東京多摩借地借家人組合

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土地を時効取得されるのでしょうか?

2008年07月19日 | 借地借家の法律知識
(Q) 2年前、親名義の土地に我が家を新築した際に、敷地の測量をしたところ、隣家の倉庫が5センチほど境界線から出ていることが分かりました。そこで、そのことについて隣家に確認してもらい、「はみ出ている事実を認める」という書類に印鑑を押してもらえました。その際、隣家とは、トラブルになってしまったため、今でも、気まずい関係が続いています。

 もし、隣家が時効取得を主張してきた場合、渡さなければならないのでしょうか? また、隣家がほかの人に土地を売却などした場合、どうなるのでしょうか? 不安でたまりません。




(A) 冷静な手続きが笑顔に変える

(住宅ねっと相談室カウンセラー NPO役員 石田 光曠)


 境界問題で隣家ともめるケースは意外に多く、残念ながらそのほとんどが、口もきかないという関係になっています。本来、いざという時には助け合わなければいけない隣人同士ですから、一刻も早い円満解決が必要です。

 さて、今回の場合、2年前に確認した証拠書面がありますから、取得時効の成立は中断しています。したがって、隣家から突然、「やっぱり取得時効の完成を主張する」と言ってきてもそれは認められませんから、ひとまずご安心を。

 ただし、確認した内容が、「はみ出していることを認める」という内容だけであれば、さらにそこから20年間経過すれば時効完成の可能性を否定できず、さらにその完成前に中断行為をしなければなりません。また、隣家に相続や売買が発生した場合、新たな権利の発生として10年、または、20年の取得時効が考えられなくもありません。このような場合には、当事者だけでなく、第三者に対しても対抗力のある絶対的な境界確定行為が必要です。

 公的な制度として、今までは裁判所の「境界確定の訴え」という裁判によらなければならなかったのですが、境界トラブルのあまりの多さから、比較的気軽にできる「筆界特定」という法務局の制度が最近誕生したばかりです。

 では、どうするかですが、土地調査家屋士という境界問題の専門家がいます。地元の土地調査家屋士会の相談会などを利用して、どのような対策が必要で、そのうちどのような対策が既にされているかいないかの指導を、具体的に受けてください。

 隣地同士のトラブルは、根が深くならないうちに、早めにきちっとした法律手続きをすることで、笑顔で付き合える関係に変わるものです。初めのうちは犬猿ムードで始まる手続きも、最後は笑顔で握手するという事例が多いようです。感情的にならず、冷静に粛々と手続きを踏んでください。

(住宅ねっと相談室より)
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