永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(18)(19)

2008年04月14日 | Weblog
 4/14  【夕顔】の巻 (4)

 この巻の終わりにこんな作者の評が挿入されています。
 ――源氏が秘密にしていたものを、気の毒に思いみなは書かないようにしていましたが、源氏の行跡を知っている人(作者)までが、いくら皇子だからといって、欠点を取り繕い、むやみに褒めちぎるのかと、まるで作り事のように取りなす人がいるので、全部さらけ出したのです。でも、ちょっと言い過ぎだとの非難も免れないでしょうね。――

 夕顔の巻は長くて、夕顔のように、父の死で落ちぶれていく階級、男を頼って生きる女達、下層階級の生活、葬送と仏事の様子など詳しく、平安時代の風習をじっくりと味わえるのもこの巻です。ここではほとんど省略しましたが。
ただ、紫式部が下層階級を描写するときは、非常にリアルです。読み手が上流、中流階級であってみれば当然でしょうか。
 
 源氏の飽くなき色好みと言ってしまえば、それまでですが、いつもどこかに亡き母の面影を求めてさまよう孤独な魂を見るような気がします。作者の筆の、心象に添える自然描写の巧みさは抜群です。
「夕顔」はこれでおわり。

4/14  
【若紫】の巻 (1)

 翌年の春です。
 源氏18歳、葵の上22歳、藤壺女御23歳、若紫(のちの紫の上)10歳
 若紫の系図
  父は兵部卿宮(親王)で、藤壺女御の兄です。母は故姫君と書かれています。母は若紫を産んで間もなく亡くなりました。父の正妻ではなかったので、尼君(祖母=故姫君の母)と暮らしています。
  
 通い婚ですと、子供は自然と母親の実家で大きくなります。しかし、一つ家に正妻と暮らす場合ももちろんありました。年月を経ながら暮らしの形態を変えていったように思われます。貴族の家族のあり方が、いまひとつ分かりにくいです。

 源氏は「わらわ病みにわづらひ給ひて…」
――流行の熱病を患って――まじないや加持をおさせになりますが、何度も何度も発作が起こります。ししこらかす=こじらせる
こじらせてはと、北山の奥に祈祷してすぐに治すという行者をこっそり訪ねます。時は三月の下旬、京の桜は終わっていましたが、山は今が盛りです。