博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『中国・電脳大国の嘘』

2011年12月26日 | 中国学書籍
安田峰俊『中国・電脳大国の嘘 「ネット世論」に騙されてはいけない』(文藝春秋、2011年12月)

先日読んだ『独裁者の教養』の作者による中国ネット論。(というか、もともとそちらの方がメインテリトリーのようですが。)「ネットの普及が中国を変える」「ミニブログの流行が中国の民主化を後押し」「日本のアニメにハマる中国の若者が日中友好を実現」……このような言説が最近ネットだけではなく新聞や週刊誌でも広く見られるようになってきたが、果たしてどこまで本当なのか?という疑問を本書では投げかけています。

本書の話題はそこから始まり、最終的に戦前の「暴支膺懲」論まで行きつくのですが、結局日本人は遣隋使の時代から現在に至るまで現実の中国ではなく、バーチャル中国に対して一喜一憂してきたのだなあと思った次第です。

バーチャル中国というのは、『史記』・『三国志』や唐詩などの古典から日本人が勝手にイメージした理想の中国ということですが、本書の主張によると、それに「ネットの力によって民主化へと向かう中国」とか「アニメによって日本との友好を深めようとする中国」とかも加えるべきなんでしょうね。

最近、中国の「八〇後」の人気作家韓寒のブログで「革命を語る」「民主について」という2つのエントリが投稿され、物議を醸しているということですが、その内容は本書ともリンクしています。

「革命するには民度と公共心が足りない=人気作家・韓寒が『革命を語る』―中国」(KINBRICKS NOW)
「コネがあれば俺も汚職できたのに…作家・韓寒が語る『普通の中国人にとっての民主』」(KINBRICKS NOW)

このうち「革命を語る」の方に「こういうさ、白か黒か、正しいか正しくないかという決めつけ、共産党を非難しなきゃ五毛党扱いされる社会で革命なんか起こしたら本当にやばいことになるよ。」という一文がありますが、「共産党を非難しなきゃ五毛党扱いされる社会」というのは、要するに金庸『笑傲江湖』で描く所の魔教を非難しなきゃ正派の人士から邪派扱いされる江湖ということですね。

やはり著者の言うように、中国社会はネットの力によって大きく変容するようなヤワなものではないようです……

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『中国化する日本』 | トップ | 『ROME』その1 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

中国学書籍」カテゴリの最新記事