夫はデイホームから帰る時間は5時半近く、夕食の下準備をしてから
私はベランダへ立って空を眺めた。「秋の夜は釣瓶落とし」と昔から言うが
中学時代から「おセンチ」と呼ばれていた私は、このひとときが季節の中で
最も嫌いだった。そんな時とても淋しくなるからだが、それは高齢の今
でもまったく変わらない。
そろそろ帰ってくる夫を、「早く帰ってこないかしら」と、ベランダで時折
見ているのは、とても淋しいからだ。夫を「男性の平均寿命より10年は長
生きさせたい」努力しているのは、もしかしたら人一倍淋しがりの自分自身
のためかも知れないとふと思った。するとデイホームの送迎車が家の前で
止まり、誘導されて夫が降りてきた..。そんな時かたくなっていた心が
フワーッとほぐれたようなのは、私が単細胞だからかも知れない。