さいしょはMD辺りから話し始めようと思ったが、長くなりすぎるのでメモリーオーディオが出てきてからのお話。
デジタルオーディオというとMD辺りが中心だった前世紀の終わりごろ、当時紙の雑誌で出ていた週刊アスキーにRioというmp3プレーヤーが紹介されているのを見た。そんなものがあるのか、という感じだったが、そのすぐ後に同じような様式のものがアップルから出てきた。
実は同じころ、ウォークマンにもメモリースティック(ソニー独自のフラッシュメモリカード。SDカードのようにカメラなどで使う)を使うタイプのが出ていたが、際物というか、メーカー自身がそれほど宣伝している感じではなかった。
しかしアップルは、たぶんソフトのiTunesとか、楽曲のダウンロード販売という方式などが新しかったからか、ほどなく広く市場の支持を受けるようになった。
僕は結局iPodのたぐいを最後まで買わなかったので、どのくらい便利なのかはわからなかったが、2005,6年ごろになると一般の人が音楽を聴くのに、iPodを使うのは普通のことになっていた。小型のシリーズやカラーバリエーションも増え、新製品が出るたびにネット上で大きな話題になった。
ポータブルオーディオはソニーのお家柄で、僕は知らないが古くは携帯型の小型ラジオなどでも、ソニー製品は有名だったという。カセットウォークマンは世界的なヒットになった。
20世紀の終わりごろにはMDを中心にポータブルオーディオを展開していた。MDは日本では一世を風靡したが、世界的にはコンパクトカセットやCDなどと同様の支持を集めるほどには至っていなかった。オーディオ、ビジュアルのメディウムはCD、DVD、ブルーレイ、あるいはVHSテープなど、日本メーカーがかかわった規格が世界標準になることが多かった。しかし、20世紀の終わりごろ、日本の弱電メーカーはかつてほどには成功を収めることができなくなっていた。
その理由をここで分析できるほどの知見はないが、単なる感想として思うのは当時の日本企業は、デジタルコピーをされることに脅迫的な危機感を持っていたようだ。DATが迷走したのはそのせいだし、MDもATRACという圧縮方式がソニーの独自規格で、複製やソニー以外の機器、ソフトでの利用ができない仕様だった。iPodも当初はMac専用の周辺機器だったが、すぐにWindowsが利用できるようになり、mp3などの汎用規格にも対応していた。
たぶん、iPodもソニー系機器も、当初の制約は似たようなものだった気もする。
アップルの戦略に負けたのか、ソニーに失策があったのかはわからないが、世間ではソニーを守旧勢力と位置付けるような世論が、一部のネット上に出現するようになった。2ちゃんとか、価格.comの掲示板で、ソニーを貶す人をよく見かけた。あの頃から、日本人というかネット民のやることはそれほど変わっていない。
ソニーもなんとなく、アップルに対抗心をむき出しにしていたような印象がある。アップルに数年遅れて発売したHDD式のプレーヤーを、当時話題になった外国人社長、ハワード・ストリンガー氏が自ら発表会で紹介していたのを思い出す。
ソニーのHDD式プレーヤーはたぶん初代だけで、後はフラッシュメモリ式の小型プレーヤーに移行した。2005年春に出た、ネットワークウォークマンは発売前にウェブで見て一目ぼれして、予約注文の上発売日に入手した。
香水瓶をモチーフにデザインしたとか、当時書いてあった。操作系が右側の首のところに集中していて、押したりひねったりしながら目的の曲を再生する。
ネックバンドにぶら下げて使うが、とても小さいので持ち歩いても邪魔にならない。曲名表示は3行程度だが、有機ELできれいに表示される。
手にしたときにとてもうれしかったし、満足して使っていた。アップルにはない路線だったし、今でも傑作だと思う。
他メーカーの参入も多かった。フラッシュメモリ式の安いmp3プレーヤーは、海外メーカーからもたくさん出ていた。Creativeという、シンガポールのオーディオメーカーは、渋谷駅の山手線ホームに自社のDAPの大きな看板を掲げていた。
パナソニックはSDカードの規格制定に関わったそうだが、この頃自社の各分野の製品にSDスロットを設ける、ということをよくやっていた。たとえばHDDレコーダーのディーガにも、SDスロットがあった。
オーディオプレーヤーでは内蔵メモリではなく、SDを入れて使うSDプレーヤーとして展開した。今のスマホみたいに、半永久的に入れておくのではなく、カセットのように抜き差しすることを考えていた節がある。
SDカードは初期の2ギガのものまで対応し、SDHCなどには最後まで対応しなかった。
写真のものは2007年に買ったプレーヤー。コジマ電気のワゴンセールでたしか9千円ぐらいで売っていた。見かけたときは買わなかったがどうも気になり、夜自転車で閉店間際に行って買ってきた。
パナのオーディオは昔から音は悪くないのだが、この頃はデザイン的に試行錯誤を繰り返していた印象はある。
iTUnesのように、ソニーもパナも自社の音楽配信サイトを展開していた。どちらもファイル形式は独自のものだ。パナのサイトから一度だけ、ノーラ・ジョーンズのアルバムを買ったが、その後ほどなくしてサイトは閉鎖になってしまった。
2000年代の後半になると、DAP市場は寡占が進んできた印象がある。
iPod、ウォークマン共にそれなりに製品は充実していったが、パナソニックは撤退し、安価な無名企業のmp3プレーヤというのもあまり見かけなくなる。
2008年に買ったこのウォークマンはワンセグがついていて、予約録画もできた。アクセサリーもたくさん発売されていて、冒頭の写真のようにあれこれ買いまくって物欲まみれになっていた。。
2011年3月の東日本震災の時はこれをオフィスの机に置いてワンセグでニュースを見ていた。仙台空港に津波が押し寄せるところはこの小さな画面で見て、かつ録画もした。録画はこの機器から取り出すことができず、消えてしまった。
最近のDAPはPCを介さずに音楽取り込みができるらしいが、以前のものはそうはいかない。
先に掲げたNW-E507も、2008年のNW-E918も、今のOSでは周辺機器として認識できないか、転送ソフトが対応していない。
当時採用されていたATRACという圧縮規格自体、今はソニーでサポートしていない。
なので、PCが変わるとこれらのDAPも基本使えなくなる。
これは9年前に買った、今のところ最新のウォークマン。PCがビスタからwin 8.1に変わった節目で買い替えた。前のPCはHDDクラッシュしたので、ATRACのデータを引き継げなかった。その時点でソニーはATRACサポートを終了しており、DLしたサイトに行ってもデータの回復はできなくなっていた。
昨年PCを取り替えて、OSがまた変わった。
今、ソニーのアプリで昔の音楽データを扱うことはできない。
ので、このDAPに入ってるいくつかの音楽は、PCに転送して別の曲と入れ替えることができない。
とはいえ、今外で音楽を聴くときは、定額サブスクのサービスを使ってスマホを使って聞いてるから、それほど困らない。そもそも、もうウォークマンをほぼ使っていない。
スマホも電池が減りやすいから、こういうのを使ってもいいんだけどね。
ウォークマンも高いのは色々あるが、ストリーミング可(アンドロイド)の製品は電池が持たないらしい。昔は電池長持ち、急速充電で朝の支度時にその日の充電が可能なんて、宣伝していたのにね。
形は変わってないみたいだけど、今度安い奴でもまた買ってみようか。。