ドラマ「ダウントン」アビーは、シーズン6でシリーズ終了となるらしい。1912年のタイタニック事故から始まり、第1次世界大戦を経ておそらくは第2次世界大戦の暗雲が立ちこめる中でエンディングを迎えるのだろう(現時点でシーズン6の内容は未詳)。
仮にエンディングが1933年頃だとすると、21年。第1次大戦を経て、独墺では王朝が崩壊し、共産主義が勃興してソ連が成立、アジアでは日本が勃興し、アメリカから始まった狂騒の20年代は29年の株価大暴落で終わりを告げた。ドイツでは超インフレによる経済破綻ののち、ナチス政権を迎える。
特に大戦とアメリカ型資本主義が、世界を大きく変えたのですね。
ダウントン冒頭で既に自動車はあり、電球(電気)は出始めの頃だったらしいが、電話が通じ、使用人がタイプライターを買い、蓄音機がプレゼントされ、先日は電気トースターも出てきた。自動車も、最初は1台だけだったのが、バスが出てきたり、きらびやかなアメリカ車が出てくるなど、進境著しい(あれだけのクラシックカーをドラマで走らせることができるなんて!)。やがて飛行機やラジオも出てくるかもしれない。
戦争と共に従来の階級制度は次第に崩壊し始め、女性の社会進出が始まり、やがて参政権も与えられるようになる。考えてみると、この辺の大きな流れ(テクノロジーと資本主義の進歩、階級とジェンダーの変化)は、この100年、方向性としては変わっていないように思える。それ以前にもあっただろうし、これからも続いていくのかも知れないが、どこかで行き着くところに来るのだろうか?
ドラマのなかでは、特に当主のロバートと、執事のカーソンが時代の変化になじめず、当惑したり苦しんだりする様子が描かれている。カーソンは電話も嫌いだが、それでも果敢に挑戦する気概は持っている。共和政治も好きではない。もっとも、ヴァイオレットに言わせれば「使用人は保守的なものと相場が決まっている」らしい。
ロバートはむしろ柔軟に世の中の動きに接するように努めている様子だ。シーズン2のどこだったか、エンディングちかくで、「いずれにせよ新し世界はやってくるのだ。潔く受け入れようじゃないか」とさえ述べている。
しかし長男故なのか、男性一般の特性なのか、世間の新しい波に翻弄され、傷ついたり苦しんだりする様子が描かれていく。3人の娘の父親なのだから、屋敷の当主でなくても辛いだろうに・・。
「自分がこの世で価値のある人間に思えるようになりたい」などと言う台詞を聞くと、痛々しく思えてくる。
さて、ダウントンの話はここまでとしよう。
ドラマで描かれた、20世紀初頭は確かに変化の大きい時代ではあったが、時代の変化は21世紀に入ってその動きを止めたわけではなく、むしろより激しくなったと捉える方が一般的だろう。
そして、僕たちはその変化の激しかった20世紀後半から21世紀初頭を生きてきた。
バブル全盛時代を含めると25年を越えてしまうから、過去20年に絞って考えても、阪神の大震災、アジア通貨危機と、日本の大手金融機関の破綻、EUの進展と統一通貨ユーロの登場、ユーゴスラビア紛争、アメリカ同時多発テロとアフガン侵攻、ついでイラク戦争とテロとの戦い、リーマンショック、台頭する中国、などなど。
この間にインターネットと携帯電話が普及し、写真と動画がデジタルになり、カセットテープも見かけなくなった。特にネットと携帯は大きいかも。平成の初め頃は、メールもホームページもなくて、電話とファックスで仕事していたし、パソコンは一人1台ではなかった・・。
僕自身、別に大きな屋敷の当主でもなんでもないが、この何十年かを、それなりに時代の風当たりを感じながら生きてきた。時代について来てこれたかどうか、振り返るとどうだろうか・・。
しょうじきなところ、中国の存在感がいつかは増していくだろうことは、天安門事件の頃からずっと思っていた。いずれは中国にもハイウェイが走り、日本との行き来も盛んになるだろう。それが今やってきて、街にで出ると中国語を聞かない日がない程になると、改めて時代の変化に感じ入らないわけに行かなくなる。
日本が変わったというか、日本が変わらないで日本以外が変わったことで、世界の中の日本の立場が変わったという実感は、結構感じている。アメリカも変わっ たが、アメリカと日本の相対的関係はずいぶんと変わった。欧州と日本との関係も変わってきた。中国と日本はもっと変わったと思う。アメリカは本当に遠くなった。しらないうちに。
僕の場合ははじめから男性優位の社会には属していなかったので、その点は他の人よりは変化の感じ度合いが違うかも知れない。他方、今でも昔風の社会に属している人も大勢いるだろうし、その辺は、人それぞれなのかもしれないが・。
ただ、昔にくらべると、今はずっと女性が、ビジネス社会に浸透しているような気がする。昔はもっと、無理に元気だそうとしている女性も結構見かけた記憶がある。そして男性は、昔よりはずっと元気がなくなった。これも自分のいる環境により違いはあるだろうけど・・。
ドラマを見ていると、時代の波に乗って、「うまく」生きていく方がそれは有意義に人生を過ごせるだろうが、反面、時代に乗る事ができず、戸惑いながら生きることも、その人なりに正直な生き方なのかも知れないな、と考えることがある。
これまで、なんとか時代に合わせて頑張っては来たけれど、ときどきもういいや、このまま放っておいてくれ、と言いたくなることが、さいきんはある。それもいいでしょう、その方があなたらしいですよ、なんて言われたら、甘言に乗りたくなるかも。
しかしまあ、どうやっても楽な道はないのでしょうね。楽をする自分も美しく思えないし、自分で許せないでしょうし・・。