東京多摩借地借家人組合

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住生活基本法で負け組の住宅はどうなるのか

2006年09月13日 | 国と東京都の住宅政策

阿部和義
2006年08月25日 (アサヒコム)

 豊かな住生活を目指すという「住生活基本法」が06年6月に施行された。昨春、国土交通省の山本繁太郎・住宅局長(現総務審議官)が「住宅基本法」を作るかどうか、で悩んでいるという記事をこのコラムで書いた。それから1年がたって、この法律は国会で成立した。名前に「生活」が入り、国土交通省の北側大臣はご機嫌である。公明党の出身だけに住生活という言葉が気に入ったようだ。

 8月には日経新聞で大々的に広告を打った。北側大臣が、見城美枝子・青森大学教授とこの法律が成立したことで対談をしている。異例のことである。この中で北側大臣は「住宅は量から質の時代に入り、住宅の全般について施策の対象にする」と話している。具体的には基本計画を作っており、項目ごとに目標値を作る。例えば新耐震適合率を03年現在の75%から15年には90%、省エネ対策率を同18%から同40%にする。老齢化にあわせるために共同住宅の道路から玄関までのバリアフリー化率を同10%から25%に目標を定める。

 住宅の質の向上は国民の要望でもある。しかし、公的な住宅政策で一番必要なことは人生の負け組に対してどのような支援の手を差し伸べるかである。戦後の住宅政策では「住宅金融公庫」が安い金利で金を貸し、住宅公団(元都市機構)が安い住宅を提供し、地方自治体は安い価格で公営住宅を提供した。小泉改革で住宅金融公庫は06年度末で廃止され、「住宅金融支援機構」になる。地方自治体の公的な住宅供給も三位一体改革による財政難で減る事が予想される。こうした中で小泉改革で格差は開くばかりであり、負け組に対する住宅政策はどのようになるのかが、北側大臣からは聞こえてこない。本来ならば公明党の大臣だけにこうした負け組に対する温かい配慮があってしかるべきではないだろうか。

 住宅生産者の集まりである「住宅生産団体連合会」(会長・和田勇積水ハウス社長)はこの住生活基本法の理念に基づき「倫理憲章」を制定した。この憲章では「環境への配慮」「地域社会への貢献」など7つの原則を決めた。住宅メーカーに対してもいろいろな批判が出ている。環境に配慮しない住宅を作っているとか、老人に対して配慮が無いなどである。今回の住生活基本法の精神に基づきこうした批判が無いように倫理憲章を守って欲しいものである。



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家主の明渡しが認められる正当事由の判断とは

2006年09月13日 | 明渡しと地上げ問題
(Q)家主の息子が結婚するので、3年の借家の期限に明渡しが認められるための正当事由とは。

(A)正当事由の制定の足跡
 借家法1条の2には、貸主は「自ら使用することを必要とする場合その他正当の事由ある場合」のみに、更新を拒絶し、また解約の申入れができるとしています。ご質問の場合は、期間を3年と定めたのですから、更新拒絶ができるか否かということになります。
 大正10年に、借家人保護のため、借家法が制定されましたが、建物の賃借権に対抗力を与え、借家人に造作買取請求権を認めましたが、解約については、申入れ期間を従来の3ヶ月から6ヶ月に延長したに止まり(同法3条1項)、解約の申入れ事由については、なんの制限も加えませんでした。これでは建物の賃借人の地位は依然不安定なものなので、昭和16年の借家法の改正で、新たに1条ノ2を加え、先に述べたように内容に制限を加えたのです。

正当事由の内容は
 それでは、その正当事由の内容ですが、貸主が自分で使用する必要があるときは、それだけで正当事由があるということになって、明渡しが認められるという解釈が初めのうちは取られていたのですが、これでは、貸主側の主観的事情に片寄りすぎて、借家人は実質的に保護されないとの批判が出て、昭和19年9月18日の大審院判例で「建物賃貸人が自ら使用する必要ありて解約の申入れをなすに付正当事由ありとなすには、賃貸人及び賃借人双方の利害得失を比較考慮するの外、なお進んで、公益上社会上その他各般の事情を斟酌してこれを決すべきものとす」と判断を示したのです。この考え方は最高裁でも引き継がれています。
 つまり、上記の考え方によると、賃貸人、賃借人の双方の事情を比較考慮して決めるべきだ、というものです。
 上記の判例にもあるとおり、公益上、社会上その他いろいろの事情をも考慮して決めるとありますが、その時の住宅事情がどうあるかが大きな判断要素になることはもちろんです。
 正当事由については、平成4年8月1日に施行された借地借家法では、「貸主及び借主の双方において、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の貸主が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引き換えに借主に対して財産上の給付(立退き料)をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して正当事由を判断する」と規定しております(28条)。

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