2007年5月17日、「借地借家法の一部を改正する法律案」(事業用定期借地の存続期間を延長する法案)を自民党・公明党議員による議員立法として開会中の今国会に提出された。衆議院議員運営委員会に提出されたが、審議を付託する委員会も未だ決まっていない。
提出者 保岡興治(自民・鹿児島1区)、杉浦正健(自民・愛知12区)、櫻田義孝(自民・千葉8区)、早川忠孝(自民・埼玉4区)、柴山昌彦(自民・埼玉8区)、大口善徳(公明・東海ブロック)
現行の「借地借家法」第24条の「事業用定期借地権」の借地存続期間は「10年以上20年以下」と規定されており、特約を結ばなくても「契約更新」と「建物買取請求権」及び「建物再築許可の規定」は法的に排除されている。また契約は公正証書ですることを義務づけられている。
「事業用定期借地権」は約定した借地期間が終了すると「建物買取請求権」と「契約の更新」及び「再築による期間の延長」がないので、借地権は確定的に消滅する。従って借地権者は自己の費用で建物を取壊し、土地を原状に回復して借地権設定者に返還しなければならない。この義務を借地権者が怠った場合には、債務不履行となる。借地権者が原状回復しなかった場合、借地権設定者が裁判上の手続を取ることになるが、この場合の原状回復費用は借地権者に求償すべきものとされている。
このように定期借地は、存続期間が満了したら建物を取壊し、借地を更地にして返還しなければならない制度である。
但し、欧米諸国の「定期型借地権」は、多くの場合、物権的土地利用権であり、日本の「定期借地権」のように債権的権利である賃借権ではない。従って、欧米諸国の「定期型借地権」は譲渡性があり、借地権自体に担保権を設定することが出来る。
更に借地権が消滅した場合に建物を取壊し、更地にして返還する必要はない。建物は土地に附合するということから土地所有者のものになるのが原則である(注)。従って存続期間満了後に建物を取壊すことはない。これにより定期借地上の建物に居住する借家人の居住権も保護されることになる。
日本の「借地借家法」は35条で借地権の終了を知らなかった借家人を保護するために明渡しに1年以内の猶予期間を借家人に与えている。しかし、これも建物取壊しを前提とする特異な規定と言える。いずれにしても借地権が満了すると建物を取壊さなければならない日本の「定期借地権」は、定期借地上建物の借家人の居住権を充分に保護していないということで、欧米諸国には存在しない特異な制度であることに注意すべきである。
(注)ドイツでは借地権が消滅すると建物は自動的に土地所有者の所有に属することになる。しかし土地所有者は建物の取引価格を基準とする償金を支払わなければならない。これにより借地権者は投下資本の回収を保障されている。
「改正法案」は事業用定期借地に関して2通りの借地期間を設定している。
①「改正法案」は現行法24条と同一内容で期間が「10年以上30年未満」に延長されている(改正法案第23条2項)。
②借地の「存続期間を30年以上50年未満」とした場合、(1)更新排除特約、(2)建物再築による存続期間の延長を排除する特約、(3)建物買取請求権を排除する特約、以上(1)~(3)の特約は公正証書で契約を結ぶ場合に認められる(改正法案第23条1項)。
以上が事業用定期借地の「改正法案」の主な内容である。
次に掲載するのが、「借地借家法の一部を改正する法律案」である。
「借地借家法(平成3年法律第90号)の一部を次のように改正する。
第22条中「含む」の下に「。次条第1項において同じ」を加える。
第24条を削り、第23条第1項中「場合」の下に「(前条2項に規定する借地権を設定する場合を除く。)」を加え、同条を第24条とし、第22条の次に次の1条を加える。
(事業用定期借地権等)
第23条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定よる買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。
3 前2項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。」
附則
(施行期日)
第1条 この法律は、平成20年1月1日から施行する。
(経過措置)
第2条 この法律の施行前に設定された借地権(転借地権を含む。)については、なお従前の例による。
借地借家の賃貸トラブルのご相談は
東京多摩借地借家人組合
一人で悩まず 042〈526〉1094
相談は無料 組合は会員制で何時でも入会受付けます。
提出者 保岡興治(自民・鹿児島1区)、杉浦正健(自民・愛知12区)、櫻田義孝(自民・千葉8区)、早川忠孝(自民・埼玉4区)、柴山昌彦(自民・埼玉8区)、大口善徳(公明・東海ブロック)
現行の「借地借家法」第24条の「事業用定期借地権」の借地存続期間は「10年以上20年以下」と規定されており、特約を結ばなくても「契約更新」と「建物買取請求権」及び「建物再築許可の規定」は法的に排除されている。また契約は公正証書ですることを義務づけられている。
「事業用定期借地権」は約定した借地期間が終了すると「建物買取請求権」と「契約の更新」及び「再築による期間の延長」がないので、借地権は確定的に消滅する。従って借地権者は自己の費用で建物を取壊し、土地を原状に回復して借地権設定者に返還しなければならない。この義務を借地権者が怠った場合には、債務不履行となる。借地権者が原状回復しなかった場合、借地権設定者が裁判上の手続を取ることになるが、この場合の原状回復費用は借地権者に求償すべきものとされている。
このように定期借地は、存続期間が満了したら建物を取壊し、借地を更地にして返還しなければならない制度である。
但し、欧米諸国の「定期型借地権」は、多くの場合、物権的土地利用権であり、日本の「定期借地権」のように債権的権利である賃借権ではない。従って、欧米諸国の「定期型借地権」は譲渡性があり、借地権自体に担保権を設定することが出来る。
更に借地権が消滅した場合に建物を取壊し、更地にして返還する必要はない。建物は土地に附合するということから土地所有者のものになるのが原則である(注)。従って存続期間満了後に建物を取壊すことはない。これにより定期借地上の建物に居住する借家人の居住権も保護されることになる。
日本の「借地借家法」は35条で借地権の終了を知らなかった借家人を保護するために明渡しに1年以内の猶予期間を借家人に与えている。しかし、これも建物取壊しを前提とする特異な規定と言える。いずれにしても借地権が満了すると建物を取壊さなければならない日本の「定期借地権」は、定期借地上建物の借家人の居住権を充分に保護していないということで、欧米諸国には存在しない特異な制度であることに注意すべきである。
(注)ドイツでは借地権が消滅すると建物は自動的に土地所有者の所有に属することになる。しかし土地所有者は建物の取引価格を基準とする償金を支払わなければならない。これにより借地権者は投下資本の回収を保障されている。
「改正法案」は事業用定期借地に関して2通りの借地期間を設定している。
①「改正法案」は現行法24条と同一内容で期間が「10年以上30年未満」に延長されている(改正法案第23条2項)。
②借地の「存続期間を30年以上50年未満」とした場合、(1)更新排除特約、(2)建物再築による存続期間の延長を排除する特約、(3)建物買取請求権を排除する特約、以上(1)~(3)の特約は公正証書で契約を結ぶ場合に認められる(改正法案第23条1項)。
以上が事業用定期借地の「改正法案」の主な内容である。
次に掲載するのが、「借地借家法の一部を改正する法律案」である。
「借地借家法(平成3年法律第90号)の一部を次のように改正する。
第22条中「含む」の下に「。次条第1項において同じ」を加える。
第24条を削り、第23条第1項中「場合」の下に「(前条2項に規定する借地権を設定する場合を除く。)」を加え、同条を第24条とし、第22条の次に次の1条を加える。
(事業用定期借地権等)
第23条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定よる買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。
3 前2項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。」
附則
(施行期日)
第1条 この法律は、平成20年1月1日から施行する。
(経過措置)
第2条 この法律の施行前に設定された借地権(転借地権を含む。)については、なお従前の例による。
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