東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

競売開始物件と知らずに借主が賃貸借契約を締結し、不動産業者が業務停止になった事例

2009年07月17日 | 最高裁と判例集
《要旨》
 重要事項説明が不十分であり、当該物件が競売開始決定されていることを知らずに、借主が賃貸借契約を締結したなどとして、媒介業者が35日間の業務停止とされた。


(1)事実関係
 Xは、子xの大学入学に当たり、業者Yの媒介で賃貸アパートを借り受けることとし、4月の上旬に同社A支店に行き、担当者のy1に敷金、媒介手数料等合計17万円余を支払い、xは入居した。しかし、4月下旬に同支店の取引主任者y2からXに、入居に係るお金は払ったかという電話があり、y1に払ったと答えたが、Xは不審に思った。
 その年の11月に、xは、家主からの通知で、アパートが競落され、新しい家主と新規に賃貸借契約を結ぶか、退去するかを迫られ、このとき初めて、本件物件が契約前から既に競売開始となっていた物件であることがわかった。
 Xは、重要事項の説明はy2から受けておらず、この物件が競売中であることも知らされていなかった、y2は6月には既に退職していたのに、行政庁の台帳によれば7月上旬まで勤めていると虚偽の届出がされているなどとして、Yへの処分を求めて来庁した。

(2)事情聴取
 行政庁で、Yに事情を聴いたところ、Yは、「y1が借主から預かった敷金等の40万円弱(X以外の借主に係る分を含む)を横領していることがわかった。家主へは当社が立て替えて払ったが、y1からの回収残金は20数万円ある。y1は、A支店の設置に当たって、本物件の管理会社から、賃貸に詳しいということで紹介を受け、取引主任者としての仕事は初めてであるy2のアドバイザーとして採用したが、従業員の届出は行っていなかった。y2は実質的には4月中旬に退職していたが、y2のいた事務所の閉鎖届けをした日までいたことにしていた。」などと述べた。Yが本物件に係る媒介をした賃借人は、合計6人であった。


(3)処 分
 行政庁は、Yは、建物賃貸借の媒介において、賃貸借契約の前までに、取引主任者をして重要事項説明を十分に行わせなかったために、借主が当該物件が競売開始決定されていることを知らないで、契約を結ぶこととなったなどとして、Yを35日間の業務停止処分とした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする