東京多摩借地借家人組合

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追い出し屋/貧困ビジネス対策を急げ (神戸新聞 社説)

2009年03月11日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 短期間に家賃を滞納しただけで、家賃保証会社から強制的に住宅の退去を迫られる「追い出し屋」被害が相次いでいる。

 職を失った非正規労働者らが被害に遭っており、不況とともに問題は深刻化している。早急な対応が必要だ。

 敷金・礼金がいらない「ゼロゼロ物件」と呼ばれる賃貸住宅の家賃回収でトラブルが目立つ。こうした物件は、連帯保証人や入居時にまとまったお金が不要のため、低所得者が借りるケースが多く、「貧困ビジネス」ともいわれている。

 弱みにつけ込んだ商法で、家賃滞納への執拗(しつよう)な督促や追い出し行為などのトラブルが起きている。中には、部屋の鍵を無断で交換したり、家財道具を勝手に処分したりするケースもある。たんすやテレビだけでなく、トイレットペーパーまでなくなっていたという悪質な例もあった。

 保証会社は、入居者の保証人代わりになるほか、滞納家賃の回収や交渉も代行する。通常、家賃滞納で退去させる場合、家主は訴訟などで明け渡しを求める。この手続きは時間がかかるため、家主が保証会社に回収などを頼るケースが増えている。

 保証会社の契約書には、無断で部屋への立ち入りや鍵の交換、家財道具の処分などができるとした条項があり、これを盾に強引な追い出し行為が行われている。

 こうした業者が出てきたのは最近で、これまでは規制の対象にはならなかった。国土交通省が行った実態調査では、家賃保証会社は全国に九十二社ある。契約書の中には違法性の高い条項があり、同省は見直しなどを業界に求めた。一方で、保証会社の登録制度を盛り込んだ新法制定や、標準契約書の作成などの対策を検討する。

 景気悪化に伴い、家賃をめぐるトラブルはさらに増えるおそれがある。悪質業者への規制を急いでもらいたい。

 住宅対策を充実させることも重要だ。単身の非正規労働者らは住む場所を見つけるのが難しく、ゼロゼロ物件などに入居するしかない状況がある。

 財政難の自治体は公営住宅の新築を抑制している上、単身向け住宅も少ない。若年単身者への「公」の支援は不十分だ。低額の賃貸住宅の供給や公的保証制度の充実など、低所得者層への施策が欠かせない。

 追い出し屋被害の背景には、非正規労働者の増加も含めて現代の貧困の問題がある。根本的な解決には、そうした社会のひずみを是正する地道な取り組みが要る。

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