連休最終日に見ました。映画館で映画見るのは1月以来、8か月ぶりです。
「失敗の本質」でも取り上げられたあまりにも有名な海戦ですが、真珠湾攻撃などに比べると、映画の題材として取り上げられることは少ないかもしれない。映画の公式サイトでは考証を重ねて史実に忠実に描いたと宣伝しています。
ただ、基本的にはエンターテイメントのための映画であり、NHK特集みたいなドキュメンタリー番組のような構成ではありません。
この映画、監督がID4(インディペンデンス・デイ)のローランド・エメリッヒなんです。
もう20年以上前にみた映画ですが、鮮烈に覚えてます。。うん、なんかむちゃむちゃよく覚えているな。宇宙人に拉致された変なおじさんとか、若い大統領とファーストレディとの別れとか・・。前回いつ観たんだっけ?
リアリティーがマイナス200%ぐらいの強引な筋書なのに、ぐいぐい引き込まれるすごい映画でした。。
エメリッヒ監督にはそういう印象があるので、今回もどうかなと思ったけど、意外とまとも、といっては失礼か。ひじょうにオーセンティックな構成で・。
この種の歴史ドラマにこんにち求められる、双方当事者への敬意とか、でも敵方はなんか残虐なことしたり浅はかな判断違いをするとか、友人との別れ、家族、祖国への愛情、主人公の熱情と自責の念、派手なCGと人を引き付ける戦闘シーン、すべてコミコミできれいに収まっている。
見事だけど、ちょっとなんかモヤる。なんか突き抜けてない。。
って感じかな。。
あまり好意的な書き方じゃなくなっちゃったけど、でも、全体に非常にレベルが高いが故のないものねだりなのであって、席に座ったら2時間、たっぷり楽しめることは確かです。
あとは余談。とうぜん日本人が一方の当事者なので、どうしても日本人に肩入れしながら観てしまいがちなのですが、この映画、山本五十六連合艦隊司令長官(豊川悦司)をひじょうに冷静で知的、欧米にも好意的な非戦論者として描いていることに少し気をひかれました。夏頃読んだ日経の記事で、かつてだまし討ちの仕掛け人として、米国では否定的にとらえられていた山本が、近年再評価されつつある、と書かれていたことを思い出しました。
山口多聞少将(浅野忠信)も、立派な軍人として描かれて涙を誘います。南雲中将(國村隼)はちょっと怒りっぽく独断的な将軍として描かれていて、國村さんのファンとしては残念なのですが、考えてみるとそういう人物(実際、南雲中将は開戦後やや精彩を欠いた、という評もあるらしい)を演じることができる國村さんは、やはり名優だということかも。
エメリッヒ監督はドイツ人であり、日米の戦いになんというか客観的な立場で観ていられる立場(ドイツは枢軸国だったとかそういう話はおいといて)なのですが、この人はたぶんアメリカのヤンキー・スピリットみたいなのが大好きなんでしょうね。アメリカ人以上にそういうのを臆面もなく描くことができる。
個人的な印象ですが、あの時代のアメリカというのは今の、というか、戦後日本が強く影響を受け、知らず知らずのうちに自分たちの意識に入りこんでいる「アメリカ」とはまた少し違うような気がします。ひじょうに白人優位社会で、どこか近寄りがたいというか・。戦後、日本も変わったけど、アメリカ社会も大きく変わったのでしょうね。。
グレン・ミラーの In The Mood は「瀬戸内少年野球団」とか観てるとなんか、戦後の日本に土着したような印象があります。今In the Mood聞くと、お、もう7時になったのかな、とか、思ったりしますよね(イオン使ってないとわかんないか・・)。
しかし、グレン・ミラーの音楽って、本来ひじょうに日本人にはない、異質な感覚みたいなのが純化されて出ているような気がします。。
チャタヌーガ・チュー・チューとか、Penncylvania 6-5000なんていうのは、素直に考えてみるとすごくエキゾチック。
逆に、ひじょうに異質であるがゆえに日本人に受け入れられたのかな。。
Don't Sit Under the Apple Tree (木陰の二人)は戦時中の曲で、凱旋して戻ってくるまでは自分以外とリンゴの木の下に座るなよ、という歌詞なのですが、これなんかカッコいいなぁ、と思うと同時に、戦時下のアメリカの様子を彷彿とさせてくれます。。
そう、あのころのビッグバンドジャズって、なんか戦場に慰問に来てステージで歌ってるというシーンがオーバーラップしてくるんですよね。。
この映画の最後に、僕は知識があまりないからわからないのですが、シックなワンピースを着た女性(実在の歌手?)が、クラブのような場所でバンドを従えて歌うシーンがあります。
大戦中の米軍って、なぜかそういう音楽とすごく結びついて感じられる。
たぶん、同じこと感じてるひと、いるんじゃないかと思う。「日本のいちばん長い日」でも、敗戦を受け入れた阿南陸相の背後に、ビッグバンドジャズの甘いコーラスが流れるシーンがありました。
とにかく、このシーンは強い印象に残っています。うん、かなり好きです。
あんな感じの女性は、もう今のアメリカはもちろん、世界中探していもいないと思う。