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【帚木】の巻 (2)
頭中将の、女の品定め論が、いかにも世の中を知り抜いているような様子に、源氏は口を挟みます。「その品々やいかに…」3つの階級はどうして見極めるんでしょう。高貴の生まれながらも官位が低くて見栄えのしない人、その反対に位の上って行く人は?…と。
作者はここでこんな独り言を言います。
「世のすきものにて、物よく言い通れるを、中将待ちとりて、この品々をわきまえさだめあらそふ。いと聞きにくき事多かり。」
当世のすき者たちで、なかなか達者な話しっぷりのなか、頭中将はさらに品定めに熱心になっていました。随分露骨で聞きにくいことが多かったですよ。
「世の中」というのは、だいたい男女の仲のことです。
さらに頭中将、左の馬の頭、籐式部之丞はこんな事を言い合います。女は階級で善し悪しは決めにくい、妻にしたい女の条件としては実直なのが良い、嫉妬深いのが一番困る、夫の風流に鷹揚であるのが良い、結婚前は蚊のなくような声で欠点を隠し、こちらで調子を合わせると変に色めかしくなってくる、こんなのは女の一番の欠点です。妻になると忙しく立ち働き、額髪を耳に挟んで世帯じみた世話に明け暮れるようではいやだ、側にいて自分の話を聞いてくれるようなのが良い。などなど。
頭中将は、ふと昔かかわりのあった内気な女の話をします。女は身勝手な振る舞いの私に大層鷹揚でしたが、ある日、本妻側からの、しかるべきことがあって、急に姿を隠したのです。幼い娘が居ましたのに…と涙ぐみます。
この話は伏線で、「幼い娘」は玉鬘(たまかづら)の巻で、展開を見せます。
源氏は、この場面では一言も話をしていません。もっぱら聞き役です。
そうなのです。
「君は人ひとりの御有様を、心の中に思ひ続け給ふ。これに足らずまたさし過ぎたる事なくものし給ひけるかな、とありがたきにも、いとど胸塞がる。」
源氏はただ一人のひと、藤壺のご様子を心のうちに思い続けておりました。これら話の中に出てくる人とは、比べようもない方であると思うにつけても、愛おしさに胸がいっぱいになるのでした。
このようにして、女の品定めは結論のようなものもないまま、終わりには訳の分からない議論になって夜を明かしたのでした。ではまた。
【帚木】の巻 (2)
頭中将の、女の品定め論が、いかにも世の中を知り抜いているような様子に、源氏は口を挟みます。「その品々やいかに…」3つの階級はどうして見極めるんでしょう。高貴の生まれながらも官位が低くて見栄えのしない人、その反対に位の上って行く人は?…と。
作者はここでこんな独り言を言います。
「世のすきものにて、物よく言い通れるを、中将待ちとりて、この品々をわきまえさだめあらそふ。いと聞きにくき事多かり。」
当世のすき者たちで、なかなか達者な話しっぷりのなか、頭中将はさらに品定めに熱心になっていました。随分露骨で聞きにくいことが多かったですよ。
「世の中」というのは、だいたい男女の仲のことです。
さらに頭中将、左の馬の頭、籐式部之丞はこんな事を言い合います。女は階級で善し悪しは決めにくい、妻にしたい女の条件としては実直なのが良い、嫉妬深いのが一番困る、夫の風流に鷹揚であるのが良い、結婚前は蚊のなくような声で欠点を隠し、こちらで調子を合わせると変に色めかしくなってくる、こんなのは女の一番の欠点です。妻になると忙しく立ち働き、額髪を耳に挟んで世帯じみた世話に明け暮れるようではいやだ、側にいて自分の話を聞いてくれるようなのが良い。などなど。
頭中将は、ふと昔かかわりのあった内気な女の話をします。女は身勝手な振る舞いの私に大層鷹揚でしたが、ある日、本妻側からの、しかるべきことがあって、急に姿を隠したのです。幼い娘が居ましたのに…と涙ぐみます。
この話は伏線で、「幼い娘」は玉鬘(たまかづら)の巻で、展開を見せます。
源氏は、この場面では一言も話をしていません。もっぱら聞き役です。
そうなのです。
「君は人ひとりの御有様を、心の中に思ひ続け給ふ。これに足らずまたさし過ぎたる事なくものし給ひけるかな、とありがたきにも、いとど胸塞がる。」
源氏はただ一人のひと、藤壺のご様子を心のうちに思い続けておりました。これら話の中に出てくる人とは、比べようもない方であると思うにつけても、愛おしさに胸がいっぱいになるのでした。
このようにして、女の品定めは結論のようなものもないまま、終わりには訳の分からない議論になって夜を明かしたのでした。ではまた。