国家にも発生していることから、中間集団全体主義という概念を提唱しています。この説明も面白いと思いました。
一方で、いじめの解決策を第6章で示していますが、これは疑問に思いました。解決策はP.232に端的に書いてありますが、行政に丸投げするような解決策となっています。これでは、国家が動いてくれなければ、どうしようもないのではないか、という印象を受けてしまいます(ちなみに、いじめの場にいるときの個人としての立ち回りについては一切言及されてません)。また、理論的なことしか書いてなくて、実際にその解決策を行った具体(類似)例を挙げてない(多分どこも実施されてない?)ことから、机上の空論という印象も拭いきれませんでした。これは、いじめ自体は簡単に無くせない、もしくは、根絶できない問題だということを表していて、ある意味絶望感がある結論になってしまっている印象を受けました。

 

面白い考え方です。概ね納得できたのですが、今の日本社会でこれを実現するのは難しいと思いました。忖度を容認している現代社会への批判のように感じました。
ちなみに私は、ある程度の忖度は必要ではないかと考えているので、この筆者の意見を全て取り入れるのには、ちょっと抵抗があります。
日本のトップである政治の世界で忖度がなくなれば、いじめもなくなるかもしれませんね!

 

いじめがどのように起こるのか、感覚的にはわかる、同意できるところが多かった。しかし用語の定義や表現が曖昧、情緒的に感じられた。

 

この内容を読み進めて行くうちに、この様な虐めの構造は、大人における一般社会でも十二分に実際問題として存在する、恐ろしい社会問題であると、私は痛感させられました。
現に精神的未成熟で幼稚化した若人が成人をし、
一般社会に存在していると言う事は、
この本に記載されている状態に陥っているのが、
事実だと私は考えます。
是非とも多くの方々にこの本を読んで頂きたいです。
それと同時に、対策も考える必要があると私は考えます。


いじめの心理と構造 -

2020年04月07日 13時08分11秒 | 社会・文化・政治・経済

第 1 章 いじめの心理と構造 - 東京都教職員研修センター

(Adobe PDF)
www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.jp/.../h09_ijime_1.pd...
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i られるいじめの特徴、いじめにかかわる子どもたちの人間関係を構造的同らえ、そ l. の変化などについて述べる。 I いじめの ... それに対して、菊池はいじめを 「①. 力関係で優位にある側が自分より明らかに劣位にある側に対して、一方的に、②相手が精神的.


「日本型」いじめの構造を考える

2020年04月07日 12時58分50秒 | 社会・文化・政治・経済

<time class="c-date">2012.10.24</time>

杉森 伸吉 【Profile】

大津市の中学2年男子生徒の自殺問題を受けた文部科学省のいじめ緊急調査で、ことし4月から9月までに全国の小中高校などが把握したいじめの件数が約7万5千件、昨年度1年間(7万231件)を半年で上回った。日本のいじめの特徴を考察しながら、深刻化するいじめ問題への取り組みを探る。

いじめは、どのような国や地域でも起こりうるが、その表れ方には、共通点がある一方で、いじめの種類やいじめを見たときの反応、またいじめられたときの受け止め方などに、相違点が見られる。相違点を知ることで、日本のいじめの特徴も見えてくる。

いじめの国際的な「共通点」

いじめの種類のうち、国際的に共通して一番多いのは、悪口やからかいである。おそらく、いじめとしては比較的軽微で実行しやすく、いじめの初期から生じやすいからだろう(図1)。

一方で、暴力が横行する社会や、実力主義なほど、肉体的な暴力によるいじめが幅を利かせる傾向がある。生きるための社会経済的な資源(収入、社会的地位、教育機会など)が一部の人たちに極端に傾斜配分されるために、資源の奪い合いが生じ、弱肉強食の論理が優勢になる社会では、ルール破りやモラルの低下も目立つようになる。こうした大人社会の構造が、子どもたちの人間関係にも反映されると考えられる。

日本も戦後の貧しい時代には、社会での暴力や犯罪も多く、弱肉強食タイプのいじめが多かった。そういう社会では、いじめがあるのは当たり前で、いじめられるほうが悪くて、いじめられるよりは、いじめるほうが良いし、いじめはこどもたちの健全な社会化のために、むしろ必要だという論理が支配的になる。

格差社会での弱肉強食型いじめ

戦後だけでなく現在でも、バブル経済の崩壊後は、格差社会という名の弱肉強食型の社会に傾いている。2011年10月の滋賀県大津での中学2年男子生徒の自殺事件や、2007年に神戸市の私立滝川高校でおきた自殺事件などは、いじめというよりは犯罪というべき、弱肉強食型の攻撃に起因している。育った環境が弱肉強食の場合は、力の強弱の論理で行動する子どもが増える。こういう弱肉強食型のいじめは、ペッキングオーダー型のいじめとも言えるだろう。ペッキングオーダーとは、トリの群れなどの中にある力の序列(order)のことである。より強いものが、より弱いものを突っつき(peck)、弱いものはさらに弱いものを突っつく。エサを食べるときなどに、強いものが弱いものを追い払ってしまい、強い順に食べるようになる。エサの量(人間社会での資源に相当する)が限定されて全体に行きわたらない場合には、特にペッキングオーダーがものをいうようになる。

だれもが加害者になれるネット社会

いじめる側の共通点の一つは、いじめる側がなんらかの欲求不満(フラストレーション)を持っていることである。このことは、社会心理学の欲求不満攻撃理論(欲求不満がたまると、その人の攻撃性も高まる)から理解できる。実際、家庭や学校で子どもが受けるストレスによる欲求不満が高まるほど、いじめる可能性が高まる。いじめる側へのカウンセリングなども有効である。

対面的ないじめでは、力の弱い側が強い側をいじめることはない。しかし携帯電話やパソコンを使ったネットいじめ(cyber bullying)では、力の強弱にかかわらず匿名で、さらにときには複数の別の人間になりすまして、いじめることも可能だ。誰もがいじめる側にまわりうるネット社会では、欲求不満をいだく人数に比例してネットいじめが生じうる可能性も考えられるので、欲求不満が生じても、いじめをしようと思わない子をどう育てるかが、教育上の大事なポイントになる。

もう一つ、いじめる側に比較的共通しているのは、集団内で人気があり、頭が良く、ソーシャルスキルも高い子がいじめをするケースが少なからずある、ということだ。教師や大人からも気に入られ、信用されていて、いじめを隠すスキルが高く、仲間からも支持があるような子は、いじめの合意を作りやすいからだといえるだろう。

相互協調的な社会では「関係性攻撃」が多い

いじめには、体や持ち物に直接危害を加えるもの(比較的男子に多く、学年が上がると減少傾向)から、陰口・仲間はずれ・無視というかたちで、仲間関係から疎外する、人間関係という関係性を使った攻撃(比較的女子に多く、学年が上がるほど増加傾向)もある。女性は、仲間とつながっているという安心感が喜びの源の一つになりやすく、仲間関係での活発なコミュニケーションを好む傾向が強い。男子の場合も、仲間とのつながりが安心感の源になるが、おしゃべりよりも一緒にスポーツをするなど体を使った活動がつながる手段であることが多い。図1を見ると、「無視・仲間はずれ」が多いのは男性より女性で、特に日本の女性で多いことがわかる。

このように、いつも仲間とつながっていないと不安になるような関係性を育む社会では、関係性攻撃が被害者に大きなダメージを与えるので、有力ないじめの手段となる。一方で、「人は、一人一人異なるし、それぞれが独立に生きるのが心地よい」と考えるような人(欧米に代表されるような、個人主義的、相互独立的な社会に多い)に対しては、関係性攻撃は、あまりダメージを与えない。

国立教育政策研究所が2004年から2009年にかけて行った追跡調査では、「無視・仲間はずれ・陰口」を経験した人は、2004年の中学1年6月時点の41.6%から、2006年の中学3年11月時点では80.3%に増加している。さらに、2004年に小学校4年生だった児童が、2009年の中学3年生になるまでには、90.3%が「無視・仲間はずれ・陰口」を経験していた。

傍観反応と集団主義的自己防衛

「いじめを見たときに、止めに入りますか?」という質問について「はい」と答える人の比率が、他国では年齢が上がるにつれて単純に増える傾向にあるのに対して、日本ではいじめの多発期(小学校5年生頃から中学校2年生くらいまで)には低下する傾向がある。つまり、思春期のころにはいじめがあっても、傍観したり、無視したりする子が、一時的に多くなる。このことはおそらく、「ホンネとタテマエ」と関連するだろう。集団内で自分たちのホンネ(たとえば、「いじめたい」)にもとづくルールが形成されると、それが公式のタテマエ上のルール(たとえば、「いじめはいけない」)と矛盾したときに、ホンネのルールを優先することを学習する時期であると考えられるからである。多くの子が共有するホンネは、一種の「空気」となり、その場に影響するといえるだろう。

いじめられたときの反応としては、いじめられた本人が「自分が悪いからいじめられた」と思えば自罰的反応、「いじめる方が悪い」と思えば他罰的反応といえる。一般には、自罰的反応が強くなると、いじめ自殺に至る場合もあり、他罰反応は復讐(ふくしゅう)に至りやすいといえるだろう。個人主義的な傾向が強い社会では、自分の身は自分で守らなければならないという行動規範が強いため、自分がいじめられたときに、「自分は悪くなく、相手が悪い」と考えて自分の身を守るのに対して、集団主義的に自己防衛する文化では、仲間が互いに守り合う関係性ができる。私的生活における日本人は他者から悪く思われないように、自分を改善する心性が強く、批判されないように自分の欠点を見つけて直そうとする傾向がある。批判された場合も、「自分が悪いから批判された」と自罰的になりやすいといえるだろう。自罰性が比較的強いうえに、日本でのいじめはほとんどが仲間内で起こるので、守り合うべき関係の中で攻撃されると、さらに自己の内部が強いダメージを受けると考えられる。

いじめ自殺を防ぐための道

児童生徒の自殺は、日本では、男子が女子の2倍から3倍ほど多い。文部科学省の調査によると、2011年度は、中学生が男子27名・女子12名、高校生は男子111名・女子46名だった(図2)。一方、警察庁の統計では、1998年から2010年まで、自殺者全体の約7割が男性である。警察や文部科学省は、いじめを原因に特定した自殺の男女比に関するデータを近年出していないが、一般的傾向から、いじめによる自殺は男子が女子の2倍から3倍前後多いと推定される。

女子の場合、ストレスがかかったときに多くの人に話す傾向があるため、問題に気づかれて救われやすいのに対して、男子の場合、自力で問題解決しようとして黙り込んでしまい、結果的に追い詰められて自罰的になり、死を選ぶ傾向があると考えられる。問題は自分一人で抱え込まずに、多くの人に相談するように男子にもしっかり指導していく必要がある。また、異年齢集団の子どもたちの交流(長幼の序を重んじる日本では、伝統的に異年齢の子ども集団の中で社会性を育んできた)や、さまざまな大人たちと暖かい関係を築ける環境を整えつつ、いじめがいかに残虐な反社会的行為であるかをしっかりと教えていくことが必要だ。

(2012年10月4日記)