家を失った失業者が住まいの心配をせずに就職活動ができるようにと、厚生労働省が昨秋から始めた住宅手当給付制度が不人気だ。同省によると、予算枠は来年3月まで約32万人分700億円を確保しているものの、滑り出し3カ月間の利用者は8千人に満たず、今年3月末で18万5千人という予測の4.3%にとどまっている。同省や窓口となる自治体は、認知度が低い上に、家主側に「失業者に家を貸して大丈夫か」という戸惑いがあるとみている。
同制度は麻生政権が2009年春、近づく総選挙をにらんで打ち出した失業者対策の一つ。鳩山政権もこれを継承し、10月に募集を始めた。
受給資格は2年以内にリストラや雇い止めなどで離職し、寮や社宅から退去を求められるなどして住む家を失ったり、その恐れがあったりする人。求職中も条件だが、一時的なアルバイト収入や一定額の預貯金も認められ、生活保護に比べると緩やかだ。実際の給付は本人にではなく、都道府県など自治体から家主に家賃として毎月支払われる。例えば、東京都の場合、家族がいると月最大6万9800円、単身者は同5万3700円を原則6カ月間、最長9カ月間給付する。
同省は昨春、初年度(09年10月~10年3月の半年間)で18万5千人の利用を予測し、300億円を計上。今年1月の補正予算では、新年度に13万9千人の利用が見込まれるなどとして、400億円を上積みした。ところが、開始3カ月間の申請数は1万1518人で、うち支給決定数は7950人にとどまった。
同省や都道府県の担当者は「申し込みの少なさは、制度の周知不足」とみている。ただ、敷金や礼金などは同制度の対象外で、社会福祉協議会などから別途借りる必要がある。そのため、「住宅に関する費用すべてが給付され、支給期限もない生活保護に流れている」との見方もある。
申し込みの少なさだけでなく、申請数に占める決定数の割合も全国平均で69.0%と低い。申請件数が1660人と全国最多の東京都で56.3%、1629人が申請した大阪府は66.9%となっている。これは申請後の家探しで難航するためという。
借り手側の「連帯保証人がいない」「受給額以内で物件が見つからない」との事情もあるが、家主側が「支給期限内に仕事が見つからなかった時、家賃が滞納されてしまう」とリスク回避に動いているのが大きいという。同省保護課は「家主に強制はできない」としている。(岩崎賢一、鈴木暁子)
(朝日 2月16日)
同制度は麻生政権が2009年春、近づく総選挙をにらんで打ち出した失業者対策の一つ。鳩山政権もこれを継承し、10月に募集を始めた。
受給資格は2年以内にリストラや雇い止めなどで離職し、寮や社宅から退去を求められるなどして住む家を失ったり、その恐れがあったりする人。求職中も条件だが、一時的なアルバイト収入や一定額の預貯金も認められ、生活保護に比べると緩やかだ。実際の給付は本人にではなく、都道府県など自治体から家主に家賃として毎月支払われる。例えば、東京都の場合、家族がいると月最大6万9800円、単身者は同5万3700円を原則6カ月間、最長9カ月間給付する。
同省は昨春、初年度(09年10月~10年3月の半年間)で18万5千人の利用を予測し、300億円を計上。今年1月の補正予算では、新年度に13万9千人の利用が見込まれるなどとして、400億円を上積みした。ところが、開始3カ月間の申請数は1万1518人で、うち支給決定数は7950人にとどまった。
同省や都道府県の担当者は「申し込みの少なさは、制度の周知不足」とみている。ただ、敷金や礼金などは同制度の対象外で、社会福祉協議会などから別途借りる必要がある。そのため、「住宅に関する費用すべてが給付され、支給期限もない生活保護に流れている」との見方もある。
申し込みの少なさだけでなく、申請数に占める決定数の割合も全国平均で69.0%と低い。申請件数が1660人と全国最多の東京都で56.3%、1629人が申請した大阪府は66.9%となっている。これは申請後の家探しで難航するためという。
借り手側の「連帯保証人がいない」「受給額以内で物件が見つからない」との事情もあるが、家主側が「支給期限内に仕事が見つからなかった時、家賃が滞納されてしまう」とリスク回避に動いているのが大きいという。同省保護課は「家主に強制はできない」としている。(岩崎賢一、鈴木暁子)
(朝日 2月16日)