
先史時代から現代まで、戦争・ジェノサイド・テロ等々の暴力は着実に減少していっているという主旨。イスラム国は暴力による支配の最後の断末魔ということになるのだろうか?時代を経て暴力が減少していっているという図式は、中世日本が「北斗の拳」そのままの世界であったことを思えば、日本史にもそのままあてはまりそうである。本郷和人氏あたりに「暴力の日本史」を書いて欲しいところ。
読了日:10月4日 著者:スティーブン・ピンカー

人類は着実に賢明に、やさしく、おとなしくなっているということを、下巻では主に心理学の観点から論じていく。日本絡みでは1984年の昭和天皇の訪日した韓国大統領に対する謝罪以来、日本や世界各国の指導者が第二次大戦中の加害行為などを積極的に謝罪するようになったという話が面白い。
読了日:10月15日 著者:スティーブン・ピンカー

満州事変を経ていよいよ満州国が建国される。関東軍に批判的だった外交官の太郎も「新国家建設」の夢に惑わされるようになる。そして末弟四郎が北辺で武装移民事業に従事するようになり、四兄弟が全員満州に揃ったことに。やはり史実とフィクションのバランスがほどよく保たれている感じ。
読了日:10月16日 著者:船戸与一

入門書・研究書・学際的アプローチなど分野別と、古代から近現代までの時代別をクロスさせた日本史学ブックガイド。単なる名著の紹介・解題にとどまらず、文献のチョイスからして著者保立氏の個性や考え方、読書歴が色濃く反映されている。「物申す」姿勢のブックガイドとして評価は分かれるかもしれない。
読了日:10月19日 著者:保立道久

同じ著者の『海洋帝国興隆史』とかぶってるようなかぶってないようなという内容。こちらは大航海時代の話がやや詳しくなっているかなという印象。一方、前著でそれなりに紙幅を割いていた北海・バルト海の話は割愛されている。著者の専門からは外れるかもしれないが、今度はアメリカに重点を置いた話を書いて欲しい。
読了日:10月20日 著者:玉木俊明

独立間もないルワンダの中央銀行総裁となった著者の回顧録。明治の頃のお雇い外国人もこういうことを考えながら仕事をしたのかなと思わされた。そしてルワンダ人を「未開」と見なすことなく、彼らの行動の裏には必ず深刻な事情があり、むしろルワンダ人を無能・怠惰と見なす外国人の政府顧問・商人こそが無能・怠惰かつ傲慢であるとする著者の見識に感服。
読了日:10月23日 著者:服部正也

今までありそうでなかった、王家を中心とした平安時代通史。謎の桓武の前半生、藤原氏と村上源氏との結びつき、清和源氏や閑院流藤原氏の評価など、これまでの概説書ではほとんど触れられていなかった人物が詳しく紹介されていたり、論点が盛り込まれており、読みどころが多い。
読了日:10月26日 著者:保立道久