2017/01/21
昨年末に読んだ2冊の本。
『その島のひとたちは、ひとの話を聞かない 精神科医、「自殺希少地域を行く」』
その題名がおもしろく感じて読み始めました
本の題名は、別の所から来た青年が「この島の人は、人の話を聞かない」
著者に語ったことから来ています
この「島」というのは日本で自殺がもっとも少ない町、徳島県の海部町(現在は海陽町)です
精神科医・森川すいめいさんが、この海部町を調査の旅をした記録です
この地域の人たちの「話を聞かない」というのは、どのようなことでしょう
・権力で押し切ろうとしても理不尽であったなら言うことをきかなそうである
・自分がどうしたいかで物事を選択する
・長いものに巻かれない
・納得できなければNOという
・人は人、自分は自分の境界がとても明瞭
・みんな違うということ、人は多様であると知っている
しかし、いっぽうで誰かが問題を抱えていたら、解決するまで関わる、そこに遠慮はないということのようです
森川すいめいさんは、精神疾患の原因としては脳や遺伝子やホルモンや脆弱性などのいろいろな説があるが、ひととひととの関係の中で病は発症する、とおっしゃっています
だから、人間関係のありようは大切なのです
読んでいて知ったのですが、この本は岡壇(おか まゆみ)さんの本が下敷きになっていることがわかりました
岡さんの本も読みました
『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由がある』
岡 壇著 講談社 2013年出版
岡 壇著 講談社 2013年出版
岡さんは慶應義塾大学の大学院生だったときに、博士論文として書いたのが、これでした
この論文で日本社会精神医学会優秀論文賞を受賞しています
この本に書かれていますが、自殺率の低い自治体の上位10番までは「島」なのです!
日本は先進7か国中自殺率がワースト一位
自殺の動機 1位 病苦・健康問題 2位生活苦・経済問題
この2つで70%占めています
岡さんが調べたところ、海部町では自殺危険因子が他より少ないわけではなかったのです
老人たちがお互いによく世話を焼くこと
積極的に集まりに参加し趣味を楽しんでいること
江戸時代から続く相互扶助組織が地域によく根付いている
という特徴はあります
ここでキーワードになるのは、「病は市に出せ」ということのようです
これは一人で抱え込むな、ということです
自殺許容度が高い人ほど援助を求めることへの抵抗が強いそうですが、
ここでは助けを求めることへの心理的抵抗が少ないのです
5つの自殺予防因子
・いろんな人がいてもよい いろんな人がいたほうがよい
・人物本位主義をつらぬく(地位・学歴・収入は関係ない)
・どうせ自分なんて、と考えない
・病は市に出せ
・ゆるやかにつながる
この2冊を読んで感じたのは、人が困っていると思ったら「遠慮せずにおせっかいをせよ」ということでした
立ち入りすぎ、とか、やる側の自己満足と思われないかと、相手の気持ちをいろいろ詮索してしまって、私なども遠慮してしまうことがあります。
ほんとうに相手に必要なのは何なのか、考えてみると、もう一歩かかわってみることではないでしょうか。