東南アジア 多文明世界の発見 (興亡の世界史)の感想Nスペ『アジア巨大遺跡』を見て興味が出てきたので、種本のひとつと思しき本書を読む。番組では食料に恵まれ、宗教的に徳の深い王が治める地上の楽園のように描かれていたアンコール王朝だが、実際は王位の世襲が確立されていないので、王の代替わりごとに政争がおこり、血縁の力に頼れない新王は都城・王宮・寺院の建造によって王としての徳を演出し、うっかりライバルの新王候補を支援してしまった世襲の王師がその職権を取り上げられるという状況だった模様。その他アンコール・ワットを見た江戸初期の日本人森本右近太夫の話題もあり。読了日:11月1日 著者:石澤良昭
水中考古学 - クレオパトラ宮殿から元寇船、タイタニックまで (中公新書)の感想大地震により水没したアレクサンドリアのクレオパトラの宮殿、東アジアの沈没船としては著名な韓国新安沖の元代海船、そして著者自身が調査プロジェクトを主導した、忘れられた幕末維新の沈没船ハーマン号など、近年の水中考古学の成果を洋の東西ごとにバランスよく紹介している。アレクサンドリアでは世界初の海底ミュージアムの建設を予定しているとのこと。昨今の「イスラム国」の跋扈の影響を受けてはいないかどうか不安ではあるが…読了日:11月3日 著者:井上たかひこ
政治のことば――意味の歴史をめぐって (講談社学術文庫)の感想古代の「ヲサム」「マツリゴト」から近現代の「統治」「権利」まで、日本語の政治に関する語彙を追うことによって、日本の為政者の政治に対する意識を探っていく。保立道久氏の解説にある通り、日本では「権利」という言葉に恣意的な利益の主張という悪いニュアンスが込められ、それと対になる「義務」が正しい務めというニュアンスが込められ、現代でも「権利には義務が伴う」などという言葉が一種の脅し文句として通用している状況からすると、政治に対する意識の変革はまず「名を正す」ところから始めるべきなのかもしれない。読了日:11月7日 著者:成沢光
封建制の文明史観 (PHP新書)の感想日本での「封建制」という用語やその位置づけ、評価の変遷を簡潔によくまとめていると思うが、「封建」の語の由来となった中国の封建制や郡県制との比較に関してはあまり言及されていないのが残念読了日:11月9日 著者:今谷明
八犬傳(上) (角川文庫)読了日:11月16日 著者:山田風太郎
八犬傳(下) (角川文庫)の感想上下巻合わせての感想。虚の世界である『南総里見八犬伝』のあらすじと、実の世界である曲亭馬琴の後半生が交互に展開される。歴史物における虚と実の関係がテーマとなる作品だが、八犬伝執筆時の馬琴の人生がこうして物語となることで、実のはずの世界のこともまた虚の世界と化したのではないか。虚と実をともに扱う最終章を読みながらそんなことを考えさせられた。読了日:11月16日 著者:山田風太郎
生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後 (岩波新書)の感想著者小熊英二氏の父親の生涯を軸として見る戦前・戦後史。当時の風俗や細々とした日本の制度面について読みどころが多い。ハイライトは父親謙二氏のシベリア抑留だが、同じく「生きて帰ってきた男」である横井庄一氏に対しては割合に同情的である一方、小野田寛郎に対してはかなり厳しい評価を下しているのが印象的。当時は小野田氏の方を英雄視する風潮もあったということだが。読了日:11月16日 著者:小熊英二
匈奴―古代遊牧国家の興亡 (東方選書)の感想20年ほど前に同じシリーズから出たものの新訂版。匈奴の通史・文化・社会と、バランスのよい概説書となっている。著者の沢田氏は今年山川の世界史リブレット人で『冒頓単于』を出版されたが、本書の方がお薦め。読了日:11月18日 著者:沢田勲
謎の独立国家ソマリランドの感想無政府状態が続く旧ソマリアの地を三分する、「地上のラピュタ」ソマリランド・「海賊国家」プントランド・「北斗の拳の世界」南部ソマリアの潜入体験ルポ。ソマリ人の氏族制について、バーレ清盛だのイサック奥州藤原氏だの独特のネーミングで紹介しているが、それに馴染んだあたりから面白くなってくる。著者の意図とは異なるだろうが、日本も含めた世界各地の氏族制や中世社会を理解するうえでの格好の入門書になっている。歴史好きには是非手に取って読んでもらいたい。中世がゆるふわと残虐が隣り合わせの世界であることがよくわかる。読了日:11月23日 著者:高野秀行
世界の辺境とハードボイルド室町時代の感想『謎の独立国家ソマリランド』の高野秀行氏と『喧嘩両成敗の誕生』の清水克行氏による対談集。高野氏の方も歴史学の素養があるということで、歴史学とはどういう営みかということがいろんな角度から語られている。カーの『歴史とは何か』もヘロドトスの『歴史』も出てこないが、良質の史学概論という趣きがある。読了日:11月28日 著者:高野秀行,清水克行
水中考古学 - クレオパトラ宮殿から元寇船、タイタニックまで (中公新書)の感想大地震により水没したアレクサンドリアのクレオパトラの宮殿、東アジアの沈没船としては著名な韓国新安沖の元代海船、そして著者自身が調査プロジェクトを主導した、忘れられた幕末維新の沈没船ハーマン号など、近年の水中考古学の成果を洋の東西ごとにバランスよく紹介している。アレクサンドリアでは世界初の海底ミュージアムの建設を予定しているとのこと。昨今の「イスラム国」の跋扈の影響を受けてはいないかどうか不安ではあるが…読了日:11月3日 著者:井上たかひこ
政治のことば――意味の歴史をめぐって (講談社学術文庫)の感想古代の「ヲサム」「マツリゴト」から近現代の「統治」「権利」まで、日本語の政治に関する語彙を追うことによって、日本の為政者の政治に対する意識を探っていく。保立道久氏の解説にある通り、日本では「権利」という言葉に恣意的な利益の主張という悪いニュアンスが込められ、それと対になる「義務」が正しい務めというニュアンスが込められ、現代でも「権利には義務が伴う」などという言葉が一種の脅し文句として通用している状況からすると、政治に対する意識の変革はまず「名を正す」ところから始めるべきなのかもしれない。読了日:11月7日 著者:成沢光
封建制の文明史観 (PHP新書)の感想日本での「封建制」という用語やその位置づけ、評価の変遷を簡潔によくまとめていると思うが、「封建」の語の由来となった中国の封建制や郡県制との比較に関してはあまり言及されていないのが残念読了日:11月9日 著者:今谷明
八犬傳(上) (角川文庫)読了日:11月16日 著者:山田風太郎
八犬傳(下) (角川文庫)の感想上下巻合わせての感想。虚の世界である『南総里見八犬伝』のあらすじと、実の世界である曲亭馬琴の後半生が交互に展開される。歴史物における虚と実の関係がテーマとなる作品だが、八犬伝執筆時の馬琴の人生がこうして物語となることで、実のはずの世界のこともまた虚の世界と化したのではないか。虚と実をともに扱う最終章を読みながらそんなことを考えさせられた。読了日:11月16日 著者:山田風太郎
生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後 (岩波新書)の感想著者小熊英二氏の父親の生涯を軸として見る戦前・戦後史。当時の風俗や細々とした日本の制度面について読みどころが多い。ハイライトは父親謙二氏のシベリア抑留だが、同じく「生きて帰ってきた男」である横井庄一氏に対しては割合に同情的である一方、小野田寛郎に対してはかなり厳しい評価を下しているのが印象的。当時は小野田氏の方を英雄視する風潮もあったということだが。読了日:11月16日 著者:小熊英二
匈奴―古代遊牧国家の興亡 (東方選書)の感想20年ほど前に同じシリーズから出たものの新訂版。匈奴の通史・文化・社会と、バランスのよい概説書となっている。著者の沢田氏は今年山川の世界史リブレット人で『冒頓単于』を出版されたが、本書の方がお薦め。読了日:11月18日 著者:沢田勲
謎の独立国家ソマリランドの感想無政府状態が続く旧ソマリアの地を三分する、「地上のラピュタ」ソマリランド・「海賊国家」プントランド・「北斗の拳の世界」南部ソマリアの潜入体験ルポ。ソマリ人の氏族制について、バーレ清盛だのイサック奥州藤原氏だの独特のネーミングで紹介しているが、それに馴染んだあたりから面白くなってくる。著者の意図とは異なるだろうが、日本も含めた世界各地の氏族制や中世社会を理解するうえでの格好の入門書になっている。歴史好きには是非手に取って読んでもらいたい。中世がゆるふわと残虐が隣り合わせの世界であることがよくわかる。読了日:11月23日 著者:高野秀行
世界の辺境とハードボイルド室町時代の感想『謎の独立国家ソマリランド』の高野秀行氏と『喧嘩両成敗の誕生』の清水克行氏による対談集。高野氏の方も歴史学の素養があるということで、歴史学とはどういう営みかということがいろんな角度から語られている。カーの『歴史とは何か』もヘロドトスの『歴史』も出てこないが、良質の史学概論という趣きがある。読了日:11月28日 著者:高野秀行,清水克行
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