◆各地のレポートから
分科会では基調の問題提起以外に、8本のレポートが報告されました。そのすべてを詳細に報告することはできませんが、印象に残った点について記していきたいと思います。
(あ)「自治体の財政運営は格差拡大時代にどんな役割をはたしたか」(十日町・津南地域自治研究所)のレポートは、経済圏内・都道府県内市町村間・そして同一市町村内における地域間格差が階層間格差と複雑に絡み合いながら再生産される連鎖をシビアに観察しその実態を検出することなしに、地域課題の深層を把握することができないし、地域課題の本質と解決の展望は見いだせないと指摘しました。町田市内でも、地域間格差の問題は住民の大きな関心事です。詳細な分析とそれによって住民になにがもたらされているのかが豊かに語られたレポートでした。
(い)「財政学習会から財政分析のとりくみ」(河内長野子どものすこやかな成長を願う会)のレポートは、保育園の民営化問題を契機に、自治体は本当にお金がないのか、何のための民営化なのか、周辺自治体と比べてどうなのか──普通のママパパたちが財政分析にとりくみ、それをビラにして住民の中へ入っていく。「財政が大変」という当局の説明は本当なのかという疑問を一から勉強して分析をしていくなかで、ここに財源があるのではないか、予算の使い方をこう変えれば子どもたちのすこやかな成長を保障することができるのではないかなど確信を深めていったという報告がされました。
(う)「市民による財政白書づくり」(大和郡山市民のための市政をつくる会・財政部会財政白書作業部会)のレポートは、財政白書をつくるうえで、周辺他市との比較をおこない分析を深めていました。「財政がひっ迫している」というのに投資的経費の割合が高く、こうした問題についてどう考えるのかなど議論が交わされています。また歴史を紐ときながら慢性的な赤字構造があると指摘をして、公共入札の問題、同和行政の問題、土地開発公社の問題など掘り下げて分析がおこなわれていました。
(え)「国民健康保険事業会計の財政分析について」(守口市職員労働組合)のレポートは、高すぎる国保料の問題と対置してどのようにたたかうのかを示すものとなりました。とりわけ、「国保広域化」という流れがすすめられようとしているもとで、現実に国保で苦しんでいる実態を告発し、高すぎる国保料の原因を財政面から明らかにするという作業をすすめている。年収200万円の4人家族で、国保料が40万円を超える──国保が命を脅かす実態も詳細に告発されました。「相互扶助」ではなく、社会保障としての国保という立場を明確に掲げ、根本に国が国保会計に対しての支出を抑えてきたことを大本から切り替えることの重要性も訴えられました。
(お)「大震災からの救援、復旧──市民生活を支える財政運営を」(仙台市財政分析)のレポートは、「増やすべき経費、減らしてはいけない経費を考える」という問題意識のもとで、2010年度決算ベースで細かく分析されていました。東日本大震災のもとで見直さなければならない予算はどれなのか。6月補正予算では164億円の減額補正がありましたが、トップダウンでの復興計画とならないための予算措置を提案されていました。
(か)「誰にでもできる簡単市町村財政分析─碧南市・一宮市を分析してみましょう─」(東海自治体問題研究所)のレポートでは、「そもそも論」から財政分析をおこなっている経験が紹介されました。詳しい項目について、愛知県下の自治体の比較をおこない、多摩26市との比較もおこなってい分析をされています。また、「リーマンショック」の影響がどの程度あったのかを自治体ごとに分析し、どこにどういう影響が起こっているのかを明らかにしていることは注目すべきものがありました。
(き)「苫小牧市財政分析」のレポートでは、経年的に人件費、扶助費、公債費、物件費、維持補修費、補助費、繰り出し金、経常収支比率などを折れ線グラフで示し、時々の事業をそこにあてはめて詳しく分析をされていました。時間が迫っていたためその内容の詳細について聞くことはできませんでしたが、「経年で分析をしていくことで見えてくるものがある」という言葉が印象的でした。
(く)「都区財政調整制度の今日的意義」(板橋区職員労働組合)のレポートは、都区財政調整制度について歴史的にその沿革を明らかにし、それが区民にどういう影響をもたらしたのかという内容でした。昨今、町田市でも都区財政調整制度が「三多摩格差」という問題としてとりあげられるが、個人的には都区財政調整制度のなかに三多摩も含めていくことが重要ではないかと考えます。
「いろいろな形の財政分析がある」──何のための分析かという目的を定めることで、改善の提案も出てくることが分科会の中では明らかになりました。また、膨大なデータをどう使いこなすのかということも大きな課題ですが、自治体学校で学んだことを今後の町田市政に生かしていきたいと思います。
(おわり)
┏┓池川友一(日本共産党町田市議会議員)
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