在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Passopisciaro 2005 x2 + Il Vinaietto パッソピッシャーロ

2015-01-29 18:27:43 | Sicilia シチリア
passopisciaro パッソピッシャーロ
Passopisciaro 2005 la seconda bottiglia ++++
Passopisciaro 2005 la terza bottiglia +++
Il Vinaietto di Marco e Giancarlo



いつも行くお馴染みのエノテカIl Vinaiettoで、珍しくグラスワインとしてPassopisciaro、それも2005年が置いてあった。
普通のエノテカにあるような今日のオススメを記した看板はなく、カウンターのところの棚にあれば(白やスプマンテはもちろん冷蔵庫の中)グラスで頼める。
しかし、ほとんどの常連はある程度決まったワインを頼むので、その日のグラスワインというのもある程度決まっていて、それ以外のワインをグラスで頼む人はそう多くはない。
だから、棚にはたいてい似たようなワインが並んでいるのだが、珍しくPassopisciaroの2005年が並んでいるのがすぐに目に付いた。



さて、ワインはちょっと置いておいて、このエノテカIl Vinaiettoは、今時珍しく変わったエノテカである。最初はびっくりするが、慣れてしまうと病みつきになる。
Campo de’ fioriの近く、しかし、より中心寄り、Largo Argentinaのすぐ裏になるので、立ち寄るのも便利である。
この貴重なエノテカを経営しているのはMarcoとGiancarlo。ローマでも実は最も古いエノテカの一つである。そして、ワインのセレクターとして手伝っているのがPaolo。
加えて、長年働いているLauraとMatildeがいるが、みんな愛するべき人物である。

[user_image 3a/fbf5d1644453664b4664a4e13aaf1bec5b.jpg]

最初、びっくりするというのにはいくつか理由がある。
暖かい時期(と言うよりよほど寒くない時期)に来ると、店の前の通りに大勢の人がグラスを片手に談笑していて、その数に圧倒され、いったいここには何があるのか??とすくんでしまう。
勇気を出して店に入ると(最初は本当に勇気がいる)、テーブルがほとんどない。椅子もほとんどなく、足踏み台に座っている人もいる。(最近、テーブルの数が少し増えた)
そして、食べ物がない。あるのはゆで卵とタラッリーニ(クラッカー的存在)、ポテトチップスだけである。つまり、何か食べたかったら持ち込みOK。(店のすぐ前にはRoscioli経営のピッツェリアEmmaもある)
それから、値段が破格に安いのである。(通常のグラスワインで3-5ユーロ程度、なお注ぐ量はかなり多い方)

常連はいろいろ。どちらかというと左の労働者階級が多いが、中には弁護士、アーティスト、超金持ちも来ている。政治的な話はあまりせず、たわいない会話が多い。
最近は外国人にも有名になってきて(外国の新聞などで紹介されることも多くなってきた)、結構外国人が訪れる。
グループで来て固まっていれば別だが、テーブルがほとんどなく、必然的に立って飲んでいるので、みんな大きく移動する。あっちの輪、こっちの輪、と渡り歩き、すぐにみんなと仲良くなる。この雰囲気がとても良いのである。
そこで慣れて、通い出すと病みつきになる。なにせ安いこともあり(ビールなら小瓶が2ユーロしないとか、グラスで2ユーロでも安ワインが飲める)ほとんど毎日通っている常連が本当に多い。その輪の中に入ると、こっちも毎日とはいかないが、週に1度か2度は顔を出したくなってしまうのである。

棚に並んでいるワインは、全体にあまり知られていないワインが多い。有名どころもあるが、どちらかというと安めの価格のワインが多く、また、同じワインが他のエノテカよりたいていの場合、安い値段で売っていて、非常に良心的である。
そして、棚から適当に選んだワインもたいていグラスで提供してくれる。
(高いワインを、1杯だけでその後誰も頼む人がいないと赤字になってしまうので、もちろん値段や場合による)

と、そこでPassopisciaroをカウンターの棚に見つけたのである。それも2005年。これは頼まない手はない。
Passopisciaroはフランケッティ氏のワイナリー(ワイナリーとワインの名前が同じ)で、トスカーナのかの有名な(メルローで有名)Trinoroの姉妹ワイナリーになる。
トリノーロのワインは高過ぎで、そう簡単に飲めないが(下のクラスは飲めないこともないが)シチリアはエトナのPassopisciaroは値段がぐっと安く手軽に飲める。
もちろんPassopisciaroにも上のクラスのワインContradaがあり、畑の標高が違う5種を全部一度に飲んでみるとそれは大変面白い。
一度、フランケッティ氏と一緒にわずか数人で5種全部飲んだ時、それは有意義で面白かったのだが、アップしなかったような気がする。。。

さて、ボトル。見ると2杯ギリギリ取れないくらいの量しか残っていない。(他のエノテカなら多分取れそうな量)
そこで、経営者のマルコが新しいボトルを取りに行った。すごく気前がいい。
結局、この1本目のボトル、2日前に開けたというのは試飲しなかったが、2本目、これが素晴らしく良かった。びっくりするくらい酸味がきれいで、エレガント。色もとてもシチリアのワインとは思えないくらい(ごめんなさい)透明感が残っていて、フレッシュ感がまだ十分あり、繊細なタンニン、心地よい余韻。ひょっとすると北のワイン風。++++

しばらく経って、2杯目を、ということになったが、そこでもなぜかまた、2杯ギリギリ取れないくらいの量になっていた。(他のエノテカなら、やはり多分取れるくらいの量)珍しいボトルを開ければマルコも試飲するので、なぜか少なくなったのだろう。(他に誰が飲んだかは誰もあまり深く考えない)
そこで、マルコがまた新しいボトルを取りに行った。3本目。気前良すぎ。
こちらは、微妙だが、結構違った。色は濃い目、透明感が2本目程なく、熟成感がより出ている。よりスパイシーで、アニマル臭もやや出始めている。エレガントさよりボディが勝り、南のワインらしさが出て、余韻に太さがある。+++
2005年だから9年は経っている。マルコ曰く、同じケースに入っていたもの、とのことだが、この微妙な違いを体験できたのは何気無く嬉しい。

という貴重な体験もできるIl Vinaietto、初めて入るのはちょっと怖いかもしれないが、勇気を出してぜひ入って欲しい。がんばって(何を?)3度来れば、すでに何人かと友達になっていること間違いなし。
私ももちろん結構頻繁に行ってます。
Via Monte della Farina Roma