宮地神仙道

「邪しき道に惑うなく わが墾道を直登双手
または 水位先生の御膝にかけて祈り奉れ。つとめよや。」(清水宗徳)

「賢者の石」

2009年06月29日 | Weblog

(画像はクリックされましたら拡大します。)

錬金術における「賢者の石」というのは、鉛などの卑金属を黄金に
変容させる際の触媒となると考えられた一種の霊薬ですが、
秘教的解釈においては、黄金に変容させるのは、卑金属ではなく、
人間の霊的面であるとされます。


その「人間錬金術」の最初のステップは、心を黄金に変えなければ
なりませんが、「実践魔法」の見方から、70年代にルネ・ヴァンダール氏は
次のように書かれていました。

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【賢者の石】


精神に高い次元の変革をもたらすもの、それが私にとっての魔法なのです。

実践魔法の立場から、この章の話を進めていますが、賢者の石とは、鉛を
黄金に変化させる不思議な媒体の事です。

古代エジプトや古代中国の文明以来、連綿と人類の追い続けてきた夢、
それが錬金術です。
錬金術の歴史は、賢者の石を探し求める歴史という事も出来ます。


天使が人間に与えた秘法「ケマ」。
この伝説の書物が、鉛を黄金に変える秘法を伝えるものとされています。

アルケミア(ケマを研究する学問=錬金術)というアラビア語が、
ケミストリー=科学という言葉の語源です。

近世まで行われた錬金術が、今日の化学の出発点となったのです。
賢者の石と呼ばれる触媒を創り出そうとする研究や実験が、化学の元という
訳です。
そしてそこから派生的に、超能力を引き出すものとしての、不老長寿の薬
である仙丹を求める研究も出てきました。


ところで、心の中の鉛を黄金に変える為のステップとして、まず、その鉛の
分析から取り掛かるべきでしょう。
もうこの本の中で何回も、心の中のハッキリした形をとらない不満について
お話ししてきました。
それが鉛です。


重く沈み込んで、心の動きを鈍いものとしてしまう、物質的豊かさのみを追い
求めて、もっと大事なものを見失ってしまった為に溜まってしまったヘドロの
ようなもの。

他から強制された人生を過ごしている消極的な姿勢。

単純なハカリで何でも割り切ってしまおうとする○×式行動。

学問が目的でない勉強。

逃避とあきらめ。

こうしたもの全てが、心の鉛を創り出します。

この他にも苦悩とか、絶望とかの心に負った傷も、その鉛の一部になる事は
言うまでもありません。
この鉛は、黄金にやがて変わるものなのですから、大事な素材です。


何が「賢者の石」なのでしょうか。
これは既に、もう心の黄金を持っている人を分析する事によって、見つける
事が出来ます。

恋愛に限らず、人が誰かを好きになるのは、その人の心の黄金の部分に惹かれる
からです。
奥深い所に、キラリと光るものを見つけるからです。
その光に動かされるからです。


心の黄金とは、人間を獣から分かつもの。
人間の特権を、100%生かすもの。

それをもたらすもの、心の変革の為の賢者の石とは、豊かな知性、鋭い感覚、
強い意志。
真なるものを追究し、善をなそうと力を注ぎ、美なるものに動かされる事。
そして大いなる愛。
これこそが賢者の石です。


抽象的な議論ではなく、この本の中に具体例を挙げておきましたが、何が
触媒の働きをするか、もうお判りのはずです。

心の錬金術における賢者の石とは、誰にでも手が届く、しかも多くの人が
忘れ去って、振り返ってみようともしないものの事です。

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