『廓庵 十牛図 騎牛帰家』
すみのふる心の
空にうそ
ふきて
立ふり行
みねの白雲
かへり見むとを山
道の雪きゝて
心のうしに
のりてこに せき
(『生と死の図像学―アジアにおける生と死のコスモロジー』より『廓庵 十牛図 騎牛帰家』を写す。)
『十牛図』とは
『十牛図』は、中国の宋の時代の禅の入門書。
絵には、それぞれ漢文の「序(じょ)」と漢詩の「頌(じゅ)」がつけられている。
禅の考えや絵の説明が書かれてる。
漢詩(頌)は廓庵師遠(かくあんしおん)禅師が作り、序は弟子の慈遠(じおん)禅師がのちに付けた。
『十牛図』の絵はさまざまな種類のものが残されているとのこと。
『十牛図』は、一頭の牛が登場。
牛は普段はおとなしく、物静かでだが、あばれると非常に強く、手がつけられない。
その姿はまるで、人間の心の様子に似ているとされ、こういった話が生まれたのかもしれない。
『廓庵 十牛図 騎牛帰家』
騎牛帰家: 騎(旅人)は牛に乗って、家へ帰る。
旅人は、なぜ楽しそうに歌を歌ったり、笛を吹いたりしながら、のんびりと家に帰って行くのか。
『十牛図』の説くところでは、旅人も牛も、もともと同じもの。
やっとの思いで牛をつかまえ、手なずけても、「元に戻った」にすぎないのだ。
それでも旅人が満足しているのは、誰に言われるでもなく、自からが牛を探しはじめたから。
自分の足で歩きまわって、いろいろ大変な思いをしてきたことは自分だけの財産であり、満足に値する。
「元に戻った」ことと、「何もしなかった」ことは同じではないという教えである。
『生と死の図像学―アジアにおける生と死のコスモロジー』 (明治大学人文科学研究所叢書) 至文堂ハードカバー より
- 至文堂 (2003/5/1)
- 発売日 : 2003/5/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 426ページ
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