かなり重大なヒントが散りばめられている。
①「ヒマラヤ登山と奥多摩登山」。
普段勉強の際に目指すべき頂は当然高く設定される。過去問題で言えば徹底的に完全回答を目指す必要がある(そこから問題文の読み方のスキルを身につけることが出来るからである)。ケースメソッド論文マスターや,出題フレーム講義では,このような「ヒマラヤ登山の技術」の体得を目指している。
しかしながら,実際に合格する為に「本番で」必要なレベルはヒマラヤ登山ではない。「奥多摩登山」のスキルである。実際に受験生が試験時間内に披露できる身の丈の技術レベルと言うことである。新司法試験が嫌らしいのはこの落差があることにも起因する。念のため言っておくが普段から「奥多摩登山レベル」を目指したら本番では「高尾山登山レベル」にも及ばないことになるので勘違いは厳禁である。「優秀」再現答案でさえ間違いが多いことは顕著な事実である。
このような私の「仮説」であるが,ヒアリングから裏付けられた。「優秀」「良好」「一応の水準」「不良」の4カテゴリーがあるが,ヒマラヤ登山レベルは「優秀」ないし「良好」の上位レベルをさすものと言える。しかしながら,ヒアリングによれば「不良答案は量的に見るとやや多い」「不良の答案数は相当数に上ったという印象」「不良と一応の水準を合わせると相当多いのではないか」ということである。実際には答案の殆どが良好~不要までのスパンに収まり,不良・一応の水準が大半を占めるというのが当日の受験生パフォーマンスのレベルと言うことである。合否は相対評価のなので,実際にはこのレベル(奥多摩登山レベル)での戦いになっているということであるのだから多少の失敗,取りこぼしに気がついても動揺する必要は全く無いということである。今年受験予定の方はこの点は肝に銘じておきたい。
もっとも来年度以降受ける方はヒマラヤ登山レベルを目指した学習が必要である。何だかんだ言われつつも,受験生の「受験対策」が進み,全体の受験スキルがアップしているのは事実である。今この差が徐々に付き出しているというのが現状である。完全に情報戦になっているので油断はしてはならない(例えばいまや適用違憲を書くのは常識であろうし,出題フレームがあるのも常識であろう)。
②「個別具体的に検討する。」
常日頃,取締役が3人出てきたら3人の置かれた地位の違いが事案の特殊性であるとか通帳が2冊出てきたら当然何か違いがある,等の指導をしていますが,ヒアリングに正にこのことが示唆されています。
「4つの事例について,出題者としては,差押対象物に当たるか否か,あるいは本件との関連性や写真撮影の必要性の度合いが異なりうるものについて,それぞれ適法性を論じることが求められているわけだが,その区別が必ずしもされていない」。この点については2009年版出題フレーム刑事系を受講された方なら私がかなり時間をかけて指摘してきたことであることがご理解いただけると思います。ちなみにこれは「良好」答案要件のところで指摘されています。できていなくても「良好」なんですよ!出来てたらもう大変な優秀答案ですね。正にビデオカメラが3台出てくればそれぞれ事情が異なり,評価に差が出るように問題を作ってきているのです。
③「事案の特殊性」
判例との事案の違いがベースにあるという事も過去問題を利用して指摘してきたところですが,刑事訴訟法の「不良」要件として,「最高裁の判例とは事実関係が違うにもかかわらず,それを全く度外視して判例をそのまま当てはめて論じたような答案は不良といえる」という衝撃的な指摘があります。第4回は幸い(!?)実況見分調書の本件特殊性に殆どの受験生が気がつかなかったので結局致命傷にはなりませんでしたが(最後は偏差値換算してスコア化されるため),ケースによっては受験生間の差が今後はドンドンついてくると思われます。判例学習のスタンスが本当に問われます。
④当日の「注意点」
まずは「一応の水準」をそろえること,狙える時は「良好」を狙うこと,というのが勝利の方程式でしょう。
刑法の「一応の水準」要件が参考になります。「基本的な事項に関する知識や理解が一応はあり,それを応用して結論を導き出そうとする姿勢が見られるけども」「その知識や理解に十分ではない面があったり,論理的な一貫性が今ひとつ十分ではない等の欠点がいくつかある」。磐石な基礎が欠けるとまずいということです。法律の文章であり,ただの感想文じゃないですから,「法的規範と法的論理」は最低限無ければお話になりません。刑事訴訟法では,「法的性質については一応の考え方は示されているものの,具体的事実の抽出,当てはめが不十分である」あるいは「法的性質については十分には論じていないものの,問題文から必要な具体的事実を抽出して一応の結論を導いているような答案」,設問2については「最高裁の判例法理等の知識はあり,一応これを踏まえた論述をしてはいるものの,本件での具体的な事実関係を前提に要証事実を的確に捉えることができていないというような答案」が一応の水準になるとのことです。
やはり「本件事案の特殊性」を落とすと評価はかなり沈むことになりそうです。逆に事案の特殊性に少しでも気がついたら「気がついてはいる」ということをとにかく文字で表すことです。「気がついた」ということを示すだけでも加点が期待できます。
⑤「フレームワーク」
採点の仕方は読めば分かると思いますが,刑事訴訟法で「写真撮影の性質について誤った理解をしてしまうと,それを前提とした個々の事例への適用にも影響するというように,誤りの重大性によっては,それが最後まで尾を引く」という指摘があります。刑事訴訟法は第3回が顕著ですが,一定の枠組みから外れるとえらい事になることを指摘して参りましたがやはりそうなんですね。一定の想定されたフレーム内であれば総論部分に誤りがあろうが,個別には点がつくし,誤り自体で激しく凹むことは余り無いものの(この点も従来から指摘してきましたが,刑法の採点方法部分の指摘で確認が取れましたね。「何か一つの問題について書き漏らした,あるいは間違いを犯したからといって,直ちに評価が決まるわけではない」。),他方フレームを外すと致命傷になりかねないということが分かりました。
①「ヒマラヤ登山と奥多摩登山」。
普段勉強の際に目指すべき頂は当然高く設定される。過去問題で言えば徹底的に完全回答を目指す必要がある(そこから問題文の読み方のスキルを身につけることが出来るからである)。ケースメソッド論文マスターや,出題フレーム講義では,このような「ヒマラヤ登山の技術」の体得を目指している。
しかしながら,実際に合格する為に「本番で」必要なレベルはヒマラヤ登山ではない。「奥多摩登山」のスキルである。実際に受験生が試験時間内に披露できる身の丈の技術レベルと言うことである。新司法試験が嫌らしいのはこの落差があることにも起因する。念のため言っておくが普段から「奥多摩登山レベル」を目指したら本番では「高尾山登山レベル」にも及ばないことになるので勘違いは厳禁である。「優秀」再現答案でさえ間違いが多いことは顕著な事実である。
このような私の「仮説」であるが,ヒアリングから裏付けられた。「優秀」「良好」「一応の水準」「不良」の4カテゴリーがあるが,ヒマラヤ登山レベルは「優秀」ないし「良好」の上位レベルをさすものと言える。しかしながら,ヒアリングによれば「不良答案は量的に見るとやや多い」「不良の答案数は相当数に上ったという印象」「不良と一応の水準を合わせると相当多いのではないか」ということである。実際には答案の殆どが良好~不要までのスパンに収まり,不良・一応の水準が大半を占めるというのが当日の受験生パフォーマンスのレベルと言うことである。合否は相対評価のなので,実際にはこのレベル(奥多摩登山レベル)での戦いになっているということであるのだから多少の失敗,取りこぼしに気がついても動揺する必要は全く無いということである。今年受験予定の方はこの点は肝に銘じておきたい。
もっとも来年度以降受ける方はヒマラヤ登山レベルを目指した学習が必要である。何だかんだ言われつつも,受験生の「受験対策」が進み,全体の受験スキルがアップしているのは事実である。今この差が徐々に付き出しているというのが現状である。完全に情報戦になっているので油断はしてはならない(例えばいまや適用違憲を書くのは常識であろうし,出題フレームがあるのも常識であろう)。
②「個別具体的に検討する。」
常日頃,取締役が3人出てきたら3人の置かれた地位の違いが事案の特殊性であるとか通帳が2冊出てきたら当然何か違いがある,等の指導をしていますが,ヒアリングに正にこのことが示唆されています。
「4つの事例について,出題者としては,差押対象物に当たるか否か,あるいは本件との関連性や写真撮影の必要性の度合いが異なりうるものについて,それぞれ適法性を論じることが求められているわけだが,その区別が必ずしもされていない」。この点については2009年版出題フレーム刑事系を受講された方なら私がかなり時間をかけて指摘してきたことであることがご理解いただけると思います。ちなみにこれは「良好」答案要件のところで指摘されています。できていなくても「良好」なんですよ!出来てたらもう大変な優秀答案ですね。正にビデオカメラが3台出てくればそれぞれ事情が異なり,評価に差が出るように問題を作ってきているのです。
③「事案の特殊性」
判例との事案の違いがベースにあるという事も過去問題を利用して指摘してきたところですが,刑事訴訟法の「不良」要件として,「最高裁の判例とは事実関係が違うにもかかわらず,それを全く度外視して判例をそのまま当てはめて論じたような答案は不良といえる」という衝撃的な指摘があります。第4回は幸い(!?)実況見分調書の本件特殊性に殆どの受験生が気がつかなかったので結局致命傷にはなりませんでしたが(最後は偏差値換算してスコア化されるため),ケースによっては受験生間の差が今後はドンドンついてくると思われます。判例学習のスタンスが本当に問われます。
④当日の「注意点」
まずは「一応の水準」をそろえること,狙える時は「良好」を狙うこと,というのが勝利の方程式でしょう。
刑法の「一応の水準」要件が参考になります。「基本的な事項に関する知識や理解が一応はあり,それを応用して結論を導き出そうとする姿勢が見られるけども」「その知識や理解に十分ではない面があったり,論理的な一貫性が今ひとつ十分ではない等の欠点がいくつかある」。磐石な基礎が欠けるとまずいということです。法律の文章であり,ただの感想文じゃないですから,「法的規範と法的論理」は最低限無ければお話になりません。刑事訴訟法では,「法的性質については一応の考え方は示されているものの,具体的事実の抽出,当てはめが不十分である」あるいは「法的性質については十分には論じていないものの,問題文から必要な具体的事実を抽出して一応の結論を導いているような答案」,設問2については「最高裁の判例法理等の知識はあり,一応これを踏まえた論述をしてはいるものの,本件での具体的な事実関係を前提に要証事実を的確に捉えることができていないというような答案」が一応の水準になるとのことです。
やはり「本件事案の特殊性」を落とすと評価はかなり沈むことになりそうです。逆に事案の特殊性に少しでも気がついたら「気がついてはいる」ということをとにかく文字で表すことです。「気がついた」ということを示すだけでも加点が期待できます。
⑤「フレームワーク」
採点の仕方は読めば分かると思いますが,刑事訴訟法で「写真撮影の性質について誤った理解をしてしまうと,それを前提とした個々の事例への適用にも影響するというように,誤りの重大性によっては,それが最後まで尾を引く」という指摘があります。刑事訴訟法は第3回が顕著ですが,一定の枠組みから外れるとえらい事になることを指摘して参りましたがやはりそうなんですね。一定の想定されたフレーム内であれば総論部分に誤りがあろうが,個別には点がつくし,誤り自体で激しく凹むことは余り無いものの(この点も従来から指摘してきましたが,刑法の採点方法部分の指摘で確認が取れましたね。「何か一つの問題について書き漏らした,あるいは間違いを犯したからといって,直ちに評価が決まるわけではない」。),他方フレームを外すと致命傷になりかねないということが分かりました。