野嶋剛『ふたつの故宮博物院』(新潮選書、2011年6月)
2000年代の台北故宮リニューアルと故宮南院建設計画、北京と台北ふたつの故宮成立史、近年の大陸での文物回収運動(このあたりはメインテーマとはあんまり関係ない話題ですね)、そしてふたつの故宮の交流・統一と、割と内容が盛りだくさんの本です。
特に台北故宮のリニューアルについては関係者のインタビューが豊富に盛り込まれていてなかなか読ませますが、これって当時の民進党政権と結びついた極めて政治的な動きだったんですね。そして国民党の政権奪回とともに揺り戻しがおこり、台湾南部の嘉義県にオープン予定という故宮南院の建設計画については風前の灯火となっているようですが……
大陸での文物回収運動については、フランスでオークションにかけられたりして物議を醸した円明園の十二支像についても触れられていますが、本書ではこの十二支像について中野美代子氏の衝撃的な論考を紹介しています。その論考によると、十二支像は1930年頃までは現地に残ってたようであるということですが……アロー戦争で英仏連合軍に略奪されたんじゃなかったのかよ!(^^;)
川島真『シリーズ中国近現代史2 近代国家への模索1894-1925』(岩波新書、2010年12月)
このシリーズの第1弾を読んだのが随分前のこととなってしまいましたが……
今回面白かったのが「中国」という国号についてです。本書ではこれに関して梁啓超の文章を引用していますが、梁啓超曰く、我が国には国号が無い。漢・唐といった王朝名で呼ぶのは論外だし、支那という号は外国人がつけた名であって我々がつけたものではなく、「名は主人に従う」という公理に反することになる。中国・中華という呼び名も自尊自大の気味があってイマイチなんだが、消去法で選ぶと中国しかない。
……ということですが、支那という呼び方は自分でつけた名前じゃないからダメなんですね(^^;) そして中華・中国という呼び方に問題があると認識しているのも面白いところ。そして日本は辛亥革命後にこの中国という尊大な呼び方を嫌ったのか、支那という呼称を採用することになるわけですが……
2000年代の台北故宮リニューアルと故宮南院建設計画、北京と台北ふたつの故宮成立史、近年の大陸での文物回収運動(このあたりはメインテーマとはあんまり関係ない話題ですね)、そしてふたつの故宮の交流・統一と、割と内容が盛りだくさんの本です。
特に台北故宮のリニューアルについては関係者のインタビューが豊富に盛り込まれていてなかなか読ませますが、これって当時の民進党政権と結びついた極めて政治的な動きだったんですね。そして国民党の政権奪回とともに揺り戻しがおこり、台湾南部の嘉義県にオープン予定という故宮南院の建設計画については風前の灯火となっているようですが……
大陸での文物回収運動については、フランスでオークションにかけられたりして物議を醸した円明園の十二支像についても触れられていますが、本書ではこの十二支像について中野美代子氏の衝撃的な論考を紹介しています。その論考によると、十二支像は1930年頃までは現地に残ってたようであるということですが……アロー戦争で英仏連合軍に略奪されたんじゃなかったのかよ!(^^;)
川島真『シリーズ中国近現代史2 近代国家への模索1894-1925』(岩波新書、2010年12月)
このシリーズの第1弾を読んだのが随分前のこととなってしまいましたが……
今回面白かったのが「中国」という国号についてです。本書ではこれに関して梁啓超の文章を引用していますが、梁啓超曰く、我が国には国号が無い。漢・唐といった王朝名で呼ぶのは論外だし、支那という号は外国人がつけた名であって我々がつけたものではなく、「名は主人に従う」という公理に反することになる。中国・中華という呼び名も自尊自大の気味があってイマイチなんだが、消去法で選ぶと中国しかない。
……ということですが、支那という呼び方は自分でつけた名前じゃないからダメなんですね(^^;) そして中華・中国という呼び方に問題があると認識しているのも面白いところ。そして日本は辛亥革命後にこの中国という尊大な呼び方を嫌ったのか、支那という呼称を採用することになるわけですが……
おとついくらいに買うて来て、さっき読み終わりました。
こ
の本、今年6月の25日発行、てありますね。
通常日書がこっちに来るのは船便で、
数週間~数ヶ月かかるはずなんで、
まずはジュンクに予約しようとしら、
「もうあります」ということで、
びっくりしてその足で買い求めてきました。
「故宮」本ということで気合いが入ってるのか?
たまたま船にグッドタイミングで乗れたのか?
内容は、おもしろかったです。
新聞記者さんですから、史実の理解にところどころ間違いがあるようでしたけど、記者魂というか、
徹底的にインタビューや調べものしてはるようで、
歴史論文もほんまはこないせなあかんな、と諭された感じです。
山科さまにもご紹介したんですが、
山科さまは「間違いが多い」と怒ってはりました(^^;
宣和堂さんにも、メールでお伝えしときました。
台湾に住んどっても気付かなんだことも多く、
焦ってしまいます。
また、ここ数年の出来事が多いですね、
おちおち部屋で寝てれませんよ、わたしも勉強しないと。
あと、日本の本にしては珍しくかな?
巻末の参考文献なんかが、ちゃんと整ってて重宝しますね。
ただ、肝心の論旨:「文物が正統性を保障する」とか、
たしかに中国史の特徴ですが、
そこまで強く言えるもんか?と疑問を持ちました。
まあ、そう主張したほうが、著書の価値も増すわけですけど。
故宮南院は、なかなかできへんのう、思てたらそういうことでしたか!
これには気付かず迂闊でした。
わたしは、台湾と中国を分けて考えるので、
故宮の文物は、みんな北京に「売ったら」ええと思いますよ。
中華依存からも逃れられる要素になるし、
GDP一年分くらいあるなら、かなりの額ですね。
それで、南部にでも台湾文化の博物館を作ったらええですよ。
すでに、台南市には台湾史の博物館ができてますし、
嘉義の南院計画を、そのまま転用したらええ思います。
はなしはインタビューその他おもろかったし、
ひさびさに短時間で読了できた本でした。
レヴュー、どうもおおきにさんでした!
>山科さまは「間違いが多い」と怒ってはりました(^^;
故宮の歴史的な経緯は確かにアレな部分も多いので、適当に読み飛ばしておいてください(^^;) 読みどころはやはり台北故宮関係者へのインタビューなど、現在の故宮に関する部分でしょう。
>故宮の文物は、みんな北京に「売ったら」ええと思いますよ。
民進党政権が続いていたら、故宮についてこういういろんな問題提起がされたと思いますが、今となっては……