博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『包青天之九 鍘龐』

2008年08月13日 | 中国古典小説ドラマ
もう出発まで間がないし(そう言えばブログでは告知してませんでしたが、今月24日に中国へと発つことになりました)、長編ドラマは見てられないということで、久しぶりに『包青天』シリーズに手を出しています。とは言っても今年になって放映された新作ではなく、90年代の旧作の方です。例によって京文電視版のDVDで、『鍘包勉』『魚美人』『菩薩嶺』『探陰山』『鍘龐』の5エピソードが収録されているバージョンです。

今回はその中でも『三侠五義』にも採られている『鍘龐』(全5話)を鑑賞。

太師龐吉の息子で仁宗の寵姫龐妃の弟である安楽侯龐は災害に遭った陳州へと賑恤に向かいますが、現地で民間の婦女を攫って我が物としたりとやりたい放題。医師田起元の妻金玉娘を手籠めにしようとしたことからその横暴ぶりが包拯の知るところとなり、彼は龐を処断すべく現地へと向かいます。

展昭の活躍もあって一度は救出された田夫妻ですが、龐の陰謀によって再び夫婦が引き離され、金玉娘は刺し違える覚悟で龐への嫁入りを決意……

ということで、しばらくテンポが緩めのドラマを見ていたもんで、この展開の早さが心地よいです(^^;) 主人を救うために命も惜しまない田忠とか、龐に逆らえないと知りつつもその悪事に加担することに良心の呵責を覚える木っ端役人の蒋明、包拯を仇と付け狙う冷孤独など、脇役も魅力的です。

で、首尾良く龐を捉えた包拯一行ですが、仁宗より賜った尚方宝剣をタテに龐を処刑しようとすると、龐吉がこれまた仁宗より賜った免死金牌を掲げて息子の処刑を阻止しようとします。結局裁定は仁宗に委ねられることになりますが…… 終盤に出て来る「彼が死んだのではない、私の正義が死んだのだ!」という包拯のセリフに痺れます(^^;)

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『北京なるほど文化読本』

2008年08月12日 | 中国学書籍
千田大介・山下一夫編『北京なるほど文化読本』(大修館書店、2008年7月)

編者の千田氏が中心となって毎年翻訳・刊行されている『チャイニーズ・カルチャー・レビュー』のまとめ本的な位置づけです。タイトルに「文化」とありますが、武侠ドラマや漫画、アニメ、Cポップ、ネットなどエンタメに関する話題が豊富に盛り込まれています。また香港・台湾のエンタメとのつながりをちゃんと押さえているのも特徴のひとつです。

以下、個人的に面白かったポイントを挙げていきます。

○『HERO』は国産映画としていろんな意味で画期となった作品
……国際的な評価の高い『グリーンデスティニー』は純粋な国産映画ではなく、『始皇帝暗殺』は興行的に失敗して評価も低い中で、この作品がマーケティング戦略の成功もあり、純粋な国産映画として初めてハリウッド映画を押さえて興行収入第1位を達成。以後の国産大作映画の魁となったとのこと。

○現代の京劇はスーパー歌舞伎以上に何でもあり
……どこの京劇院がということではなく、ジャンル全体の傾向として何でもありということみたいです。台湾の布袋戯といい、中華圏の伝統芸能は躊躇いなく新しい試みをしていますよね。

○日本では崔健を「誤読」
……日本では民主化運動の流れの中にあるものとしてもてはやされた崔健の楽曲です
が、それは日本側の一方的な「誤読」というか勘違いだったとのこと。

○規制だらけのテレビにそっぽを向く若年層
……規制によりテレビ放映の難しい日本のアニメや台湾ドラマについては、若年層が海賊版DVDやネット上の違法データから面白い番組を発掘して見ているような状態とのこと。昨年最も話題になった作品は国内未放映の台湾ドラマ『公主小妹』(『ろまんす五段活用』)らしいです(^^;)

○徐勇はかなりのやり手
……徐勇というのは1990年に写真集『胡同一〇一像』を出版し、胡同観光ブームに火をつけた人物。彼はその後観光事業を手掛け、大成功したとのこと。
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『ドラゴンキングダム』と『カンフーパンダ』

2008年08月11日 | 雑記
竹熊健太郎氏のブログを見ていたら、以下のエントリに気になる記述がありました。

「パンダとポニョ(1)」(たけくまメモ)

気になる所というのは、現在公開中の『カンフーパンダ』のあらすじを説明した部分です。(それ以外の部分もなかなか興味深いのですが、ここでは取り上げません)

そのあらすじを要約すると、カンフーオタクであるもののカンフーが全く出来ない主人公が重大な使命を託され、その使命を果たすためにカンフーの修行に励むことになるということになるようです。

これってストーリーの骨格が『ドラゴンキングダム』とまるっきり一緒なんですが、今のアメリカ人がカンフー物を撮ろうとすると、自然にこういうストーリーラインになっちゃうものなんでしょうか(^^;)
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『大明王朝1566』その6(完)

2008年08月10日 | 中国歴史ドラマ
『大明王朝1566』第38~最終第46話まで見ました。

嘉靖44年年末、宮廷では西苑の宮殿修築に多額の金を費やす一方で、国庫欠乏のため官吏への俸禄支給が滞る有様。頭に来た官吏たちは戸部の役所に抗議に押し寄せますが、肝心の戸部尚書趙貞吉と内閣首輔の徐階は嘉靖帝のための青詞の作成に追われています(;´д⊂)  

一方、地方では年末から翌嘉靖45年正月にかけて厳冬と食糧不足から餓死者・凍死者が相次ぎ、海瑞も視察に出ますが、地方官のあまりにやる気のない対応に憤激し、下々の暮らしのことなど眼中にない嘉靖帝を諫めるために彼はいよいよ死を賭して上疏を決行。これを読んだ嘉靖帝は当然のごとく激怒し、海瑞や彼のシンパを投獄しますが……

というわけで終盤に至っていよいよ『海瑞罷官』のエピソードに突入です。しかしここに来るまでが長かったですね。全46話の大半が1561年(嘉靖40年)の話なので、『大明王朝1566』というタイトルは看板に偽りありだと思います(^^;)

ただ、内容は本格的な歴史劇に仕上がっており、久々に重厚な中国歴史ドラマを見たという満足感に浸ることが出来ました。(注:以前に見た『臥薪嘗胆』だの『王昭君』だのは本格的な歴史劇に含まれません(^^;) )

なかでも注目ポイントは主役の海瑞の熱さと嘉靖帝の異様さですね。特に嘉靖帝は作品中ではほとんど西苑の玉熙宮に引きこもって道術の修練に励んでおり、宮殿の外に出たのがたった一度だけという見事なまでのニートぶりを披露し、清朝物のドラマで清朝皇帝が水戸黄門よろしく宮廷を出てお忍び旅をしているのとはだいぶ違います。そのくせ国の経済状況だけはしっかりと把握していて、宮殿修築なんかの無駄遣いに励んだりするんですよね……

本作の最後でこの嘉靖帝が崩御してしまうわけですが、後を継いだ隆慶帝(本作の裕王)も在位わずか6年で崩御。そして更にその後を継ぐのが本作では裕王の世子として登場していた万暦帝。実は現在万暦15年を舞台にした続編『大明王朝1587』が制作中とのこと。1587年と言えば海瑞が亡くなった年ということですが、一般的に暗君と評価される万暦帝を軸にどんな政治ドラマが繰り広げられるのか今からガクガクプルプルであります……

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北京オリンピック開会式

2008年08月09日 | その他映像作品
さっきまでオリンピック開会式のアトラクションを見てました。(入場行進はまだやってますが……)

監督が張芸謀ということで色々注目されてましたが、ワイヤーで天女を飛ばしたり、凧揚げしてる女の子を飛ばしたり、はたまた宇宙飛行士を飛ばしたりと、こいつ好き放題しやがって!と言いたい気分です(^^;)

同監督の『満城尽帯黄金甲』のラストシーンが開会式を意識しているんじゃないかという説もありましたが、本番を見ていてやっぱりそうなんだろうなあという気が……

紙・活版印刷・羅針盤と中国での発明品が取り上げられてましたが、同じく中国で発明された火薬についてはクローズアップされてませんでしたね。まあ、花火が火薬の発明を象徴しているということなのかもしれませんが。

それにしてもオリンピック開会式のアトラクションなんてまじめに見たのはこれが初めてかもしれません。長野オリンピックの時ですら見てなかったですし。

(ここまでが開会式の途中までに書いた部分)

【追記】

何でもかんでもワイヤーで飛ばしまくってるなあと思ってたら、聖火リレーの最終ランナーまで飛んでました(^^;) しかも頂上付近の壁面を駆けるような感じで。張芸謀、発想がアホすぎて凄い!

(ここまでが開会式終了直後に書いた部分)

【更に追記】

早速下のようなニュース記事が出てますが……

「五輪開会式の視聴率98%=人民日報などが号外-中国」(Yahoo!スポーツ)

色々ツッコミ所が多そうな視聴率の話は置いておいて、気になるのは次の部分。

「開会式の演出に満足した」と回答した人は90.3%、1984年ロサンゼルス五輪体操男子金メダリストの李寧さんがワイヤを使って聖火をともした方式について「中国の特色を体現していた」と答えた人は75.3%だった。

つまり軽功は中国文化の特色のひとつであり、中国は好功夫の国であると自分で認めているわけですね(^^;)
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『かなづかい入門』

2008年08月06日 | 日本史書籍
白石良夫『かなづかい入門 歴史的仮名遣VS現代仮名遣』(平凡社新書、2008年6月)

『かなづかい入門』とありますが、内容的には今なお現代仮名遣より歴史的仮名遣の方が優れていると主張する文化人たちへの批判がかなりの部分を占めているので、タイトルはむしろ主題と副題とが逆の方がしっくりくるような気がします。

本書では全国民の表記の規範としての歴史的仮名遣は歴史が意外と浅く、もともとが明治政府によって政策的につくられたもので、終戦の時点までで100年の歴史すら持っていなかったこと、しかも歴史的仮名遣や、漢字の音読みを示す字音仮名遣は使う側にとって複雑すぎてかなり無理のあるもので、既に明治20年前後に表音式仮名遣いを要求する世論がおこっていたことなどを指摘し、現代仮名遣を毛嫌いし、歴史的仮名遣を称揚する向きに対して批判をしています。

その批判の舌鋒はかなり熱く、私自身ももっともだと思う所が多いのですが、そこまで批判をしなくちゃいけないほど口うるさい歴史的仮名遣愛好家が今の日本にどの位いるものなのかと疑問に思ったり……

更に著者は終盤で古文を現代仮名遣で表記してもいいじゃないかと主張していますが、これは確かにその通りで、中国史の分野でもチョコチョコと漢文の書き下し文を現代仮名遣で表記している論文を見掛けますね。私自身は何となく歴史的仮名遣で表記していますが(^^;)

以下、それ以外で気になった点について。

○南北朝期(ママ)の『徒然草』には係り結びの法則が崩れている箇所があるが、教科書に掲載される際にそれを間違いと見なして正しい用法に修正される。
……ええっ、そうなの!?つーか、そういうことをしちゃっていいの?というのが正直なところ……

○著者は国語の教科書検定に従事してきたが、自分では確信を持っていても、教科書の執筆者が納得しない考え方を無理には押しつけられない。それが教科書検定のシステムであるという。
……教科書検定については、今まで検定する側の意見を一方通行で教科書会社や執筆者に押しつけているようなイメージがあるので、意外でした。
コメント (3)
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『功夫之王』

2008年08月03日 | 映画
まやさん主催の『ドラゴン・キングダム』鑑賞会に行って来ました!

カンフー映画マニアでいじめられっ子のアメリカ人青年がうっかり江湖風異世界に迷い込み、孫悟空を復活させ、この世界を支配するジェイド将軍(香港版では玉疆戦神という名前になっているようです)を倒すため、劉亦菲演じる金燕子、ジャッキー・チェン演じる八仙の一人盧炎、李連杰演じる黙僧とともに旅をするが、李氷氷演じる白髪魔女がジェイド将軍の命により彼らを襲撃し……というストーリー。

アメリカ人青年は主人公と言いつつも単なる狂言回し的なポジションで、徹底的に適当な扱いになっています(^^;) 普通は彼が絶技を修得してラスボスを圧倒するという展開になると思うのですが、そういうわけでもなく、何とか雑兵を追い散らせるぐらいの強さになったあたりでラストを迎えます。またカンフー映画が好きという割にはいつまで経っても江湖の流儀に馴染みません。 

制作スタッフは邵氏電影やその他古装片に思い入れがあると見えて、オープニングでは歴代邵氏作品のポスターが披露され、本編でも酒場で敵と味方が一悶着、本来味方同士のはずのキャラがろくすっぽ確かめもせずにバトルといった、武侠物のお約束の展開が盛り込まれています。言ってみればファンタジー版というか、ファミリー向けの『キルビル』といった感じの作品ですね。

あちこちのブログで劉亦菲の扱いがイマイチとあったので、『天地英雄』の趙薇とか『蜀山』の章子怡みたいな扱いになっているのかとガクガクプルプルでしたが、結構出番が多くて一安心でした(^^;) (『天地英雄』も『蜀山』もそれぞれヒロインのはずの女優さんが友情出演みたいな扱いになってました……)白髪魔女もかなり良かったですね。昔男性に手酷い裏切りを受けたということで、梁羽生による原作『白髪魔女伝』の設定をそのまま引きずっているようですが。

お気に入りの場面はお互いを「ビッチ」「クズ」と罵り合う金燕子と白髪魔女のバトルと、黙僧が澄まし顔で立ち小便するシーンです。そんな素振りも見せないようなキャラクターなのにああいうシチュエシーションでいきなり立ち小便とか反則だよな(^^;)

予告編ではこの李連杰が始皇帝を演じる『ハムナプトラ3』の宣伝が流れてましたが、兵馬俑が実体化したりとハリウッド版『テラコッタ・ウォリア』みたいな感じで、なかなか楽しそうな作品です。
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『大明王朝1566』その5

2008年08月01日 | 中国歴史ドラマ
『大明王朝1566』第30~37話まで見ました。

鄭泌昌・何茂才の案件も無事に片が付き、というか大人の事情で片が付いたことにされてしまい、我らが海瑞はその功績によって淳安県知県から曹州知州への栄転を打診されますが、この話を断って厳崇のお膝元である江西興国県知県への転任を志望します。

一方、都では厳世蕃は何かとうるさい海瑞を黙らせるため、海瑞の領民で現在は戚継光の配下となっている斉大柱を倭寇と通謀しているという容疑で連行させ、海瑞にも罪を及ぼそうとします。厳崇はこれについて事前に嘉靖帝に根回ししていましたが、その後嘉靖帝は厳一家が多額の税収の横領に関与していたと知り、激怒。「おのれ、朕の金をよくも!これだけの金があれば万寿宮の修築も出来ように!」とお怒りになる皇上ですが、そんなことに何百万両の金を使おうと思っているのかYO!とツッコまずにはおれません(^^;)

嘉靖帝は斉大柱の件の裏事情も既にお見通しで、海瑞に罪を及ぶすのは良いとしても、最終的には海瑞を推薦した裕王の責任も問われることになります。で、「おのれ、朕の息子を陥れようとするとは!」とまたもや激怒(^^;) 厳父子を牽制するために江西興国県の知県になりたいという海瑞の要望を認可し、そして遂に厳世蕃の逮捕と処刑を下命。その父親の厳崇も引退を迫られ、朝政から厳党が一掃されることになるのでありました。

それから3年後の嘉靖44年。海瑞は中央の戸部主事に栄転し、一家揃って北京へとやって来ますが、早速嘉靖帝の命で扁額が掲げられた「六必居」という漬物屋の店名(この店は現在でも存続しているようですが)にケチをつけ、錦衣衛に睨まれる始末。おまけに前の任地で一人娘を事故で失い、その死体を見た当時妊娠中の妻がショックで流産してしまい、以来病に伏せっているという、絵に描いたように不幸に見舞われております……

コメント (2)
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