永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(12)

2008年04月09日 | Weblog
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【帚木】の巻 (4)
 
 源氏は方違へ(かたたがえ)で紀伊守の屋敷に来ます。実は紀伊守の父である伊豫介の家に謹慎すべきことがあり、そこにいる継母(父の後妻なので紀伊守からは継母となる)や侍女たちが大勢が来ているときで、屋敷内はごたごた、守は困惑しながらも接待します。
源氏は「かの中の品に取り出でて言ひし、この列ならむかしと思し出づ」
あの夜(雨夜の品定め)、馬頭らが中流階級として話していたのは、これなのか。

 源氏は思い出します。父帝がこっそりと所望して宮中勤めを薦めていた空蝉が、どうした縁か伊豫介の後妻になっていたことを。なかなか気位が高いと聞いていたので是非とも見たいものだと心がうずき始めます。夜、襖障子からもれる燈火のほのかな明かり、女房達のひそひそ話、耳をそばだてて聞いていると、自分の忍び遊びが話題になっているではありませんか。どきりとします。秘密の思慕の藤壺を思い出します。
その夜は空蝉の寝所を突き止めることができず、眠りにつきます。

 翌日、源氏は空蝉の居場所を何食わぬそぶりで確かめていきます。17歳の源氏は中将の位。一方の紀伊守は受領階級。相手を見下して相当横柄で、ぞんざいな口の利き方をしています。
今、源氏は帝の後ろ盾と、かがやく美貌に自信満々なのです。

 深夜、ようやく探し当てて、空蝉の寝所に忍び込みます。 
 
 作者の筆が飛ぶように、滑るように詳しく饒舌になるのは、中流の受領階級以下を描写するときです。上流を描写するときは言葉少なに、ぼかしてしまいます。紫式部自身、父が受領階級でした。父は越前守為時で、母は右馬頭・常陸介藤原為信の女(むすめ)です。3人の兄と一人の姉がいたらしいといわれています。
ではまた。