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借家は火事で焼けると借家権はなくなるのか

2009年03月13日 | 借地借家の法律知識
(問)1階が店舗で2階が住まいになっている併用住宅を借りて豆腐の製造・販売をしている。
 先日、隣りの飲食店から火災が発生して私の家の一部が類焼した。被害は外壁と2階の天井、屋根の一部が焼けた。消火で水浸しになったが、営業や生活に差し支えない程度で済んだ。
 家主は「火事で焼けた建物は取壊して建替えるので、すぐに明渡してもらいたい」と言い、更に「借家は火事で焼けると借りる権利はなくなる」とも言っているが、本当に借りる権利がなくなるのか。

(答)建物賃貸借契約の消滅は、火災によって建物としての効用を失ったか、又は社会観念上これと同視する状態となったことが必要である。すなわち、借家が火災で全焼し、建物が滅失すると借家権は消滅する。借家契約の対象物である建物が無くなると契約も無くなる。借家人に建物を使用収益させる家主の債務は、履行不能となって消滅する。
 これは建物が滅失した場合の例である。一部焼失の場合は、その状態が滅失に当たるかが問題になる。
 類焼による滅失の認定の判断は「賃貸借の目的となっている主要な部分が焼失して賃貸借の趣旨が達成されない程度に達したか否かで判断し、その際、修復が通常の費用では不可能か否かをも斟酌して判断する」としている(最高裁昭和42年6月22日判決)。
 即ち、賃貸目的物の焼失による建物の滅失で、修繕が不可能という場合、或は、修復するより新築した方が経済的である場合は滅失と認定される。しかし、簡単な補修によって従前と殆ど変わらない効用を発揮できる状態であれば、借家契約は終了しない。
 相談者の場合は、比較的簡単に修繕できる状態であり、新築するよりは安上がりの費用で回復可能である。従って、滅失とは言えず、借家権は存続する。
 家主の建物の滅失を理由に明渡請求をされる前に、修繕をして建物としての効用を発揮させるようにしておかなければならない。
 家主は修繕をさせないと言っているようだが、借家権を確保するため、営業を続けるためにも、速やかに屋根と外壁の修繕を強行し、使用・収益の出来る状態にしなければならない。その際、修繕費用は自己負担で行うのが現実的である。

(東京借地借家人新聞より)


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