一九五四年,アメリカ南部モントゴメリーで差別待遇の廃止を求めた黒人たちは,バス乗車ボイコット闘争に立ち上った.一年の激しい闘いの後,ついに五万の固い団結は勝利し,これが発火点となって黒人革命が燃え上っていく.本書は,「愛と非暴力の思想」を掲げ,この運動を指導したM.L.キング牧師の闘いと内面の記録である.
1963年8月28日、米国ワシントンD.C.のリンカーン記念堂前の石段に設けられた演台に立ったマーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、25万人の参加者を前に、「人種差別のない世界を目指そう!」と力強く訴えた。この演説の中で、キングは“I have a dream”を9回、繰り返している。
深刻な人種差別に立ち向かった公民権運動の指導者にして牧師のキングが呼びかけたこの「仕事と自由を求めるワシントン大行進」の成功によって、翌年、遂に、アフリカ系アメリカ人(黒人)念願の公民権法が成立。非暴力主義を貫いたキングは、この演説の5年後に暗殺された。
『自由への大いなる歩み――非暴力で闘った黒人たち』(マーティン・ルーサー・キング著、雪山慶正訳、岩波新書)に、キングの思いが凝縮している。
銃社会のアメリカでは、非暴力は有力な手段の一つなのだろうと感じました。非暴力を貫くのはとても難しいことだということを含めて。
黒人差別を無くすのに,どのような努力があったかの一端を垣間みる。
それぞれの差別は、小さな社会を守る為のものなのだろう。
大きな社会に、差別の影響を与えるのを防ぐ方法が難しいことを感じた。
非暴力の努力は、相手側が暴力をふるうことを想定している。
黒人差別が、ほんの数十年前まで続いていたことに驚く。
アメリカの暗部が、現在,どのように払拭しているのだろうか。
貧富の差,暴力,犯罪などが横行するアメリカの実情を加味するとよいかもしれない。
運動の経緯、当事者の感情がよく伝わるとともに、学者であり牧師である著者の知識・教養と信仰とが実践にいかに結び付いているかも表現されている。悩みぬいて非暴力にたどり着いた経緯は本当に事細かに記載されているが、人種隔離の実際というのは相当エグいこともあるはずで、それはマイルドに描かれているのかなという感じもした。それとも、生活に入り込んでいるがゆえに分かりやすい暴力というよりは非道徳的な社会通念がまかり通っていることのほうが怖いのか。モントゴメリーの運動は確かに奇跡的で、様々な要素がうまく重なった瞬間かも。
アメリカの黒人差別への非暴力の闘いの歩み。差別され抑圧された人びとが、どのようにエンパワーされていくのかよくわかる。非暴力こそ大きな力があるということは、現代的に学ぶ点は多い。私たちは言論表現の自由がある。歩み続ける意義は大きい。
キング牧師がいかにして自由を獲得したかということを経験から記されている。白人の同じ人間と思えない行動に対して、決して暴力で反抗しないという強固な信念があったからこそ、少しずつ自由を得ることができた。プライドのある非暴力に感心する。
征服者に暴力によって抵抗することも、征服を無抵抗に受け入れる事も罪である。バスの中での理不尽な人種隔離に対して、非暴力的に抵抗する手段として行った乗車ボイコットはこれ以上ない最良の抵抗運動に思われる。長期化すればなし崩し的に脱落者が増えそうなものだが、1年以上に渡るボイコットを団結してやり遂げている事に驚愕させられる。再び白人至上主義の勢力が出て来始めた現在、全ての人間は平等の権利を持つべきだというキング牧師の主張に時代を超えて耳を傾ける必要があるのではないか?格差社会になりつつある日本も他人事ではない。
つい最近まで、人種隔離政策が行われていたとは驚きである。しかも、あのアメリカで行われていたとは!非暴力を貫くことは、非常に難しいと思う。なぜなら、暴力によるよりも、さらに大きなエネルギーが必要となるし、真の闘争心がなければ、暴力に頼ってしまうからだ。本書を読み、キング牧師の偉大さを認識した。
約半世紀前、米国では有色人種を合法的に差別していた。この本に書かれているモンゴメリー・バス・ボイコット事件が1954年の出来事。ヒロシマが1945年なので、モンゴメリー・バス・ボイコット事件はずいぶん最近だ。モンゴメリー・バス・ボイコット事件とは、黒人が自由にバスにさえ乗れないアパルトヘイトに対する黒人によるムーブメント。「I have a dream」で有名なキング牧師が徹底した非暴力主義で黒人分離政策に挑んでいく姿が書かれています。真実のドュメンタリー。読んでおくべき一冊だと思った。
名前だけは知っていたキング牧師の物語。 バスでの事件をきっかけに黒人たちがバスに乗らないボイコットを起こし自由と平等をもとめ立ち上がる。 驚いたのはキング牧師のするどい考察と社会的にも差別されている黒人達の長く静かに戦う姿。 キング牧師が不当に逮捕されても家を爆破されても けして暴力を起こさず耐えながらも訴える様子に胸を打たれる。 本書は平等への最初の大きな一歩。残りの歩みはwikiとネットで補完。 日本では比べられないぐらい根の深い差別に絶句した。
60年前にモントゴメリーで起きたバスボイコットの詳細。弱冠27歳のキング牧師が公民権獲得に向けて民衆をまとめ上げていく手腕が鮮やか。ボイコットに備え輸送手段を確保し路線を整備する過程が素晴らしい。危機管理能力や「平易に伝える」能力の高さはもちろんのこと、煽って煽って煽って諌めて、の匙加減が絶妙。指導される側も一人一人が主人公として、誇りを持って運動に参加している。みんな輝いている。
人種隔離政策撤廃の運動の展開を目の前にしているような臨場感がある本でもあった。読んでるときにちょうど曽野綾子が人種隔離を礼賛するような発言をしてめまいがした。50年代のアメリカで人種隔離の問題の裏には人種を越えた根があることを指摘していた明晰さに驚くと同時に、現代の日本と60年前のアメリカ南部が今もつながっていることも思い知らされた。
非暴力には真の闘争心が必要なのだと思います。力づくで何かを成し遂げるのではなく、延々と忍耐という概念の中で、自らの中で血や汗を流し、決して屈することなく自由を求めて行くことは極めて困難でしょう。バスボイコットを約1年間続けますが、この闘いを非暴力でやりとげた力が凄いことです。キング牧師の優れた指導力があったからこそ成し遂げられたことなのでしょう。キング牧師の黒人差別への肉声が聞こえてくるようでした。非暴力で状況を克服していったキング牧師は素晴らしいです。何より数十年前まで黒人差別があったことに驚きます。
バスボイコットについては知っていたが、それが約一年も行われていたことは知らなかった。彼ら彼女らが、この闘いを非暴力で行い得た力はどこから来たのだろう。キング牧師の優れた指導力があったのは勿論だが…。キリスト教信仰?、教会というコミュニティーの存在?、オープンに話し合える関係性?、米国の理念たる自由への信頼?…引き続き考えていきたい。
非暴力の努力は、相手側が暴力をふるうことを想定している。 黒人差別が、ほんの数十年前まで続いていたことに驚く。 アメリカの暗部が、現在,どのように払拭しているのだろうか。 貧富の差,暴力,犯罪などが横行するアメリカの実情を加味するとよいかもしれない。岩波新書百一覧掲載http://bit.ly/10CJ7MZ
非暴力とはその言葉から受ける印象とは全く異なり、真に闘争する覚悟が無ければ行えない行動であると思う。暴力でちゃぶ台を返すように何かを解決することを目指すのではなく、延々と飽きることなく、忍耐という概念が自らから血と汗と涙と共ににじみ出てくるくらいに気長に、しかし決して闘争心は失わず自由を求める。それがどのくらい困難なことなのか想像もつかない。今の時代の戦争も暴力もフィクションの世界の出来事になってしまい、だからこそすぐに武力的解決を支持してしまう若者達にこそ、キング牧師の行き方を学んで欲しい。
キング牧師の肉声が聞こえてくるかのような気がした。2011年3月11日以降,原発事故による放射能に冒されているにもかかわらず,脱原発に向かっていない日本の人々に是非読んでいただきたい。黒人たちや知識人に蔓延していた無気力に負けず,非暴力で状況を克服していったキング牧師の心の変遷がきっと参考になるはずだ。
公共のバスに普通に乗ること。空いている席に自由に座り、目的地までそこに座り続けること。そんな当たり前が許されなかった社会がありました。不正と侮辱が蔓延する黒人差別への対抗として、バス乗車ボイコット運動に踏み切ろうとしたキング牧師と同胞たちの闘いの記録です。
いかに血を流すことなく、自分たちの切なる願いを世に伝えることが出来るのか。対応を少しでも誤れば大きな衝突に発展しかねない緊張感のなか、キング牧師は“非暴力=愛”のもと丁寧に言葉を紡ぎ、同胞たちに冷静に努めるようキリストの教えを説き続けました。
キング牧師自身その先頭に立ちながらも悩み、苦しみ、その責任の重さと悪意ある圧力に押しつぶされそうになった事実にも触れています。その時彼の心を支えたのはキリストの教示でした。キング牧師が辿り着いた一つの解釈は、一読の価値があります。
最近触れる機会のあった『ドリーム』(原題:『Hidden Figures』)という作品も、1960年前後の黒人差別を扱った内容でした。共通して言えるのは、差別行為が日常へ当たり前に溶け込んでいること。さらに、特権を握っている立場の者たちは簡単に利権を放棄せず、不正を不正と認めにくいということです。
黒人差別に対抗する運動としては、アメリカのごく小さな地域の出来事に過ぎないかもしれません。しかもその運動が成功するまでに、とてつもない努力を要しました。
しかし小さくても大きな前進。今なお差別のニュースは絶えませんが、いつか「過去の出来事」となる日が来ることを願って止みません。
バスボイコット運動の詳述。主語をぼく、ぼくたちと訳した訳者の慧眼に敬服する。なぜなら、本書は歴史と共に著者の内面と思想と宗教を扱ったもので、「親しみ」こそが、その価値を不動のものにしているからだ。キング牧師28歳の時に発刊された。
キリスト教への傾倒は理解できないが、そこから離れた彼自身の思索を紡いだ言葉は、刺激に満ちている。
・この町の緊張は決して、白人とニグロの間にあるのではない。それは根本的には、正義と不正の間に、光りの軍勢と闇の軍勢にあるのだ。
・「わたしはここでわたしが正しいと信ずることのために闘っています。だが、いま私は恐れているのです」
・再びバスにかえるときは、敵を友にかえるにたりるほど親切に振る舞おうではないか。
・南部に自己の権威と運命を新たに自覚した新しいニグロがいることを理解しなければ、モントゴメリーのバスに関する抗議運動を十分に理解することはできないだろう。
・たゆまぬ努力を怠るときは時間自身が非合理的な感情主義や社会を破壊する暴力の味方になってしまうだろう。
・現代の社会的転換期の最大の悲劇は、悪人たちの甲高い要求の声ではなく、善き人々のおそるべき沈黙だということを記録せねばならぬだろう。
・非暴力抵抗を主張する人々は、ひとは反対者に対して肉体的な攻撃を加えるべきではないという服従を主張する人たちの意見には賛成するが、同時に他方では、ひとは悪に対しては抵抗せねばならぬという暴力を主張する人々の意見にも賛成して、バランスを取るのだ。
・ネルーはかつて、イギリス人は、インド人が非暴力をもってかれらに抵抗したときほど憤慨したことはいまだかつてなかったといった。
・人間的な成熟を示す確実な印の一つは、自己批判にまでたかまる能力だ。