借地非訟事件において、借地権の期間満了が近いときにおける借地条件変更許可の申立が、契約が更新される見込みが確実とは言えず、また緊急の必要性があるとも認められないとして棄却された事例 (東京高裁平成5年5月14日決定、判例時報1520号94頁)
(事案)
(1)地主Xと借地人Yとの借地契約は非堅固建物(木造建物の類)所有の目的で平成7年3月31日に期間が満了する。
(2)借地上には、A棟(昭和30年代の建築)、B棟(昭和34年頃の建築)、C棟(昭和39年頃の建築)があった。
(3)借地はJR池袋駅近くにあり、商業地域、防火地域に指定され、高層ビルが建ち並んでいる。
(4)借地人Yは、本件借地に近いところに宅地42坪及び同地上に5階建てのビルのうち4階部分を所有し、平成2年6月右C棟からここに転居した。
(5)Yは、各建物が老朽化したので土地の有効利用を図り、建物の賃貸による収入を得るため、本件借地上に7階建の事務所兼居宅のビルを建築することを計画した。しかし地主Xの承諾が得られなかったため、借地条件変更(非堅固建物所有から堅固建物所有への変更)の許可の申立をした。
(6)他方地主Xは自己居住地や本件土地等を所有しているが、平成7年3月31日に迫った本件借地の期間満了の際には、更新を拒絶し、土地の有効利用を図るため、ここに賃貸ビルを建築する予定でいる。
(7)平成4年4月12日、C棟が突然焼失、A棟の1部にも類焼し建物としての効用を失った。A、C棟が借地の大半を占めている。またB棟は外壁などにかなりの老朽化が見られる。
(決定要旨)
(1)本件借地契約は、平成7年3月31日には期間が満了し、Xが更新を拒絶することは明らかである。このように期間満了が近い場合に本件申立を容認するためには、条件変更の要件を備えるほか、契約更新の見込みが確実であること及び現時点において申立を容認するための緊急の必要性があることを要するものと解される。
(2)本件においては、XYとも居住の必要性からではなく、土地を有効利用し賃料収入を得るためビルを建築しようとしていることなど前記(1)から(7)までの事実を総合すると、平成7年の期間満了時において借地契約が更新される見込みが確実とはいえず、これを訴訟で解決することを待てないような緊急の必要性があるとも認められない。よってYの申し立ては理由がない。
(若干のコメント)
Yの申し立ては平成3年にされ、東京地裁は平成4年7月30日にこれを容認した。その後高裁に控訴中に前記(7)の火災が発せした。これがYの逆転敗訴に微妙に影響したものと思われる。この高裁の決定要旨(1)は、契約更新見込みの確実性と建築の緊急性の2つを要件とした点に特徴がある。
これに対し増改築許可の申立の場合には、認容されても期間の延長はないので少し事情を異にするが、期間満了間際の申立には右2点は一応念頭に置いた方がよい。 (1995.06)
参考法令 「借地借家法」第17条
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
借地借家の賃貸トラブルのご相談は
東京多摩借地借家人組合
一人で悩まず
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(事案)
(1)地主Xと借地人Yとの借地契約は非堅固建物(木造建物の類)所有の目的で平成7年3月31日に期間が満了する。
(2)借地上には、A棟(昭和30年代の建築)、B棟(昭和34年頃の建築)、C棟(昭和39年頃の建築)があった。
(3)借地はJR池袋駅近くにあり、商業地域、防火地域に指定され、高層ビルが建ち並んでいる。
(4)借地人Yは、本件借地に近いところに宅地42坪及び同地上に5階建てのビルのうち4階部分を所有し、平成2年6月右C棟からここに転居した。
(5)Yは、各建物が老朽化したので土地の有効利用を図り、建物の賃貸による収入を得るため、本件借地上に7階建の事務所兼居宅のビルを建築することを計画した。しかし地主Xの承諾が得られなかったため、借地条件変更(非堅固建物所有から堅固建物所有への変更)の許可の申立をした。
(6)他方地主Xは自己居住地や本件土地等を所有しているが、平成7年3月31日に迫った本件借地の期間満了の際には、更新を拒絶し、土地の有効利用を図るため、ここに賃貸ビルを建築する予定でいる。
(7)平成4年4月12日、C棟が突然焼失、A棟の1部にも類焼し建物としての効用を失った。A、C棟が借地の大半を占めている。またB棟は外壁などにかなりの老朽化が見られる。
(決定要旨)
(1)本件借地契約は、平成7年3月31日には期間が満了し、Xが更新を拒絶することは明らかである。このように期間満了が近い場合に本件申立を容認するためには、条件変更の要件を備えるほか、契約更新の見込みが確実であること及び現時点において申立を容認するための緊急の必要性があることを要するものと解される。
(2)本件においては、XYとも居住の必要性からではなく、土地を有効利用し賃料収入を得るためビルを建築しようとしていることなど前記(1)から(7)までの事実を総合すると、平成7年の期間満了時において借地契約が更新される見込みが確実とはいえず、これを訴訟で解決することを待てないような緊急の必要性があるとも認められない。よってYの申し立ては理由がない。
(若干のコメント)
Yの申し立ては平成3年にされ、東京地裁は平成4年7月30日にこれを容認した。その後高裁に控訴中に前記(7)の火災が発せした。これがYの逆転敗訴に微妙に影響したものと思われる。この高裁の決定要旨(1)は、契約更新見込みの確実性と建築の緊急性の2つを要件とした点に特徴がある。
これに対し増改築許可の申立の場合には、認容されても期間の延長はないので少し事情を異にするが、期間満了間際の申立には右2点は一応念頭に置いた方がよい。 (1995.06)
参考法令 「借地借家法」第17条
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
借地借家の賃貸トラブルのご相談は
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