今の時期、少し仕事にも余裕がある。ので、夕方、帰りに映画を観てきた。
宮崎駿の「風立ちぬ」である(一応断っておきますと、後半ネタバレがあります。ので、適当に写真を配しておきます)。
まだ明るい。雨はこのときいったん止んでいて、わずかの時間夕焼けが見えた。
月曜日の夜だが、そこそこお客がいる。終演は10時近くになるので、子供づれはいない。
こんなものを食べながら。う~ん、アメリカンサイズ・・。
この映画、行こうと思ったきっかけはさるエコノミストの方のサイトだった。なかなか好意的に書かれていたので、他のサイトなんかも見ながら、帰りに寄ってみようかと思った次第。
それで、僕の感想だが・・。う~ん、70点ぐらいかなあ、という感じだ。
全体に淡泊なストーリー展開なのは、ある程度意図的な演出なんだろう。主人公の性格もそうだが、地震のことも、菜穂子の肺病も、そして戦争、あるいは兵器のこともかなりあっさりと流している。見終わって、一番心に残るのは、菜穂子との悲恋だが、それとて、最後は菜穂子に身一つで病院に行かせ、本人は夢の中で回想するだけ、という、淡泊さだ。
ふと、吉村昭の「戦艦武蔵」のことを思った。あのくらい突き放した表現だと、戦争や兵器の開発に対し、また別の趣をあたえることができるが、その点、この映画はどうかな?
他方、航空マニア的というか、オタクっぽさは意図的に避けたような趣がある。マニア向けにすると、観客層が偏ってしまうことを避けたかったのか、と勘ぐりたくなる。それでも、飛行機好き、メカ好きにもちゃんとアピールはしているんだろうとは思う。
(余談だが、たぶん飛行機関係はかなり考証を考えて書かれているように思えるが、僕はどうしても鉄道の方に目が行ってしまう。2時間の映画にしてはかなり鉄道が出てくるが、総じて客車の描写が粗い感じがする。最初の方の、二郎が帽子を飛ばされるところでは、西部劇に出てくるようなオープンデッキ(出入り台が吹きさらし)の客車になっている。もっと細かい話をすると、軽井沢に行くときちらと見える碓氷峠の機関車は、色と形式名が時代考証的に違う・・。たぶん軽井沢駅前の保存機関車を見て描いたな・・。おそらく、スタッフに鉄道に目の利く人がいなかったのだろう。ただし、菜穂子の実家近くの南武線(南武鉄道)は合格・・。似たようなことを、航空ファンの人たちは色々と話し合ったりするのだろうか??もちろん、これはネタとして書いているだけで、別にそういうことで作品の評価をしているわけではない)。
長い余談はさておき、僕が気持ちよく感じたのは、二郎の礼儀正しさ-目上の人たちにする挨拶である。戦前の、日本の燐とした雰囲気が伝わってくる。二郎の会社の人たちとの関係や、菜穂子との夫婦の睦ましい姿、この辺はとてもいい。
もとジブリの社員の方がモデルになっているという、カストルプさんは、ちょっと他のキャラと違和感を感じるほどリアリティがある。彼は、この映画が戦争批判の立ち位置にあることを示す、とても重要な役割を担っている。
暮らしの中の細々としたところ-籐の茶こしとか、電熱器、ドイツのホテルにあるスチーム、そんなものへの目配りも凄く効いていて、アニメらしかぬリアリティを感じさせる。いや、むしろアニメだからこそ、観客を(自分は知らないはずの)戦前の日本の社会に引き込ませることができるのか。
軽井沢のホテルのレストランの雰囲気など、実写でもああは出せないかも知れない。日本家屋の並ぶ町並みも、アニメならではの迫力だ。
総じて、大人向けのアニメとしてはなかなか楽しめる佳作だと思う。
帰りにこんなものを買った。
値段が書いていなかったが、まあいいやと思ってレジに行ったら、千円近かった。ちょっと高すぎない?